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夕闇
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ゆうやみ
ふりがな文庫
“
夕闇
(
ゆうやみ
)” の例文
ま夏のじぶんには、それでも、
夕闇
(
ゆうやみ
)
の中に私のゆかたが白く浮んで、おそろしく目立つような気がして、死ぬるほど当惑いたしました。
灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
時雨
(
しぐれ
)
の通りこせし後は林の
中
(
うち
)
しばし明るくなりしが間もなくまた元の
夕闇
(
ゆうやみ
)
ほの暗きありさまとなり、
遠方
(
おちかた
)
にて
銃
(
つつ
)
の音かすかに聞こえぬ。
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
の迫っている
崖端
(
がけはな
)
の道には、人の影さえ見えなかった。
瀕死
(
ひんし
)
の負傷者を見守る信一郎は、ヒシ/\と、身に迫る
物凄
(
ものすご
)
い
寂寥
(
せきりょう
)
を感じた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
の中に泉邸の空やすぐ近くの焔があざやかに浮出て来ると、砂原では木片を燃やして
夕餉
(
ゆうげ
)
の
焚
(
た
)
き
出
(
だ
)
しをするものもあった。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
の底に、かえってくっきりとみえる野菊の
一
(
ひ
)
とむらがあるところで、彼女はしゃがんでそれをつみとりながら、顔をあおのけていった。
白い道
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
▼ もっと見る
古藤はしゃちこ
張
(
ば
)
った軍隊式の立礼をして、さくさくと
砂利
(
じゃり
)
の上に
靴
(
くつ
)
の音を立てながら、
夕闇
(
ゆうやみ
)
の催した
杉森
(
すぎもり
)
の下道のほうへと消えて行った。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
夢中
(
むちゅう
)
で
振
(
ふ
)
り
払
(
はら
)
ったお
蓮
(
れん
)
の
片袖
(
かたそで
)
は、
稲穂
(
いなほ
)
のように
侍女
(
じじょ
)
の
手
(
て
)
に
残
(
のこ
)
って、
惜
(
お
)
し
気
(
げ
)
もなく
土
(
つち
)
を
蹴
(
け
)
ってゆく
白臘
(
はくろう
)
の
足
(
あし
)
が、
夕闇
(
ゆうやみ
)
の
中
(
なか
)
にほのかに
白
(
しろ
)
かった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
があたりをつつみはじめ、
四辻
(
よつつじ
)
が白っぽくその中に浮かんでいた。やはり女はいた。
膝
(
ひざ
)
を折って、道にかがんでいる。
待っている女
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
遽
(
あわただ
)
しい将官たちの
往
(
ゆ
)
き
来
(
き
)
とソビエットに挟まれた
夕闇
(
ゆうやみ
)
の底に横たわりながら、ここにも不可解な新時代はもう来ているのかしれぬと梶は思った。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
セエラの
微笑
(
ほほえみ
)
は、男を喜ばしたに違いありません。彼は
夕闇
(
ゆうやみ
)
のような顔をぱっと輝かして、白い歯並を見せて笑いました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
屋敷
(
やしき
)
の入口で馬車をおりたときは、もう
夕闇
(
ゆうやみ
)
がたちこめていました。おばさんは大きなカエデの木の下にたたずんで、あたりを見まわしました。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
時が過ぎて、暗く曇った空を後ろにして、しめやかな感じのする
風采
(
ふうさい
)
の宮がすわっておいでになるのも
艶
(
えん
)
であった。
源氏物語:25 蛍
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そのようなヘリコプターが、
夕闇
(
ゆうやみ
)
がうすくかかって来た空から、とつぜんまい下りて来たので、春木少年はおどろいた。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ここは
谷間
(
たにあい
)
のせいか、いちだんと
暮色
(
ぼしょく
)
が
濃
(
こ
)
くなって、もう
夕闇
(
ゆうやみ
)
がとっぷりとこめていたから燕作は泣きだしたくなった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やっと遠い
夕闇
(
ゆうやみ
)
の中に、村外れの工事場が見えた時、良平は一思いに泣きたくなった。しかしその時もべそはかいたが、とうとう泣かずに駈け続けた。
トロッコ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
広い、静かな水の上に軽い霧が立ち
籠
(
こ
)
めている。なんだか
夕闇
(
ゆうやみ
)
がゆるやかに湖水の底から登って来て、次第に岸の方へ
拡
(
ひろ
)
がって行くように感ぜられる。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
いつの間にか
夕闇
(
ゆうやみ
)
があたりをこめ、たださえ暗い密室は
文目
(
あやめ
)
