トップ
>
殆
>
ほとん
ふりがな文庫
“
殆
(
ほとん
)” の例文
「
屍
(
かばね
)
をさむる人もなし」などいへる「も」は
殆
(
ほとん
)
ど意味なき「も」にて「人なし」「人来ず」といへると大差なければ理窟をば含まず
あきまろに答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
昔の
儘
(
まま
)
に現在までも続いていると云う住家は
殆
(
ほとん
)
んどなく、極めて
稀
(
まれ
)
に昔の美しさのある物を発見するのが
頗
(
すこぶ
)
る難しいことなのである。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
答「それに対して大衆文芸家は、
殆
(
ほとん
)
ど答えようとはしませんでしたね」問「全くあいつは不思議でした。どう解釈すべきでしょう?」
大衆文芸問答
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
真に大なるものは一個人的の領域から脱出して
殆
(
ほとん
)
ど無所属的公共物となる。有りがたさが有りがたくなくなるほど万人のものとなる。
永遠の感覚
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
ところがその結果を見ると、アルファ線の中の
或
(
あ
)
る粒子は
殆
(
ほとん
)
ど後戻りをする程に著しく曲げられることのあるのがわかったのでした。
ロード・ラザフォード
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
▼ もっと見る
昨
(
さく
)
年の
初夏
(
しよか
)
兩親
(
れうしん
)
の家から
別居
(
べつきよ
)
して、赤
坂區
(
さかく
)
新町に家を持ち、
馴染
(
なじみ
)
のその
球突塲
(
たまつきば
)
が
遠
(
とほ
)
くなるとともにまた
殆
(
ほとん
)
どやめたやうな
形
(
かたち
)
になつた。
文壇球突物語
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
郡教育会、愛国婦人会、其他一切の公的性質を帯びた団体加入の勧誘は絶対的に拒絶する。村の小さな耶蘇教会にすらも
殆
(
ほとん
)
ど
往
(
い
)
かぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
芝居なども、かなりまとまった田舎まわりの大阪役者の一座が巡って来た。私は
殆
(
ほとん
)
ど大がいの歌舞伎の芸題を私の町の定小屋で見た。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
大学へ奉職するようになった頃には、家の財産も
殆
(
ほとん
)
ど失くなり、家庭には子供も殖えてきたので、暮らしはなかなか楽ではなかった。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
そして時平が驚くことは、当時世間に評判されている女たちの中で、平中が一往渡りをつけていない者は
殆
(
ほとん
)
ど一人もないのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
あの女に逢うまでは、このような疑惑は、
殆
(
ほとん
)
ど起らなかったのだ。あのバーミンガムの女こそは、
懐疑
(
かいぎ
)
の
陰鬼
(
いんき
)
みたいなものであった。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
殆
(
ほとん
)
ど免毒性を持っているというべき位だ、
蠅取菌
(
はいとりきのこ
)
の毒質はムスカリンといって阿片性だからそれで鶏へは感じが薄いといわれました。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
中宮寺の思惟像はわずかにうつむいているが、「考える人」は
殆
(
ほとん
)
ど倒れるばかりに面を伏せて、頑健な右腕が
顎
(
あご
)
をぐっと支えている。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
何を伯母さん、
仰
(
おつ
)
しやる、
今
(
い
)
ま
若
(
も
)
し貴女に死なれでもして御覧なさい、私は
殆
(
ほとん
)
ど此世の
希望
(
のぞみ
)
を
亡
(
なく
)
して仕舞ふ様なもんですよ、何卒ネ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
その男性達は、美奈子の方には、
殆
(
ほとん
)
ど注意を向けなかった。たゞ美奈子の顔を、
外
(
よそ
)
ながら知っている二三人が軽く
会釈
(
えしゃく
)
した丈だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
つづいて二百二十日の
厄日
(
やくび
)
もまたそれとは
殆
(
ほとん
)
ど気もつかぬばかり、いつに変らぬ残暑の西日に
蜩
(
ひぐらし
)
の声のみあわただしく夜になった。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし抽斎は心を潜めて古代の医書を読むことが
好
(
すき
)
で、
技
(
わざ
)
を
售
(
う
)
ろうという念がないから、知行より
外
(
ほか
)
の収入は
殆
(
ほとん
)
どなかっただろう。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
だが、それらは彼にとって、
殆
(
ほとん
)
