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恐
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こわ
ふりがな文庫
“
恐
(
こわ
)” の例文
一週間の間、ルイザは
風邪
(
かぜ
)
をひいて室にこもった。クリストフとザビーネとは二人きりだった。最初の晩は、二人とも
恐
(
こわ
)
がっていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
恐
(
こわ
)
い、と思いだしたら居たたまれぬようなものがある。ここは名からして羅刹谷であり、多くの死者が眠っている
鳥部野
(
とりべの
)
もほど近い。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
怨死
(
うらみじに
)
じゃの。こう髪を
啣
(
くわ
)
えての、
凄
(
すご
)
いような美しい
遊女
(
おいらん
)
じゃとの、
恐
(
こわ
)
いほど品の
好
(
い
)
いのが、それが、お前こう。」と口を
歪
(
ゆが
)
める。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
叱られるのが
恐
(
こわ
)
かったり、今更云い出しにくかったりして、誰も気が付かないのをいゝ事に、何処迄も知らん顔で済ましてしまう。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一向
(
いっこう
)
人も来ないようでしたからだんだん私たちは
恐
(
こわ
)
くなくなってはんのきの下の
萱
(
かや
)
をがさがさわけて
初茸
(
はつたけ
)
をさがしはじめました。
二人の役人
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
▼ もっと見る
「もうすぐ空襲が始るそうですが、
恐
(
こわ
)
いですわね。」と梶の妻が云うと、「一機も入れない」と栖方は云ってまたぱッと笑った。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「あいつらの言うことを全部信用しちゃいけませんぜ。なにせ笞が
恐
(
こわ
)
くて少し頭が変になっているんだから。たとえば、ここのこの男が」
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
行きは、よいよい帰りは
恐
(
こわ
)
い、と子供の
頃
(
ころ
)
うたう
童謡
(
どうよう
)
があります。あの歌のように人生、行きと帰りとではずいぶん気持が
違
(
ちが
)
うものです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「その
通
(
とお
)
り。——お
上
(
かみ
)
さん。
太夫
(
たゆう
)
の
人気
(
にんき
)
は
大
(
たい
)
したもんでげすぜ。これからァ、
何
(
な
)
んにも
恐
(
こわ
)
いこたァねえ、
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
勢
(
いきお
)
いでげさァ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
宇治橋のお三の間で眺めた月は——といいたかったが、それは誰と見たときかれるのが
恐
(
こわ
)
くって、お雪は、ふっと、口をつぐんでしまった。
モルガンお雪
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
もうかれとても
自家
(
おのれ
)
の運命の末がそろそろ
恐
(
こわ
)
くなって来たに違いない。およそ自分の運命の末を恐がるその恐れほど
惨痛
(
さんつう
)
のものがあろうか。
まぼろし
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
外見はちょっと
恐
(
こわ
)
らしいが、これも案外親切ものでね。お前さんさえ
諾
(
うん
)
といったらそれこそ二人で可愛がって、堪能させるのは受け合いだ。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
世間の猫はコソコソ忍び足で近づいては、油断を見済まして
引攫
(
ひっさら
)
うものだが、二葉亭の猫は叱られた事がないから
恐
(
こわ
)
いという事を知らない。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
人に、君は幽霊と妖怪とどっちが
恐
(
こわ
)
いといって聞くと大ていは幽霊の方がこわい、妖怪はむしろ可愛い気分があると答える。
ばけものばなし
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
藪
(
やぶ
)
や松林のうちつづく暗い峠道でも、巳之助はもう
恐
(
こわ
)
くはなかった。花のように明かるいランプをさげていたからである。
おじいさんのランプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
しかしながら
恐
(
こわ
)
いもの見たさという
譬
(
たと
)
えのとおり、私はこわごわそッと目を
開
(
あ
)
いてみました。すると、ああ、なんという不思議なことでしょう。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あたしは犬の娘じゃない、
狼
(
おおかみ
)
の娘だよ。お前さんたちは六人だが、それが何だね。お前さんたちは男だ。そしてあたしは女さ。だが
恐
(
こわ
)
かないよ。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
坊主の娘だという一番
年嵩
(
としかさ
)
の、顔は
恐
(
こわ
)
いが新内は名取で、歌沢と常磐津も自慢の福太郎が、そういう時きっと呼ばれて、
三味線
(
しゃみせん
)
を
弾
(
ひ
)
くのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
指端
(
ゆびさき
)
の痛くなるほど力を入れてそれを
外
(
はず
)
し、雨戸へ手をかけたが、
得体
(
えたい
)
の知れない怪物が戸の外に立っているような気がするので、
恐
(
こわ
)
ごわ開けた。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
するとお宮は、「おう
恐
(
こわ
)
い人‼」と、呆れたようにいって蒲団の端の方に身を
退
(
の
)
いて、
背後
(
うしろ
)
に
扭
(
ね
)
じ向いて私の方を見た。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