もわかぬ闇となっていた。その暗黒に包まれたまま、彼の泣き声はいつまでもつづいていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
が迫るころ、イカバッドはヴァン・タッセルの城に到着した。すでに近隣の才子佳人が大ぜい集っていた。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
この頃はうちの子供たちも本に夢中になって、
御飯
(
ごはん
)
によばれても来なかったり、
夕闇
(
ゆうやみ
)
の
窓際
(
まどぎわ
)
で
電燈
(
でんとう
)
をつけずに読み入っていたりして、よく母親に
叱
(
しか
)
られている。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
身をひるがえした長庵が夢中で駈け出したとき、男と女の笑い声を載せた駕籠は、もう
夕闇
(
ゆうやみ
)
に消えていた。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
冷々
(
ひえびえ
)
した
夕闇
(
ゆうやみ
)
のなかで、提燈を
抱
(
かか
)
えるようにして暖まったり、
莨
(
タバコ
)
を吸ったりして荷物のくるのを待った。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
人の
気配
(
けはい
)
もしない黙々たる死んだような人家に囲まれ、しだいに濃くなってゆく
夕闇
(
ゆうやみ
)
のうちに包まれ
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
わたしはおいおい
夕闇
(
ゆうやみ
)
の濃くなりつつある堤のうえにたたずんだままやがて川下の方へ眼を移した。
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
少し目の慣れるまで、歩き
艱
(
なや
)
んだ
夕闇
(
ゆうやみ
)
の田圃道には、
道端
(
みちばた
)
の草の蔭で
蛼
(
こおろぎ
)
が
微
(
かす
)
かに鳴き出していた。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼
(
かれ
)
は、せっかく、
箱
(
はこ
)
に
近
(
ちか
)
づいたかかとを、
後方
(
うしろ
)
に
引
(
ひ
)
き
返
(
かえ
)
しました。ふり
向
(
む
)
くと、
夕闇
(
ゆうやみ
)
の
中
(
なか
)
に、
老人
(
ろうじん
)
の
姿
(
すがた
)
は
消
(
き
)
えて、
黒
(
くろ
)
い
箱
(
はこ
)
だけが、いつまでも
砂
(
すな
)
の
上
(
うえ
)
にじっとしていました。
希望
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
博士が
警察署
(
けいさつしょ
)
をでると、外には
夕闇
(
ゆうやみ
)
がせまり、夜になろうとしていた。
街角
(
まちかど
)
には
警備
(
けいび
)
のひとが立ち、三人四人と隊を組んだ見張りの者が、町の通りをあるきまわっていた。
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
日が暮れて青い
夕闇
(
ゆうやみ
)
の中を人々がほの白くあちこちする頃、人力車は大野の町にはいった。
おじいさんのランプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
橙
(
だいだい
)
色や金縁や
淡碧
(
うすみどり
)
に縁取られた重畳してる線で、地平を取り囲みながら、柔らかな輝きを見せている雪のアルプス連山、ダ・ヴィンチ式の山々。アペニン山脈に落ちてくる
夕闇
(
ゆうやみ
)
。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
もう夕暮れ近くで、青白い
夕闇
(
ゆうやみ
)
が、雪の上に立ちこめていて、玄関はうす暗かった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
夫の帰った物音に引窓からさす
夕闇
(
ゆうやみ
)
の光に色のない顔を
此方
(
こなた
)
に振向け、
油気
(
あぶらけ
)
失
(
う
)
せた
庇髪
(
ひさしがみ
)
の
後毛
(
おくれげ
)
をぼうぼうさせ、寒くもないのに
水鼻
(
みずばな
)
を
啜
(
すす
)
って、ぼんやりした声で、お帰んなさい——。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
小母
(
おば
)
さんは
夕闇
(
ゆうやみ
)
をすかして庄吉の姿をじっと見守った。それから物も云わないで彼の首筋を捉えてぐんぐん家の中に引きずり込んだ。そして庄吉を其処につき倒して、足で蹴り続けた。
少年の死
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
もう秋に入って日も短かくなったこととて、すでにうっすらと
夕闇
(
ゆうやみ
)
は迫り、うす暗い電気がそこの廊下にはともっていた。建物は細長い
二棟
(
ふたむね
)
で廊下をもって互いに通ずるようになっている。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
瀕死
(
ひんし
)
の手で裂いたのだから、つぎ合せるのにひまはかからなかった。かれは
夕闇
(
ゆうやみ
)
のなかで、紙片に書いてある文字を走り読みしたが、にわかに顔色を変え、低く、口のなかであっと叫んだ。
城を守る者
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
が迫って来た。城内の廊下も薄暗い。その時、
蓬髪
(
ほうはつ
)
で急ぎ足に向こうから廊下を踏んで来るものがある。その人こそ軍艦奉行、兼外務取り扱いとして、江戸から駆けつけて来た彼の友人だ。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
