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致方
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いたしかた
ふりがな文庫
“
致方
(
いたしかた
)” の例文
このオクシガ岳は初め御飯岳の間違ではないかと思ったのであるが、信州にて黒湯山と呼ぶ由が断ってあるので、何とも
致方
(
いたしかた
)
がない。
上州の古図と山名
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
然
(
しか
)
非難せられても
致方
(
いたしかた
)
はない。しかしこの書を書いた時代においても、私の考の奥底に潜むものは単にそれだけのものでなかったと思う。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
岩田京四郎を除いて
外
(
ほか
)
の誰もが出来そうにないことから当然、二回に
亙
(
わた
)
る電気殺人の犯人として彼が
睨
(
にら
)
まれたのも
致方
(
いたしかた
)
ないことであった。
電気看板の神経
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
現世
(
げんせ
)
の
方
(
かた
)
から
見
(
み
)
れば一
片
(
ぺん
)
の
夢物語
(
ゆめものがたり
)
のように
聴
(
きこ
)
えるでございましょうが、そこが
現世
(
げんせ
)
と
幽界
(
ゆうかい
)
との
相違
(
そうい
)
なのだから
何
(
なん
)
とも
致方
(
いたしかた
)
がございませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
私は今度
躯
(
からだ
)
に
腫物
(
できもの
)
が出来たので、これは
是非共
(
ぜひとも
)
、入院して切開をしなければ、いけないと云うから、
致方
(
いたしかた
)
なく、
京都
(
きょうと
)
の某病院へ
入
(
い
)
りました。
死体室
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
▼ もっと見る
髪も
櫛巻
(
くしまき
)
、
透切
(
すきぎ
)
れのした繻子の帯、この段何とも
致方
(
いたしかた
)
がない。亭主、号が春狐であるから、名だけは
蘭菊
(
らんぎく
)
とでも
奢
(
おご
)
っておけ。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
其方儀
主人
(
しゆじん
)
妻
(
つま
)
何程
(
なにほど
)
申付候共又七も主人の
儀
(
ぎ
)
に
付
(
つき
)
致方
(
いたしかた
)
も
有之
(
これある
)
べき處主人又七に
疵
(
きず
)
を
付
(
つけ
)
剩
(
あまつ
)
さへ
不義
(
ふぎ
)
の申
掛
(
かけ
)
を致さんとせし段
不屆至極
(
ふとゞきしごく
)
に付
死罪
(
しざい
)
申
付
(
つく
)
る
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
何
(
ど
)
のくらい御立腹になるか知れませんが、どうも私には
致方
(
いたしかた
)
はございません、その代り私が死にましてもお刀の処は私が幽霊になって尋ね探し
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
女は己を愛する者のために
容
(
かたちづく
)
るという語も有る如く、女子はただ男子を
慰藉
(
いしゃ
)
するためにのみこの世に存在するものと認められていたから
致方
(
いたしかた
)
ない。
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
それに私は
世人
(
せじん
)
に向って家屋の不完全を攻撃しながらこの家は御覧の通り何事も不完全だらけです。これも借りている家ですから
致方
(
いたしかた
)
がありません。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
運転手に
塵
(
ちり
)
よけのロイド眼鏡はあり勝ちのことだし、定紋の方は明智はまるで知らなかったのだから
致方
(
いたしかた
)
もない。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
どうもコンナに御馳走になったり、勝手なお
惚気
(
のろけ
)
を聞かしたりしちゃ
申訳
(
もうしわけ
)
御座んせんが、ここんところが一番恐ろしい話の本筋なんで
致方
(
いたしかた
)
が御座んせん。
人間腸詰
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
此者儀主人庄三郎妻つね何程申付候うとも、主人のことに候えば
致方
(
いたしかた
)
も
可有之
(
これあるべく
)
の処、又四郎に疵付候段不届至極に付、死罪に申付。但し引廻しに及ばず候。
黄八丈の小袖
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかし後進国の悲しさには、どうしてもその研究態度が、木を見るというよりも、皮か葉の一部を見るような傾向に走りやすかったのは
致方
(
いたしかた
)
ないことであった。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
取り万事
甚
(
はなはだ
)
懶
(
ものう
)
く去年彩牋堂
竣成
(
しゅんせい
)
祝宴の折御話有之候
薗八節
(
そのはちぶし
)
新曲の文章も今以てそのまゝ筆つくること
能
(
あた
)
はず折角の御厚意無に
致
(
いたし
)
候不才の罪
御詫
(
おわび
)
の
致方
(
いたしかた
)
も
無御座
(
ござなく
)
候。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
何んといっても天上陰気が
回
(
め
)
ぐって来たのだから
致方
(
いたしかた
)
がない、結局死骸となって
横
(
よこた
)
わってしまう。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
究竟
(
つまり
)
貴方と私とは性が合はんので御座いませうから、それはもう
致方
(
いたしかた
)
も有りませんが、そんなに
為
(
さ
)
れてまでもやつぱりかうして慕つてゐるとは、
如何
(
