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ふうてい
ふりがな文庫
“
風体
(
ふうてい
)” の例文
旧字:
風體
その
風体
(
ふうてい
)
や挙動が奇怪であるのは云うまでもない、更に奇怪を感ぜしめたのは、彼が誰よりも先に颶風や潮を予報したことであった。
半七捕物帳:32 海坊主
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
細い
釘店
(
くぎだな
)
の往来は場所
柄
(
がら
)
だけに
門並
(
かどな
)
みきれいに掃除されて、打ち水をした上を、気のきいた
風体
(
ふうてい
)
の男女が忙しそうに
往
(
ゆ
)
き
来
(
き
)
していた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
古い背広に
山羊髥
(
やぎひげ
)
、不精な長髪、なんとなく
尾羽打枯
(
おばうちか
)
らした
風体
(
ふうてい
)
ですが、いうことは妙に皮肉で虚無的で、そのくせ真剣さがあります。
奇談クラブ〔戦後版〕:11 運命の釦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何だか
頭脳
(
あたま
)
がボッとしていた。叔父や兄貴の百姓百姓した
風体
(
ふうてい
)
が、何となく気にかかった。でも
厭
(
いや
)
でたまらぬというほどでもなかった。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
おもしろい
風体
(
ふうてい
)
のお百姓ができあがりました。わたしはほおかむり、しりはしょりで、ももひきもはいていません。それに素足ですよ。
力餅
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
彼は棒のように
痩
(
や
)
せた
逞
(
たくま
)
しい
風体
(
ふうてい
)
をしていた。生れつき色白な皮膚に渡世のしみがまだらに浮んでいた。相当の年輩に達しているのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「さやうでございますよ、
年紀
(
としごろ
)
四十ばかりの
蒙茸
(
むしやくしや
)
と
髭髯
(
ひげ
)
の
生
(
は
)
えた、
身材
(
せい
)
の高い、
剛
(
こは
)
い顔の、
全
(
まる
)
で壮士みたやうな
風体
(
ふうてい
)
をしてお
在
(
いで
)
でした」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それから、また
暫
(
しばら
)
くの後、或る日私が仕事場で仕事をしていると、一人の百姓のような
風体
(
ふうてい
)
をした老人が
格子戸
(
こうしど
)
を
開
(
あ
)
けて
訪
(
たず
)
ねて来ました。
幕末維新懐古談:40 貿易品の型彫りをしたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
前に立つのは、
印半纒
(
しるしばんてん
)
に、
鼠羅紗
(
ねずみらしゃ
)
の半ズボン、深ゴム靴、土木
請負師
(
うけおいし
)
といった
風体
(
ふうてい
)
、だが、こんな老いぼれ請負師ってあるものだろうか。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
なかの一人が上がり
端
(
はな
)
へ出て見ますと、予期に反して、
御岳
(
みたけ
)
ごもりの
行乞
(
ぎょうこつ
)
か、
石尊詣
(
せきそんまい
)
りの旅人らしい
風体
(
ふうてい
)
のものが格子の外に立っている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「アッ。月島の
渡船
(
わたし
)
に乗ったんだね。成る程成る程。その時にアンタと一緒に乗っていた二人の男の
風体
(
ふうてい
)
を
記憶
(
おぼ
)
えているかね」
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
長蔵さんは教育のある男ではあるまいが、自分の
風体
(
ふうてい
)
を見て
一目
(
いちもく
)
騙
(
かた
)
るべからずと看破するには教育も何も
要
(
い
)
ったものではない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いやな
風体
(
ふうてい
)
な奴が
後
(
あと
)
から附けて来ましたから、
盗賊
(
どろぼう
)
だと思いましたゆえ、逃げ出す途端に、
貴方
(
あなた
)
に
打
(
ぶつ
)
かりまして、何とも申訳がありません
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
夏の
炎天
(
えんてん
)
ではないからよいようなものの
跣足
(
すあし
)
に
被
(
かぶ
)
り
髪
(
がみ
)
——まるで赤く無い
金太郎
(
きんたろう
)
といったような
風体
(
ふうてい
)
で、
急足
(
いそぎあし
)
で
遣
(
や
)
って来た。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
潰
(
つぶ
)
れた鼻に、
歪
(
いび
)
つな耳、一目でボクサアと
判
(
わか
)
る、その男は、あまりにも、みすぼらしい
風体
(
ふうてい
)
と、うつろな
瞳
(
ひとみ
)
をしていました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
一寸
(
ちょっと
)
書き添えたいのですが、私はどういうものか子供の時から、あの捉えどころのないような味と
風体
(
ふうてい
)
で人を
焦
(
じ
)
らすような蒟蒻が大好物でした。
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
