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一隅
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いちぐう
ふりがな文庫
“
一隅
(
いちぐう
)” の例文
その人が玄関からはいったら、そのあとに行って見ると
履
(
は
)
き
物
(
もの
)
は一つ残らずそろえてあって、
傘
(
かさ
)
は傘で
一隅
(
いちぐう
)
にちゃんと集めてあった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その中でのきわめて
辺鄙
(
へんぴ
)
な
片田舎
(
かたいなか
)
の
一隅
(
いちぐう
)
に押しやられて、ほとんど顧みる人もないような種類のものであるが、それだけにまた
自然界の縞模様
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その
邸内
(
ていない
)
の
一隅
(
いちぐう
)
に、実験室外には音響の洩れないという防音室を建て、多くの
備付器械
(
そなえつけきかい
)
のうちに、
予
(
あらかじ
)
め、子宮の寸法から振動数をきめて
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
でっぷりと肥えし小主計は
一隅
(
いちぐう
)
より
莞爾
(
かんじ
)
と笑いぬ。「どうせ幕が明くとすぐ済んでしまう
演劇
(
しばい
)
じゃないか。
幕合
(
まくあい
)
の長いのもまた一興だよ」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
其の
一隅
(
いちぐう
)
に油だらけの上下続きの作業衣を着た一人の露助が分解したエンヂンの附属物をこつ/\磨きながら手入をしてゐた。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
▼ もっと見る
すっかりいい気持ちに酔ってるグランテールは、
一隅
(
いちぐう
)
に陣取ってしゃべり立てていた。彼は
屁理屈
(
へりくつ
)
をこね回して叫んでいた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
途方もなく大きな銅製の炉が、湯沸かし用の円筒形の
鑵
(
かま
)
や、そのほか銅管だの
活栓
(
カラン
)
だのの一切の装置を
具
(
そな
)
えて、窓と反対側の
一隅
(
いちぐう
)
を占めていた。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
その
竈
(
かまど
)
、その
一隅
(
いちぐう
)
の土地、それらには一家のあらゆる喜びや悲しみがぴったり結び合わされていて、同じく家族の者であり、生活の一部であり
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼等、二郎青年と、巡査と、書生とは死骸から遠く離れた室の
一隅
(
いちぐう
)
に立ちすくんだまま、真青に
引痙
(
ひきつ
)
ったお
互
(
たがい
)
の顔を、まじまじと眺め合っていた。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
赤土
(
あかつち
)
の乾きが眼にも止まらぬ無数の小さな球となって
放心
(
ほうしん
)
したような広い
地盤
(
じばん
)
上の層をなしている。
一隅
(
いちぐう
)
に夏草の葉が光って
逞
(
たく
)
ましく生えている。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ただし窓のカーテンも壁の
画
(
え
)
もなく、残っている
僅
(
わず
)
かの家具も
一隅
(
いちぐう
)
に積みかさねられて、さしずめ売物とでもいった形。がらんとした感じがする。
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
会所の新築ができ上がったことをも寿平次に告げて、本陣の焼け跡の
一隅
(
いちぐう
)
に、以前と同じ街道に添うた位置に建てられた
瓦葺
(
かわらぶき
)
の家をさして見せた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
又それと反対に、どんなに入りが少い時でも、貴女のお姿が平土間の
一隅
(
いちぐう
)
に見えますと、私は生れ代ったような力と精神とで、私の芸を演じました。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
漸
(
ようや
)
く学校は卒業したが、
理研
(
りけん
)
の方の建物が出来上っていなかったので、
暫
(
しばら
)
く物理教室の狭い実験室の
一隅
(
いちぐう
)
を借りて、仕事を続けていた時のことである。
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
今、私はこの年輩となって、なお
阿呆
(
あほ
)
らしくも、この囃子連中は芝居のチョボの如く、私の頭の
一隅
(
いちぐう
)
に控えている。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
今では同じ
構内
(
かまえうち
)
にはなって居るが、古井戸のある
一隅
(
いちぐう
)
は、住宅の築かれた地所からは一段
坂地
(
さかち
)
で低くなり、
家人
(
かじん
)
からは全く忘れられた崖下の空地である。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二階長屋の
一隅
(
いちぐう
)
で、狭い古い、きたない、
羅宇
(
らお
)
や
煙管
(
きせる
)
の住いそうなところであった。かのお袋が自慢の年中絹物を着ているものの住所とは思えなかった。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
