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へだた
ふりがな文庫
“
隔
(
へだた
)” の例文
この東嶺寺と云うのは
松平家
(
まつだいらけ
)
の
菩提所
(
ぼだいしょ
)
で、
庚申山
(
こうしんやま
)
の
麓
(
ふもと
)
にあって、私の宿とは一丁くらいしか
隔
(
へだた
)
っていない、すこぶる
幽邃
(
ゆうすい
)
な
梵刹
(
ぼんせつ
)
です。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この地はちょうど私が前に一年ばかり住んで居ったヒマラヤ山のロー州のツァーランという所から二十五里真北に
隔
(
へだた
)
って居る所である。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
お江野には五つになる京之助といふ子がありますが、お江野と吉彌の間は、世に
謂
(
い
)
ふ繼しい仲であり乍ら何の
隔
(
へだた
)
りもありません。
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一体誰でも昔の事は、遠く
隔
(
へだた
)
ったように思うのですから、事柄と
一所
(
いっしょ
)
に路までも
遙
(
はるか
)
に考えるのかも知れません。そうして先ず
皆
(
みんな
)
夢ですよ。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
晩方になると、彼女は小野田と一緒に、そこから五六丁
隔
(
へだた
)
った原っぱの方へ、近所で月賦払いで買入れた女乗の自転車を引出して行った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
技師は、海水を
堰塞
(
えんそく
)
している
船渠
(
ドック
)
門の
扉船
(
とせん
)
から五六
間
(
けん
)
隔
(
へだた
)
った位置にやって来ると、コンクリートの
渠底
(
きょてい
)
の一部を指差しながら私達を振り返った。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
しかもエレデイアの夢幻境たる、もしその所在を地図の上に按じ得べきものとせんか、恐らく
仏蘭西
(
フランス
)
には近けれども、日本には
遙
(
はるか
)
に
隔
(
へだた
)
りたるべし。
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いろいろ経済的救済法あるいは社会改良法など
区々
(
まちまち
)
に行われているが、なお最後の解決よりははるかに
隔
(
へだた
)
っておることは誰しも感ずることである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
等
(
ひと
)
しく
隔
(
へだた
)
り等しく
誘
(
いざな
)
ふ二の
食物
(
くひもの
)
の間にては、自由の人、その一をも齒に觸れざるさきに
饑
(
う
)
ゑて死すべし 一—三
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
彼の新居は池袋の駅から
半里
(
はんみち
)
も
隔
(
へだた
)
った淋しい場所に、ポッツリと建っている陰気な木造洋館で、別棟の実験室がついていた。鉄の垣根がそれを囲んでいた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「つやなし
結城
(
ゆうき
)
の五ほんて
縞
(
じま
)
、花色裏のふきさへも、たんとはださぬ」
粋者
(
すいしゃ
)
の意中とには著しい
隔
(
へだた
)
りがある。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
紳士は、青年を自分の部屋に導くと、彼に
椅子
(
いす
)
を勧めて、自分も青年と二尺と
隔
(
へだた
)
らずに相対して腰を降した。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
古典の時代と現代とは遥かに
隔
(
へだた
)
っていて、その間には長い歴史があり、民族生活の状態が全く違っている。
日本精神について
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
聞て
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
め信州と此熊本とは
道程
(
みちのり
)
四五百里も
隔
(
へだた
)
りぬらんに
伊勢
(
いせ
)
參宮より何ゆゑ
當國迄
(
たうごくまで
)
は參りしやと
不審
(
ふしん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
登山者の
草鞋
(
わらじ
)
の当る所だけがすれて、少し
隔
(
へだた
)
って見ると
微
(
かす
)
かに白く一筋の道のようにはなっているが、近くその上へ行って見ると何処ともはっきりとは判らない
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
生ける空間、いいかえれば、自分自身への
隔
(
へだた
)
りの寂しさ、隔りの愛憐の中に、影なる空間を写しとるはたらきが、画布の情趣であり、画布に触るる浸み透る心境である。
絵画の不安
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
重吉の樽屋としての腕は近郷に知られ、海を
隔
(
へだた
)
った四国の方から弟子入りをしてくる者さえあった。重吉の結った
盥
(
たらい
)
でも桶でも輪が切れん限り何年経っても水が
洩
(
も
)
らない。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
御房の迷いと、拙者の迷いとは、だいぶ
隔
(
へだた
)
りがある。——われらごとき
武辺者
(
ぶへんしゃ
)
は、まだまだ迷いなどというのも
烏滸
(
おこ
)
がましい。ただ
余
(
あま
)