お京から、おれは、オンテレ・メンピン、女房が
恐
(
こわ
)
いのじゃろう、といわれたことがあるが、このとき、おれは考えた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
富の分配の不平等に社会の欠陥を見て、生産機関の公有を主張した、社会主義が何が
恐
(
こわ
)
い? 世界のどこにでもある。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
細木夫人はその瞬間、自分の方を
睨
(
にら
)
んでいる、一人の見知らぬ少女の、そんなにも
恐
(
こわ
)
い眼つきに驚いたようだった。
聖家族
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
べつに、彼の自殺が
恐
(
こわ
)
かったのではない。くどくどと思いつづけながら、突然、それとは無関係な、全身のひきしまるようなある理解がきた。そうだ。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
すーっと落ちていく。とても
恐
(
こわ
)
いんだ。あんな時、石ころでも棒ぎれでもいいから、手にしっかり握りしめていたら、そんなに恐くないかも知れないよ。
霧の中:――「正夫の世界」――
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
といいましたが、
兄
(
にい
)
さんは
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
わないので、
女
(
おんな
)
の
子
(
こ
)
が
横面
(
よこッつら
)
を
張
(
は
)
ると、
頭
(
あたま
)
がころりと
落
(
お
)
ちました。それを
見
(
み
)
ると、
女
(
おんな
)
の
子
(
こ
)
は
恐
(
こわ
)
くなって、
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
しました。
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
後に俳句の研究者になってどんな新しい方面に足を踏み込むか、その事を考えてみると
恐
(
こわ
)
いような心持がする。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
かたなの手品だけに見物人は男が
主
(
おも
)
、女子供は数えるほどしかいない中に、
恐
(
こわ
)
らしい浪人頭がチラホラ見える。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
夕飯がすんで寝る頃になると、ヒョウヒョウと細い鳴き声が次第に屋敷のまわりへ近づいてくる。幼い私は、その声をきくと
恐
(
こわ
)
さに祖母の膝へしがみついた。
たぬき汁
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
手を振り声を潜め眼を円くして、古城で変な足音の聴えた事や、深林に
怪火
(
あやしび
)
の現われた事など、それから
夫
(
そ
)
れへと
巧
(
たくみ
)
に語るので、娘達は
恐
(
こわ
)
ければ恐い程面白く
黄金の腕環:流星奇談
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
私
(
わたし
)
もいつか
頼
(
たの
)
まれてそんなのをかえした
事
(
こと
)
があるけど、
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
子達
(
こたち
)
はみんな、どんなに
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
んで
直
(
なお
)
そうとしても、どうしても
水
(
みず
)
を
恐
(
こわ
)
がって
仕方
(
しかた
)
がなかった。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
森君は大人のような
智慧
(
ちえ
)
があって、何だか
恐
(
こわ
)
いけれども、一方ではとても優しい所があるから僕は
大好
(
だいすき
)
だ。
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「それはそうかも知れませんが、しかし
幾程
(
いくら
)
免職になるのが
恐
(
こわ
)
いと言ッて、私にはそんな
鄙劣
(
ひれつ
)
な事は……」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
こんな不気味な島の、暗闇の中で、ひょっとして、あなたが、実はお前を愛していないのだなんて、おっしゃりはしないかと思うと、私はもう
恐
(
こわ
)
くて
怖
(
こわ
)
くて……
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そんなに、
実家
(
おさと
)
を恋しがらなくてもいゝよ。親一人子一人のお父様に別れるのは
淋
(
さび
)
しいだろう。が、何も心配することはないよ。
俺
(
わし
)
を
恐
(
こわ
)
がらなくってもいゝよ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
が、林太郎はおっかさんに会いたい
一心
(
いっしん
)
から、もうあぶないことも
恐
(
こわ
)
いことも忘れてしまったのでした。
あたまでっかち
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
恐
(
こわ
)
いものを持っているぞ、これ見ろ、この長い刀をよく見ろ、伊達に差しているのではないぞ、抜けるのだぞ、抜けば斬るのだぞ、貴様のようなでぶといえども
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と、二人で
恐
(
こわ
)
がっておりますと、誰か来て戸を
叩
(
たた
)
く音が聞えました。「はてな、今時分」と、ついと私は立って参りまして、表の戸を明けて見れば——一面の
闇
(
やみ
)
。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
樹に近く来るとその人全身
痺
(
しび
)
れるほど怖ろしくなり銃を放ち能わず一生にかつてこんな
恐
(
こわ
)
い目に遭った事なしと(一八九四年十二月『フォークロール』二九六頁)
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
何しろ相手はあの調子の
恐
(
こわ
)
もてでくるしよ。ことわるにことわれず、村の者と一応相談してからというて戻って来ただよ。これ、どうしたらええかねえ。仙太郎さ?
斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
少し誇張して言えば、私は外へ出ても
無駄
(
むだ
)
だという以上に出るのが何か
恐
(
こわ
)
かった。といって、部屋にとどまっていても、そのうち精神が統一されようとも思われない。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
四季
(
しき
)
押通
(
おしとほ
)
し
油
(
あぶら
)
びかりする
目
(
め
)
くら
縞
(
じま
)
の
筒袖
(
つゝそで
)
を
振
(
ふ
)
つて
火
(
ひ
)
の
玉
(
たま
)
のやうな
子
(
こ
)
だと
町内
(
ちやうない
)
に
恐
(
こわ
)
がられる
亂暴
(
らんばう
)
も
慰
(
なぐさ
)
むる
人
(
ひと
)
なき
胸苦
(
むなぐる
)
しさの
餘
(
あま
)
り、
假
(
かり
)
にも
優
(
やさ
)
しう
言
(
い
)
ふて
呉
(
く
)
れる
人
(
ひと
)
のあれば
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
わたしは自分の読者に会ったことはなかったけれど、なぜかわたしの想像では、不愛想な疑ぐりぶかい人種のように思えましたね。わたしは世間というものが
恐
(
こわ
)
かった。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
初めは餘りに何もかにもが澄んでしんとしてゐて、生きて息をしてゐるのは自分ばかりで、自分の存在だけが際立つてゐて、
恐
(
こわ
)
いやうだが、次第にその世界にも慣れて來る。
続生活の探求
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
人手に渡すなどということはできるものでない。こんなに
恐
(
こわ
)
い気がするほど荒れていても、お父様の魂が残っていると思う点で、私はあちこちをながめても心が慰むのだからね
源氏物語:15 蓬生
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
今太郎
(
いまたらう
)
君は我知らず、かう叫びました。それは、かね/″\潜水夫たちに聞いてゐた、海の底に住むいろ/\の怪物のうちで、一番
恐
(
こわ
)
がられてゐる
大蛸
(
おほだこ
)
の仕業と分つたからです。
動く海底
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
はて
恐
(
こわ
)
いな。お前に恨まれたらば眠くなって来た。と善平はそのまま目を
塞
(
ふさ
)
ぐ。あれお休みなさってはいやですよ。私は淋しくっていけませんよ。と光代は進み寄って揺り動かす。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
爺さんは少しく不本意の気味で「いや、御泣きか、なに? 爺さんが
恐
(
こわ
)
い? いや、これはこれは」と感嘆した。仕方がないものだからたちまち
機鋒
(
きほう
)
を転じて、小供の親に向った。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その犬をなだめるのに大変な騒ぎで、エリスは
恐
(
こわ
)
がって、まっ蒼になっていました。
予謀殺人
(新字新仮名)
/
リチャード・オースティン・フリーマン
(著)
私はもう初め首の落っこって来た時から、
恐
(
こわ
)
くて恐くてぶるぶる
顫
(
ふる
)
えていました。
梨の実
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
恐
常用漢字
中学
部首:⼼
10画
“恐”を含む語句
恐怖
可恐
恐々
恐入
恐慌
恐懼
恐縮
恐竜
恐悦
恐喝
恐惶
恐気
恐多
空恐
恐山
恐惶謹言
恐悚
恐迫
大恐悦
恐怖心
...