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故
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ことさ
ふりがな文庫
“
故
(
ことさ
)” の例文
従て私は和名も科名も共にこれをカナで書く事を決行実践したのであったが、その時
独
(
ただ
)
科の字のみは
姑
(
しば
)
らく
故
(
ことさ
)
らにこれを存置した。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
信仰の行者を除くの外、昼も人跡
罕
(
まれ
)
なれば、夜に入りては
殆
(
ほとん
)
ど
近
(
ちかづ
)
くものもあらざるなり。その物凄き夜を
択
(
えら
)
びて予は
故
(
ことさ
)
らに黒壁に赴けり。
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
此処で、敢て言ひますが、同氏はかねて、その劇評乃至戯曲評に於て、私の作品を
故
(
ことさ
)
ら非難攻撃された跡が歴然としてゐます。
偉大なる近代劇場人
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
故
(
ことさ
)
らに死語や古語を復活させて来る必要はないであらうが、さうでない限りは、更に死語や古語も蘇らさないではゐられない。
古語復活論
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
そして
小
(
ちいさ
)
いおりから母親に
媚
(
こ
)
びることを学ばされて、そんな事にのみ
敏
(
さと
)
い心から、
自然
(
ひとりで
)
に
故
(
ことさ
)
ら二人に甘えてみせたり、
燥
(
はしゃ
)
いでみせたりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
灰を市に棄つるを禁ぜずして国中争乱絶えざるを致すと同じく、合祀励行の官公吏は、
故
(
ことさ
)
らに衢に灰を撒きて、人民を争闘せしむるに同じ。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
これ本校が独語に取らず仏語に取らず、
故
(
ことさ
)
らにこれを英語に取り、以てこれを子弟に授くるもの
乎
(
か
)
(謹聴)。その用意、又密なりと
謂
(
いい
)
つべし。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
しかし己はこんな事を書く積りで、日記を
開
(
あ
)
けたのではなかった。目的の
不慥
(
ふたしか
)
な訪問をする人は、
故
(
ことさ
)
らに
迂路
(
うろ
)
を取る。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
極めて正当な思想をもっているこの著者が、この思想を実行に移せば与えられるであろう所の愉快と名誉とを、かくも
故
(
ことさ
)
らに捨てたのは、奇異である。
純粋経済学要論:01 上巻
(新字新仮名)
/
マリー・エスプリ・レオン・ワルラス
(著)
故
(
ことさ
)
らに皇國の歌はなど言はるゝは例の歌より外に何物も知らぬ歌よみの言かと被怪候。「何れの世に何れの人が理窟を讀みては歌にあらずと定め候哉」
歌よみに与ふる書
(旧字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
私はどきつとして、
故
(
ことさ
)
らに息を殺した。それからはもう何とも云はぬ。空耳だつたかなと思つてゐると、今度は確かに身を動かして居る容子が聽ゆる。
姉妹
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
然れどもこれを作詩の中心とし本義として
故
(
ことさ
)
らに
標榜
(
ひようぼう
)
する処あるは、
蓋
(
けだ
)
し二十年来の仏蘭西新詩を以て
嚆矢
(
こうし
)
とす。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
故
(
ことさ
)
らに怒りの色を為し『扨こそ米俵は持ち上げしぞ、斯く不正の策を構へて、人々に天秤棒を食はらせし其の罪は免しがたし、イザ汝の首を引き抜かん』
初代谷風梶之助
(新字旧仮名)
/
三木貞一
(著)
離れ、
畢竟
(
ひっきょう
)
、平等にして変異あることなく、
破壊
(
はえ
)
すべからず、ただこれ一心なるのみなれば、
故
(
ことさ
)
らに真如と名づく
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