りに血に飽いて
荒
(
すさ
)
んだ心のやすみ場を
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし沖縄の舞楽は、かかる
隔
(
へだた
)
りを破って吾々に近づきます。足利時代の人が能楽を見た時の感じは、沖縄で受ける私たちの感激と、甚だ近い性質のものであったと思います。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
霧が少しくはげて来たので、北方の大渓谷を
隔
(
へだた
)
って、
遥
(
はる
)
か向いの三角点が見えて来た。
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
傍
(
そば
)
にいた
者
(
もの
)
は
直
(
す
)
ぐに
院長
(
いんちょう
)
にこの
人間
(
にんげん
)
を
紹介
(
しょうかい
)
した、やはりドクトルで、
何
(
なん
)
だとかと
云
(
い
)
うポーランドの
云
(
い
)
い
悪
(
にく
)
い
名
(
な
)
、この
町
(
まち
)
から三十ヴェルスタばかり
隔
(
へだた
)
っている、
或
(
あ
)
る
育馬所
(
いくばしょ
)
にいる
者
(
もの
)
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
鎌倉時代はおおよそ一百五十年の久しきにわたりており藤原時代と足利時代とは時間においてそれだけの
隔
(
へだた
)
りがある以上、仮りに武家政治というものが開設せられなかったにもせよ
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
上三句の景より言へば山は杉林より
隔
(
へだた
)
りたる者の如く相見え、さまで近きとは覚えぬに、滝の音とあるを見れば極めて近き山ならざるべからず、ここにおいて前後の撞著を来し申候。
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
北国に育った私は東北地方や津軽海峡を渡るのをさして
億劫
(
おっくう
)
に思わぬが、まだみぬ南の古都は、
遥
(
はる
)
かにとおく雲に
隔
(
へだた
)
った異郷のように感ぜられ、また早い青年時代の自分にとっては
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
と澄んだ笑声がして、白手拭を被つた小娘の顔が、二三間
隔
(
へだた
)
つた粟の上に現れた。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
同番地先を
隔
(
へだた
)
る約半丁ほどの大川竜太郎氏方とおぼしき方向より、突如二発の銃声を聞いたので、ただちに同家に向って急行すると、やがて同家より「泥棒、泥棒」と連呼する声をきき
黄昏の告白
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
然し妙に冷たい
隔
(
へだた
)
りが二人の間にあった。
囚われ
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
誰か
知道
(
し
)
らん恩情永く
隔
(
へだた
)
り
愛卿伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
向うの方に若い女と四十
恰好
(
かっこう
)
の女が差し向いに座を占めていた。吾輩の右に一間ばかり
隔
(
へだた
)
って婆さんと娘がベチャベチャ話しをしている。
倫敦消息
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
仙台の殿様が
伽羅
(
きゃら
)
の下駄を
履
(
は
)
いたという時代、はるか
隔
(
へだた
)
っては天保年間のお女郎は、下駄へ
行火
(
あんか
)
を仕掛けたと言う時代です。
銭形平次捕物控:376 橋の上の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
道は二町ばかり、間は
隔
(
へだた
)
ったが、
翳
(
かざ
)
せばやがて
掌
(
てのひら
)
へ、その黒髪が薫りそう。直ぐ眉の下に見えたから、何となく顔立ちの
面長
(
おもなが
)
らしいのも想像された。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
十分程すると、私達の立っている
処
(
ところ
)
より少しく左に
寄
(
よ
)
って、第二号
船渠
(
ドック
)
の
扉船
(
とせん
)
から三
米
(
メートル
)
程
隔
(
へだた
)
った海上へ、
夥
(
おびただ
)
しい泡が
真黒
(
まっくろ
)
な泥水と一緒に浮び上って来た。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
見晴台から別荘までは一町以上も
隔
(
へだた
)
っているので、その男の顔などは到底見分けられないが、全体の姿が別荘の人でないことは一目で分った。むろん爺やでもない。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その故に他の作家、殊に本来密を喜ぶ作家が、
妄
(
みだり
)
に菊池の小説作法を
踏襲
(
たふしふ
)
したら、
勢
(
いきほひ
)
雑俗の
病
(
へい
)
に
陥
(
おちい
)
らざるを得ぬ。自分なぞは気質の上では、
可也
(
かなり
)
菊池と
隔
(
へだた
)
つてゐる。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この意味では今日の自己が昨日の自己であるのみならず、遥か
隔
(
へだた
)
った前からの自己であり、遥か後までの自己なのである。そこで、第四としてこういうことが考えられる。
歴史の学に於ける「人」の回復
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
鉄騎二千はみな息をきらしたが、孔明の車との
隔
(
へだた
)
