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其方
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そち
ふりがな文庫
“
其方
(
そち
)” の例文
然
(
しか
)
る処母が私の眉間の疵を見まして、日頃
其方
(
そち
)
の身体は母の身体同様に思えと、二の腕に母という字を
入墨
(
いれずみ
)
して、あれ程戒めたのに
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
其方
(
そち
)
もある夏の夕まぐれ、
黄金色
(
こがねいろ
)
に輝く空気の
中
(
うち
)
に、
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の一
片
(
ひら
)
が
閃
(
ひらめ
)
き落ちるのを見た時に、わしの戦ぎを感じた事があるであろう。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
「ただし一つ合点のゆかぬは、山屋を滅ぼした赤格子一家は
其方
(
そち
)
の仇じゃ。しかるを何故その赤格子の一味徒党とはなったるぞ?」
赤格子九郎右衛門の娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
世にも人にも知られたる
然
(
しか
)
るべき人の娘を
嫁子
(
よめご
)
にもなし、
其方
(
そち
)
が出世をも心安うせんと、日頃より心を用ゆる父を其方は何と見つるぞ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
老いたる侍 只今
其方
(
そち
)
の母御はな……え、思ふだに涙が
雫
(
こぼ
)
れるわ……其方の不孝をう、怨み、怨み死にに死んでおぢやつたのぢや。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
▼ もっと見る
「ウム、
其方
(
そち
)
の方が余程物が解わちよる、——アヽ、
僅
(
わづ
)
かの間でも旅と思へば、浜子、誰
憚
(
はば
)
からず、気が晴々としをるわイハヽヽヽヽ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「さればじゃ、あまりに
其方
(
そち
)
の手裏剣が見事ゆえに、
強
(
た
)
ってここまで足労をわずらわした次第だが、頼みというのはほかでもない——」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
『
玄竹
(
げんちく
)
、
其方
(
そち
)
に
逢
(
あ
)
つたのは、いつが
初對面
(
しよたいめん
)
だツたかなう。』と、
但馬守
(
たじまのかみ
)
は
空
(
から
)
の
盃
(
さかづき
)
を
玄竹
(
げんちく
)
の
前
(
まへ
)
に
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
して、
銚子
(
てうし
)
の
口
(
くち
)
を
受
(
う
)
けながら
言
(
い
)
つた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
すべてをお上に
懺悔
(
ざんげ
)
してご寛大を願おうものと存じていたに、最前からの様子は何じゃ、それでも
其方
(
そち
)
は人らしい皮をかぶっていると思うか
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
モンタギュー、
其方
(
そち
)
は、
此
(
この
)
午後
(
ひるご
)
に、
尚
(
な
)
ほ
申
(
まう
)
し
聞
(
き
)
かすこともあれば、
裁判所
(
さいばんしょ
)
フリータウンへ
參向
(
さんかう
)
せい。
更
(
あらた
)
めて
申
(
まう
)
すぞ、
命
(
いのち
)
が
惜
(
を
)
しくば、
皆
(
みな
)
立退
(
たちさ
)
れ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
夫人は
訝
(
いぶか
)
り、「これこれ、
其方
(
そち
)
は血迷うていやるようじゃ、落着いて申すが可い、死んだといやる、何がどうしたのじゃ。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あゝ、ほんとうに、他人の
其方
(
そち
)
が聞いてさえ好い心持はしないのですもの、その時のわたしの
口惜
(
くちお
)
しさはどれほどでしたか。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
盗んだ金を身に着けるなら、成瀬九十郎こんな貧乏はせぬ、盗賊を芸事と思う思わぬは
其方
(
そち
)
の勝手だが、構えて師弟の道を踏み違えまいぞ、
穴賢
(
あなかしこ
)
。
銭形平次捕物控:096 忍術指南
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ほんに
其方
(
そち
)
も初めての遠い船出じゃ程に、よう気をつけてたもれのう。わしゃこうして此頃は
金刀比羅
(
ことひら
)
さまを神棚へかざり毎日信心しています」
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
させても役に立ける此感應院は兼てよりお
三婆
(
さんばゝ
)
とは
懇意
(
こんい
)
にしけるが或時寶澤を
呼
(
よび
)
て申けるは
