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遺
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のこ
ふりがな文庫
“
遺
(
のこ
)” の例文
これは主の
掟
(
おきて
)
の書、主が私共哀れな罪人にと
遺
(
のこ
)
された聖約また遺言なのです。これによれば私共は永遠のよろこびへと導かれませう。
ジェイン・グレイ遺文
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
今の日本の有様では君の思って居る様な美術的の建築をして後代に
遺
(
のこ
)
すなどと云うことは
迚
(
とて
)
も不可能な話だ、それよりも文学をやれ
落第
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
で、甥の天鬼には、遺産といってもわずかでしょうが、金を与え、遠く離れている私には、中条流の印可目録を
遺
(
のこ
)
してゆかれました。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この学士の記念の絵葉書が、沢山飯山の寺に
遺
(
のこ
)
っていたが、熱帯地方の旅の苦みを書きつけてあったのなぞは
殊
(
こと
)
に、私の心を引いた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
もう一つ、
虚心坦懐
(
きょしんたんかい
)
なリストは、自分の先輩や友人達や、後輩の歌曲、管弦楽曲などを編曲して、幾多の珠玉的な傑作を
遺
(
のこ
)
している。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
▼ もっと見る
その庭は、その寺に
遺
(
のこ
)
された多くの仏画や山水画と共に国宝になつてゐる。他にも雪舟の作つた庭と伝へられるのが一二ヶ所ある。
故郷に帰りゆくこころ
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
亡くなられた主人の
遺
(
のこ
)
された負債の方へ、毎月少しづゝ入れて行かなければならないので、少々のあれではとても追附かなかつた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
万一先生、御他界の間に合わぬ時は、折角の秘伝は消滅して、残念ながら此世には
遺
(
のこ
)
り申さぬ。それが
如何
(
いか
)
にも惜しゅうて成らぬ。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
「よろこびと、幸福か」と彼は云った、「ふん、これを書き
遺
(
のこ
)
して死んだんだな、——どんな女か知らぬが、ばかなことをしたものだ」
葦は見ていた
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
仮に死んでしまふ自分は
瑕瑾
(
かきん
)
を顧みぬとしても、父祖の名を汚し、恥を子孫に
遺
(
のこ
)
してはならない。自分だけは同意が出来ないと云つた。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
しかし昔はそれがあったものと見えて、「紫の一もとゆえに武蔵野の、草はみながら
憐
(
あわ
)
れとぞ見る」という有名な歌が
遺
(
のこ
)
っている。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
此の
大事
(
でえじ
)
な人間の指い切るの、足い切るのと云って人を
不具
(
かたわ
)
にするような
御遺言状
(
おかきもの
)
を
遺
(
のこ
)
したという御先祖さまが、
如何
(
いか
)
にも馬鹿気た訳だ
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
貫一は
着更
(
きか
)
へんとて書斎に還りぬ。宮の
遺
(
のこ
)
したる筆の
蹟
(
あと
)
などあらんかと思ひて、求めけれども見えず。彼の居間をも尋ねけれど在らず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
こういう図柄は
仮令
(
たとえ
)
簡単なものでも、祖先が
遺
(
のこ
)
してくれたものでありますから、大切にされねばなりません。まして美しいのですから。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しかしこの
骨角器
(
こつかくき
)
は、
當時
(
とうじ
)
においてはその
數
(
すう
)
がたくさんあつたことでせうが、
腐
(
くさ
)
り
易
(
やす
)
いために
石器
(
せつき
)
のように
今日
(
こんにち
)
多
(
おほ
)
く
遺
(
のこ
)
つてをりません。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
それかあらぬか、
同地
(
どうち
)
の
神明社内
(
しんめいしゃない
)
には
現
(
げん
)
に
小桜神社
(
こざくらじんじゃ
)
(
通称
(
つうしょう
)
若宮様
(
わかみやさま
)
)という
小社
(
しょうしゃ
)
が
遺
(
のこ
)
って
居
(
お
)
り、
今尚
(
いまな
)
お
里人
(
りじん
)
の
尊崇
(
そんすう
)
の
標的
(
まと
)
になって
居
(
お
)
ります。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
それは
松脂
(
まつやに
)
の蝋で
練
(
ね
)
