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手持無沙汰
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てもちぶさた
ふりがな文庫
“
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)” の例文
この時分は
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
でさえあればにやにやして済ましたもんだ。そこへ行くと安さんは自分より
遥
(
はる
)
か
世馴
(
よな
)
れている。この
体
(
てい
)
を見て
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それも
神様
(
かみさま
)
のお
使者
(
つかい
)
や、
大人
(
おとな
)
ならば
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も、
斯
(
こ
)
うした
小供
(
こども
)
さんの
場合
(
ばあい
)
には、いかにも
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
で
甚
(
はなは
)
だ
当惑
(
とうわく
)
するのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
折角
(
せっかく
)
楽みに来ても、楽めないでいるような客の前には、中年の女が
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に銚子を振って見て、恐れたり震えたりした。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
着車時間は迫りけれども停車場内
寂
(
せき
)
として急に汽車の着すべき様子も見えず。大原は待合室に入りて人を待つ間の
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に独り未来の事を想像する
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
なんとなく面白くなって、ニヤニヤしていたが、間もなく
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
になって、となりの部屋のほうへむかって
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
再三辞するもきかず一室に
招
(
しょう
)
ぜられた兵馬は、そこに坐って
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に待っていながら、つらつらこの家の有様を見ると、別に男の
気配
(
けはい
)
も見えないし
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
客は
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
、お杉も
為
(
せ
)
ん
術
(
すべ
)
を心得ず。とばかりありて、次の
室
(
ま
)
の
襖越
(
ふすまごし
)
に、勿体らしい
澄
(
すま
)
したものいい。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
時々妻と交替に附き添いにやって来た長女は、何も用事がないので、初めは少し
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
のようであった。それで或る日、『ロスト・ワールド』を持ってやって来た。
イグアノドンの唄:――大人のための童話――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「何をあんなに吠えるのだろう。」と、
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
の市郎は、
之
(
これ
)
を
機
(
しお
)
に
起上
(
たちあが
)
って
門
(
かど
)
へ出た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一時を快くする暴言も
竟
(
つひ
)
に
曳
(
ひか
)
れ
者
(
もの
)
の
小唄
(
こうた
)
に過ぎざるを
暁
(
さと
)
りて、
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に
鳴
(
なり
)
を鎮めつ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
牛のような青年は、女がたくさんいるテーブルに、同性とダブって並ばされたので、無意識にも
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
らしく、ときどきかの女とロザリと並んでいるのを少し乗り出して横眼で見た。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
矢張潜戸を背中にして、
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に立つてゐる太吉に、荒川はかう云つた。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
車室の
床
(
ゆか
)
の上に目を落したまま、
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に彼の
麦稈帽子
(
むぎわらぼうし
)
を
弄
(
もてあそ
)
んでいた。
蝗の大旅行
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
ヂョオジアァナは一時間毎に彼女のカナリアに
他愛
(
たあい
)
もないことを
喋
(
しや
)
べつてゐて、私を振り向きもしなかつた。しかし私はすることや
樂
(
たの
)
しみがなくて
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に見えないやうにしようと決心してゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
例の曹長は側に立ちて
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
にこれを見つつあり。
従軍紀事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
夫人も小間使も、
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
の数秒間。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
立て奧へ入しが
暫
(
しばら