其方
(
そち
)
の
行衣
(
ぎやうえ
)
其外とも
垢
(
あか
)
付
(
つき
)
し物を
持
(
もち
)
お三婆の方へ參り
洗濯
(
せんたく
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
此方
(
こち
)
向けば子鴉あはれ、
其方
(
そち
)
向けば犬の子あはれ。
二方
(
ふたかた
)
の鳥よ
獣
(
けもの
)
よ。ひとしけくかはゆきものを、同じけくかなしきものを、いづれ
別
(
わ
)
きいづれ隔てむ。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
両親あれば
彼
(
あ
)
の
様
(
やう
)
にも成らじ物と、云ひたきは人の口ぞかし、思ふも涙は
其方
(
そち
)
が母、
臨終
(
いまは
)
の枕に我れを拝がみて。
雪の日
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「うい奴ぢやのう、それ毬は返してくれるぞ。
其方
(
そち
)
が居るうちは、シレージヤも先づ安心だといふものぢや。」
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「
其方
(
そち
)
に少し頼みがある。了海どのに御意得たいため、遥々と尋ねて参った者じゃと、伝えてくれ」
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
何も千歳村の活気ある耕地を
潰
(
つぶ
)
さず共、電車で五分間乃至十分も西に走れば、適当の山林地などが沢山あって、
其
(
その
)
辺
(
へん
)
の者は墓地を歓迎して居る。
其方
(
そち
)
へ
行
(
い
)
けばよいじゃないか。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
見透
(
みす
)
かしても旦那の前は
庇護
(
かぼ
)
うてくるるであろう、おお朝飯がまだらしい、三や何でもよいほどに
御膳
(
ごぜん
)
を
其方
(
そち
)
へこしらえよ、湯豆腐に
蛤鍋
(
はまなべ
)
とは行かぬが新漬に煮豆でも構わぬわのう
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「死んだと思ったら、それでは
其方
(
そち
)
が育てていたのか」
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「なぜ
其方
(
そち
)
は逃げ出したのだ。それほど痛むか。」
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
やい
盗人
(
ぬすびと
)
峯松、
其方
(
そち
)
は何うも
大
(
ふてえ
)
え奴だなア、七年以前に此の伊香保へ湯治に来た時、渋川の達磨茶屋で、
私
(
わっち
)
ア江戸ッ子でござえます
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「千金の子は盗賊に死せず。こういう格言があるではないか。茶碗一つを惜んだ為、
俺
(
わし
)
や
其方
(
そち
)
に怪我があってはそれこそ天下の物笑いだ」
郷介法師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
『
天下
(
てんか
)
の
役人
(
やくにん
)
が、
皆
(
みな
)
其方
(
そち
)
のやうに
潔白
(
けつぱく
)
だと、
何
(
なに
)
も
言
(
い
)
ふことがないのだが。‥‥』と、
但馬守
(
たじまのかみ
)
は、
感慨
(
かんがい
)
に
堪
(
た
)
へぬといふ
樣子
(
やうす
)
をした。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
「これ、その
方
(
ほう
)
は根ッからの長屋住まいではないナ。ただいまの
其方
(
そち
)
の言動、曰くある者と見た。何者の変身か、その方こそ名を名乗れ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
阿房
(
たわけ
)
ものめが。
好
(
よ
)
いわ。今この世の
暇
(
いとま
)
を取らせる事じゃから、たった一
度
(
ど
)
本当の生活というものを
貴
(
とうと
)
ばねばならぬ事を、
其方
(
そち
)
に教えて遣わそう。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
よしなき者に心を懸けて、家の譽をも顧みぬほど、無分別の
其方
(
そち
)
にてはなかりしに、扨は
豫
(
かね
)
てより人の噂に違はず、横笛とやらの色に迷ひしよな
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
尾張新川は、わしの
故郷
(
ふるさと
)
中村の隣村。それだに懐かしいものを、わけてわしと
其方
(
そち
)
とは、七つ八つの腕白時代からよく遊んだ幼友達ではないか。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
領主
其
(
その
)
書面
(
しょめん
)
見
(
み
)
ようわ。これへ。……して、
夜番
(
よばん
)
を
呼起
(
よびおこ
)
した
伯
(
はく
)
の
侍童
(
こわらは
)
とやらは
何處
(
どこ
)
に
居
(
を
)
る?……こりや、
其方
(
そち
)
の
主人
(
しゅじん
)
は
此處
(
このところ
)
へは
何
(
なに
)
しにわせたぞ?