りは、依然すこしも変っていない。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
信吾は、間隔を
隔
(
へだた
)
つてゐる爲か、何も言はなかつた。笑ひもしなかつた。其心は眼前の智惠子を追うてゐた。そして、其後の清子の心は信吾を追うてゐた。其又後ろの靜子の心は清子を追うてゐた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
されば地と
隔
(
へだた
)
る
器
(
うつわ
)
はなく、人と離るる
器
(
うつわ
)
はない。それも吾々に役立とうとてこの世に生れた品々である。それ故用途を離れては、器の生命は失せる。また用に堪え得ずば、その意味はないであろう。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
同道
(
どうだう
)
したる男は疑ひもなき敵と
狙
(
ねら
)
ふ吾助にて有れば忠八は
汝
(
おの
)
れ吾助と
言
(
い
)
ひながらすツくと
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
る間に
早瀬
(
はやせ
)
なれば船は
疾
(
はや
)
三
反
(
たん
)
ばかり
隔
(
へだた
)
りし故其の船返せ戻せと呼はれ共
大勢
(
おほぜい
)
の
乘合
(
のりあひ
)
なれば船頭は耳にも入ず其
中
(
うち
)
に船は此方の
岸
(
きし
)
に
着
(
つき
)
けれとも忠八立たりし
儘
(
まゝ
)
船より
上
(
あが
)
らず又もや元の
向島
(
むかうじま
)
の方へと乘渡り
群集
(
ぐんじゆ
)
の中を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
平次の若々しい顏には
感興
(
インスピレーシヨン
)
にも似たものがサツと匂つて、身分柄の
隔
(
へだた
)
りも忘れたやうに、胸をトンと叩いて見せました。
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
父は常に我々とはかけ
隔
(
へだた
)
った奥の
二間
(
ふたま
)
を
専領
(
せんりょう
)
していた。
簀垂
(
すだれ
)
のかかったその縁側に、朝貌はいつでも並べられた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
薄情とは言われまいが、世帯の苦労に、朝夕は、細く刻んでも、日は遠い。年月が余り
隔
(
へだた
)
ると、
目前
(
めのまえ
)
の菊日和も、遠い花の霞になって、夢の
朧
(
おぼろ
)
が消えて
行
(
ゆ
)
く。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
誰かしらと怪しむ内に、車は遠く
隔
(
へだた
)
って行った。美禰子さんは気附かなかったけれど、その車には伯爵令嬢になりすましたさっきの乞食が乗っていたのだ。行先は同じ首相官邸。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
Sは挙手の礼をした
後
(
のち
)
、くるりと彼に
後
(
うし
)
ろを向け、ハッチの方へ歩いて行こうとした。彼は
微笑
(
びしょう
)
しないように努力しながら、Sの五六歩
隔
(
へだた
)
った
後
(
のち
)
、
俄
(
にわ
)
かにまた「おい待て」と声をかけた。
三つの窓
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見れば
年限
(
ねんげん
)
隔
(
へだた
)
りて
黒染
(
すみにじ
)
みの樣なれば人間の血の
染
(
そみ
)
たるとは大に
異
(
こと
)
なりしかば寶澤こそ天一坊に相違なしと三五郎は
名主
(
なぬし
)
甚左衞門に向ひ
山伏
(
やまぶし
)
感應院の死去せしは
病氣
(
びやうき
)
なりしやと
尋
(
たづ
)
ねけるに甚左衞門病氣は
食滯
(
しよくたい
)
と
承
(
うけたま
)
はり候と云然らば其時は
醫師
(
いし
)
に見せ候やと聞に
參
(
さん
)
候當村に清兵衞と申す醫師有て
夫
(
それ
)
に見せ候と答ふ然らば其
醫師
(
いし
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
與力と岡つ引では、身分に大變な
隔
(
へだた
)
りがありますから、許されなければ、敷居の内へ入ることなどは思ひもよりません。
銭形平次捕物控:004 呪ひの銀簪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
インヴァネスを着た小作りな男が、
半纏
(
はんてん
)
の
角刈
(
かくがり
)
と入れ違に
這入
(
はい
)
って来て、二人から少し
隔
(
へだた
)
った所に席を取った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「しかし一体、医王というほど、
此処
(
ここ
)
で薬草が採れるのに、
何故
(
なぜ
)
世間とは
隔
(
へだた
)
って、
行通
(
ゆきかよい
)
がないのだろう。」
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
僕がうしろの方にしようというのに、Rはなぜか、土間のかぶりつきの所へ席をとったので、僕達の目と舞台の役者の顔とは、近くなった時には、殆ど一間位しか
隔
(
へだた
)
っていないのだ。
百面相役者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ガラツ八を脅かした樣子では、かなり荒つぽい人かと思ひましたが、會つてみると思ひの外練れた人間で、岡つ引風情に、何の
隔
(
へだた
)
りもなく斯う話しかけます。
銭形平次捕物控:025 兵粮丸秘聞
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
隔
常用漢字
中学
部首:⾩
13画
“隔”を含む語句
間隔
懸隔
隔意
遠隔
隔離
隔絶
分隔
隔日
隔心
隔子
相隔
隔膜
疎隔
隔世
隔靴掻痒
横隔膜
離隔
阻隔
隔在的
隔月
...