)
く
有
(
あり
)
て出來り兩人に
向
(
むか
)
ひ御口上の
趣
(
おもむ
)
き上へ
伺
(
うかゞ
)
ひしに
御意
(
ぎよい
)
には町奉行の役宅は
非人
(
ひにん
)
科人
(
とがにん
)
の出入致し
穢
(
けがら
)
はしき場所の
由
(
よし
)
左樣の
不淨
(
ふじやう
)
なる屋敷へは予は參る身ならず
用事
(
ようじ
)
と
有
(
あら
)
ば日向守殿に此方へ來られよとの
御意
(
ぎよい
)
なれば
此段
(
このだん
)
日向守殿へ
御達
(
おんたつ
)
し下されと
言捨
(
いひすて
)
て奧へぞ入たり兩人は
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
據
(
よんど
)
ころなく
立歸
(
たちかへ
)
り右の次第を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
どうもやかましくて騒々しくってたまらない。そのうちで
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に下を向いて考え込んでるのはうらなり君ばかりである。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その旅の男は、兵馬を尋ねる人でないと知って、
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
にあちらへ
摺
(
す
)
り抜けてしまいます。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
こういう話をして居る間、お仙は
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に
起
(
た
)
ったり坐ったりして、時には親達の話の中で解ったと思うことが有る度に、
独
(
ひと
)
り
微笑
(
ほほえ
)
んだりしていたが、つと母の傍へ寄った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
中川
打笑
(
うちわら
)
い「イヤ、こういう御馳走に薬味壺は出さんよ。ウシターソースをかけなければ食べられんようなお料理はないから安心し給え」と説明されて若紳士
大
(
おおい
)
に
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
なり。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
また泣き出したを
揺
(
ゆす
)
りながら、女房は
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に
清
(
すず
)
しい目を
睜
(
みは
)
ったが
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私
(
わたくし
)
が
近
(
ちか
)
づいて、そう
言葉
(
ことば
)
をかけましたが、
敦子
(
あつこ
)
さまは、ただ
会釈
(
えしゃく
)
をしたのみで、
黙
(
だま
)
って
下方
(
した
)
を
向
(
む
)
いた
切
(
き
)
り、
顔
(
かお
)
の
色
(
いろ
)
なども
何所
(
どこ
)
やら
暗
(
くら
)
いように
見
(
み
)
えました。
私
(
わたくし
)
はちょっと
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に
感
(
かん
)
じました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
芸妓は
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
になって
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
二人は
黙然
(
もくねん
)
として相対した。僕は
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に
煙草盆
(
たばこぼん
)
の
灰吹
(
はいふき
)
を叩いた。市蔵はうつむいて
袴
(
はかま
)
の
膝
(
ひざ
)
を見つめていた。やがて彼は
淋
(
さみ
)
しい顔を上げた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
藪
(
やぶ
)
から棒に、誰に向って、こんなことを言いかけたのか、米友としても、ちょっと途方に暮れて、忙がわしく前後左右を見渡したけれども、自分のほかに
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
でいる人っ子はないから、多分
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
軽い
挨拶
(
あいさつ
)
が二人の間に起った。しかしそれが済むと話はいつものように続かなかった。二人とも
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に圧迫され始めなければならなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
竜之助はその不審に答えなかったから、老爺は
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
で
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし普通の場合に起る
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
の感じの代りに、かえって一種の気楽さを味わった彼には何の苦痛も
来
(
こ
)
ずにすんだ。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
人混みの中へ鉄砲は打ち込めないから
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
敬太郎はただ
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
の
徒事
(
いたずら
)
とばかり思って、別段意にも
留
(
とど
)
めなかったが、婆さんは丹念にそれを五六寸の長さに
縒
(
よ
)
り上げて、文銭の上に
載
(
の
)
せた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
なのは
鉛筆
(
えんぴつ
)
の
尻
(
しり
)
に着いている、
護謨
(
ゴム
)
の頭でテーブルの上へしきりに何か書いている。野だは時々山嵐に話しかけるが、山嵐は一向応じない。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
津田は
挨拶
(
あいさつ
)
に窮した。向うの口の
重宝
(
ちょうほう
