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たのしみ
ふりがな文庫
“
楽
(
たのしみ
)” の例文
旧字:
樂
樵夫
(
きこり
)
は樵夫と相交って相語る。漁夫は漁夫と相交って相語る。予は読書癖があるので、文を好む友を獲て共に語るのを
楽
(
たのしみ
)
にして居た。
鴎外漁史とは誰ぞ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
妻
(
つま
)
をおさいといひ、俳名を
翠仙
(
すゐせん
)
といふ、夫婦ともに俳諧を
能
(
よく
)
し
文雅
(
ぶんが
)
を
好
(
このめ
)
り。此
柏筵
(
はくえん
)
が日記のやうに
書残
(
かきのこ
)
したる
老
(
おい
)
の
楽
(
たのしみ
)
といふ
随筆
(
ずゐひつ
)
あり。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
お前の外には何の
楽
(
たのしみ
)
も無いほどにお前の事を思つてゐた。それ程までに思つてゐる貫一を、宮さん、お前はどうしても棄てる気かい。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その後幾年月かは至極楽しそうだ、真に楽しそうだ、恐らく
楽
(
たのしみ
)
という字の全意義はかかる
女子
(
にょし
)
の境遇に
於
(
おい
)
て尽されているだろう。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
婦人の婚姻に因りて
得
(
う
)
る処のものは
概
(
おほむ
)
ね斯の如し。
而
(
しかう
)
して男子もまた、先人
曰
(
いは
)
く、「妻なければ
楽
(
たのしみ
)
少く、妻ある身には
悲
(
かなしみ
)
多し」
愛と婚姻
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
昨日まではとかく家を
外
(
そと
)
なる楽しみのみ追ひ究めんとしける放蕩の
児
(
じ
)
も
此
(
ここ
)
に漸く
家居
(
かきょ
)
の
楽
(
たのしみ
)
を知り父なき
後
(
のち
)
の家を守る身となりしこそうれしけれ。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
且つ病者の
来
(
きた
)
るを喜んで診療するを勤め、尚好む処の
謡
(
うたい
)
と鼓とを以て
楽
(
たのしみ
)
とせり。二月、亡妻の白骨を納むるの装飾ある外囲の箱を片山氏は作る。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
筍
(
たけのこ
)
の出さかりで、
孟宗藪
(
もうそうやぶ
)
を有つ家は、朝々早起きが
楽
(
たのしみ
)
だ。肥料もかゝるが、一反八十円から百円にもなるので、雑木山は
追々
(
おいおい
)
孟宗藪に化けて行く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「驚くうちは
楽
(
たのしみ
)
があるもんだ。女は楽が多くて仕合せだね」と甲野さんは長い
体躯
(
からだ
)
を
真直
(
ますぐ
)
に立てたまま藤尾を
見下
(
みおろ
)
した。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と評したというほどだから、随分退屈な旅だったろうが、それでもまだしも仕合せな事には少しばかり漢詩を作るので、それを唯一の旅中の
楽
(
たのしみ
)
にして
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
家にも二人まで下男がゐたし、隣近所の
助勢
(
すけて
)
も多いのだから、父は
普通
(
あたりまへ
)
なら囲炉裏の横座に坐つてゐて可いのだけれど、「俺は稼ぐのが何よりの
楽
(
たのしみ
)
だ。」
刑余の叔父
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「何の、
私
(
わし
)
は寝たよりも
醒
(
さ
)
めてる方が
楽
(
たのしみ
)
だ——此の綿を
紡
(
つむい
)
で
仕舞
(
しま
)
はんぢや寝ないのが、私の
規定
(
きめ
)
だ、是れもお前の
袷
(
あはせ
)
を織る
積
(
つもり
)
なので——さア、早くお
寝
(
やす
)
み」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
目読
(
もくどく
)
の興を以て耳聞の
楽
(
たのしみ
)
に換ゆ、然り而して親しく談話を聞くと坐ら筆記を読むと、
自
(
おのずか
)
ら写真を見ると実物に対するの違い有れば
稍
(
やゝ
)
隔靴掻痒
(
かっかそうよう
)
の
憾
(
かん
)
無きにあらず
松の操美人の生埋:01 序
(新字新仮名)
/
宇田川文海
(著)
己は
何日
(
いつ
)
もはっきり意識してもいず、また丸で無意識でもいず、浅い
楽
(
たのしみ
)
小さい
嘆
(
なげき
)
に日を送って、己の生涯は丁度半分はまだ分らず、半分はもう分らなくなって
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
彼は
蹲
(
うづく
)
まつて、小さい隊商を凝視した。さうして暫くの間、彼は彼等から子供らしい
楽
(
たのしみ
)
を得させられた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
... そうなって
楽
(
たのしみ
)
に研究をしなければなかなか食物改良の事が行われんよ。とにかく第一の発会を広海子爵の邸内で開いて食道楽会の模範を天下に示したいと思う」小山
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
如意
却
(
かへ
)
つて不如意。不如意却つて如意。悲しむも何かせむ。歓ぶも何かせむ。「無心」を
傭
(
やと
)
ひ来つて、悲みをも、歓びをも、同じ意界に放ちやりてこそ、まことの
