御名みな)” の例文
君が御名みなさちの井の、ゐどのほとりの常磐木ときはぎや、落葉木らくえふぼく若葉わかばして、青葉あをばとなりて、落葉おちばして、としまた年と空宮くうきうに年はうつりぬ四十五しじふいつ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
とにかく何とかしてデニー博士以下われらの生命を助けたまえと、ふだんは我慢づよい河合もついに神の御名みなとなえたのだった。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
事、天皇の御名みなに及ぶと、正季初め、満座の顔には“時のうしお”の色がした。正成は、日野俊基のあの志士的な口調をそこに聞く気がした。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのかたの支配はわれわれすべての者の上に及び、その方の領域は果しもなく、その御名みなは『デス』と申し上げるのであるぞ
神を拝む者はぜひともその神の御名みなを知らなければならぬというのは、ずいぶん古くからの多くの民族の習性であった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
口に聖母の御名みなを唱へつゝ、走りて火に赴きて死せんとす。爾時そのとき僅に數尺をあましたる烈火の壁面と女房との間に、馬を躍らしてり入りたる一士官あり。
彼はその悲しみを払うために、そっと泥烏須デウス(神)の御名みなを唱えた。が、悲しみは消えないばかりか、前よりは一層彼の胸へ、重苦しい空気を拡げ出した。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
汽車に乗るとまずあらゆる聖者の御名みなを呼びかけてはおいのりをささげたが、その間にも例の『情状酌量』ということばが、絶えずその単純な頭にひびいていた。
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
その内に偽善圧制卑陋ひろうの多少横行するにもせよ、これ爾の御名みなを奉ずる教会なれば我何ぞこれを敵視するを得んや、余の心余の祈祷は常にその上にあるなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
そも/\われは寄辺よるべない浮浪学生ふらうがくしやう御主おんあるじ御名みなによりて、もり大路おほぢに、日々にちにちかてある難渋なんじふ学徒がくとである。おのれいまかたじけなくもたふと光景けしき幼児をさなご言葉ことばいた。
アーサーの御名みなに依つて聖らかなる盃を索めるべく呼び出されたラウンド・テーブルの勇士でございます。
円卓子での話 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
乙姫様おとひめさまとおもうすのもなにやらおかしく、さりとて神様かみさま御名みな申上もうしあぐるのも、なにやらあらたまりぎるようにかんじられ、ツイうっかり奥方おくがた申上もうしあげてしまいました。
いよいよごんごろがね出発しゅっぱつした。老人達ろうじんたちは、またほとけ御名みなとなえながら、かねにむかって合掌がっしょうした。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
二度とこの世の中に現われて、人間の命を呪わないように、せめて、仏陀の御名みなに祈りましょう
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
と口にて衣紋えもんを引合わせ、縛られたるまま合掌して、従容しょうようとして心中に観音の御名みなを念じける。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして、その沈黙の留学生は、天皇の御名みな睦仁むつひとと申し奉ることを知らなかったのだろうと思ったのである。併し僕はこの記事を読んでから、眼を瞑ってしばらく思に耽っていた。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
またすこぶる不可能なやり方です。神の御名みなを金文字で大きく書いてある部分は残らず叮嚀に切取ってある。そのほかにこの手をくっている箇所は嬰児基督キリスト御頭みあたまを飾る御光ごこうである。
「神の御名みなによりて命ずる。永久とこしえに神の清き愛児まなごたるべき処女おとめよ。腰に帯して立て」
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
シカシナガラ、我輩ハ君ヲ深ク信ジル。神ノ御名みなニ於イテ、君ハ非常ニ気品高キ紳士デアルコトヲ認メル。君ハ必ズコノアワレナ男ニ同情ヲ持ツデアロウコトヲ我輩ハ疑ワナイノデアル。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
親子はえて、しばしがうち一四七しに入りけるが、一四八しののめの明けゆく空に、ふる露のひややかなるにいき出でしかど、いまだ明けきらぬ恐ろしさに、一四九大師の御名みなをせはしくとなへつつ
そこでまた御名みなたたえてタケヌナカハミミの命と申し上げます。
その神のみすがた知らず御名みな知らず夢はましろの百合の園生に
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
神を知り、神の御名みなによる天国を地上に齎さうではないか。
工場の窓より (新字旧仮名) / 葉山嘉樹(著)
立ちかはる年の吉言よごとにみ仏の御名みなをとなへて祝ふ春かな
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
斑鳩いかるがの富の小川の絶えばこそ我が大王おほきみ御名みな忘らえめ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
