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も
ふりがな文庫
“
揉
(
も
)” の例文
……さ、お横に、とこれから腰を
揉
(
も
)
むのだが、横にもすれば、
俯向
(
うつむけ
)
にもする、一つくるりと返して、ふわりと柔くまた横にもしよう。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その故に或る時は、二人の間に死ぬの生きるのというほど
揉
(
も
)
め出すかと思えば、或る時は水も洩らさぬほどの親しみが見えるのです。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
よく御存じで、——別に拵へた、五つの大三方に、二千兩づつを載せ、紫御殿の祭壇に供へて、三日三晩、
揉
(
も
)
みに揉んで祈りました。
銭形平次捕物控:283 からくり屋敷
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
また親方様の大気にて別段怒りもなさらずば、吾夫にさせて見事成就させたいような気持もする、ええ気の
揉
(
も
)
める、どうなることか
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
家康は気を
揉
(
も
)
んで、稲富喜三郎、
田付
(
たづけ
)
兵庫等をして鉄砲の者を召連れて、越前勢の傍より真田勢を
釣瓶打
(
つるべうち
)
にすべしと命じた位である。
真田幸村
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
女たちはすべて無言で、二人の
髷
(
まげ
)
を解き、汗が出てくると、その柔らかい手で、全身の皮膚を巧みに擦りながら、垢を
揉
(
も
)
みおとした。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
汽車に乗り込んだか乗り込まないかの内にこんな嵐に遭遇している夫の事を、菜穂子は別にそう気を
揉
(
も
)
みもしないで思いやりながら
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
深田でもたいへん惜しがって、省作が出たあとで
大分
(
だいぶ
)
揉
(
も
)
めたそうだ、
親父
(
おやじ
)
はなんでもかでも面倒を見ておけというのであったそうな。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
が、一ト
揉
(
も
)
みにと、当ってみればおそろしく強いし、城中の結束は見事にピンと張りを示すので、なおさら理解できないものがある。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
別にただの御飯へ
塩味
(
あじ
)
を付けて炊いて火を引く時今の紫蘇の手で
揉
(
も
)
んだものを早く
釜
(
かま
)
の中へ入れてお
櫃
(
ひつ
)
へ移す時
杓子
(
しゃくし
)
でよく混ぜます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そこで大蔵大臣の宅にも居らぬということになったので「さあどうしたらよかろうか」と大変に気を
揉
(
も
)
み出した。それは外でもない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
いやそれも、もうすこし警官隊の駈けつけ方が遅かったら、屍体はもちろん、帆村自身も群衆のために
揉
(
も
)
みくちゃになったことだろう。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
トラック三台で
搬
(
はこ
)
びつけたのだつたが、工事は中途から行き悩みで、木山が気を
揉
(
も
)
み出した頃には、既に親方も姿を
晦
(
くら
)
ませてゐた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
山本方で商人に注文した、少しばかりの品物にも、思い掛けぬ
手違
(
てちがえ
)
が出来て、りよが幾ら気を
揉
(
も
)
んでも、支度がなかなかはかどらない。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
家
(
うち
)
へ帰って、一日部屋へ這入ったなり考え込んでいた。
嫂
(
あによめ
)
を連れて音楽会へ行く筈の所を断わって、大いに嫂に気を
揉
(
も
)
ました位である。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
人中に
揉
(
も
)
まれて
臆
(
おく
)
し
心
(
ごころ
)
はほとんど除かれている彼に、この衷心から頭を
擡
(
もた
)
げて来た新しい慾望は、更に積極へと彼に拍車をかけた。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「君はお敏さんの事を忘れたのか。君がそんな無謀な事をしたら、あの人はどうするんだ。」——二人がこう
揉
(
も
)
み合っている間に
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
背中が
揉
(
も
)
みほぐされると同時に、酔いが背に廻って来る。やはりくすぐったい。が、昨夜ほどではない。
圧
(
お
)
し方が素直なのだろう。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
