と、母親ははおやおしえました。するとみんな一生懸命いっしょうけんめい、グワッ、グワッと真似まねをして、それから、あたりのあおおおきな見廻まわすのでした。
とどなりながら、ドン、ドン、とびらをたたきました。おにはそのこえくと、ふるえがって、よけい一生懸命いっしょうけんめいに、中からさえていました。
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
けれどもうっちゃって置く訳にいかないから自分の持って居る杖も棄ててしまってそれから一生懸命いっしょうけんめいに走りました。それでも捉まらない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
けれども金魚は一生懸命いっしょうけんめいやってよ。素晴らしい、見ていると何もかも忘れてうっとりするような新種を作ってよ。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それから赤シャツと野だは一生懸命いっしょうけんめいに釣っていたが、約一時間ばかりのうちに二人ふたりで十五六上げた。可笑おかしい事に釣れるのも、釣れるのも、みんなゴルキばかりだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「オヤ、けんどんですネ、人が一生懸命いっしょうけんめいになっていてるのに。何でそんなに沈んでいるのです?」
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
或るときブリッジのかげで、Kさんの名前を呼びわめいている女の子が、あまり一生懸命いっしょうけんめいに呼び探しているので、「ヘェイ、ぼくと遊ぼう」と覚束おぼつかない英語でからかうと
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
そうしてみると私も本気で考え出さなければなりません。そう思って一生懸命いっしょうけんめい思い出しました。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「さっきのが……声だよ。お前さん、そうこわがっちゃいかん。一生懸命いっしょうけんめいのところじゃないか。」
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
動物が子孫をぐべき子供のために、その全生涯をささげていることはせみの例でもよくわかる。暑い夏に鳴きつづけているせみ雄蝉おすぜみであって、一生懸命いっしょうけんめい雌蝉めすぜみを呼んでいるのである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
で、僕はひょうげて、まるで下宿屋か何かの女でも呼ぶように「お菊さアん」と窓から呼ぶのだ。すると、白くり返った彼女は、一生懸命いっしょうけんめいに笑った顔で、「お使いよオ」と答える。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
もっともまた時には雌の河童を一生懸命いっしょうけんめいに追いかけるおすの河童もないではありません。しかしそれもほんとうのところは追いかけずにはいられないように雌の河童が仕向けるのです。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「わたくしは出世しゅっせがしたいとおもって、京都きょうとへわざわざのぼってまいりました。どうぞ一生懸命いっしょうけんめいはたらきますから、お屋敷やしきでお使つかいなさってくださいまし。」
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
清書をするには二日で済んだが、下た書きをするには四日かかった。読みにくいかも知れないが、これでも一生懸命いっしょうけんめいにかいたのだから、どうぞしまいまで読んでくれ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それからまた何でもない寺の規則とかいうような事を一生懸命いっしょうけんめいやかましゅういうて守って居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
このくらいのあつさで、岸に休んでいさっしゃる分ではあんめえ、一生懸命いっしょうけんめい歩行あるかっしゃりや、昨夜ゆうべとまりからここまではたった五里、もう里へ行って地蔵様を拝まっしゃる時刻じゃ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その人たちのために、森は冬のあいだ、一生懸命いっしょうけんめい、北からの風を防いでやりました。
狼森と笊森、盗森 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ぼくは勿論もちろん一生懸命いっしょうけんめいで、すみから隅まで、草の根をしわけて探してみましたが、処々にのこっているコカコラの空瓶あきびん、チュウインガムの食滓たべかすなどのほかには、水滴をつづった青草が
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
与一は沈黙だまって、一生懸命いっしょうけんめい赤い鼻の先をこすっていた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
僕はラップの肩をたたき、一生懸命いっしょうけんめいに慰めました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こうってさるひくはな一生懸命いっしょうけんめいたかくして、とくいらしいかおをしますと、くらげはわざと、さもおかしくってたまらないというようにわらしました。
