鐵瓶てつびん)” の例文
新字:鉄瓶
かれ色々いろ/\事情じじやう綜合そうがふしてかんがへたうへ、まあ大丈夫だいぢやうぶだらうとはらなかめた。さうしてつめさきかる鐵瓶てつびんふちたゝいた。其時そのとき座敷ざしき
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「寢て居る顏の上へ、二階から大火鉢を投られたんです。その火鉢には煮えくり返つてゐる鐵瓶てつびんを掛けてあつたとしたらどんなものです」
卯平うへいせまいながらにどうにか土間どまこしらへて其處そこへは自在鍵じざいかぎひとつるしてつるのある鐵瓶てつびんかけたり小鍋こなべけたりすることが出來できやうにした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
がどツさり。すみやすい。有難ありがたい。平泉ひらいづみ晝食ちうじきでも、昨夜ゆうべ松島まつしまのホテルでもうだつた。が、がどツさり。すみやすい。有難ありがたい。鐵瓶てつびんはたぎる。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
火鉢ひばちあかいのも、鐵瓶てつびんやさしいひゞきに湯氣ゆげてゝゐるのも、ふともたげてみた夜着よぎうらはなはだしく色褪いろあせてゐるのも、すべてがみなわたしむかつてきてゐる——このとし
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
搖起ゆりおこし是十兵衞最早もはや今のは寅刻なゝつかねことに此鐘は何時も少しおそき故夜の明るに間も有まい眼をさまして支度せよ鐵瓶てつびんの湯もぬるんで有と聞て十兵衞は起上りかほあらはず支度を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さむいでせう、御氣おきどくさまね。生憎あいにく御天氣おてんき時雨しぐれたもんだから」と御米およね愛想あいそつて、鐵瓶てつびんぎ、昨日きのふのりいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
愛稱ガラツ八の八五郎が、お先煙草を五匁ほどくんじて、鐵瓶てつびんを一パイからつぽにして、さてこんな事を言ひ出すのです。
念佛寮ねんぶつれう雨戸あまど空洞からりはなたれて、殊更ことさらさむさに圍爐裏ゐろりには麁朶そだほのほてた。つるのあるすゝけた鐵瓶てつびん自在鍵じざいかぎからひくれてほのほしりおさへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さきに秋冷しうれい相催あひもよほし、次第しだい朝夕あさゆふさむさとり、やがてくれちかづくと、横寺町よこでらまち二階にかいあたつて、座敷ざしきあかるい、大火鉢おほひばちあたゝかい、鐵瓶てつびんたぎつたとき見計みはからつて、お弟子でしたちが順々じゆん/\
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ま、待つてくれ。さうはずみが付いちやかなはない——先づ膝つ小僧を隱しなよ。鐵瓶てつびんたぎつてゐるんだぜ、そいつを引つくり返すと穩かぢや濟まない」
醫者いしやかへつたあとで、宗助そうすけきふ空腹くうふくになつた。ちやると、先刻さつきけていた鐵瓶てつびんがちん/\たぎつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そつから、はあ、鐵瓶てつびんなか徳利とつくりおしこめばえゝんだな、さうすりやどうだもかうだもねえんだな」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ちやがなかつたら、うちつてつてな。鐵瓶てつびんをおかけ。」と小造こづくり瀬戸火鉢せとひばち引寄ひきよせて、ぐい、と小机こづくゑむかひなすつた。それでも、せんべい布團ぶとんよりは、居心ゐごころがよかつたらしい。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
火箸ひばしが無くなつたり、鐵瓶てつびんふたが無くなつたり、足袋が片つぽ無くなつたり、貝杓子びしやくが無くなつたり、支配人の煙草入が無くなつたり、私の紙入が無くなつたり」
大火鉢おほひばちがくわん/\とおこつて、鐵瓶てつびんが、いゝ心持こゝろもちにフツ/\と湯氣ゆげててる。銅壺どうこには銚子てうしならんで、なかにはおよぐのがある。老鋪しにせ旦那だんな新店しんみせ若主人わかしゆじん番頭ばんとうどん、小僧こぞうたちも。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此處にはいつぞやお夢の頭の上に落された唐銅からかねの大火鉢が性懲しやうこりもなく据ゑられて、火もなく鐵瓶てつびんもありませんが、冷たい灰が火鉢の半分程も減らされて居るのでした。
女房にようばう鐵瓶てつびんしたかた/″\、つぎ長火鉢ながひばちまへ出張しゆつちやうおよんで
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「爐の隅に、地雷火ぢらいくわが仕掛けてあつたんですよ。程よいところで口火に火が廻ると、五徳も鐵瓶てつびんも、灰も爐もハネ飛ばして、グワラグワラドシンと來た。いやその凄かつたことと言つたら」
大變たいへんだ。」わたし夢中むちうで、鐵瓶てつびん噴火口ふんくわこう打覆ぶちまけた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お靜の手が屆くので、何處から何處までめたやうに綺麗ですが、座布團二枚、長火鉢が一つ、鐵瓶てつびんと茶道具と、そして、そして——、それつきりと言つた、簡素そのものの小市民生活です。