忽
(
たちま
)
ち、
潮
(
うしほ
)
は
泡立
(
あわだ
)
ち、
波
(
なみ
)
は
逆卷
(
さかま
)
いて、
其邊
(
そのへん
)
海嘯
(
つなみ
)
の
寄
(
よ
)
せた
樣
(
やう
)
な
光景
(
くわうけい
)
、
私
(
わたくし
)
は
一生懸命
(
いつせうけんめい
)
に
鐵鎖
(
てつさ
)
を
握
(
にぎ
)
り
詰
(
つ
)
めて、
此處
(
こゝ
)
千番
(
せんばん
)
に
一番
(
いちばん
)
と
氣
(
き
)
を
揉
(
も
)
んだ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
苺
(
いちご
)
の
色
(
いろ
)
の
薔薇
(
ばら
)
の花、
可笑
(
をか
)
しな罪の恥と
赤面
(
せきめん
)
、
苺
(
いちご
)
の色の
薔薇
(
ばら
)
の花、おまへの
上衣
(
うはぎ
)
を、ひとが
揉
(
も
)
みくちやにした、
僞善
(
ぎぜん
)
の花よ、
無言
(
むごん
)
の花よ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
これは源氏がわざと自分の鼻のあたまへ
紅
(
べに
)
を塗って、いくら
拭
(
ふ
)
いても取れないふりをして見せるので、当時十一歳の
紫
(
むらさき
)
の
上
(
うえ
)
が気を
揉
(
も
)
んで
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それから、のりは良質のもの——焼きのりでもよい——を、細かく
揉
(
も
)
んでかける。四角に切ったのを、一枚のせたりするのは感心しない。
雑煮
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
そういううちにも、なだれを打って逃げ迷ってくる半狂乱の人々に押されて
揉
(
も
)
まれて、二人も幾たびか突き
顛
(
こか
)
されそうになった。
半七捕物帳:29 熊の死骸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
であるから、必ず流れを遡る若鮎の群れには大きな鱒がつきまとい、瀬際の
揉
(
も
)
み合わせに鱒が跳躍するところには必ず若鮎の大群がいた。
利根川の鮎
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
看護婦の腕の下から寢臺の上に見えるものは、何だか小さな肉塊やうのもので、それを醫員が
頻
(
しきり
)
に
揉
(
も
)
んだり
搖
(
ゆす
)
つたりしてゐるのであつた。
嘘をつく日
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
安二郎を見る眼つきが変った。安二郎の背中で拳骨を振りまわした。
憂鬱
(
ゆううつ
)
にもなった。母は毎晩安二郎の肩をいそいそと
揉
(
も
)
んだ。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
慌
(
あわ
)
てふためいた老人は、何を考える暇もなく、いきなり
閂
(
かんぬき
)
をはずして板戸をひらき、火焔を
揉
(
も
)
み消すために、室内に
駈
(
か
)
け込んだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と
老爺
(
じじい
)
は泰然たる
返答
(
へんじ
)
をして、風呂場を見に行った。乃公は
錐
(
きり
)
で
揉
(
も
)
んだ穴を見つけられると困るから、直ぐ二階へ上って本を読み始めた。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
どうぞして
物
(
もの
)
にせうと
氣
(
き
)
を
揉
(
も
)
まっしゃるのぢゃが、あのよな
人
(
ひと
)
に
逢
(
あ
)
ふよりは、
予
(
わし
)
ゃ
蟾蜍
(
ひきがへる
)
に
逢
(
あ
)
うたはうが
優
(
まし
)
ぢゃ、と
言
(
い
)
うてな、あの
蟾蜍
(
ひきがへる
)
に。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
せめて
家
(
いへ
)
の
人
(
ひと
)
に
逢
(
あ
)
つて、ものをいはうとしても、それさへ
取
(
と
)
り
合
(
あ
)
つてくれぬ
始末
(
しまつ
)
で、
人々
(
ひと/″\
)
はいよ/\
氣
(
き
)
を
揉
(
も
)
んで
騷
(
さわ
)
ぐのでした。
竹取物語
(旧字旧仮名)
/
和田万吉
(著)
修験者の
珠数
(
じゅず
)
を押し
揉
(
も
)
んで
祈祷
(
きとう
)
する傍には、長者の一人
女
(
むすめ
)
と、留守を
預
(
あずか
)
っている宇賀一門の老人達が二三人坐っておりました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
女主人と同じように彼女の母親もそんな
悪足
(
わるあし
)
のような男がついているのをひどく心配して二人の仲を切ろうとしていろいろ気を
揉
(
も
)
んでいた。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
彼らの表情は
揉
(
も
)
みくちゃになり険しい影をきざんで変貌きわまりないのだ。足もとの砂はめらめらと赤くなり、はたと夜に
呑
(
の
)