り固めたもので、これに類似した田行燈というものを百姓家では用いた。これは今でも
一
(
いち
)
の
関
(
せき
)
辺へ行くと
遺
(
のこ
)
っている。
亡び行く江戸趣味
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
他なし、渠はおのが
眼
(
まなこ
)
の観察の一度達したるところには、たとい
藕糸
(
ぐうし
)
の孔中といえども一点の懸念をだに
遺
(
のこ
)
しおかざるを信ずるによれり。
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おまえたちのうち誰でも、この場に死んだとして、今まで描いたものを後世に
遺
(
のこ
)
して恥じないだけの自信があるか、どうだ。
生蕃
(
せいばん
)
どうだ。
ドモ又の死
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
からは
灰
(
はひ
)
にあとも
止
(
とゞ
)
めず
煙
(
けぶ
)
りは
空
(
そら
)
に
棚引
(
たなび
)
き
消
(
き
)
ゆるを、うれしや
我
(
わが
)
執着
(
しふちやく
)
も
遺
(
のこ
)
らざりけるよと
打眺
(
うちなが
)
むれば、
月
(
つき
)
やもりくる
軒
(
のき
)
ばに
風
(
かぜ
)
のおと
清
(
きよ
)
し。
軒もる月
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
やはり弘法大師が池の主を
済度
(
さいど
)
したという、かのせせらぎ長者の
妻
(
つま
)
虎御前
(
とらごぜん
)
の話(同上四巻三三九頁)と相似たる話を
遺
(
のこ
)
している。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
かれ教へしが如して、
旦時
(
あした
)
に見れば、針をつけたる
麻
(
を
)
は、戸の
鉤穴
(
かぎあな
)
より
控
(
ひ
)
き通りて出で、ただ
遺
(
のこ
)
れる
麻
(
を
)
一二
は、
三勾
(
みわ
)
のみなりき。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
夜具などは後でどうでもなると思ったが、少しばかりの軟かい着替えや手廻りの物を、芳太郎の目の前に
遺
(
のこ
)
しておくのは不安心であった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「これは、つまらないものですがお
礼
(
れい
)
のしるしでございます……。」といって、
女
(
おんな
)
は、なにか
袋物
(
ふくろもの
)
にはいっているものを
遺
(
のこ
)
してゆきました。
幸福の鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
もうみんな、既に二本のパラソルさえ持っている人があるのに、菊枝はまだ、死んだ母が
遺
(
のこ
)
して行った古い
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
を持っているだけであった。
駈落
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
それから、N氏は金沢にいる間に、色々の家に
遺
(
のこ
)
っている古い時代からの九谷の精密な
摸写
(
もしゃ
)
をつくって見たいといっていた。
九谷焼
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
残燈もろくも消えて徳川氏の幕政空しく三百年の業を
遺
(
のこ
)
し、天皇親政の曙光漸く
升
(
のぼ
)
りて、大勢
頓
(
には
)
かに一変し、事々物々其相を改めざるはなし。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
是によつて国書生等は
不治悔過
(
ふぢくわいくわ
)
の一巻を作つて庁前に
遺
(
のこ
)
し、興世王等を
謗
(
そし
)
り、国郡に其非違を分明にしたから、武蔵一国は大に不穏を呈した。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
日本人がいろんな物を
遺
(
のこ
)
して
行
(
い
)
つたり、わざわざ日本から送つて
呉
(
く
)
れたりするので日本品の小さな
陳列場
(
コレクシヨン
)
が出来ると云つて夫婦は喜んで居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
父は始終、伯父が私たちに財産を
遺
(
のこ
)
して呉れることによつて失敗の
償
(
つぐな
)
ひをしてくれるだらうといふ望を抱き通してゐました。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
太田
道灌
(
どうかん
)
はじめ東国の城主たちは熱心な風雅擁護者で、従って東海道の風物はかなり連歌師の文章で当時の状況が
遺
(
のこ
)
されていると主人は語った。
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そうして現に日本の方言にも東北地方や沖縄の方でも
出雲
(
いずも
)
地方でもハ行音を「ファフィフェ」など言うのは、昔の音が
田舍
(
いなか
)
に
遺
(
のこ
)
っているのです。
古代国語の音韻に就いて
(新字新仮名)
/
橋本進吉
(著)
なんら遺書と見らるべきものが
遺
(
のこ
)
されなかったため、諸新聞は大川の知己である文壇の諸名家の推測を、列挙して掲載したことは云うまでもない。
黄昏の告白