楽
(
たのしみ
)
は
来
(
きた
)
るなれ。
山庵雑記
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
なにもああしてお国で一人暮しの不自由な思いをしてお出でなさりたくもあるまいけれども、それもこれも
皆
(
みんな
)
お前さんの立身するばッかりを
楽
(
たのしみ
)
にして辛抱してお出でなさるんだヨ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
二人とも
楽
(
たのしみ
)
を味ふやうな心持でわざとそんなことを云ひ合つたりしたのでした。
蛍
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
(莨を捨て、両手を差伸べ、
温
(
あたたか
)
に。)本当にわたくしは、このお部屋を拝見いたすのを、昨晩から
楽
(
たのしみ
)
に致して参りましたのでございますよ。あなたのお身の
廻
(
まわ
)
りにあるこんなものを残らず。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
散歩の
楽
(
たのしみ
)
、旅行の楽、能楽演劇を見る楽、寄席に行く楽、見せ物興行物を見る楽、展覧会を見る楽、花見月見雪見等に行く楽、細君を携へて
湯治
(
とうじ
)
に行く楽、
紅燈
(
こうとう
)
緑酒
(
りょくしゅ
)
美人の膝を枕にする楽
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
すなはち自然の秘をさぐる刻下の
楽
(
たのしみ
)
は、わがつかれとうゑとを忘れしめたるなり。ややあれば、瑠璃の艶あざやかなる朝顔の籬の下を走りくる童あり、呼びとどめ、所の名を問へば久保と答ふ。
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
隣のかみさんに水を汲んでやるはまだしも「音羽屋に似て居る」と云はれて「頭のはげた所と
顎
(
あご
)
の長い所だけ似て居ませう」と云ひ、これから寝るとききて「それぢやあ今晩はお
楽
(
たのしみ
)
だね」と云ひ
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
わたくしは
金
(
きん
)
のお盥の耳を持っていて、お
楽
(
たのしみ
)
の
央
(
なかば
)
に10895
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
われ
楽
(
たのしみ
)
を吹くときは
若菜集
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
妻
(
つま
)
をおさいといひ、俳名を
翠仙
(
すゐせん
)
といふ、夫婦ともに俳諧を
能
(
よく
)
し
文雅
(
ぶんが
)
を
好
(
このめ
)
り。此
柏筵
(
はくえん
)
が日記のやうに
書残
(
かきのこ
)
したる
老
(
おい
)
の
楽
(
たのしみ
)
といふ
随筆
(
ずゐひつ
)
あり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
既にその顔を
見了
(
みをは
)
れば、何ばかりの
楽
(
たのしみ
)
のあらぬ家庭は、彼をして火無き
煖炉
(
ストオブ
)
の
傍
(
かたはら
)
に
処
(
をら
)
しむるなり。彼の凍えて
出
(
い
)
でざること無し。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
義兄
(
にい
)
さんの
歌
(
うた
)
の
本
(
ほん
)
をお
読
(
よ
)
みなさるのと、うつくしい
友染
(
いうぜん
)
を
掛物
(
かけもの
)
のやうに
取換
(
とりか
)
へて、
衣桁
(
いかう
)
に
掛
(
か
)
けて、
寝
(
ね
)
ながら
御覧
(
ごらん
)
なさるのが
何
(
なに
)
より
楽
(
たのしみ
)
なんですつて。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
殊に
傭人等
(
やといにんら
)
は日々馬鈴薯と豆類のみを多く喰するを
楽
(
たのしみ
)
とするのみなるを以て、折には異る
喰物
(
しょくもつ
)
を大に楽とするのみなり。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
「驚ろくうちは
楽
(
たのしみ
)
がある。女は仕合せなものだ」と再び
人込
(
ひとごみ
)
へ出た時、何を思ったか甲野さんは
復
(
また
)
前言を繰り返した。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あの二階でも此の二階でも
三絃
(
しやみ
)
、太鼓の花々しい響か、それとも爪弾とやら、乙に気取つた
楽
(
たのしみ
)
の音が洩れるのです。
夜の赤坂
(新字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
それ外より入る者は、
中
(
うち
)
に
主
(
しゅ
)
たる無し、門より入る者は
家珍
(
かちん
)
にあらず。
白
(
さかずき
)
を挙げて
楽
(
たのしみ
)
となす、何ぞ
是
(
こ
)
れ至楽ならん。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
湯でも水でもぶっかけてざぶ/\流し込むのである。若い者の
楽
(
たのしみ
)
の一は、食う事である。主人は麦を食って、自分に稗を食わした、と
忿
(
いか
)
って飛び出した
作代
(
さくだい
)
もある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
若き時酒のみてとろとろ眠りし心地と
狎
(
な
)
れたる
妓
(
おんな
)
のもとに通いし
楽
(
たのしみ
)
は世をへだてたるごとくなりきと書いた文章の事をしみじみと語り出して、その終に添えた狂歌一首
