はか)” の例文
××さん、あなたがわたしをほんとうに愛して下さる時、わたしははかってみました。その時、あなたの眼の輝きは、四十燭光でした。
それから僧侶及び普通政府の役人、あるいは政府の仕事をする職工とか商業家等に俸禄ほうろくを与える時分には普通の枡ではかってやるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
静岡の仕入れ元から到着した錫張すずばりの小箱の積んであるのをあれやこれやと探し廻つてようやく見付け出し、それからはかつて売つてれる。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
「じゃあ、おらがますはかって、安くまけて持って来ようね。——そのかわりに、小父さん、またおもしろい話を聞かせておくれね」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あづか迷惑めいわく千萬の事なり生物いきものの事故如何なる異變いへんあらんもはかり難し然る時は又御咎おとがめの程も知ざれば請出せし上何分にも願ひ上て娘を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今や汝は、わがさきに難じし如き人々の何者なるやとすべて汝等の禍ひの本なる彼等の罪のいかなるやとを自らはかり知るをえむ 九七—九九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
砂糖を鉄把秤スティールヤード——というより竹の把秤はかりだが——ではかっては袋に入れ、おつりの勘定をする等の仕事を、すっかりやっていたのは面白かった。
彼はシャヴルで、セメンますにセメントをはかり込んだ。そしてますから舟へセメントを空けると又すぐその樽を空けにかかった。
セメント樽の中の手紙 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
りにくるのと、いってうのとはたいへんなちがいだ。りにくるのは、きっちり一ごうしかはからないが、いってうとずっとたくさんくれる。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
これぞ億万年ののちシャロンの薔薇しょうびを生じレバノンの常盤樹ときわぎを繁茂せしむる神の楽園とならんとはたれはかり知るを得しや。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
今では番頭格の、徴兵検査を二三年まえにすました仙吉という小僧に教わって、客足のない朝のうちに、彼はまず酒のはかり方を熱心に稽古した。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
余はおのれが信じて頼む心を生じたる人に、卒然ものを問われたるときは、咄嗟とっさかん、その答の範囲をよくもはからず、直ちにうべなうことあり。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あまり美しければ拾い上げたれど、これを食器に用いたらばきたなしと人にしかられんかと思い、ケセネギツの中に置きてケセネをはかうつわとなしたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
で、家の者は彼れの心の中をはかりかねて、涼み臺や炬燵の側での茶呑み話の折々、眞面目の問題として持ち出されたことは二度や三度ではなかつた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
汚れた手拭の上へ載せてみたりマントの上へあてがってみたりして色の反映をはかったり、またこんなことを思ったり
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
三十ねんもうすと現世げんせではなかなかなが歳月つきひでございますが、こちらではときはか標準めあてせいか、一こうそれほどにもかんじないのでございまして……。
重みをはかるように、「その前に、今一度出仕して、西丸の大御所様(吉宗)へ、御目通りがしたい。どうじゃ。十五日に、登城とじょうさせてはくれまいか。」
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
親愛なるクリトーンよ、汝の熱心は、もしそれが正しいものならば、その価値は実にはかるべからざるものである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
この池の深さいくばくともはかられぬ心地になりて、月はそのそこの底のいと深くにすむらん物のやうに思はれぬ。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほら よくそとで三本あしをたてて 望遠鏡のやうなものをのぞいては地めんや道なぞをはかつてゐる人があるだらう
しかし料理の分量は幾度いくたびも経験してこの位がちょうどいいというほどを我が心で悟るようにならなければ匙ではかってもますで量ってもなかなかうまく参りません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
また目方めかたにしてもそのとおり此処ここで十もんめあるものを赤道直下ではかったらきっと目方めかたが減る、らに太陽や惑星の力を受けない世界に行って目方めかたはかるとしたら
大きな怪物 (新字新仮名) / 平井金三(著)
音作はの中へ籾を抄入すくひいれて、其を大きな円形の一斗桝へうつす。地主は『とぼ』(丸棒)を取つて桝の上を平にはかつた。俵の中へは音作の弟が詰めた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
この空間を轟きつゝ流れて行く、はかり知られぬ氣流の中に自分の心の苦しみを投げつけながら、風に向つて駈けて行くのは何か知ら或る荒々しい歡びだつた。
奇異なる二重の天秤のさらの上に、見えざる「影」の犯した悪行と、未行はれずして止んだ善行とをはかつてゐるのである。自分には天秤のさらの上り下りが見えた。
