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たわむ
ふりがな文庫
“
戯
(
たわむ
)” の例文
旧字:
戲
後醍醐にたいしてはずいぶん俗にいう“姉さん女房”であった廉子も、親房へは、かりそめにも異議はおろか
戯
(
たわむ
)
れ一ついえなかった。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
思うておるのに、
呑気
(
のんき
)
らしゅう不義の
戯
(
たわむ
)
れに遊びほうけておるとは何のことか! 見苦しい姿見とうもない! 早々に両名共追放せい!
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
身体中に
縞
(
しま
)
を作った湯の河が、桃色の曲面をツルツルと、
戯
(
たわむ
)
れる様に滑り落ち、それを柔かい電燈の光が、楽しげに愛撫していた。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
地蔵の姿を悪魔の姿と見た神尾の眼には、これは正銘の悪魔だ、悪魔の
戯
(
たわむ
)
れだ。悪魔の戯れにしても、これはあまり度が強過ぎる。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし、それは決して概念の
戯
(
たわむ
)
れではなかった。彼は少くとも真に彼自身の弱さを知り、心からへり下りたい気持になっていたのである。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
▼ もっと見る
餘念
(
よねん
)
もなく
戯
(
たわむ
)
れて
居
(
を
)
るので、
私
(
わたくし
)
は
一人
(
ひとり
)
室内
(
しつない
)
に
閉籠
(
とぢこも
)
つて、
今朝
(
けさ
)
大佐
(
たいさ
)
から
依頼
(
いらい
)
された、
或
(
ある
)
航海學
(
かうかいがく
)
の
本
(
ほん
)
の
飜譯
(
ほんやく
)
にかゝつて
一日
(
いちにち
)
を
暮
(
くら
)
してしまつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
明
(
あか
)
りがつくと連れの男にひそひそ
戯
(
たわむ
)
れて居る様子は、傍に居る私を普通の女と
蔑
(
さげす
)
んで、別段心にかけて居ないようでもあった。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この程度の不思議ならば、まだこれを受け入れる力があり、驚きはするが疑う者はなく、まして
戯
(
たわむ
)
れのこしらえ事と思う者はなお無かった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
祭の日などには舞台据えらるべき
広辻
(
ひろつじ
)
あり、貧しき家の児ら
血色
(
ちいろ
)
なき顔を
曝
(
さら
)
して
戯
(
たわむ
)
れす、
懐手
(
ふところで
)
して立てるもあり。ここに来かかりし
乞食
(
こじき
)
あり。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
と云うのは、二人とも二十まえのことであったが、ふとした魔の
戯
(
たわむ
)
れから、一夜山下久米八を犯してしまったのであるから。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
彼は眼前に犬と
戯
(
たわむ
)
れている、十六人の女たちを見るが早いか、
頭椎
(
かぶつち
)
の太刀を引き抜きながら、この女たちの
群
(
むらが
)
った中へ、我を忘れて突進した。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
宮部
戯
(
たわむ
)
れて曰く、「君何ぞそれ商骨に
饒
(
と
)
む、一にここに到る」と。彼れ
艴然
(
ふつぜん
)
刀柄
(
とうへい
)
を
擬
(
ぎ
)
して曰く、「何ぞ我を侮辱するや」と。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
しかしそれはいずれも三十前後の時の
戯
(
たわむ
)
れで、当時の記憶も今は
覚束
(
おぼつか
)
なく、ここに識す地名にも誤謬がなければ幸である。
葛飾土産
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
もし
此
(
かく
)
の如き題をものしてしかも多少の文学的風韻あらしめんとするは老熟の上の
戯
(
たわむ
)
れなり。初学の企て及ぶ所にあらず。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
見る。
擾乱
(
じょうらん
)
を呼ぶ。刃元にうかぶ一線の乱れ焼刃。女髪剣、必ずともに、その女髪に心惹かれて、
戯
(
たわむ
)
れにも鯉口を押し拡げるでないぞ。よいか。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
清三は廊下の柱によりかかって、無心に
戯
(
たわむ
)
れ遊ぶ生徒らにみとれていた。そこにやって来たのは、関という教員であった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
危ねえ、間抜け
奴
(
め
)
ッと、いつもの調子でやらかすと、無礼者ッ、通行の女に
戯
(
たわむ
)
れるとは不都合千万、それへ直れ、ピカリと来た、——親分の前だが
銭形平次捕物控:035 傀儡名臣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私はその男の寂しい笑顔を見ると、自分と珪次があんなに突き詰めて情熱を籠めて行動して来た生活が、まるで浮いた
戯
(
たわむ
)
れのように顧られました。
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「ええ、つべこべとさえずる女め、おのれら売女の分際で、武士に向って仮りにも兄嫁呼ばわり、
戯
(
たわむ
)
れとて容赦せぬぞ」
鳥辺山心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「奥さん! 何うか記憶して置いて下さい! 僕には妻がありますから、家庭がありますから、貴女の危険なお
戯
(
たわむ
)
れのお相手は出来ませんから。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それはどこからうつしたものか、彼と妻君との
戯
(
たわむ
)
れが
長尺物
(
ちょうじゃくもの
)
になって、スクリーンの上にうつし出されたではないか!