いか
)
にも
不敏
(
ふびん
)
な者だと
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
かく申さば、
讒謗
(
ざんぼう
)
罵詈
(
ばり
)
礼を知らぬしれ者と思ふ人もあるべけれど、実際なれば
致方
(
いたしかた
)
無之候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
しかし表現の仕方が
拙
(
まづ
)
いから、寓言にしかなつてゐないと言ふなら、それも
致方
(
いたしかた
)
がない。
或新年の小説評
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
これは気の毒だがまず
致方
(
いたしかた
)
ないとしても、茂助は、事実世評のごとくおとめちゃんを助けに這入って死んだものなら、恋仲だろうが何だろうが消防夫として火事で死んだ以上は
舞馬
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
けれども、無い以上、熱は失ったまゝでも、その束縛に向って捉われ入るより
致方
(
いたしかた
)
がない
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
致方
(
いたしかた
)
がないので、その近くの歯科をたづねると、いづれも休院か廃院の有様であつた。
三年
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
或
(
ある
)
時父兄の前に
言出
(
いいい
)
でて、自分は
一代法華
(
いちだいほっけ
)
をして、諸国を
経廻
(
へめぐ
)
ろうと思うから、
何卒
(
どうか
)
家を出してくれと決心の色を
現
(
あらわ
)
したので、父も兄も
致方
(
いたしかた
)
なく、これを許したから、娘は大変喜んで
千ヶ寺詣
(新字新仮名)
/
北村四海
(著)
(中略)仰せの通り世間のとかくの
噂
(
うわさ
)
の中にはずい分、いやなと思う事もないでも御座いませんけど、これも
致方
(
いたしかた
)
がないなり行きだと、今までもあまり気にかけたことも御座いません。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しに
行
(
ゆ
)
く我心にとって誠に心よくないから、実は
妾
(
わたし
)
にとっては何とも心もとないことだが時節なれば
致方
(
いたしかた
)
ないと諦めて
過日
(
すぐるひ
)
は日頃
愛玩
(
あいがん
)
の琴二面を人手に渡して、ここに金が六十円出来た
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
はじめて
奧樣
(
おくさま
)
や
日出雄樣
(
ひでをさま
)
が、
日本
(
にほん
)
へお
皈
(
かへ
)
りになると
承
(
うけたまは
)
つた
時
(
とき
)
は
本當
(
ほんたう
)
に
魂消
(
たまぎ
)
えましたよ、
然
(
しか
)
しそれは
致方
(
いたしかた
)
もありませんが、
其後
(
そのゝち
)
よく
承
(
うけたまは
)
ると、
御出帆
(
ごしゆつぱん
)
の
時日
(
じじつ
)
は
時
(
とき
)
もあらうに、
今夜
(
こんや
)
の十一
時
(
じ
)
半
(
はん
)
……。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「外に場所はないのかねえ」「何だか
勿体
(
もったい
)
ないような気がする」などと話合いましたが、土地がらだけに、何かある時に勢力があって、指折られるのは妓楼なので、
致方
(
いたしかた
)
なかったのでしょう。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
ところがこの事に当初から関係しておられる諸君は、
頻
(
しき
)
りにこのことを余に責められるので、今更何とも
致方
(
いたしかた
)
がない、それで幸いに山岳会の雑誌に大略のことを載せてもろうて、自分の責を
塞
(
ふさ
)
ぎ
利尻山とその植物
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
借越
(
かりこし
)
のパンを差し上げるのも
致方
(
いたしかた
)
がございません。4875
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
そなたも
若
(
わか
)
いのに
歿
(
なく
)
なって、まことに
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なことであるが、
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
はすべて
老少不定
(
ろうしょうふじょう
)
、
寿命
(
じゅみょう
)
ばかりは
何
(
な
)
んとも
致方
(
いたしかた
)
がない。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
これは、
軍規
(
ぐんき
)
に定めがある
致方
(
いたしかた
)
のない殺人ですが、それを見ていた分隊中の或る者が、本国へ
凱旋後
(
がいせんご
)
柵山二等兵の未亡人にうっかり
喋
(
しゃべ
)
ったのです。
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
丈「こう云う訳になって
致方
(
いたしかた
)
がない、前橋の方も尋ねたいと思って居たが、何分貧乏暇なしで御無沙汰になった、よく来た、どうして出て来たのだ」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
集めて
相談
(
さうだん
)
しける中長兵衞
心付
(
こゝろづ
)
き彼の
藥
(
くすり
)
を猫に
喰
(
くは
)
せて
試
(
ため
)
しけるに何の事もなければ是には何か
樣子
(
やうす
)
有
(
ある
)
べし我又
致方
(
いたしかた
)
有
(
あれ
)
ば
隨分
(
ずゐぶん
)
油斷
(
ゆだん
)
有
(
ある
)
べからずとて又七を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
好しや仮りに女子が男子に代るの能力ありと仮定するも、男子にして、今日女子の当る天職に代り得る素質の無い以上は
致方
(
いたしかた
)