優しく聖なる御名みなに於て、ひややかに笑つてゐる。
あやかしこき大御神おほみかみ「愛」の御名みなもて告げまつる。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
わが知れる一柱ひとはしらの神の御名みなたたへまつる。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一体神の御名みなを口に唱えて
道にか、高き御名みなにか。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
御名みなわすれめ。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
範宴は、木の幹に、縛られたまま、耳に声をきかず、口に怒りを出さず、胸にはただ仏陀ぶっだ御名みなだけをとなえて、じっと、眼をつむっていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分はこの事実を諸君の前に闡明せんめいすると共に、併せて全宇宙を我々の為に創造した神に、心からな感謝を捧げたいと思ふ。神の御名みなむべきかなである。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そんなことばかりかんがえていると、境涯ところへはとてもすすめぬぞ! これからはわしがそなたの指導役しどうやく何事なにごともよくききわけて、とうとかみさまの裔孫みすえとしての御名みなけがさぬよう
産を失い子女ことごとく死せし時も彼は「われはだかにて母のたいでたりまた裸にてかしこに帰らん、エホバ与えエホバ取り給う、エホバの御名みなむべきかな」(一の二一)といい
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
路々みちみち拝んだ仏神の御名みなを忘れようとした処へ——花の梢が、低く靉靆たなびく……藁屋はずれに黒髪が見え、すらりと肩が浮いて、俯向うつむいて出たその娘が、桃に立ちざまに、目を涼しく
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
レコードでは少し古いが『リゴレット=したわしき御名みな』(七三八三)、『ラクメ=ベルソング』(七三六九)、それから『セヴィリアの理髪師=ほのかなる声』(JD七九三)と言ったところだ。
我は餘りの堪へ難さに、口に聖母マドンナ御名みなを唱へて、瓶裡へいりの薔薇一輪摘み、そを唇に押し當てつゝ心には猶アヌンチヤタが上を思へり。われは情に堪へずして、僧堂を出で、海の方へ降り行きぬ。
あやかしこき大御神おほみかみ「愛」の御名みなもて告げまつる。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
北畠きたばたけ権中納言ごんちゅうなごん具行ともゆきの手で、天皇後醍醐の御名みなによる徴兵の秘勅が、諸国の武門へむかって発せられた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「往生は人手に出来るものではござらぬ。唯御自身怠らずに、阿弥陀仏の御名みなをお唱へなされ。」
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私達わたくしたちとて矢張やは御神前ごしんぜん静座せいざして、こころ天照大御神様あまてらすおおみかみさま御名みなとなえ、また八百万やおよろず神々かみがみにおねがいして、できるだけきたないかんがえをはらいのけること精神こころむのでございます。
予は叫ばむとするに声でず、蹶起はねおきて逃げむとあせるに、磐石一座ばんじやくいちざ夜着を圧して、身動きさへもならねば、我あることを気取らるまじと、おろか一縷いちる鼻息びそくだもせず、心中に仏の御名みなとなへながら
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そうして後世の人がこれを用いることができるようにめて往かんとする欲望が諸君のうちにあるならば、私は私の満腔まんこうの同情をもって、イエス・キリストの御名みなによって、父なる神の御名によって
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
不思議なる御名みなにこそあれ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
世界にありとあらゆる物は、ことごとく蛙の為にあるのだ。神の御名みなきかな。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いつとなく、仏の御名みなを唱えるのにも遠ざかって、前刻さっきも、お前ね。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平太夫も近頃はめっきり老耄おいぼれたと見えまして、する事為す事ことごとく落度おちどばかりでございます。いや、そう云う次第ならもうあなた様の御前おまえでは、二度と神仏の御名みなは口に致しますまい。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
誰か善くその妻と妹とを強人がうじんの為に凌辱りようじよくせられ、しかも猶天を仰いで神の御名みなとなふ可きものあらむ。予は今後断じて神に依らず、予自身の手を以て、予が妹明子をこの色鬼しききの手より救助す可し。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「神の御名みなむべきかな……」
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)