一説に依れば仏人の
脚肉
(
きやくにく
)
を食ふは、
故
(
ことさ
)
らに英人の風習に従ふを
屑
(
いさぎよし
)
とせざる意気を粧ふに過ぎず。故に仏人の
熱灰
(
ねつくわい
)
上に鱷の脚を
炙
(
あぶ
)
るを見て、英人は冷笑すと。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
ベンサムが「フラグメント・オン・ガヴァーンメント」の第一版を出した時、
故
(
ことさ
)
らに匿名を用いて出版した。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
それは自分の好きなものを
態
(
わざ
)
と
譏
(
そし
)
り、内心嫌ひなものを
故
(
ことさ
)
らに褒める遊び女らしい一つの技巧に過ぎなかつたであらうか。或は唯単に嘲弄であつたのであらうか。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
始皇が果斷の人であることは、
故
(
ことさ
)
らに茲に申し添へる必要がない。天下統一の後ち、群臣の多數は封建再興を主張したに拘らず、彼は敢然として郡縣の治を行うた。
秦始皇帝
(旧字旧仮名)
/
桑原隲蔵
(著)
「大和恋ひいの寝らえぬに
情
(
こころ
)
なくこの
渚
(
す
)
の埼に
鶴
(
たづ
)
鳴くべしや」(巻一・七一)、「出でて行かむ時しはあらむを
故
(
ことさ
)
らに妻恋しつつ立ちて行くべしや」(巻四・五八五)
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
荻生徂徠論を著すに至つても猶
故
(
ことさ
)
らに『文章は事業なり。文士筆を揮ふ猶英雄剣を揮ふが如し』
透谷全集を読む
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
にて、一本を挙ぐる毎に「万歳」の叫びを聴きしが、此時、誰の口よりか「来た/\」といふ声響く。一同は、竿を挙げて
故
(
ことさ
)
らに他方を向き、相知らざる様を粧ひたり。
東京市騒擾中の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
また
作者
(
さくしや
)
が愛を
熱心
(
ねつしん
)
に
宣傳
(
せんでん
)
して居るやうな
場合
(
ばあひ
)
にでも、寧ろその
理智
(
りち
)
を以て
故
(
ことさ
)
らにそれを
力説
(
りきせつ
)
しようとする爲めに、どうかするとその愛は、
作者
(
さくしや
)
の心から
滲
(
にじ
)
み出たものではなくて
三作家に就ての感想
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
即ち知らず識らずして
陥
(
おちい
)
れる
偏頗
(
へんぱ
)
に対するものにして、多少これを恕せむとするもまた
已
(
や
)
むを得ざるに出づといへども、もし為にする所ありて、
故
(
ことさ
)
らに偏私の言をなすものあらば
仏教史家に一言す
(新字旧仮名)
/
津田左右吉
、
小竹主
(著)
彼はそれを聞くと依然として傲慢な態度を持しながら、
故
(
ことさ
)
らに肩を
聳
(
そびや
)
かせて見せた。
西郷隆盛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
少しくその期日を忍べば、何ぞ
故
(
ことさ
)
らに亡邸するに至らん、何ぞ故らに浪人と
為
(
な
)
るに及ばん、何ぞ故らにこの亡邸のために帰国を命ぜらるるに及ばん。
然
(
しか
)
れども彼はこれを辞せざりしなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
仏の模倣者となったものは、すなわち僧は、仏家の
風
(
ふう
)
として戒律を守らなくてはならぬ。しかし俗人にとっては、それは必ずしも必要でない。仏は「一切有命の者
故
(
ことさ
)
らに殺すことを得ざれ」
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
貫一は
戦
(
をのの
)
く
唇
(
くちびる
)
を
咬緊
(
くひし
)
めつつ、
故
(
ことさ
)
ら
緩舒
(
ゆるやか
)
に
出
(
いだ
)
せる
声音
(
こわね
)
は、
怪
(
あやし
)
くも常に変れり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
舞台の上を
故
(
ことさ
)
らに歩き廻り、かわり番に各俳優の後に来て(私のテーブルはたった今地震で揺れた。一八七七年六月二十五日、——また震動があった。またあった)隠れているかのように