)
なのに比べて、自分の口の
不重宝
(
ぶちょうほう
)
さが荷になった。彼は
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
の気味で、
緩
(
ゆる
)
く消えて行く葉巻の煙りを見つめた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
Hさんは黙って
煙草
(
たばこ
)
を吹かし出した。自分は
弱輩
(
じゃくはい
)
の癖に多少云い過ぎた事に気がついた。
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
の感じが強く頭に上った。Hさんは庭の方を見ていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いかな坊っちゃんも、あまり
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
過ぎて困っちまったから、思い切って、のこのこ下りて行った。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その上いくら
相槌
(
あいづち
)
を打とうにも打たれないような変な見当へ向いて進んで行くばかりであった。
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
な彼は、やむをえず二人の顔を見比べながら、時々庭の方を眺めた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
なので、向うで
御這入
(
おはい
)
りというまで、黙って
門口
(
かどぐち
)
に立っていた
滑稽
(
こっけい
)
もあった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
小六
(
ころく
)
が
引
(
ひ
)
き
移
(
うつ
)
る
迄
(
まで
)
は、こんな
結果
(
けつくわ
)
が
出
(
で
)
やうとは、
丸
(
まる
)
で
氣
(
き
)
が
付
(
つ
)
かなかつたのだから
猶更
(
なほさら
)
當惑
(
たうわく
)
した。
仕方
(
しかた
)
がないから
成
(
な
)
るべく
食事中
(
しよくじちゆう
)
に
話
(
はなし
)
をして、
責
(
せ
)
めて
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
な
隙間
(
すきま
)
丈
(
だけ
)
でも
補
(
おぎな
)
はうと
力
(
つと
)
めた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
酒を飲まないで、
肴
(
さかな
)
を突っついて
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
であった。スキ焼があらわれても、胃の加減で
旨
(
うま
)
くも何ともなかった。天下に何が旨いってスキ焼ほど旨いものは無いと思うがねと田中君が云った。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
唇に
笑
(
えみ
)
を帯びたのは、半ば無意識にあらわれたる、心の波を、
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に草書に
崩
(
くず
)
したまでであって、崩したものの尽きんとする
間際
(
まぎわ
)
に、崩すべき第二の波の来ぬのを
煩
(
わずら
)
っていた折であるから
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
広い
寄席
(
よせ
)
の真中にたった一人取り残されて、楽屋の
出方
(
でかた
)
一同から、冷かされてるようなものだ、
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
は無論である。ことさら今の自分に取っては心細い。のみならず
袷
(
あわせ
)
一枚ではなはだ寒い。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
葬式が出る
間際
(
まぎわ
)
になって、僕は着物を着換えさせられたまま、
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
だから、一人
縁側
(
えんがわ
)
へ出て、
蒼
(
あお
)
い空を
覗
(
のぞ
)
き込むように
眺
(
なが
)
めていると、
白無垢
(
しろむく
)
を着た母が何を思ったか不意にそこへ出て来た。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
活躍の
児
(
じ
)
は一句にして
挨拶
(
あいさつ
)
と紹介を
兼
(
かね
)
る。宗近君は忙しい。甲野さんは依然として額を支えて立ったままである。小野さんも
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に席に着かぬ。小夜子と糸子はいたずらに丁寧な
頭
(
つむり
)
を下げた。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
小六が引き移るまでは、こんな結果が出ようとは、まるで気がつかなかったのだからなおさら当惑した。仕方がないからなるべく食事中に話をして、せめて
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
な
隙間
(
すきま
)
だけでも補おうと
力
(
つと
)
めた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
世を
投
(
な
)
げ
遣
(
や
)
りのだらりとした姿の上に、義理に着る羽織の
紐
(
ひも
)
を丸打に結んで、細い杖に
本来空
(
ほんらいくう
)
の
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
を
紛
(
まぎ
)
らす甲野さんと、近づいてくる小野さんは
塀
(
へい
)
の
側
(
そば
)
でぱたりと逢った。自然は対照を好む。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に写生帖を、火にあてて
乾
(
かわ
)
かしながら
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
我輩も少々
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
である。
倫敦消息
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
持
常用漢字
小3
部首:⼿
9画
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
沙
常用漢字
中学
部首:⽔
7画
汰
常用漢字
中学
部首:⽔
7画