桔梗ききやう)” の例文
盂蘭盆うらぼん墓詣はかまうでに、のなきはゝしのびつゝ、なみだぐみたるむすめあり。あかのみづしづくならで、桔梗ききやうつゆ置添おきそへつ、うきなみおもふならずや。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひくくて眉毛まゆげまなこするどく其上に左の目尻めじり豆粒程まめつぶほどの大きな黒子ほくろが一つあり黒羽二重はぶたへ衣物きものにて紋は丸の中にたしか桔梗ききやうと言れてお金は横手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おつ母さん、金盥かなだらひに水をくんで来て頂戴。それから美代ちやん、二階の机の上の花瓶から桔梗ききやうの花を二つぬいて来て……しをれてないのをね。
古池に飛び込むかはづは昔のまゝの蛙であらう。中に玉章たまづさ忍ばせたはぎ桔梗ききやう幾代いくだいたつても同じ形同じ色の萩桔梗であらう。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
したはぎ桔梗ききやうすゝきくず女郎花をみなへし隙間すきまなくいたうへに、眞丸まんまるつきぎんして、其横そのよこいたところへ、野路のぢ空月そらつきなかなる女郎花をみなへし其一きいちだいしてある。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
絵は御簾みすにそれも桜で、裏に蝶が二つ白抜きで附いて居ました。それには桃色の縁がとられてました。桔梗ききやうの花の扇は大阪の誰かから貰つた物でした。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
みちばたにいて龍膽りんだうはなとうさんにこゑけてれました。龍膽りんだう桔梗ききやうちいさな草花くさばなで、よく山道やまみちなぞにいてるのをかけるものです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
路、山に入つて、萩、女郎花をみなへし地楡われもかう桔梗ききやう苅萱かるかや、今を盛りの滿山の秋を踏み分けて上る。車夫が折つてくれた色濃い桔梗の一枝を鶴子は握つて負られて行く。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
闌秋らんしう化性けしやうしたる如き桔梗ききやう蜻蛉とんぼの眼球の如き野葡萄のぶだうの実、これらを束ねて地に引きゑたる間より、もみの木のひよろりと一際ひときは高く、色波の旋律を指揮する童子の如くに立てるが
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
それから二人ふたり庫裡くりへ行つて、住職の坊さんに宝物はうもつを見せて貰つた。その中に一つ、銀の桔梗ききやうきんすすきとが入り乱れた上に美しい手蹟しゆせきで歌を書いた、八寸四方くらゐの小さなぢくがある。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
空もいつかすつかりれて、桔梗ききやういろの天球には、いちめんの星座がまたたきました。
水仙月の四日 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
春は壺菫に秋は桔梗ききやう女郎花をみなへし、其草原は四季の花に富んでゐるので、私共はよく遊びに行つたものだが、其頃は、一面に萱草の花の盛り、殊にも水車小屋の四周まはりには沢山咲いてゐた。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
桔梗ききやう女郎花をみなへしのさきみだれたうつくしい世界せかいです。そのくさつぱのかげで
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
書棚の上のベルギイ・グラスの花立はなだてした桔梗ききやうの花のいくつかのしほれかかつてゐたのが今でもはつきり眼の前に浮んでくるが、その時こそ、私は處女作しよぢよさく「修道院の秋」の最後の一行を書き終つて
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
将門の子は良兌よしなほ、将国、景遠、千世丸等があり、又十二人の実子があつたなどと云ふ事も見えるから、桔梗ききやうの前の物語こそは、薬品の桔梗の上品が相馬から出たに本づく戯曲家の作意ではあらうが
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
まつむし草 桔梗ききやう ぎぼうしゆ をみなへしと
優しき歌 Ⅰ・Ⅱ (新字旧仮名) / 立原道造(著)
にははさながら花野はなのなり桔梗ききやう刈萱かるかや女郎花をみなへし我亦紅われもこう瑠璃るりける朝顏あさがほも、弱竹なよたけのまゝ漕惱こぎなやめば、むらさきと、と、薄藍うすあゐと、きまどひ、しづなびく。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
引開ひきあけて直しける雪踏せつた鼻緒はなをいとふとき心を隱す元益が出てしづ/\進み入に店の者等は之を見ればとし三十路みそぢたらざれど人品じんぴん骨柄こつがらいやしからず黒羽二重くろはぶたへに丸の中に桔梗ききやうもんつきたる羽織はおり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あの桔梗ききやう……。
桔梗の別れ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
たけよりたかい一めん雑草ざつさうなかに、三本みもと五本いつもとまた七本なゝもとあはむらさきつゆながるゝばかり、かつところに、くきたか見事みごと桔梗ききやうが、——まことに、桔梗色ききやういろいたのであつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
り店へ來りてお光さんに癲癇てんかんがあると言たる醫師いしや年齡としごろ云々しか/″\にて又面體めんてい箇樣々々かやう/\然も羽織はおりにはまるの中に桔梗ききやうもんついてゐたと申に因て日頃より見知る山田元益に面體めんてい恰好かつかうばかりでなく羽織はおりもんも相違なければ確に夫とお光さんに話しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
へたのが何時いつびて、丁度ちやうど咲出さきで桔梗ききやうはなが、浴衣ゆかたそで左右さいうわかれて、すらりとうつつて二三りんいろにもればかげをも宿やどして、雪洞ぼんぼりうごくまゝ、しづかな庭下駄にはげたなびいて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……露草つゆくさいまさかりです……桔梗ききやう澤山たくさんえました……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
前刻さつきいまで、桔梗ききやうほしむらさき由縁ゆかりであらう。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)