ない。男子には妊娠出来ぬ。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
ロスコーの若旦那がお亡くなりになりましたのは、やっぱりまったくなんで……ヘエ……それなら
致方
(
いたしかた
)
ござりません。何もかも白状致します。ヘエイ……。
S岬西洋婦人絞殺事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「ハハハハ……、君もつまらない苦労をする男だね。僕が人見廣介だって? ナニ人見廣介だって一向構いはしないが、どうも僕は菰田源三郎に相違ないのだから、
致方
(
いたしかた
)
がないね」
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「ああ、
皆
(
みんな
)
居るとも。妙も居るよ。大勢居るから気を丈夫に持て! ただ早瀬が見えん、残念だろう、己も残念だ。病気で入院をしていると云うから、
致方
(
いたしかた
)
が無い。
断念
(
あきら
)
めなよ。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は額縁屋へ
喧
(
や
)
かましくいって造らせたりしますが、どうもいう事を聞かないので
癪
(
しゃく
)
だから
致方
(
いたしかた
)
なく、私は場末の古道具屋をあさって、常に昔しの舶来縁の、古いのを探しまわるのです
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
又私はその
引負
(
ひきおひ
)
の為に、主人から告訴致されまして、
活
(
い
)
きてをりますれば、その筋の手に掛りますので、
如何
(
いか
)
にとも
致方
(
いたしかた
)
が御座いませんゆゑ、
無分別
(
むふんべつ
)
とは知りつつも、つい
突迫
(
つきつ
)
めまして
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
かく申さば
讒謗罵詈
(
ざんぼうばり
)
礼を知らぬしれ者と思う人もあるべけれど、実際なれば
致方
(
いたしかた
)
無之候。もし
生
(
せい
)
の
言
(
げん
)
が誤れりと
思
(
おぼ
)
さばいわゆる歌よみの中よりただの一人にても俳句を解する人を御指名
可被下
(
くださるべく
)
候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
来会者の一人進み
出
(
い
)
で「なるほどおっしゃる通り鳥屋で
買
(
かっ
)
た肉はどうしても味がありません。肉が
硬
(
こわ
)
いばかりでなく肉に味がありません。あれはどういう訳でしょう」中川「それは
致方
(
いたしかた
)
もありません。 ...
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
どうも
致方
(
いたしかた
)
がございますまい。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
まあ
致方
(
いたしかた
)
がございませぬ、せいぜい
気
(
き
)
をつけて、
私
(
わたくし
)
の
実地
(
じっち
)
に
観
(
み
)
たまま、
感
(
かん
)
じたままをそっくり
申上
(
もうしあ
)
げることに
致
(
いた
)
しましょう。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
母親が甘う育てたからお前が左様なる身持になり、親分とか
勇肌
(
いさみはだ
)
の人と
交際
(
つきあい
)
をして喧嘩の中へ入り、
男達
(
おとこだて
)
とか
何
(
なん
)
とか実にどうも
怪
(
け
)
しからん
致方
(
いたしかた
)
、不埓者め
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
其方儀
先代
(
せんだい
)
嘉川平助に
恩
(
おん
)
も有之り候由にて藤五郎藤三郎
建部
(
たてべ
)
郷右衞門
伴
(
ばん
)
佐
(
すけ
)
十郎右四人
匿
(
かくま
)
ひ候
段
(
だん
)
深切
(
しんせつ
)
の
致方
(
いたしかた
)
に候
得共
(
えども
)
身分不
相應
(
さうおう
)
なる儀に
付
(
つき
)
以後法外之なき樣心掛べし
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
劣敗者の
死屍
(
しかばね
)
は土足にかけられ、
唾
(
つばき
)
せられても
致方
(
いたしかた
)
がないように考えられているようであるが、しかし
斯様
(
かよう
)
な人情の反覆の流行している現代は恥ずべき現代ではあるまいか。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
理性力で此処まで漕ぎ付けたが、しかし
勃々
(
ぼつぼつ
)
たる人間の欲情は
致方
(
いたしかた
)
なく、内密でなお外に蓄妾する。なかなか理想通りにはいかぬが、表面だけでも粛清されたのは結構である。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
突然、ゴリラ男の
傍若無人
(
ぼうじゃくぶじん
)
な笑声が爆発した。だが、笑われても
致方
(
いたしかた
)
がない。飾り人形を本物の女の死体と思い込んで、目の色変えて追駈けたんだから、どうにも引込みがつかない。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
○幕府以来の名家
固
(
もと
)
より相当の産あり、而してその朝飯は味噌汁と香の物のほか、また一物を加へず。これを主人に
質
(
ただ
)
せば、主人曰く、我も余りまづい朝飯とは思へど、古来の習慣今更
致方
(
いたしかた
)
もなしと。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
というと、お隅も母も残念がって歎きますけれども
致方
(
いたしかた
)
がない。
翌月
(
よくげつ
)
の十月の声を聞くと、花車は江戸へ参らなければならぬから、花車重吉が
暇乞
(
いとまごい
)
に来て
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
致
常用漢字
中学
部首:⾄
10画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“致方”で始まる語句
致方無
致方之無
致方無御座