蹲
(
うずくま
)
り
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
その
後
(
のち
)
はお勢は
故
(
ことさ
)
らに何喰わぬ顔を作ッてみても、どうも
旨
(
うま
)
くいかぬようすで、
動
(
やや
)
もすれば沈んで、眼を細くして何処か遠方を
凝視
(
みつ
)
め、
恍惚
(
うっとり
)
として、
夢現
(
ゆめうつつ
)
の境に迷うように見えたことも有ッた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
故
(
ことさ
)
らに父母の死を
促
(
うな
)
がすがごときは、情において
忍
(
しの
)
びざるところなり。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
お
前
(
まへ
)
さまお
一人
(
ひとり
)
のお
煩
(
わづら
)
ひはお
兩人
(
ふたり
)
のお
惱
(
なや
)
みと
婢女共
(
をんなども
)
に
笑
(
わら
)
はれて
嬉
(
うれ
)
しと
聞
(
き
)
きしが
今更
(
いまさら
)
おもへば
故
(
ことさ
)
らに
言
(
い
)
はせしか
知
(
し
)
れたものならず
此頃
(
このごろ
)
見
(
み
)
しは
錦野
(
にしきの
)
の
玄關
(
げんくわん
)
先
(
さき
)
うつくしく
粧
(
よそほ
)
ふた
身
(
み
)
に
比
(
くら
)
べて
見
(
み
)
て
我
(
わ
)
れより
詞
(
ことば
)
は
掛
(
か
)
けられねど
無言
(
むごん
)
に
行過
(
ゆきす
)
ぎるとは
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
しかし
故
(
ことさ
)
らに主人が
立会
(
たちあ
)
ふほどの事ではない。その
邸
(
やしき
)
の
三太夫
(
さんだゆう
)
が、やがて
鍬
(
くわ
)
を提げた
爺
(
じい
)
やを従へて出て、一同
槐
(
えんじゅ
)
の根を
立囲
(
たちかこ
)
んだ。
雨ばけ
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
鬼頭令門は、ふと机の上の「日誌」に眼をおとし、それと、千種の顔とを見比べて、なにか自分を責めたいやうな気持になつたが、
故
(
ことさ
)
ら快活に
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
重宗は
夙
(
はや
)
くより最もその意を注いで、調査に調査を加え、既に判決を下すばかりになっていたものであるが、辞職の際の事務整理に、
故
(
ことさ
)
らにこれのみを取残し
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
故
(
ことさ
)
らに
迹
(
あと
)
を
滅
(
け
)
さんと、きりこみし人々、皆其刀を
礪
(
と
)
がせし中に、一瀬が刀の
刃
(
は
)
二個処いちじるしくこぼれたるが、臼井が短刀のはのこぼれに
吻合
(
ふんごう
)
したるより
露
(
あら
)
われにき。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
故
(
ことさ
)
らに大きな聲で、斯うしてお客樣を案内して來たから、氣の毒だけれど早速この家をあけて貰ひたい、もう斯うなると今度こそは待つてあげるわけにゆかぬから、と宣告した。
樹木とその葉:04 木槿の花
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
されども、想ひ返しては又心弱く、誰と誰とは必ず二日に来るかた
仁
(
じん
)
にて、衣服に綺羅を飾らざれども、心の誠は赤し。殊に、
故
(
ことさ
)
ら改らずして、平日の積る話を語り合ふも亦一興なり。
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
しかしまたあるいはその職人が相手の女の商売を考え、
故
(
ことさ
)
らに外国人の名前などは入れずに置いたかも知れなかった。僕はそんなことを気にしない彼に同情よりもむしろ寂しさを感じた。
彼 第二
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
巫女の家や旧家には、おもな座敷に、片隅の
故
(
ことさ
)
らに炉の形に拵へた漆喰塗りの場処に置く。普通の家では、竈の後の壁に、三本石を列べて、其頭に塩・米などの盛つてあるのを見かける。
琉球の宗教
