外出そとで)” の例文
六角堂に参詣するとか、黒谷くろだに様に墓参のためとか言って、しげしげと外出そとであそばしたのは皆その女と逢引あいびきするためだったのでしょう。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
独身で暮すやもおに似ず、ごく内気でございますから、外出そとでも致さず閉籠とじこもり、鬱々うつ/\書見しょけんのみして居りますところへ、或日あるひ志丈が尋ねて参り
郡氏の細君選択方法は、これと思ふ女があつたら、座敷で見合などしないで、その女が外出そとでをする時、そつとあとをつけてくのだ。
自分は生来うまれつき外出そとでを好まなかった所へ父母が其様そんなであるから、少しは意地にもなって、全く人目に触れない女になってしまおう
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
そうして阿曽の出入りすることにも、彼女の外出そとで頻繁ひんぱんになり帰りがおそくなることにも、何一つ干渉もしなければいやな顔も見せなかった。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼も外出そとでの仕事には当てられなかったが、どんなときでも栄二には近よらず、棒の両端が合わないように、いつも遠くはなれていようとした。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「あの御曹子おんぞうしには、まったく、手を焼いてしまう。外出そとでは、禁物だ」誰をさがしているのか、きょろきょろと、走ってきて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君も知っている様に、僕が外出そとで嫌いなのは、この自分の身体を天日や人目にさらす感じが、たまらなくいやだからだ。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
綾子はぞろりと外出そとでなり繻珍しゅちんの丸帯を今めて、姿見に向いたるが、帯留の黄金きん金具をぱちんと懸けつつ振返りて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そち母人ははびと近頃ちかごろようや修行しゅぎょうんで、外出そとで自由じゆうにできるようになったので、是非ぜひそちわそうかとおもっている。
小さい時分から父にれられて外出そとでするたびに、きっとどこかで物を食う癖のついた自分は、成人ののちも御供と御馳走ごちそうを引き離しては考えていなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この雪の為に外出そとでを封ぜられし人は、この日和ひよりとこの道とを見て、皆こらへかねて昨日きのふより出でしも多かるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
これらのことその身すこやかなればもとよりいふにも足らぬことなれど、寒さを恐れて春も彼岸ひがん近くまで外出そとでの折には必ず懐炉かいろ入れ歩くほどの果敢はかなき身には
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
返禮が氣の毒なとて、心切しんせつかは知らねど十軒長屋の一軒は除け物、男は外出そとでがちなればいさゝか心に懸るまじけれど女心には遣る瀬のなきほど切なく悲しく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
宿の主人は折角ながら外出そとでは嫌ひだといふ理由で、おかみさんは女中達を出してやると後で困るから自分とお兼だけは留守番をするといふ理由で不參だつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
これだけは一刻いっときも、そばを離さず、こうして外出そとでにも、駕籠へ入れて持ち歩いているものとみえる。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「その点は、気兼ねがなくってよろしうございます、ほんとに、お銀様には済みませんが、あなた様の御不自由なお住居すまいでは、少しは外出そとでということをなさいませんと」
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
熱気やっきとして自ら叱責しかッて、お勢のかおを視るまでは外出そとでなどをたく無いが、故意わざと意地悪く
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
郊外から下町へ出るのは東京へ行くと称して出慣れぬ女連は外出そとでの仕度に一騒ひとさわぎするのである。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あのほりの向うにいて宮内は只今外出そとでしているが、直ぐ戻ってくるから待っていてくれといえ、いいか、濠のところでいうのじゃぞ、あれから内へは、わしがよいといわぬ間は
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
好きなにほひの高い煙草たばこも仕事の間に飲んだ時と、外出そとでの帰りに買つて来て、する事のないひまさに飲むのとは味が違ふ。新しい習慣に従ふことを久しい間の惰性がしばらく拒むらしい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
近頃彼女は、内所の上さんや新造と一緒に——時としては一人で、時々外出そとでしてゐて、東京の地理もほゞ知つてゐたし、千葉や成田がどの方面にあるかくらゐの智識はもつてゐた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
とかくに外出そとでがちなるなどますます心にかなわざれば、いよいよ離縁して身を退くべしとその志を決しつつ。二三の親しき朋友には。その思うふしをそれとなくらしたるほどなれど。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
「あたしはおろか、子供たちだって、外出そとでも何もあぶなくて出来やしない」
(新字新仮名) / 徳永直(著)
問屋町の裏側はしもたやで、というよりほとんへい奥蔵おくぐらのつづき、ところどころ各家の非常口の、小さい出入口がある。女たちがそっと外出そとでをする時とか、内密ないしょの人の訪れるところとなっている。