龍造寺主計は、これを聞くと、部屋の
一隅
(
いちぐう
)
へさがって、壁によりかかって、すわった。不思議そうな顔をして、腕を組んで、ふたりを見くらべはじめた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
薄暗い広い土間には、こわれた自転車やら、炭俵のようなものがころがっていて、その
一隅
(
いちぐう
)
に、粗末なテーブルがひとつ、
椅子
(
いす
)
が二、三脚置かれている。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ことにこの一、二年はこの詩集すら、わずかに二、三十巻しかないわが蔵書中にあってもはなはだしく冷遇せられ、架上最も
塵
(
ちり
)
深き
一隅
(
いちぐう
)
に
放擲
(
ほうてき
)
せられていた。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
坐舗の
一隅
(
いちぐう
)
を顧みると古びた机が一脚
据
(
す
)
え付けてあッて、筆、ペン、
楊枝
(
ようじ
)
などを
掴挿
(
つかみざ
)
しにした筆立一個に、
歯磨
(
はみがき
)
の
函
(
はこ
)
と肩を
比
(
なら
)
べた
赤間
(
あかま
)
の
硯
(
すずり
)
が一面載せてある。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
かえってさっぱりとした気もしないではありませんが、しかしそのままでおとなしく家の
一隅
(
いちぐう
)
に暮らして行けるはずの善良さを私は妻に認めていたのですよ。
源氏物語:31 真木柱
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
一隅
(
いちぐう
)
には一匹の黒白の
斑
(
まだら
)
の牛が新しい
藁
(
わら
)
をタップリと敷いて静かに口を動かしながら
心地
(
ここち
)
よげに
臥
(
ふ
)
していた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
すると良寛さんは、さつきから自分の心の
一隅
(
いちぐう
)
で、何かほかのことを、苦にしていゐるのに
気附
(
きづ
)
いた。何だか知らないが、或事が気にかかつてゐるのである。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
「いささ群竹」はいささかな竹林で、庭の
一隅
(
いちぐう
)
にこもって竹林があった趣である。一首は、私の家の小竹林に、夕がたの風が吹いて、
幽
(
かす
)
かな音をたてている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ずっと
一隅
(
いちぐう
)
によって、
白髪
(
しらが
)
の、羽織
袴
(
はかま
)
の
角
(
かく
)
ばった感じの老人と、その
他
(
ほか
)
にも一、二の洋服の
男
(
ひと
)
がいたので、その人たちへの遠慮で、
後
(
あと
)
のことなどの相談をした。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それと同時に房内の
一隅
(
いちぐう
)
の
排泄物
(
はいせつぶつ
)
が
醗酵
(
はっこう
)
しきって、
饐
(
す
)
えたような汗の
臭
(
にお
)
いにまじり合ってムッとした悪臭を放つ時など、太田は時折封筒を張る作業の手をとどめ
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
当時
決死
(
けっし
)
の士を
糾合
(
きゅうごう
)
して北海の
一隅
(
いちぐう
)
に苦戦を戦い、北風
競
(
きそ
)
わずしてついに
降参
(
こうさん
)
したるは
是非
(
ぜひ
)
なき
次第
(
しだい
)
なれども、
脱走
(
だっそう
)
の諸士は最初より氏を
首領
(
しゅりょう
)
としてこれを
恃
(
たの
)
み
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
桑を摘んでか茶を摘んでか、
笊
(
ざる
)
を
抱
(
かか
)
えた男女三、四人、
一隅
(
いちぐう
)
の森から現われて済福寺の前へ降りてくる。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
広間の
一隅
(
いちぐう
)
には人見張役の小島良二郎と、役所詰の同心が二人、そのあいだに岡安喜兵衛の顔も見えた。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかし太った紳士がその
隣
(
となり
)
から慌てて立ち上ろうが、汽車が動き出そうが、太った紳士が再びその
傍
(
かたわら
)
へ大きなお
尻
(
しり
)
をどっかと下して座席が
凹
(
へこ
)
もうが、二等室の
一隅
(
いちぐう
)
蝗の大旅行
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
いっさいの建設は個々人が
脚下
(
きゃっか
)
を
照顧
(
しょうこ
)
しつつ、
一隅
(
いちぐう
)
を照らす努力を
払
(
はら
)
うことによってのみ可能であることを力説し、最後にそれを青年団と政治の問題に結びつけた。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
あのとき、
観覧席
(
かんらんせき
)
の
一隅
(
いちぐう
)
に、日本女子選手の
娘達
(
むすめたち
)
が、純白のスカアトに、
紫紺
(
しこん
)
のブレザァコオトを着て、日の丸をうち振り、声援していてくれた、と後でききました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
今朝庭を歩いて居ると、眼が
一隅
(
いちぐう
)
に走る瞬間、はッとして彼は立とまった。
枯萩
(
かれはぎ
)
