霧の中きりのなか――「正夫の世界」――――「まさおのせかい」――
南正夫は、もう何もすることがなかった。無理を云って山の避暑地に九月半ばまで居残ったが、いずれは東京の家に、そして学校に、戻って行かなければならないのだ。なんだか変につまらない。ただ一人で、丘の斜面の草原の上に寝ころんでぼんやりしていると、い …