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私共
(
わたしども
)
に取つて
楽
(
たのしみ
)
は御座んせんのね、之を思ふと私などは
能
(
よ
)
くまア腰が
屈
(
まが
)
つて仕舞はないと感心致しますの——
否
(
いゝ
)
エ、此頃は、もう、ネ、老い込んで
仕様
(
しやう
)
がありませんの
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
『小日本』と関係深くなりて後君は
淡路町
(
あわじちょう
)
に下宿せしかば余は社よりの帰りがけに君の下宿を訪ひ画談を聞くを
楽
(
たのしみ
)
とせり。君いふ、今は食ふ事に困らぬ身となりしかば十分に勉強すべしと。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
未来の
楽
(
たのしみ
)
を思い浮べながら、あの娘の肌の香の2670
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
抑
(
そもそ
)
も友とは
楽
(
たのしみ
)
を共にせんが為の友にして、
若
(
も
)
し憂を同うせんとには、別に
金銭
(
マネイ
)
ありて、人の助を用ゐず、又決して用ゐるに足らずと信じたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
寝てるとね、盗んで来たここに在る奴等が、自分が
盗
(
と
)
られた時の様子を、その道筋から、
機会
(
きっかけ
)
から、
各々
(
めいめい
)
に話をするようで、
楽
(
たのしみ
)
ッたらないんだぜ。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
氷を
観
(
み
)
て
楽
(
たのしみ
)
とする事
暖国
(
だんこく
)
にはさらにあるべからず。此川にさかべつたうといふ
奇談
(
きだん
)
あり、
次
(
つぎ
)
の
巻
(
まき
)
にいふべし。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
是より最後の
楽
(
たのしみ
)
は奈良じゃと急ぎ登り行く
碓氷峠
(
うすいとうげ
)
の冬
最中
(
もなか
)
、雪たけありて
裾
(
すそ
)
寒き
浅間
(
あさま
)
下ろしの
烈
(
はげ
)
しきにめげず
臆
(
おく
)
せず、名に高き
和田
(
わだ
)
塩尻
(
しおじり
)
を
藁沓
(
わらぐつ
)
の底に踏み
蹂
(
にじ
)
り
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それで僕も色々と想像を描いていたので、それを恋人と語るのが何よりの
楽
(
たのしみ
)
でした、矢張上村君の
亜米利加
(
アメリカ
)
風の家は僕も大判の洋紙へ鉛筆で
図取
(
ずどり
)
までしました。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
百年の
齢
(
よわ
)
いは
目出度
(
めでたく
)
も
難有
(
ありがた
)
い。然しちと退屈じゃ。
楽
(
たのしみ
)
も多かろうが憂も長かろう。水臭い
麦酒
(
ビール
)
を日毎に浴びるより、舌を焼く
酒精
(
アルコール
)
を半滴味わう方が手間がかからぬ。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
仏蘭西
(
フランス
)
の小説を読むと
零落
(
おちぶ
)
れた貴族の
家
(
いえ
)
に生れたものが、
僅少
(
わずか
)
の遺産に自分の身だけはどうやらこうやら日常の衣食には事欠かぬ代り、浮世の
楽
(
たのしみ
)
を
余所
(
よそ
)
に
人交
(
ひとまじわ
)
りもできず
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
夏の
命
(
いのち
)
は水だが、川らしい川に遠く、海に尚遠い
斯
(
この
)
野の村では、水の
楽
(
たのしみ
)
が思う様にとれぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
然れども
彼時
(
かのとき
)
は只眼にて観るの
楽
(
たのしみ
)
なるのみなりしも、現今我牧塲としてかかる広漠の地にて、且つ多数の我所有たる馬匹の揃うて進みて予に向うて馬匹等は観せたしとの意あるが如きを感じて
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
如何
(
いか
)
にしても私の心を転ずることが成らなかつたのです——皆様能く男子の集会などへ
行
(
い
)
らつしやいましたわねエ——あら、銀子さん、貴女のこと言ふのぢやなくてよ——けれど私の
楽
(
たのしみ
)
は日曜に
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
絵画彫刻の美を感ずる人は
紅塵
(
こうじん
)
十丈の裏にありても山林閑栖の
楽
(
たのしみ
)
を得べく、山水花鳥の美を感ずる人は貧苦困頓の間にありても富貴栄華の楽を得べし。間接には美の心は慈悲性を起し残酷性を
斥
(
しりぞ
)
く。
病牀譫語
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
たんとお
楽
(
たのしみ
)
なさって、跡腹の病めないようになさい。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
謂うと何だか、女々しいようだが、報のない罪をし遂げて、あとで
楽
(
たのしみ
)
をしようという、虫の可いことは決して無い。またそうさせるような吾でもない。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
楽
常用漢字
小2
部首:⽊
13画
“楽”を含む語句
安楽椅子
道楽
神楽
快楽
音楽
伯楽
管絃楽
安楽
歓楽
楽園
娯楽
設楽
道楽者
楽欲
神楽岡
邑楽
雅楽寮
倶楽部
独楽
楽器
...