ど何のかかわりもないことのようだった。殆ど何のかかわりもない男が黙りこくって椅子に掛けている。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
杖笠を棄てて
彳
(
たたず
)
んだ順礼、
道
(
どう
)
しゃの姿に見せる、それとても行くとも
皈
(
かえ
)
るともなく
煢然
(
けいぜん
)
として独り
佇
(
たたず
)
むばかりで、往来の人は
殆
(
ほとん
)
どない。
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
狂った頭を高々と
反
(
そ
)
らしながら事務室を出て行ったが、右へ折れると今度は
殆
(
ほとん
)
ど
駈足
(
かけあし
)
で、精神病患者の病棟の入口までやって来た。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
だが、犯罪の裏には
殆
(
ほとん
)
ど例外なく恋がある。その犯罪の解決に当る探偵家が、恋知らずの
木念人
(
ぼくねんじん
)
でどうして
勤
(
つと
)
まるものぞ、とも云える。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
更
(
さら
)
に
猛進
(
もうしん
)
したが、
如何
(
どう
)
も
思
(
おも
)
はしくなく、
却
(
かへ
)
つて
玄子
(
げんし
)
の
方
(
はう
)
が
成功
(
せいかう
)
して、
鍋形
(
なべがた
)
の
側面
(
そくめん
)
に
小
(
せう
)
なる
紐通
(
ひもとほ
)
しのある
大土器
(
だいどき
)
が、
殆
(
ほとん
)
ど
完全
(
くわんぜん
)
で
出
(
で
)
た。
探検実記 地中の秘密:04 馬籠と根方
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
けれどもこの木だけは何かの拍子に火事にも焼かれずに立っているのであろう。僕は
殆
(
ほとん
)
どこの木の幹に手を触れてみたい誘惑を感じた。
本所両国
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし、そんな色は
殆
(
ほとん
)
ど現実の中には
見出
(
みいだ
)
されないようだから、無色と云ってもいいかも知れない。しかし
所謂
(
いわゆる
)
無色なのではない。
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そのほか土蔵のなかの
骨董
(
こっとう
)
や
什器
(
じゅうき
)
の
類
(
たぐ
)
ひから宝石類に至るまで、
殆
(
ほとん
)
ど洗ひざらひ姉さまのところへ運び出されたやうな感じでした。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
文治五年(今から七百四十五年前)天下の軍勢を引受けて戦い破れ、兵火の為に、
殆
(
ほとん
)
ど残るところなく焼かれてしまったのでした。
水中の宮殿
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
まるでロダンさんは、妾の肉体に神秘な思想を求める哲学者のように、
殆
(
ほとん
)
ど狂気に近い熱心さで、妾から眼をお放しにならないのです。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
かくの如く嘉靖または万暦の初年と康煕の初年との間、
殆
(
ほとん
)
ど百年
乃至
(
ないし
)
百五十年のうちにも
髣髴
(
ほうふつ
)
として
如此
(
かくのごとき
)
の音韻変化の迹がたどられる。
南嶋を思いて:――伊波文学士の『古琉球』に及ぶ――
(新字新仮名)
/
新村出
(著)
殆
(
ほとん
)
ど
危
(
あやふ
)
かつたその時、私達は自ら
救
(
すく
)
ふために、十
分
(
ぶん
)
にその
力
(
ちから
)
に
疑
(
うたが
)
ひを
殘
(
のこ
)
しながらも、愛とその結婚に
隱
(
かく
)
れ
家
(
が
)
を求めようとしました。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
忘れ去るべき人であると自分の理知が命ずる儘に違背しようとはして居らぬが、自分の感情の
殆
(
ほとん
)
ど全部はまだその恋が占めて居る。
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
筒井はいつもこの二つの問題のあいだを
殆
(
ほとん
)
ど一年間
往来
(
ゆきき
)
していて、いつも解決のつきようがなく深くはまってゆくばかりであった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
村長は高山の依頼を言い出す
機会
(
おり
)
の無いのに引きかえて校長細川繁は
殆
(
ほとん
)
ど毎夜の如く富岡先生を
訪
(
と
)
うて十時過ぎ頃まで
談話
(
はなし
)
ている
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
彼女は、近年は
殆
(
ほとん
)
ど、高橋
元子
(
もとこ
)
(
藤間勘素娥
(
ふじまかんそが
)
)の舞踊
茂登女会
(
もとめかい
)
に出演し、作曲していた。元子のお母さん
姉妹
(
きょうだい
)
も、浜子の友だちだった。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
かの女が二十歳近くも年齢の違う規矩男と歩いていて
殆
(
ほとん
)
ど年齢の差も感ぜず、また対者にもそれを感ぜしめない範囲の交感状態も