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
煩悩六根の為めに妨げられたる
其方
(
そち
)
の心では、わが
言
(
こと
)
はえ分るまいが、古き法類ぢや、
少時
(
しばし
)
わがいふことを聞かれよ。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
平次、
悉
(
ことごと
)
く
其方
(
そち
)
の言う通りだ。主君をここへお誘いしたのは、拙者一代の過ち、——これは吉住氏の落度ではない。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
此方
(
こち
)
向けば子鴉あはれ、
其方
(
そち
)
向けば犬の子あはれ。
二方
(
ふたかた
)
の鳥よ
獣
(
けもの
)
よ。ひとしけくかはゆきものを、同じけくかなしきものを、いづれ
別
(
わ
)
きいづれ隔てむ。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
止
(
とゞ
)
まりて
嗚呼
(
あゝ
)
誤
(
あやま
)
てり/\更に心を
入替
(
いれかへ
)
て義理有親の御安心
遊
(
あそ
)
ばす樣に是からは
屹度
(
きつと
)
辛抱
(
しんばう
)
する程に
其方
(
そち
)
も
安心
(
あんしん
)
して呉と
天窓
(
あたま
)
を下げて
詫
(
わび
)
るにぞ久八は其手を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
夫人は
御褥
(
おしとね
)
を
辷
(
すべ
)
らしたまいつつ、「金次に早速
暇
(
いとま
)
を出しゃ、
其方
(
そち
)
もきっと謹むが
可
(
よ
)
かろう。」との御立腹。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
侯爵は打ち驚き「オ、廃業しをつた——新聞に在つたと、浜子、
其方
(
そち
)
は
能
(
よ
)
う新聞を見ちよるな、感心ぢや——松島、其の根引き
主
(
ぬし
)
は貴公ぢや無いか、白状せい」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「与四郎! さすがに
其方
(
そち
)
は武士じゃのう」と、いいながら、忠直卿は取っていた与四郎の手を放した。与四郎は、匕首を持ったまま、
面
(
おもて
)
も揚げず、そこに平伏した。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「ほんに此れは人の
口端
(
くちは
)
ばかりではなさそうな……したがわしの思うには、いまの
其方
(
そち
)
に何を言うても解るまいが、身分違いの色恋は、大てい
幸福
(
しあわせ
)
に終らぬものじゃ」
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「お
邸
(
やしき
)
に出入の床屋が風邪を引いたについて、
其方
(
そち
)
に仰せつけられるから、明日
午
(
ひる
)
過ぎお
邸
(
やしき
)
に
上
(
あが
)
るがいゝぞ」と
使者
(
つかひ
)
は自分が元老の筆頭ででもあるやうに横柄な口を利いた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そちは武勇抜群の者と聞いていましたが、まだ若いのにそんな
優
(
やさ
)
しい思いやりがあろうとは、———よくまあそこに気が付いてくれました。そしたら
其方
(
そち
)
は、わたしの胸の中を
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
因果
(
いんぐわ
)
を
含
(
ふく
)
めし
情
(
なさけ
)
の
詞
(
ことば
)
さても
六三
(
ろくさ
)
露顯
(
ろけん
)
の
曉
(
あかつき
)
は、
頸
(
くび
)
さし
延
(
の
)
べて
合掌
(
がつしやう
)
の
覺悟
(
かくご
)
なりしを、
物
(
もの
)
やはらかに
若
(
し
)
かも
御主君
(
ごしゆくん
)
が、
手
(
て
)
を
下
(
さ
)
げるぞ
六三
(
ろくさ
)
邸
(
やしき
)
を
立退
(
たちの
)
いて
呉
(
く
)
れ、
我
(
わ
)
れも
飽
(
あく
)
まで
可愛
(
かあゆ
)
き
其方
(
そち
)
に
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
十兵衛は
不束
(
ふつつか
)
に一礼して重げに口を開き、明日の朝
参上
(
あが
)
ろうとおもうておりました、といえばじろりとその顔下眼に
睨
(
にら
)
み、わざと
泰然
(
おちつき
)
たる源太、おお、そういう
其方
(
そち
)
のつもりであったか
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
唇の厚い久さんは、やおら
其方
(
そち
)
を向いて「炬火かね、炬火は
幾箇
(
いくつ
)
拵えるだね?」
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「これが
其方
(
そち
)
の名とは」
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「なるほど、
其方
(
そち
)
はまだ
年端
(
としは
)
もゆかぬ。御後室と丹波と、予とのあいだに、いかなる
縺
(
もつ
)
れが深まりつつあるか、よくは知らぬのであろう」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
十八年前海賊が突然お前の実家を襲い一家惨殺した上に家財をあげて奪ったという、その海賊の頭領の名を、
其方
(
そち
)
はどうやら知らぬらしいの
赤格子九郎右衛門の娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
右「おゝ
其方
(
そち
)
か、それは
何方
(
どちら
)
でも
宜
(
よ
)
い、文治という奴は余程義侠の心に富んだ奴と見えるな、定めし剣術の心得もあろうな」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
皆
(
みん
)
な慈愛を持っているのに、
其方
(
そち
)
一人がうつろな心で
戯
(
たわ
)
けながらに世を渡ったのじゃという事をしかと胸に覚えるが
好
(
よ
)
い。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
幼少からわしの側に侍していた
其方
(
そち
)
のことゆえ、わしの前では、甘えていうものとしてゆるすが、人なかではいうな。めったに、そのような
雑言
(
ぞうごん
)
は
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其
漢検準1級
部首:⼋
8画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“其方”で始まる語句
其方除
其方此方
其方儀
其方退
其方達
其方共
其方法
其方共儀
其方們
其方側