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
洗面台に犯人の
遺
(
のこ
)
した腕時計が光っていて、それが折から金につまった小娘を誘惑する。ここはなかなかこの娘役者の骨の折れるところであろう。
初冬の日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
余は是等の事實は、モールス氏の説の如く、貝塚を
遺
(
のこ
)
せし人民が時としては人肉を
食
(
くら
)
ひし事有りしを証するものと考ふ。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
大師の
遺
(
のこ
)
された業績やめぐり歩かれた旧跡は、日本全国に多いが、その中で、この高野山こそ第一番の仏道道場である。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
この雄弁なる国会議員こそ、実に我が大岡越前守とひとしく、幾多裁判上の逸話を
遺
(
のこ
)
したる著名の弁護士カラン(Curran)その人であった。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
男女相合して一家族を成すの目的は、単に子孫を
遺
(
のこ
)
すというよりも、一層深遠なる精神的(道徳的)目的をもっている。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
聞くにもつらしいふもうし、まして筆もてしるさむは、いと
傷
(
いた
)
ましき
業
(
わざ
)
なれど、
後
(
のち
)
に忍ばんたよりとも、思ふ心に
水茎
(
みづぐき
)
の、あとに
斯
(
か
)
くこそ
遺
(
のこ
)
すなれ
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
跡に
遺
(
のこ
)
るは母一人に子供五人、兄は十一歳、私は
数
(
かぞ
)
え年で三つ。
斯
(
か
)
くなれば大阪にも居られず、兄弟残らず母に連れられて藩地の中津に帰りました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
これは先生が諸君に責任を
遺
(
のこ
)
した。慶應義塾という有機的団体に遺されたものであると信ずるのであります(拍手)。
明治文明史上に於ける福沢翁
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
それらの西洋風建築は大阪では何んといっても川口町本田あたりの昔の居留地に最も多く、現在もかなり
遺
(
のこ
)
っている。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
恋しい人を此の世に
遺
(
のこ
)
して死んだ人間が、草葉の蔭からその人の将来を絶えず見守ってやるように、自分は生きながら死んだと同じ心持になるのだ。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
“ある女——斯の人は夫を持たず了ひで亡くなつたが、彼女の居ない後では焼捨てゝ呉れろと言ひ置いて、一生のことを書いた日記を
遺
(
のこ
)
して行つた。”
一葉の日記
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
しかし、秀吉がその愛児秀頼に、この難攻不落の名城を
遺
(
のこ
)
したことは、
却
(
かえ
)
って亡滅の因を遺したようなものである。
大阪夏之陣
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
今更
(
いまさら
)
に
思
(
おも
)
つてみれば、
勉
(
つとむ
)
はもう十九である。九つと三つの
子供
(
こども
)
を
遺
(
のこ
)
されてからの十
年間
(
ねんかん
)
は、
今
(
いま
)
自分
(
じぶん
)
で
自分
(
じぶん
)
に
涙
(
なみだ
)
ぐまれるほどな
苦勞
(
くらう
)
の
歴史
(
れきし
)
を
語
(
かた
)
つてゐる。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
昔のままの仕来りがそのうす暗いところに
遺
(
のこ
)
っていたのだ。おくれ毛もなく結いあげたその男のごま塩あたまを、手燭の光りに透かして見下していた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そして現今でもこの遺風は田舎に
遺
(
のこ
)
っていて祭礼の時にのろくもいが馬に乗るところが稀にあるようであります。
ユタの歴史的研究
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
帆村は
兼
(
か
)
ねて園長の
遺
(
のこ
)
していった上衣の
釦
(
ボタン
)
の特徴を手帳に書き留めて置いたことが役立って大変好運だと思った。
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
長順 幼き時ゆこがれたる、ほの珍らかにいと甘き、いとあえかにもなつかしき『不可思議』の
目見
(
まみ
)
は我胸より
全
(
まつた
)
く消えうせ、
遺
(
のこ
)
れるは氷の如き
空
(
くう
)
の影。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
遺
常用漢字
小6
部首:⾡
15画
“遺”を含む語句
遺骸
遺書
遺言
遺憾
遺物
遺児
遺子
遺跡
遺恨
遺漏
遺孤
遺失
遺言状
遺誡
遺詔
遺骨
遺伝
遺髪
遺言書
拾遺愚草
...