難船した水夫のように、そこの浜辺で、空間的にも時間的にも手近かにありあわせた物を身につけ、おたがいの風変りな
風体
(
ふうてい
)
をあざ笑っている。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
男は洋服を着た
魚屋
(
さかなや
)
さんとでもいった
風体
(
ふうてい
)
であり、女はその近所の
八百屋
(
やおや
)
のおかみさんとでも思われる人がらであった。
Liber Studiorum
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
漸
(
や
)
つとの事で薩摩屋敷へ着き、大山(綱良)さんに逢つて、龍馬等は来ませんかと云ふとイヤまだ来ないが其の
風体
(
ふうてい
)
は全体どうしたものだと云ふ。
千里駒後日譚
(新字旧仮名)
/
川田瑞穂
、
楢崎竜
、
川田雪山
(著)
相手は百姓らしい
風体
(
ふうてい
)
の男である。見れば鶏の生きたのを一羽持っている。その男が、石田を見ると、にこにこして
傍
(
そば
)
へ寄って来て、こう云った。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
よく見ると、黄いろい顔をした妙な
風体
(
ふうてい
)
の男が、長いひげをひっぱりながら、こっちをむいてあはははと笑うのである。
太平洋魔城
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「一人は
風体
(
ふうてい
)
から察するに、一方の大将でした。路傍に倒れていましたから駈け寄って見ると、もう首がありません」
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
下駄で、
前垂
(
まえだ
)
れがけの、
縞物
(
しまもの
)
の着つけの人ばかりの町だ。かわった
風体
(
ふうてい
)
のものが交ったって目にもはいりはしない。
旧聞日本橋:21 議事堂炎上
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そのつぎに出あった、
漁師
(
りょうし
)
らしい
風体
(
ふうてい
)
の人を見ると、魚をくれたのはこの人かと思い、用心しいしい、頭をさげた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
働いている女中は、みんな日本髪で、ずっこけ風に帯を結び、人生のあらゆるものにびくともしないような
風体
(
ふうてい
)
に見える。うらやましい気持ちであった。
貸家探し
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
旦那さん悪さをしてはいけまへんと
云
(
いっ
)
たのは、
吾々
(
われわれ
)
の
風体
(
ふうてい
)
を見て万引をしたと
云
(
い
)
う意味だから、サア
了簡
(
りょうけん
)
しない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
が、下宿の女将のウイルドハアゲン婆さんは、二人があまり貧弱な
風体
(
ふうてい
)
をしているので、はじめ部屋を見に来た時から、そう言って断るつもりだったのだ。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
しかし扉をあけて、アカーキイ・アカーキエウィッチのその
風体
(
ふうてい
)
を見ると思わずたじたじと後ずさりをした。
外套
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
笠をかぶって、右の
風体
(
ふうてい
)
で大和路を歩いて行く。誰が見ても渡り者の長脇差、そのくらいにしか見えない。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ずばりと余計なら黙っても差置きますが、旅空なり、御覧の通りの
風体
(
ふうてい
)
。ちゃんと云うて取って下さい。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その上にも彼の奇妙な
風体
(
ふうてい
)
を完全にするために、フリント船長が彼の肩に棲って意味もない船乗の言葉をいろいろでたらめにべちゃべちゃしゃべり散らしていた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
それは震災
前
(
ぜん
)
新橋の芸者家に出入していたと云う車夫が今は一見して人殺しでもしたことのありそうな、人相と
風体
(
ふうてい
)
の悪い
破落戸
(
ならずもの
)
になって、
折節
(
おりふし
)
尾張町辺を
徘徊
(
はいかい
)
し
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
サエは小使いだと思ったらそうではなく、そういう
風体
(
ふうてい
)
でそのへんにハタキをかけたり、椅子を動かしたり動きまわっているのは、制服の上衣をぬいだ巡査であった。
鏡餅
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
大言壮語する
風体
(
ふうてい
)
に似ず、女性的な面も多分にあつて、自分でその洋服の手入れもすれば、肌着なぞの洗濯もしよつちゆうしていつも小綺麗なものを身体につけてゐた。
大凶の籤
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
この女の物ごし
風体
(
ふうてい
)
はどうしても
良家
(
りょうか
)
の子女じゃない、女優のあがりか
歌妓
(
げいしゃ
)
のあがりである、それに一人でおると云うのは、旅にでも来ているのか、それともと考えて
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そこの
築地
(
ついじ
)
を向うにはずれた藪だたみのところに、見るから
風体
(
ふうてい
)
の汚ないいち人の非人が、
午下
(
ひるさが
)