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
彼が驚いたのは当然であつた。彼が何心なくぽかんと
視入
(
みい
)
つてゐた大空の一角には、実に
故
(
ことさ
)
らに星を其形に並べて
鏤
(
ちりば
)
めたとしか思はれぬ巨大な十字形の一星座が判然と見えるのであつた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
何ぞ
故
(
ことさ
)
らに新しき形を要せんと、殊に知らず、昔しの淳朴なるや、「八雲立」「難波津」の歌猶之を誦して、人をして感ぜしむるに足れり、今に至つては猶此緩慢なるものを
須
(
もち
)
ゆべけれんや。
詩人論
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
故
(
ことさ
)
らに無心な顔を作り、思慮の無い
言
(
こと
)
を云い、互に
瞞着
(
まんちゃく
)
しようと
力
(
つと
)
めあうものの、しかし、双方共力は
牛角
(
ごかく
)
のしたたかものゆえ、
優
(
まさり
)
もせず、
劣
(
おとり
)
もせず、
挑
(
いど
)
み疲れて今はすこし
睨合
(
にらみあい
)
の姿となった。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
誤解せられ易い
虞
(
おそれ
)
があるから、
故
(
ことさ
)
らにそれを避けたのである。
歴史の矛盾性
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
荒尾は
故
(
ことさ
)
らに
哈々
(
こうこう
)
として笑へり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
作者は、恐らく、人物の幾人かをして
故
(
ことさ
)
らに空虚な、大げさな言葉を語らせて、その言葉の裏から、間から「あるもの」を感じさせようとしたのだらう。
戯曲二十五篇を読まされた話
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
動
(
やや
)
モスレバ疑似ニ渉ルヲ以テ、※※等ノ片爿ヲ加ヘ、
故
(
ことさ
)
ラニ字形ヲ乱シ、以テ真字ト分別アルヲ示ス、且此字ニ音無ク義無シ、即原語ノ音ヲ縮メテ、此字ノ音卜為ス者ナリ。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
人間の気を奪ふため、
故
(
ことさ
)
らに
引込
(
ひきこ
)
まれ/\、やがて
忽
(
たちま
)
ち
其
(
その
)
最後の
片翼
(
かたつばさ
)
も、城の石垣につツと消えると、いままで
呼吸
(
いき
)
を詰めた、
群集
(
ぐんじゅ
)
が、
阿
(
あ
)
も
応
(
おう
)
も
一斉
(
いっとき
)
に、わツと鳴つて声を揚げた。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
これは實は舊道であるのださうだが、
故
(
ことさ
)
らに私はこれを選んだのであつた。さうして樂しんで來た片品川峽谷の眺めは矢張り私を落膽せしめなかつた。ことに岩室といふあたりから佳くなつた。
みなかみ紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
ペエテルブルクに在りし間に余を
圍繞
(
ゐねう
)
せしは、巴里絶頂の驕奢を、氷雪の裡に移したる王城の粧飾、
故
(
ことさ
)
らに黄蝋の燭を幾つ共なく點したるに、幾星の勳章、幾枝の「エポレツト」が映射する光
舞姫
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
なほ参考として小野氏著「切支丹の殉教者」及び「日本に於ける公教会の復活」「幕府時代の長崎」「長崎年表」を見た事を記しておく。又此作には
故
(
ことさ
)
らに多少の時代錯誤を敢て許しておいた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
“故”の意味
《名詞》
(ふる)使い古したもの。おさがり。
(ふる)年を経たこと。
(ふる)以前のもの。
(ゆえ、体言や活用語の連体形などに付いて用いられる)理由。わけ。特別な事情。
(ゆえ)由緒。
(ゆえ)おもむき。
(ゆえ)縁故。
(ゆえ)故障。
《形容動詞》
(ことさら)故意に。わざと。わざわざ。
(ことさら)とりたてて。とりわけ。特に。格別。
(出典:Wiktionary)
故
常用漢字
小5
部首:⽁
9画
“故”を含む語句
何故
故郷
事故
故障
故意
其故
縁故
故々
故家
所故
反故
故里
故事
故国
故人
物故
故主
何故々々
故買
故國
...