まれたりした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「へえ、その為に君は出て来たんですか。そんなに大騒ぎしなくても可いことでしょう。豊世さんもあんまり気を
揉
(
も
)
み過ぎる」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
どんなに痛いことだろう。つまらない我慢をしてゴッソリ丸坊主になったらどうしよう——と、お絃は一人で気を
揉
(
も
)
んでいる。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「うむ、それは心配だらう。能く有る事だ。然し、飯も食はずに気を
揉
(
も
)
んでゐるとは、どう云ふ
伴
(
つれ
)
なのかな。——
年寄
(
としより
)
か、
婦
(
をんな
)
ででもあるか」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
で大変私共も気を
揉
(
も
)
んだのですが、当の川口は、あの通りの非常な勉強家でして、仕事にばかり没頭していて、サッパリ気がつかないのです。
闖入者
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
額際
(
ひたいぎわ
)
とか、
揉
(
も
)
み上げのようなところは金平糖が小さいので、それは別に
頃合
(
ころあ
)
いの笊を注文して、頭へ一つ一つ
釘
(
くぎ
)
で打ち附けて行ったものです。
幕末維新懐古談:63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
たちまちパッと飛び出して裏手で
揉
(
も
)
み合う烈しい音がする。イスカーキの
罵
(
ののし
)
り声が聞える。急いで着物を引っかけてあがる。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
『誠に濟まんことを致しました。
何
(
な
)
んなら次ぎの
下
(
くだ
)
りでお
引
(
ひ
)
ツ
返
(
か
)
へし下さりましたら。』と、車掌は
無恰好
(
ぶかつかう
)
に
揉
(
も
)
み手をした。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
松王様はゆきなりお文を一くるみに荒々しく押し
揉
(
も
)
まれて、そのまま
懐
(
ふところ
)
ふかく押し込まれると、つとこちらを振り向かれて
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
若い
白瓜
(
しろうり
)
の心を抜き、
青紫蘇
(
あおじそ
)
を塩で
揉
(
も
)
んで詰めて押したのは、
印籠漬
(
いんろうづけ
)
といって喜ばれましたが、
雷干
(
かみなりぼし
)
は
日向
(
ひなた
)
臭いといって好まれませんかった。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
弟子たちは風波に
揉
(
も
)
まれながら漕ぐけれども、自分の舟を進ませることもできず、世界・国家を進ませることもできません。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
冷やかに主人の態度をかえりみた夫人は突立ったまま、両手を静かに
揉
(
も
)
み合わせた。冴え切った微笑を含み含み天下無敵の
科白
(
せりふ
)
を並べ初めた。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
まだ冬枯れのままの延び放題な、そして風に
捻
(
ひね
)
られ
揉
(
も
)
みたてられたまま茫々として、いかにも荒れた感じだ。そのあたりでは風がまだ相当強い。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
運動場の隅の機械体操の砂場に取組み合って倒れたまま
暫
(
しばら
)
く
揉
(
も
)
み合っている中に、苦もなく私は彼を組敷くことが出来た。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
花婿は
揉
(
も
)
み手して、てれていた。メロスは笑って村人たちにも
会釈
(
えしゃく
)
して、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。
走れメロス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
宮がお読みになる時に盗み見をしたいと願っているのであるが、宮はお開きになろうともあそばされないのに気を
揉
(
も
)
んで
源氏物語:39 夕霧一
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ああやってせっかく気を
揉
(
も
)
んで使をよこすと、片っ端からいらないいらないじゃあ、誰にしろいい心持あしないもんです。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「あっはっは、こりゃおもしろい。聴くよお。」と庄亮は、両肩から首を振って、豪傑笑いをすると、両手を蠅のごとくに頭の上で
揉
(
も
)
み上げた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
揉
漢検1級
部首:⼿
12画
“揉”を含む語句
揉合
揉上
揉療治
揉手
一揉
揉烏帽子
錐揉
揉事
揉苦茶
揉込
揉消
大揉
揉立
揉潰
内輪揉
押揉
揉出
揉抜
揉落
揉殺
...