りの陽光を浴びて、うつらうつらとその時迄居眠りをつづけていましたが
旗本退屈男:02 第二話 続旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「いまさっき枕崎の立神館から電話がありもしてな。あなたの人相
風体
(
ふうてい
)
など説明して——」
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
風体
(
ふうてい
)
からおすと、ひとくちに『
山売
(
やまうり
)
』といわれる、あの油断のならない連中らしかった。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
古来スピイスブルク市で見たことのない、馬鹿げた
風体
(
ふうてい
)
の男である。顔の色は煙草のやうに黄いろい。鉤のやうな形の大きい鼻をしてゐる。目玉は黄いろい大豌豆のやうである。
十三時
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
目の前なる、三十歳近くの、蕎麦屋の出前持らしき
風体
(
ふうてい
)
の男、水際にて引きつ引かれつ相闘ひし上、二尺
許
(
ばかり
)
のを一本挙げたりしが、観衆
忽
(
たちま
)
ち百雷の轟く如き声して「万歳」を叫べり。
東京市騒擾中の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
この比よりは、さのみにこまかなる物まねをばすまじきなり。大方似あひたる
風体
(
ふうてい
)
を、
安安
(
やすやす
)
とほねを折らで、脇のして(仕手)に花をもたせて、あひしらひのやうに、
少少
(
すくなすくな
)
とすべし。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
主人
(
あるじ
)
帰り
来
(
きた
)
りしかば、こうこうと物語りしに、
主人
(
あるじ
)
色を変じて容貌
風体
(
ふうてい
)
などを
糺
(
ただ
)
し、それこそ
今日
(
きょう
)
手に
掛
(
かけ
)
たる女なり、役目とは云いながら、罪作りの
所為
(
わざ
)
なり、以来は為すまじき事よと
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
そして、自分ながら
阿呆
(
あほう
)
な訊ねようだと思ったが、もし京都からかくかくの
風体
(
ふうてい
)
の者で病気の静養に来ている者がこの辺の農家に見当らないであろうかと問うてみたが、それもやっぱり
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「泊めてもらうって——宿屋かね。」と車夫は提灯の
火影
(
ほかげ
)
に私の
風体
(
ふうてい
)
を見て
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
ジロジロと私の
風体
(
ふうてい
)
を視廻して、膝を突いて、母の顔を見ながら、「
誰方
(
どなた
)
?」
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
私と園さんは異様な
風体
(
ふうてい
)
のまま食堂に
闖入
(
ちんにゅう
)
し、パンとハムエグスか何かでそこそこに朝飯を済ませサンドウィッチを作らせた上、人夫を
引具
(
ひきぐ
)
し、勇ましくも(!)雲仙の第一峰に向け出発した。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
風体
(
ふうてい
)
によりて
夫々
(
それ/″\
)
の身の上を
推測
(
おしはか
)
るに、
例
(
れい
)
の
織
(
お
)
るが
如
(
ごと
)
くなれば
心
(
こゝろ
)
甚
(
はなは
)
だ
忙
(
いそが
)
はしけれど
南無
(
なむ
)
や
大慈
(
たいじ
)
大悲
(
たいひ
)
のこれ
程
(
ほど
)
なる
消遣
(
なぐさみ
)
のありとは
覚
(
おぼ
)
えず
無縁
(
むえん
)
も
有縁
(
うえん
)
の物語を作り
得
(
え
)
て
独
(
ひと
)
り
窃
(
ひそか
)
にほゝゑまれたる事に
候
(
そろ
)
。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
デミトリチは
彼等
(
かれら
)
が
厨房
(
くりや
)
の
暖炉
(
だんろ
)
を
直
(
なお
)
しに
来
(
き
)
たのであるのは
知
(
し
)
っていたのであるが、
急
(
きゅう
)
に
何
(
なん
)
だかそうでは
無
(
な
)
いように
思
(
おも
)
われて
来
(
き
)
て、これはきっと
警官
(
けいかん
)
が
故
(
わざ
)
と
暖炉職人
(
だんろしょくにん
)
の
風体
(
ふうてい
)
をして
来
(
き
)
たのであろうと
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
奇妙な
風体
(
ふうてい
)
をして——例えば洋服の上に羽織を引掛けて肩から
瓢箪
(
ひょうたん
)
を
提
(
さ
)
げるというような
変梃
(
へんてこ
)
な
扮装
(
なり
)
をして
田舎
(
いなか
)
の
達磨茶屋
(
だるまぢゃや
)
を遊び廻ったり、
印袢纏
(
しるしばんてん
)
に
弥蔵
(
やぞう
)
をきめ込んで職人の仲間へ入って見たり
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
『千載集』の
風体
(
ふうてい
)
はそうした隠者文芸的地盤の上に支えられている。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
“風体”の意味
《名詞》
容姿。身なり。風采。
(歌道)歌風。
(出典:Wiktionary)
風
常用漢字
小2
部首:⾵
9画
体
常用漢字
小2
部首:⼈
7画
“風”で始まる語句
風
風情
風邪
風采
風呂
風呂敷
風貌
風靡
風呂敷包
風説