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それからの岸本は
殆
(
ほとん
)
ど旅の
支度
(
したく
)
に日を送った。そろそろ梅の咲き出すという頃には大体の旅の方針を定めることが出来るまでに成った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
健三には
殆
(
ほとん
)
ど問題にならない事が、彼らの間に想像の種を
幾個
(
いくつ
)
でも卸した。そうされればされるほどまた比田は得意らしく見えた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
殆
(
ほとん
)
ど我家に帰り
来
(
きた
)
れると見ゆる態度にて、
傱々
(
つかつか
)
と寄りて戸を
啓
(
あ
)
けんとしたれど、啓かざりければ、かの
雍
(
しとやか
)
に
緩
(
ゆる
)
しと謂ふ声して
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
私は
殆
(
ほとん
)
ど他人には満足に口もきけないほどの弱い性格で、従って生活力も
零
(
ゼロ
)
に近いと自覚して、幼少より今
迄
(
まで
)
すごして来ました。
わが半生を語る
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
殆
(
ほとん
)
ど
完膚
(
かんぷ
)
なしというほどに疵だらけになっていましたが、それが使い馴れていて工合がよいので、ついそのままに使いつづけていました。
私の机
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それもつい五、六年前、震災の前あたりまで残っていたように思うが、今はそうした特殊の縁日的の気分や光景は
殆
(
ほとん
)
ど見られなくなった。
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
余は驚きの余り
蹌踉
(
よろめ
)
きて倒れんとし
纔
(
わずか
)
に傍らなる柱につかまり我が身体を支え得たり、支え得しまゝ
暫
(
しば
)
しが程は
殆
(
ほとん
)
ど身動きさえも得せず
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
然
(
しか
)
るに
金解禁
(
きんかいきん
)
が
出來
(
でき
)
れば、
爲替相場
(
かはせさうば
)
は
殆
(
ほとん
)
ど一
定
(
てい
)
不動
(
ふどう
)
のものになつて
外國
(
ぐわいこく
)
の
金利
(
きんり
)
、
内地
(
ないち
)
の
金利
(
きんり
)
の
動
(
うご
)
きの
爲
(
ため
)
に、
多少
(
たせう
)
の
動
(
うご
)
きはあるが
金解禁前後の経済事情
(旧字旧仮名)
/
井上準之助
(著)
青くなって退場したり、卒倒したり、はじめての女でおしまいまで見通すのは
殆
(
ほとん
)
どないからだ。だから、言わないこっちゃない。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
『源氏』や『枕』や、今は
殆
(
ほとん
)
ど遺っていないが当時の宮廷や貴族の調度に用いられた屏風絵に現われている濃艶華麗な服装を。
偶言
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
今日の人間は幸福について
殆
(
ほとん
)
ど考えないようである。試みに近年現われた倫理学書、とりわけ我が国で書かれた倫理の本を開いて見たまえ。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
殊
(
こと
)
に俳諧から
発句
(
ほっく
)
というものが独立するようになってから、
殆
(
ほとん
)
ど専門的に景色を諷詠する文学が興って来るようになりました。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
……私のもとには
殆
(
ほとん
)
ど訪問客はない。私もまた人をたずねない。私は生れつき引っ込み思案な性分なので、独りでいる方が勝手なのである。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
どうして源之助も殺されていると言うことが判ったのかだって? そりゃあ君、前後の事情を考え合せて、
殆
(
ほとん
)
ど直感的にそう推定したんさ。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
さらに彼の兄
行平
(
ゆきひら
)
に至っては、一層詩人的な情熱家であったにかかわらず、詩人としては
殆
(
ほとん
)
ど無能で、
漸
(
ようや
)
く末流の才能しか持ってなかった。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
彼
(
かれ
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
其
(
そ
)
の
脚力
(
きやくりよく
)
の
及
(
およ
)
ぶ
限
(
かぎ
)
り
走
(
はし
)
つた。
彼
(
かれ
)
はおつぎが
後
(
うしろ
)
に
續
(
つゞ
)
かぬことを
顧慮
(
こりよ
)
する
暇
(
いとま
)
もなかつた。
彼
(
かれ
)
は
其
(
そ
)
の
主人
(
しゆじん
)
を
懷
(
おも
)
つたのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
殆
漢検準1級
部首:⽍
9画
“殆”を含む語句
危殆
殆不可同日論
殆末期
殆為金馬門之想云
殆面