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おれは一貫張いっかんばりの机の上にあった置き洋燈らんぷをふっと吹きけした。星明りで障子だけは少々あかるい。月はまだ出ていない。おれと山嵐は一生懸命いっしょうけんめいに障子へかおをつけて、息をらしている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
閉口へいこうしたですが荷物をそのままほうっては自分の命のかてがなくなるから一生懸命いっしょうけんめい力を籠めて両方の手で荷物を上に引き挙げた。まあこれでいいと思ってどっかり坐ってホッと一息きました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ちょうどこの上口のぼりぐちの辺に美濃みの蓮大寺れんだいじの本堂の床下ゆかしたまで吹抜ふきぬけの風穴かざあながあるということを年経としたってから聞きましたが、なかなかそこどころの沙汰さたではない、一生懸命いっしょうけんめい景色けしき奇跡きせきもあるものかい
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ハイ! この縄を一生懸命いっしょうけんめい握っとんなはい」
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
一生懸命いっしょうけんめいの大学士などにはお構いなく
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
女の子は夢中むちゅう一生懸命いっしょうけんめいげますと、山の上からしばを背中せなかにしょってりてるおじいさんにあいました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ずいぶん一生懸命いっしょうけんめいけたのですけれど、山姥やまうばあしちいさな女の子がかなうはずはありませんから、ずんずんいつかれて、もう一足ひとあし山姥やまうばかたをつかまれそうになりました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
女の子がまた一生懸命いっしょうけんめいげますと、また一人ひとりのおじいさんが、そこでかやをっていました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おじいさんはもうすましたもので、一生懸命いっしょうけんめい、のびたり、ちぢんだり、たてになり、よこになり、ひだりへ行き、みぎへ行き、くるりくるりとねずみのように、元気げんきよくはねまわりながら
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はちかつぎもはじめはことわりましたけれど、むかしおかあさんが一生懸命いっしょうけんめいおしえておいてくださったのは、こういうときはじをかかないためであったかとおもかえして、ことを手にりました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とおばあさんは金切かなきごえげて、一生懸命いっしょうけんめいしました。そしてやっとのことで、半分はんぶんんだようにまっさおになって、うちの中にかけみますと、おじいさんはびっくりして
舌切りすずめ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
一生懸命いっしょうけんめいこころの中で八幡大神はちまんだいじんのおをとなえながら、この一の射損いそんじたら、二のをつぐまでもなくきてはかえらない覚悟かくごをきめて、まず水破すいはという鏑矢かぶらやって、ゆみつがえました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「やれやれ、がたい、これでたすかった。」とおもって、一生懸命いっしょうけんめいあかりを目当めあてにたどって行きますと、なるほどうちがあるにはありましたが、これはまたひどい野中のなかの一つで、のきはくずれ
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのこえくと、ぼうさんは、さてこそ鬼婆おにばばあっかけてたとがたがたふるえながら、みみをふさいでどんどんして行きました。そしてこころの中で悪鬼あくきけの呪文じゅもん一生懸命いっしょうけんめいとなえていました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
といって、みんなでわるわる、ものって行ってやりました。若者わかものはそれをもらってべながら、とうとう三七二十一にちあいだおなところにつっしたまま、一生懸命いっしょうけんめいいのりをしていました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
むすめよるひるもおかあさんのまくらもとにつきっきりで、ろくろくねむひまもなく、一生懸命いっしょうけんめいにかんびょうしましたが、病気びょうきはだんだんおもるばかりで、もう今日きょう明日あすがむずかしいというまでになりました。
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかしうっかりしていって、一口ひとくちにあんぐりやられてはたいへんだと一おもかえして、一生懸命いっしょうけんめいがまんしていましたが、そのうちおにどもがおもしろそうに手をたたいて、拍子ひょうしをとりしますと
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのあとぼうさんは、こころの中で一生懸命いっしょうけんめいほとけさまにおいのりをしながら
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と、をつぶって一生懸命いっしょうけんめいにおいのりをしました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
一生懸命いっしょうけんめいにおねがもうしました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)