霜月しもつき)” の例文
さて、三ねんまへ、……ちがひます。なれども、おな霜月しもつきさり、ちやうおないま時刻じこくわれらにもお前樣まへさまおなことがありました。……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
御預け申て段々御勘定ごかんぢやう致さんと申に隱居は是をきゝ偖々こまつ事哉ことかな先月なれば早速用立申さんに當月は霜月しもつきゆゑ何分なにぶん貸難かしがたく氣の毒なりと申を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今もこの国の東半分に、ひろく守られ続けている霜月しもつき三夜、すなわち旧十一月二十三日からの稲祭、いわゆる大師講の名の起こりでもあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三八さんぱちといへる百姓は一人ひとりの母につかへて、至孝ならぶものなかりける。或年あるとし霜月しもつき下旬の頃、母たけのこしよくたきよしのぞみける。
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「今晩は旧暦によりますと、霜月しもつきの十六日。夜の十時には月高くお裏山の公孫樹こうそんじゅにかかって、老梟寒飢ろうきょうかんきに鳴く。一陣の疾風雑木林を渡って、颯々さつさつの声あり」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
折ふし霜月しもつきの雨のビショビショ降る夜をおかしていらしったものだから、見事な頭髪おぐしからは冷たいしずくしたたっていて、気遣きづかわしげなお眼は、涙にうるんでいました。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
果して解者かいしゃの言ふが如く禅寺の松葉を以て十月頃の淋しさを現はさんとならば、神無月と言はずして霜月しもつきといはんにかず。けだし霜月は神無月に比して更に静かなればなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
人皇にんのう百十一代霊元天皇の延宝五年丁巳ひのとみ霜月しもつき初旬に及んで其業おわるや、京師の本山より貧道ひんどうを招き開山住持じゅうじの事を附属せむとす。貧道、寡聞かもん浅学の故を以て固辞再三に及べども不聴ゆるさず
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そう申せば早速にも今出川殿(足利義視よしみ)は、霜月しもつきの夜さむざむと降りしきる雨のなかを、比叡へお上りになされたとの事、いやそれのみか、ついには西の陣へおはしりになったとやら。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
文「左様かな、しか今日こんにち霜月しもつき中日ちゅうにち短日たんじつとは云いながらもう薄暗くなったなア」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一ト月と同じ職も無くて霜月しもつきより春へかけては突羽根つくばねの内職、夏は検査の氷屋が手伝ひして、呼声をかしく客を引くに上手なれば、人には調法がられぬ、去年こぞは仁和賀の台引きにいでしより
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
霜月しもつき九日の夕暮に大磯の別荘にてやまいのためにみまかられてしまいました。
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
日頃ひごろ眺むる東京の煙も、此四五日は大息おおいき吐息といきの息巻荒くあがる様に見える。然し此処ここは田舎である。都の師走しわすは、田舎の霜月しもつき冬枯ふゆがれの寂しい武蔵野は、復活の春を約して、麦が今二寸に伸びて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そそばしりゆく霜月しもつきや、專修念佛せんじゆねぶち行者ぎやうじやらが
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ああ、記念すべき霜月しもつきの末の日よ
ヒウザン会とパンの会 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
時は冬、霜月しもつき下旬げじゆん
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
殺したる事は存ぜねども去年霜月しもつき十七日博奕よりおそく歸りし時如何なる故か面色かほいろからず衣類に血が付居つきをりし故樣子を尋ね候に途中とちうにて喧嘩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
霜月しもつきの末頃である。一晩、陽気違ひの生暖い風が吹いて、むつと雲が蒸して、火鉢のそばだと半纏はんてんは脱ぎたいまでに、悪汗わるあせにじむやうな、其暮方だつた。
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
正月と霜月しもつきとの月初めの或る日を、山の神の樹かぞえなどと称して、戒めて山に入らぬ風習は現に行われている。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さう申せば早速にも今出川殿(足利義視よしみ)は、霜月しもつきの夜さむざむと降りしきる雨のなかを、比叡へお上りになされたとの事、いやそれのみか、ついには西の陣へおはしりになつたとやら。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
「ころしも霜月しもつき下旬の事なれば、(中略)四方よもは白たへの雪にうづみ、川風はげしくして、身体しんたい氷にとぢければ、手足もこごへ、すでにいきへんとせし時、」いつしか妬心としんを忘れしと云ふ
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一トつきおなしよくくて霜月しもつきよりはるへかけては突羽根つくばね内職ないしよくなつ檢査塲けんさば氷屋こほりや手傳てつだひして、呼聲よびごゑをかしくきやくくに上手じやうずなれば、ひとには調法てうはうがられぬ、去年こぞ仁和賀にわか臺引だいひきにいでしより
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
霜月しもつきひと朝戸出あさとでに、小野をの木守こもり
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
霜月しもつき末頃すゑごろである。一晩ひとばん陽氣違やうきちがひの生暖なまぬるかぜいて、むつとくもして、火鉢ひばちそばだと半纏はんてんぎたいまでに、惡汗わるあせにじむやうな、その暮方くれがただつた。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さて又徳太郎君には道中もとゞこほりなく同年霜月しもつき加納將監御供おんともにて江戸麹町紀州家きしうけ上屋敷へ到着たうちやくと相成り夫より左京太夫殿家督相續かとくさうぞく萬端ばんたん首尾しゆびよく相濟せられたり。
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
慶長見聞集けいちょうけんもんしゅう』という本を読んで見ると、今から三百四十年ほど前の、慶長けいちょう六年霜月しもつき二日、江戸丸焼まるやけという大火があったのち、幕府は命令をだして草葺くさぶきをあらためさせ
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
霜月しもつきとりにはろんなく門前もんぜん明地あきちかんざしみせひらき、御新造ごしんぞ手拭てぬぐひかぶらせて縁喜ゑんぎいのをとばせる趣向しゆこう、はじめははづかしきことおもひけれど、のきならび素人しろうと手業てわざにて莫大ばくだいもうけとくに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
の年、霜月しもつき十日は、かねて深く思召おぼしめし立つ事があつて、大納言卿、わたくしならぬ祈願のため、御館の密室にこもつて、護摩ごまの法をしゅせられた、其の結願けちがんの日であつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ないこれにかゝりてれはなにぞとふに、らずや霜月しもつきとりれい神社じんじや欲深樣よくふかさまのかつぎたまれぞくまくだごしらへといふ、正月しようぐわつ門松かどまつとりすつるよりかゝりて、一ねんうちとほしのれはまこと商賣人しようばいにん
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
繰返して言ふが、文政ぶんせい初年霜月しもつき十日の深夜なる、箱根の奥の蘆の湖のなぎさである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一家内これにかかりてそれは何ぞと問ふに、知らずや霜月しもつきとりの日例の神社に欲深様よくふかさまのかつぎたまふこれぞ熊手の下ごしらへといふ、正月門松とりすつるよりかかりて、一年うち通しのそれは誠の商買人
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)