の枝にものが光る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それより
洞中
(
どうちゆう
)
の
造船所
(
ぞうせんじよ
)
内
(
ない
)
を
殘
(
のこ
)
る
隈
(
くま
)
なく
見物
(
けんぶつ
)
したが、ふと
見
(
み
)
ると、
洞窟
(
どうくつ
)
の
一隅
(
いちぐう
)
に、
岩
(
いわ
)
が
自然
(
しぜん
)
に
刳
(
えぐ
)
られて、
大
(
だい
)
なる
穴倉
(
あなぐら
)
となしたる
處
(
ところ
)
、
其處
(
そこ
)
に、
嚴重
(
げんぢう
)
なる
鐵
(
てつ
)
の
扉
(
とびら
)
が
設
(
まう
)
けられて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
錫蘭
(
セイロン
)
ルビイ、
錫蘭
(
セイロン
)
ダイヤ、エメラルド、見切りて安く
商
(
あきな
)
はんと云ひつつ客を追ひ歩き
候
(
さふら
)
ふ
商人
(
あきびと
)
は、
客室
(
サロン
)
の中にまで満ち申し、
行
(
ゆ
)
く
処
(
ところ
)
もあらぬ
儘
(
まゝ
)
に
一隅
(
いちぐう
)
に
小
(
ちさ
)
く腰掛け
居
(
を
)
れるに
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
宮司
(
みやつかさ
)
の女の房に入りびたしにいる持彦には、はじめは他の女たちも避けて見ぬふうをよそおうていたが、きょうも控えの
一隅
(
いちぐう
)
に、用もなく花桐の下がりを待つ持彦の姿を見ては
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
全
(
まっと
)
うしないほど大なる罪はない。その兵の無駄は
幾何
(
いくばく
)
か。幾万の霊に何と謝すべきか。——ましてこの蛮界に王風を布くに、
一隅
(
いちぐう
)
の闇をも余して引揚げてはすべてを無意味にする
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
下に揃えてあった
草履
(
ぞうり
)
を
穿
(
は
)
き、すたすたと庭へ下りて行って、庭の
一隅
(
いちぐう
)
に四寸角、高さ一丈ほどの
卒塔婆
(
そとば
)
が立って、その下に小石が
堆
(
うずたか
)
く積んであるところへ来ると、腰を
屈
(
かが
)
めて合掌し
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
叔母の見て来た世の中を正直に
纏
(
まと
)
めるとこうなるよりほかに仕方なかった。この大きな事実の
一隅
(
いちぐう
)
にお金さんの結婚を安全におこうとする彼女の態度は、弁護的というよりもむしろ説明的であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
種類
稀
(
まれ
)
なる鳥が、色彩
華
(
はな
)
やかに、その
一隅
(
いちぐう
)
を
掠
(
かす
)
めているのである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
舞台わきのうずら席の
一隅
(
いちぐう
)
に、どっかと陣取りました。
右門捕物帖:14 曲芸三人娘
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
三等室の
一隅
(
いちぐう
)
に陣取りながら
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
一隅
(
いちぐう
)
にて
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
これについて思い出すのは十余年前の夏
大島
(
おおしま
)
三原火山
(
みはらかざん
)
を調べるために、あの火口原の
一隅
(
いちぐう
)
に数日間のテント生活をした事がある。
化け物の進化
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
怪しい機械人間は、そういいながら、がっちゃん、がっちゃんと金属の太い足をひきずって、室の
一隅
(
いちぐう
)
にあった階段を、上へと登っていった。
超人間X号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
酩酊
(
めいてい
)
を通り越してるグランテールは、ミューザン
珈琲
(
コーヒー
)
店の奥室の
一隅
(
いちぐう
)
で、通りかかった皿洗いの女を捕えて、そんなふうにしゃべり散らした。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
今日北海道の
一隅
(
いちぐう
)
で、非常に恵まれた条件の
下
(
もと
)
に、好き勝手な研究を楽しんでいる自分の生活をふり返って見ると、その出発点は、全く寺田先生にある。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
自分が根をおろしてる
一隅
(
いちぐう
)
の土地を、愛することです! あたかも狭い所にある樹木が太陽のほうへ伸び上がってゆくように、遠い地平に得られないものを
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ちょうど草の香でいっぱいな故園を
訪
(
おとな
)
う心は、半蔵が教部省内の
一隅
(
いちぐう
)
に身を置いた時の心であった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“一隅”の意味
《名詞》
片側の隅。片隅。
ある見解や考え方
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
隅
常用漢字
中学
部首:⾩
12画
“一”で始まる語句
一
一人
一寸
一言
一時
一昨日
一日
一度
一所
一瞥