「おあいにくさまね、はかりの粉炭じゃあ山とくべたって暖かくはならないよ」げれ松はこう云って欠伸あくびをした、「今夜もお茶ひきか、やれやれなっちゃないや」
雪と泥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
強気のものは我に頼んで、力の折れやすいのをはからずに一気に事をし遂げようとする。ことに義侠心と同情心の強いものがより多く一本気で向う見ずである。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
勘次かんじはおしながどうにか始末しまつをしていた麥藁俵むぎわらだはらけて仕上しあげたばかりの藁俵わらだはらこめはかんだ。こめにはあかつぶもあつたがあらすこまじつててそれがつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「ほんとに何んだいこの女は! あぶなく酷い目に逢いかかったのに、もう洒々しゃあしゃあしてこの通りだ。人の目方まではかりゃあがる。——十七貫はございましょうよ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いゝ年増でしたよ。一番良いのを一升はからせて、小僧に持たせてやりませうと言ふと、イヤ、それには及ばない、私が持つて行かなきや、親切が屆かないつて」
幾何学上に称する点や線などは大きさなきものと説いてあるが、しかし針のさきでさえも一りん何分なんぶんの一というように必ずはかり得る大きさを有するものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
町を通りぬけて上水堀じょうすいぼりに沿って行くあいだにも、二つの葬式に出逢った。いずれもコロリに取りかれた人々であろうと推しはかられて、女たちはいやな心持になった。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はかってもらうのももどかしく、店先に並べてあった一升瓶を抱えて帰ってくるなり、枕元に坐った。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
しこうしてこの増長したる弊風をば根本より咄嗟とっさの間に抜き去らんとしたるは、みずから力をはからざるとはいえ、むしろ水野において多しとするに足るものなくんばあらず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
雪のくだごとに用意したる所の雪をしやくをもつてはかりしに*2、雪のたかさ十八丈ありしといへりとぞ。
私の母は、その残飯をはかり売りしながら、あんまり、ひどそうなので、注意したことがあった。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
しこうしてその智力は権衡けんこうもってはかるべきものに非ざれば、その増減を察すること、はなはだかたし。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
舳櫓ともろを押せる船子ふなこあわてず、さわがず、舞上まいあげ、舞下まいさぐなみの呼吸をはかりて、浮きつ沈みつ、秘術を尽してぎたりしが、また一時ひときり暴増あれまさる風の下に、みあぐるばかりの高浪たかなみ立ちて
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幾度いくたびか挫折して飽までも屈せず、力をはからずに、美に向つて進む生涯である。その話の内に、余り悲しい出来事が出て来ると、青年は欷歔すゝりなきをして跡を話す事が出来なくなる。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
見はり椀だに明かば投げ込んと盛り替の蕎麥を手元へ引つけて呼吸きあひはかり若き女其後そのうしろにありて盛替々々續けたり今一人は汁注しるつぎを右に持ち中腰にて我々の後より油斷を見てつゆ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
はかり知られぬ慰めを鼓吹するものでなければ、鈴慕はもはや鈴慕ではないのでございます。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ハハハと嬉しそうな顔もせで意味のない声ばかりはずませて笑えば、お吉は夫の気をはかりかね、上人様が何とおっしゃったか知らぬがわたしにはさっぱり分らずちっとも面白くない話し
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「汝ら聴くことに心せよ、汝らがはかる量りにて量られ、さらに増し加えらるべし」と注意せられましたが(四の二四)、同じように、奇蹟を見る者は「見ることに心せよ」であります。
連歌の発句の千篇一律なるはこれにても大方ははからるべし。最後に挙げたる三句が同じく「小倉山」と「小暗き」との縁語を趣向とするに至りては、その変化なきに驚かざるを得ず。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そして、思い出したように銚子を持ちあげて見てその重みをはかっていた。
岐阜提灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「右へ廻れ、左へ廻れ、前へ行け、後ろへ行け、桝目ますめ構わずはかれ金銀」
白光 (新字新仮名) / 魯迅(著)
媼はそのさまを見て、童の才に驚きて詞なきならんと推しはかりつ。
とお父さんは委托物の目方をはかるようにしながら歎息した。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あるは海べの博物館にて、その灰の目方をわがはかりてみし
そして糸を切って、さしを出して一緒に丈をはかりなどした。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)