“夕闇:ゆうやみ” の例文
“夕闇:ゆうやみ”を含む作品の著者(上位)作品数
国木田独歩5
太宰治3
小川未明3
ロマン・ロラン3
横光利一2
“夕闇:ゆうやみ”を含む作品のジャンル比率
文学 > 英米文学 > 小説 物語(児童)10.5%
文学 > フランス文学 > 小説 物語7.7%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
もう秋に入って日も短かくなったこととて、すでにうっすらと夕闇ゆうやみは迫り、うす暗い電気がそこの廊下にはともっていた。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
そのようなヘリコプターが、夕闇ゆうやみがうすくかかって来た空から、とつぜんまい下りて来たので、春木少年はおどろいた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
入日いりひ残光ざんこうが急にうすれて、夕闇ゆうやみ煙色けむりいろのつばさをひろげて、あたりの山々を包んでいった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ゴットフリートはゆっくり煙草たばこをすい、クリストフは夕闇ゆうやみこわくて、小父おじに手をひかれていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
夕闇ゆうやみの風、ろく雨を吹けば一滴二滴、おもてを払うを三人は心地よげに受けてよもやまの話に入りぬ。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
冷々ひえびえした夕闇ゆうやみのなかで、提燈をかかえるようにして暖まったり、タバコを吸ったりして荷物のくるのを待った。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
夕闇ゆうやみがせまってきたので、足もともほの暗くなったが松並木へでた伊那丸は、けんめいに二町ばかりかけだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少し目の慣れるまで、歩きなやんだ夕闇ゆうやみの田圃道には、道端みちばたの草の蔭でこおろぎかすかに鳴き出していた。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
セエラの微笑ほほえみは、男を喜ばしたに違いありません。彼は夕闇ゆうやみのような顔をぱっと輝かして、白い歯並を見せて笑いました。
ま夏のじぶんには、それでも、夕闇ゆうやみの中に私のゆかたが白く浮んで、おそろしく目立つような気がして、死ぬるほど当惑いたしました。
灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
『どうかまた来てください、』と自分のいう言葉も聞いたか聞かないか。かれの姿は夕闇ゆうやみのうちに消えてしまった、まぼろしのように。
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
夕闇ゆうやみ時が過ぎて、暗く曇った空を後ろにして、しめやかな感じのする風采ふうさいの宮がすわっておいでになるのもえんであった。
源氏物語:25 蛍 (新字新仮名) / 紫式部(著)
身をひるがえした長庵が夢中で駈け出したとき、男と女の笑い声を載せた駕籠は、もう夕闇ゆうやみに消えていた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
垣根添かきねぞいの木の間からは、種々な色の薔薇ばらの花が夕闇ゆうやみの中にもちらほらと見えていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
夕闇ゆうやみの中に泉邸の空やすぐ近くの焔があざやかに浮出て来ると、砂原では木片を燃やして夕餉ゆうげしをするものもあった。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
夕闇ゆうやみの底に、かえってくっきりとみえる野菊のとむらがあるところで、彼女はしゃがんでそれをつみとりながら、顔をあおのけていった。
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
もはや、夕闇ゆうやみは、みちうえにせまってきて、あたりのものが、はっきりとわかりません。
赤いガラスの宮殿 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たかは、黒雲くろくもに、伝令でんれいすべく、夕闇ゆうやみそらのぼりました。
あらしの前の木と鳥の会話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはおいおい夕闇ゆうやみの濃くなりつつある堤のうえにたたずんだままやがて川下の方へ眼を移した。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
夕闇ゆうやみの中に呼ぶ少年の声と共に、村の方からやって来る提灯ちょうちんが半蔵たちに近づいた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ここは谷間たにあいのせいか、いちだんと暮色ぼしょくくなって、もう夕闇ゆうやみがとっぷりとこめていたから燕作は泣きだしたくなった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やっと遠い夕闇ゆうやみの中に、村外れの工事場が見えた時、良平は一思いに泣きたくなった。しかしその時もべそはかいたが、とうとう泣かずに駈け続けた。
トロッコ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
日が暮れて青い夕闇ゆうやみの中を人々がほの白くあちこちする頃、人力車は大野の町にはいった。
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
大兄の哄笑こうしょう忍竹しのぶを連ねた瑞籬みずがきの横で起ると、夕闇ゆうやみの微風に揺れているかしわほこだちの傍まで続いていった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
夕闇ゆうやみに透いて見える彼の白い頬が、思いしか少し赤らんでいるように思われた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
信一郎は、再度その小形な腕時計を、手許てもとに迫る夕闇ゆうやみの中で、透して見た。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