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
お駒は聞く耳を立てつゝ、道臣の外出そとでの着物を箪笥から出した。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
などとおどしに人に逢うと喋るから怖くって惣次郎はとん外出そとでを致しません、力に思う花車がいないから村の者も心配しております。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
新画の高い今時、そんな勿体もつたいない事があるものかと、鉄斎が外出そとでをする時には、途中が危いからと言つて、屹度きつと附人つきびとを一人当てがふ事にしてゐる。
一年に二三度と数へるほどしか外出そとでする事のない母親おとよ老眼らうがんをば信じられぬほどにおどろかしたのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
なんとか言っては外出そとでいたします。そしておそくまで帰りませんのでお勤めなども怠りがちでございます。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
で、早速外出そとでの支度をすると、車を、例の秘密の家へと走らせた。念の為にポン引紳士を真似て、二丁程手前で車を降り、門を這入るにも、人通りのない折を待った。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「——おばば、てめえの信心が届いたか、今日、外出そとでの先で、おれはえらい奴にわしたぜ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついでにおんな二人の顔が杓子と擂粉木にならないのが不思議なほど、変な外出そとでの夜であった。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「帰って来たらいいから、もうお寝、これからこんな晩には外出そとでをしてはなりませんよ」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お島は苦しい療治にかかった最初の日から、そう言われて毎日和服で外出そとでをしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
外出そとでするにも、薄化粧ばかりしていたが、編物の稽古を初めてからは、「みんなが大層作ッて来るから、私一人なにしない……」ととがめる者も無いに、我から分疏いいわけをいいいい、こッてりと
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
源七が家へはらぬが能い、返礼が気の毒なとて、心切しんせつかは知らねど十軒長屋の一軒はけ物、男は外出そとでがちなればいささか心に懸るまじけれど女心には遣る瀬のなきほど切なく悲しく
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その妻は見るもいとはしき夫のそばに在る苦を片時も軽くせんとて、彼のしげ外出そとで見赦みゆるして、十度とたび一度ひとたびも色をさざるを風引かぜひかぬやうに召しませ猪牙ちよきとやらの難有ありがたき賢女の志ともいただき喜びて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
背材せたけはそうたかくはございませぬが、総体そうたい地色ぢいろしろで、それに所々ところどころくろ斑点まだらまじったうつくしい毛並けなみ今更いまさら自慢じまんするではございませぬが、まった素晴すばらしいもので、わたくしがそれにって外出そとでをしたときには
町「お父さまは少しお見え遊ばすときお外出そとでをなすっていけませんから、いっそお見え遊ばさない方が宜しゅうございます」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こころみに初めてあわせを着たその日の朝といわず、昼といわず、また夕暮といわず、外出そとでの折の道すがら、九段くだんの坂上、神田かんだ明神みょうじん湯島ゆしま天神てんじん、または芝の愛宕山あたごやまなぞ
さては誰も物申ものもうに応うるものが無かったのであろう。女中おんな外出そとでで? お蔦は隠れた。……
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、この騒ぎも、ほどなくしずまろうが、しかし、当分は世間も物騒、尼前あまぜめしい外出そとでなど、思いもよるまい。お二人には、しばらく、この小松谷におられるがようござる」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
げん七がいゑへはらぬがい、返禮へんれいどくなとて、心切しんせつかはらねど十けん長屋ながやの一けんものおとこ外出そとでがちなればいさゝかこゝろかゝるまじけれど女心をんなごゝろにはのなきほどせつなくかなしく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それが習慣になつて、氏は外出そとでの時はいつも欠かさずそれをついてゐる。初めのうちは、たまには雨がふればいいと思つた事もあるさうだが、やがてそんな事を思ふのすら忘れたといつてゐる。
僧一 ではなぜうそを言って外出そとであそばすのですか。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
あなた様はちっとも外出そとでをなさいませんな、此の二月でしたっけナ、山本さんと御一緒に梅見にお出掛けに成って、何か洒落しゃれをおっしゃいましたっけナ
三度と数えるほどしか外出そとでする事のない母親お豊の老眼をば信じられぬほどに驚かしたのである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
宗吉と同じ長屋に貸蒲団の一ツ夜着よぎで、芋虫ごろごろしていた処——事業の運動に外出そとでがちの熊沢旦那が、お千さんの見張兼番人かたがた妾宅の方へ引取って置くのであるから
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして近ごろはめったに外出そとでもせぬせいか、皮膚は手の甲まで女性にょしょうのように白かった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)