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
其内外の趣意を濫用して、男子の戸外に奔走するは実業経営社会交際の為めのみに非ず、其経営交際を名にして酒を飲み花柳に
戯
(
たわむ
)
るゝ者こそ多けれ。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
序幕山崎街道
立場
(
たてば
)
の場は明智の雑兵の乱暴を
羽柴
(
はしば
)
の侍が制する処なるが合戦中の事としては、百姓が
長閑気
(
のどか
)
に酒を呑み女に
戯
(
たわむ
)
るるなど無理なる筋多し。
明治座評:(明治二十九年四月)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
「オイ、オイ」と三吉は自分の子供にでも
戯
(
たわむ
)
れるように言った。「そうお前達のように馬鹿にしちゃ困るぜ……これでも叔父さんは
金鵄
(
きんし
)
勲章の積りだ」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
神籤
(
みくじ
)
に何の執着もなかったお延は、突然こうして継子と
戯
(
たわむ
)
れたくなった。それは結婚以前の処女らしい自分を、彼女に
憶
(
おも
)
い起させる
良
(
い
)
い
媒介
(
なかだち
)
であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
メリーは前の飼主のことを思い出しているのではなかろうかと
僻
(
ひが
)
んだことを考えたりしていると、メリーは私の気持を察したかのように私に
戯
(
たわむ
)
れかかり
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
さまざまとお
戯
(
たわむ
)
れのようすなので、ご本意もはかりかねて、当惑いたしました……さきほど鶴鍋などとおっしゃいましたが、伺っておりますところでは
西林図
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
流れの落ち込みに、自然のままに山女魚や岩魚が
戯
(
たわむ
)
れている。人ずれしない魚は、誰の鈎にもたやすく掛かる。
雪代山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
海
(
うみ
)
は、
人間
(
にんげん
)
の
話
(
はなし
)
などは、
耳
(
みみ
)
にはいらないように、
朗
(
ほが
)
らかな
顔
(
かお
)
をして、
笑
(
わら
)
っていました。そして
白
(
しろ
)
い
波
(
なみ
)
は、
力
(
ちから
)
いっぱいで
走
(
はし
)
っている
船
(
ふね
)
のまわりで
戯
(
たわむ
)
れていました。
船の破片に残る話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
これほどの事件が起こっても、建物の中で酔い乱れ、
戯
(
たわむ
)
れている人々にはわからなかったと見え、無数の建物から無数の人声が、陽気に華やかに聞こえて来た。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
四、五間向うに、数羽の
雛
(
ひな
)
とともに
戯
(
たわむ
)
れている雷鳥、
横合
(
よこあい
)
から不意に案内者が石を投じて、
追躡
(
ついじょう
)
したが、
命冥加
(
いのちみょうが
)
の彼らは、遂にあちこちの岩蔭にまぎれてしまう。
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
白布
(
しろぬの
)
にて
蔽
(
おお
)
うたる一個の
小桶
(
こおけ
)
を小脇に、柱をめぐりて、内を
覗
(
のぞ
)
き、女童の
戯
(
たわむ
)
るるを
視
(
み
)
つつ破顔して笑う
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は、この
戯
(
たわむ
)
れにこたえる方法を知らなかつた。彼は、いつまでも、無感覚を
装
(
よそお
)
うよりほかなかつた。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
五時より六時の間なりしが例の如く珈琲館にて
戯
(
たわむ
)
れ
居
(
い
)
たるに、衣類も
穢
(
むさ
)
くるしく
怪
(
あや
)
しげなる男
一人
(
いちにん
)
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
自己の経験をかえりみて百年があいだ
胡蝶
(
こちょう
)
となって花の上に
戯
(
たわむ
)
れてのち驚き
覚
(
さ
)
めたるごとく言った。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
氏は国民の団結を造りて、これが総代となり、時の政府に国会開設の請願をなし、諸県に先だちて民衆の迷夢を破らんとはなしぬ。当時母上の
戯
(
たわむ
)
れに物せし
大津絵
(
おおつえ
)
ぶしあり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