茅屋くさやの軒先には羽虫はむしの群れ輪をなして飛ぶが夕日に映りたる、鍛冶かじ鉄砧かなしきの音高く響きて夕闇ゆうやみひらめく火花の見事なる
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あわただしい将官たちのとソビエットに挟まれた夕闇ゆうやみの底に横たわりながら、ここにも不可解な新時代はもう来ているのかしれぬと梶は思った。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ふりくと、夕闇ゆうやみなかに、老人ろうじん姿すがたえて、くろはこだけが、いつまでもすなうえにじっとしていました。
希望 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あすをも頼み難い命の夕闇ゆうやみにさまよいながら、切れ切れな言葉で葉子と最後の妥協を結ぼうとする病床の母——その顔は葉子の幻想を断ち切るほどの強さで現われ出た。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
時雨しぐれの通りこせし後は林のうちしばし明るくなりしが間もなくまた元の夕闇ゆうやみほの暗きありさまとなり、遠方おちかたにてつつの音かすかに聞こえぬ。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
古藤はしゃちこった軍隊式の立礼をして、さくさくと砂利じゃりの上にくつの音を立てながら、夕闇ゆうやみの催した杉森すぎもりの下道のほうへと消えて行った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
されど空気は重く湿しめり、茂り合う葉桜の陰を忍びにかよう風の音は秋に異ならず、木立こだちの夕闇ゆうやみは頭うなだれて影のごとく歩む人のたぐいを心まつさまなり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
夕闇ゆうやみが迫るころ、イカバッドはヴァン・タッセルの城に到着した。
夕闇ゆうやみがせまる武蔵野むさしののかれあしの中をふたりは帰る。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
小母おばさんは夕闇ゆうやみをすかして庄吉の姿をじっと見守った。
少年の死 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
夕闇ゆうやみなかおともなくあるいてゆくさま
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
村に出た時はもう日が暮れて夕闇ゆうやみほのぐらいころであった。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その女の影法師は、じっと立ったまま動かぬ。外は夕闇ゆうやみ
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
昼でも少し薄暗い四畳半の片隅には、夕闇ゆうやみがすぐ訪れた。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
地平線上は灰色の雲重なりて夕闇ゆうやみをこめたり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この頃はうちの子供たちも本に夢中になって、御飯ごはんによばれても来なかったり、夕闇ゆうやみ窓際まどぎわ電燈でんとうをつけずに読み入っていたりして、よく母親にしかられている。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
夕闇ゆうやみ蘆荻ろてき音なく舟きぬ
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
博士が警察署けいさつしょをでると、外には夕闇ゆうやみがせまり、夜になろうとしていた。街角まちかどには警備けいびのひとが立ち、三人四人と隊を組んだ見張りの者が、町の通りをあるきまわっていた。
夕闇ゆうやみの迷ひ来にけり吊荵つりしのぶ
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それは夕闇ゆうやみの催した晩秋だった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ふっと露路の夕闇ゆうやみに姿を消した。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
アペニン山脈に落ちてくる夕闇ゆうやみ
かく防寨を築き、部署を定め、銃には弾をこめ、見張りを出し、もはや人通りもない恐ろしい街路に残り、人の気配けはいもしない黙々たる死んだような人家に囲まれ、しだいに濃くなってゆく夕闇ゆうやみのうちに包まれ
夕闇ゆうやみが迫って来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夕闇ゆうやみが落ちてきた。
夫の帰った物音に引窓からさす夕闇ゆうやみの光に色のない顔を此方こなたに振向け、油気あぶらけせた庇髪ひさしがみ後毛おくれげをぼうぼうさせ、寒くもないのに水鼻みずばなすすって、ぼんやりした声で、お帰んなさい——。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「な、なに?」と姉はうろたえて妹に問えば妹は夕闇ゆうやみの谷底を指差し、見れば谷底は里人の墓地、いましも里の仏を火葬のさいちゅう、人焼く煙は異様に黒く、耳をすませば、ぱちぱちはぜる気味悪い音も聞えて、一陣の風はただならぬにおいを吹き送り
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
夢中むちゅうはらったおれん片袖かたそでは、稲穂いなほのように侍女じじょのこって、もなくつちってゆく白臘はくろうあしが、夕闇ゆうやみなかにほのかにしろかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「うちあんたと一緒やったらいつまででも此処ここでこないしてたいわ。」——わたしはその言葉口いは出さんと、夕闇ゆうやみのなかにうずくまって足投げ出してなさる光子さんの横顔ながめてましたが、暗いのんでどんな表情してなさるのんか分りませなんだ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そしてクリストフは、日の光に頭の中がぼうとして(時にはまたカステリーの葡萄ぶどう酒のせいもあったが、)こわれた大理石像のそばに黒い地面の上にすわり、微笑ほほえみを浮かべうつらうつらと忘却のうちに浸って、ローマの落ち着いた強烈な力を吸い込んだ——夕闇ゆうやみが落ちてくるまで。