がせまる
武蔵野
(
むさしの
)
のかれあしの中をふたりは帰る。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
の
蘆荻
(
ろてき
)
音なく舟
著
(
つ
)
きぬ
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
入日
(
いりひ
)
の
残光
(
ざんこう
)
が急にうすれて、
夕闇
(
ゆうやみ
)
が
煙色
(
けむりいろ
)
のつばさをひろげて、あたりの山々を包んでいった。と、東の空に、まん丸い月が浮きあがった。
満月
(
まんげつ
)
だ。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ホテルの隣りの花屋が数個のライトを
点
(
つ
)
け、
夕闇
(
ゆうやみ
)
の中に、そこだけが小さな舞台ほどの明るさで照らし出されていた。
一人ぼっちのプレゼント
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
しかし、直ぐ金剛石のことを思い出すと裏へ廻って行って、
夕闇
(
ゆうやみ
)
の迫った
葉蘭
(
はらん
)
の傍へ
蹲
(
うずくま
)
って、昼間描いておいた小さい円の上を指で
些
(
ち
)
っと
圧
(
おさ
)
えてみた。
火
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
と眼の色をかえて
喚
(
わめ
)
き、「馬鹿にするな!」と
件
(
くだん
)
の小皿を地べたにたたきつけて、ふっと露路の
夕闇
(
ゆうやみ
)
に姿を消した。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
されど空気は重く
湿
(
しめ
)
り、茂り合う葉桜の陰を忍びにかよう風の音は秋に異ならず、
木立
(
こだ
)
ちの
夕闇
(
ゆうやみ
)
は頭うなだれて影のごとく歩む人の
類
(
たぐい
)
を心まつさまなり。
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
がせまってきたので、足もともほの暗くなったが松並木へでた伊那丸は、けんめいに二町ばかりかけだした。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
は刻々に夜の色を加えて、部屋の隅々はもう見分けられぬほどとなり、負傷者の美しい顔を彩った血の色が、墨でも塗ったようにドス黒く見えてきた。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
かなりぬれているらしい
靴
(
くつ
)
をはいて、雨水で重そうになった
洋傘
(
こうもり
)
をばさばさいわせながら開いて、倉地は軽い
挨拶
(
あいさつ
)
を残したまま
夕闇
(
ゆうやみ
)
の中に消えて行こうとした。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
わたしは、音楽がときとして湧きおこしがちな幻想にひたって
坐
(
すわ
)
っていた。
夕闇
(
ゆうやみ
)
が次第に身のまわりに濃くなり、記念碑がなげる暗影はいよいよ深くなってきた。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
たかは、
黒雲
(
くろくも
)
に、
伝令
(
でんれい
)
すべく、
夕闇
(
ゆうやみ
)
の
空
(
そら
)
に
翔
(
か
)
け
上
(
のぼ
)
りました。
古
(
ふる
)
いひのきは
雨
(
あめ
)
と
風
(
かぜ
)
を
呼
(
よ
)
ぶためにあらゆる
大
(
おお
)
きな
枝
(
えだ
)
、
小
(
ちい
)
さな
枝
(
えだ
)
を、
落日後
(
らくじつご
)
の
空
(
そら
)
にざわつきたてたのであります。
あらしの前の木と鳥の会話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
早川の
谿谷
(
けいこく
)
の底
遥
(
はる
)
かに、岩に激している水は、
夕闇
(
ゆうやみ
)
を透してほのじろく見えていた。その水から
湧
(
わ
)
き上って来る涼気は、
浴衣
(
ゆかた
)
を着ている美奈子には、肌寒く感ぜられるほどだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
幸子は
暫
(
しばら
)
く門柱に
靠
(
もた
)
れて
夕闇
(
ゆうやみ
)
の中を
視詰
(
みつ
)
めながら
彳
(
たたず
)
んでいたが、矢張夫たちの帰って来そうなけはいがないので、応接間に戻って、
苛々
(
いらいら
)
する気分を落ち着けるように、
蝋燭
(
ろうそく
)
に灯をつけて
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ダヴィデは心
臆
(
おく
)
しもせず、振り向いて王をながめた。そしてサウルの
膝
(
ひざ
)
に頭をのせて、また歌をつづけた。
夕闇
(
ゆうやみ
)
が落ちてきた。ダヴィデは歌いながら眠ってしまい、サウルは泣いていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
昼でも少し薄暗い四畳半の片隅には、
夕闇
(
ゆうやみ
)
がすぐ訪れた。その訪れにつれて、本を片手にだんだん
窓際
(
まどぎわ
)
に移って行った。ふと顔をあげると、疲れた眼に、すぐ前の
孟宗籔
(
もうそうやぶ
)
の緑が
鮮
(
あざや
)
かにうつった。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
夕
常用漢字
小1
部首:⼣
3画
闇
常用漢字
中学
部首:⾨
17画
“夕”で始まる語句
夕
夕餉
夕飯
夕陽
夕方
夕靄
夕日
夕暮
夕焼
夕映