故作家と生前、特に親交あり、いま、その作家を追慕するのあまり、彼の
戯
(
たわむ
)
れにものした絵集一巻、上梓して
内輪
(
うちわ
)
の友人親戚間にわけてやるなど、これはまた自ら別である。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一夜の遊女に
戯
(
たわむ
)
れるなぞというのではなく、軽率な感傷に
豪毅
(
ごうき
)
な精神を忘れたあげく、いっそあの女とこの土地に土着してしまったら
痴呆
(
ちほう
)
のように安楽であろうと考えるのだ。
流浪の追憶
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「
年来
(
としごろ
)
の
大内住
(
うちずみ
)
に、
辺鄙
(
いなか
)
の人は
将
(
はた
)
うるさくまさん、かの
御
(
おん
)
わたりにては、何の中将、宰相などいうに添いぶし給うらん、今更にくくこそおぼゆれ」などと云って
戯
(
たわむ
)
れかかると
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
二人の仲の好い
成人
(
おとな
)
が、子供の片言のようなことをしゃべり合って、何時間もの長い間、笑ったり
戯
(
たわむ
)
れたりしている風景こそ、おそらく真にフェアリイランド的であったろう。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そうして
最早
(
もはや
)
、スッカリ原始生活に慣れ切っている久美子と、四人の子供達が、澄み切った真夏の太陽の下で、
丸裸体
(
まるはだか
)
のまま遊び
戯
(
たわむ
)
れている姿を、そこいらのトド松の蔭から
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼は彼が純粋な生活に入ろうとすればするほど、利己的な工夫や感傷的な
戯
(
たわむ
)
れやこざかしい技巧がいよいよ多くの誘惑と強要をもって彼を妨げるのを痛感しなければならない。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
心に
叶
(
かな
)
う男もないまま、ただひたすらに芸道にのみ
想
(
おもい
)
を浸し、語りものの中の男女の情けの
戯
(
たわむ
)
れは、おのが想いをのみ込ませて、舞台の恋を真の恋と思い
倣
(
なら
)
して居りましたゆえ
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
曇った秋の午後のアプスは寒く淋しく暗み
亘
(
わた
)
っていた。ステインド・グラスから漏れる光線は、いくつかの細長い窓を暗く
彩
(
いろど
)
って、それがクララの髪の毛に来てしめやかに
戯
(
たわむ
)
れた。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
事の起りは電車の中で無頼漢が婦人に
戯
(
たわむ
)
れかゝったのであります。堀尾君は言葉穏かに注意したのです。ところが相手は浮浪無頼の徒ですから、好い幸いに喧嘩を売りかけました。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
八
人
(
にん
)
の
少女
(
おとめ
)
たちはややしばらく
水
(
みず
)
の中で、のびのびとさも
気持
(
きも
)
ちよさそうに、おさかなのように
泳
(
およ
)
ぐ
形
(
かたち
)
をしたり、
小鳥
(
ことり
)
のように
舞
(
ま
)
う
形
(
かたち
)
をしたりして、
余念
(
よねん
)
なく
遊
(
あそ
)
び
戯
(
たわむ
)
れていましたが
白い鳥
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
そういう夜には、彼はベランダからぬけ出し夜の
園丁
(
えんてい
)
のように花の中を歩き廻った。湿った芝生に抱かれた池の中で、一本の噴水が月光を散らしながら周囲の石と花とに
戯
(
たわむ
)
れていた。
花園の思想
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
それはホンの
戯
(
たわむ
)
れに過ぎなかった。まさか石が人語を発しようとは思わなかった。
丹那山の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
その間に裸の人(童子?)の
棹
(
さお
)
さしている宝船が、精巧な台と小さな仏をのせて静かに浮かんでいる。水のなかにはまた蓮花に乗ったり下りたりして手をあげて
戯
(
たわむ
)
れている童子がある。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
快いさわやかな風が、地上をさまよって、あらゆるものをそよがせながら、しかもざわつかせるほどではなく、適度にさやさやと
戯
(
たわむ
)
れていた。わたしは長いこと、山や森を歩き回った。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
戯
常用漢字
中学
部首:⼽
15画
“戯”を含む語句
悪戯
戯言
調戯
遊戯
戯談
戯謔
串戯
惡戯
児戯
冗戯
戯曲
悪戯盛
悪戯気
戯作
戯弄
戯場
博戯
悪戯児
演戯
悪戯好
...