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開放
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あけはな
ふりがな文庫
“
開放
(
あけはな
)” の例文
その時に彼の背後の、
開放
(
あけはな
)
しにして来た廊下の暗闇で微かな、深い溜息が聞こえたように思ったので、彼はハッとばかり固くなった。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
開放
(
あけはな
)
した次の間では、静子が茶棚から
葉鉄
(
ブリキ
)
の罐を取出して、麦煎餅か何か盆に盛つてゐたが、それを持つて
彼方
(
むかう
)
へ行かうとする。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
昨夜
(
さくや
)
も、
一昨夜
(
いつさくや
)
も、
夕食
(
ゆふしよく
)
果
(
は
)
てゝ
後
(
のち
)
は
部室
(
へや
)
の
窓
(
まど
)
を
開放
(
あけはな
)
して、
海
(
うみ
)
から
送
(
おく
)
る
凉
(
すゞ
)
しき
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
かれながら、さま/″\の
雜談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
るのが
例
(
れい
)
であつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
不残
(
のこらず
)
ずツと引込んで、座敷の
隅々
(
すみずみ
)
へ
片着
(
かたづ
)
いて、右も左も見通しに、
開放
(
あけはな
)
しの野原も急に広くなつたやうに思はれたと言ひます。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
戸と云う戸、障子と云う障子、窓と云う窓を残らず
開放
(
あけはな
)
し、
母屋
(
おもや
)
は仕切の
唐紙
(
からかみ
)
障子
(
しょうじ
)
を一切取払うて、六畳二室板の間ぶっ通しの
一間
(
ひとま
)
にした。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
窓硝子を
開放
(
あけはな
)
していた。野原の一軒家で、誰も来なかった。空は青空であった。陽は照っていた。庭の寝椅子に腰を下していた。じっとしていた。
老人と鳩
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
しようと無き事
云
(
いは
)
せし物なる可し夫にて思ひ合すれば先刻
營業
(
あきなひ
)
の歸り
路
(
みち
)
元益坊主の裏手を通ると
庭
(
には
)
の
障子
(
しやうじ
)
を
開放
(
あけはな
)
し庄兵衞と二人して
並
(
なら
)
んで酒を
飮
(
のん
)
でを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
歩きながら何気なしに運動場の隅にある板塀の裏木戸が
開放
(
あけはな
)
しになっているのを見ると、ハッとなって立止った。
三狂人
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
彼女はハンド・バッグから
室
(
へや
)
の合鍵を出し、
扉
(
ドア
)
を開けると、冷めたい朝風がサッと顔を撫でた、オヤと思って見ると往来に面した窓が
開放
(
あけはな
)
しになっている。
青い風呂敷包
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
村落
(
むら
)
の
者
(
もの
)
は
段々
(
だん/\
)
に
瞽女
(
ごぜ
)
の
泊
(
とま
)
つた
小店
(
こみせ
)
の
近
(
ちか
)
くへ
集
(
あつ
)
まつて
戸口
(
とぐち
)
に
近
(
ちか
)
く
立
(
た
)
つた。
戸
(
と
)
は
悉
(
こと/″\
)
く
開放
(
あけはな
)
つて
障子
(
しやうじ
)
も
外
(
はづ
)
してある。
瞽女
(
ごぜ
)
は
各自
(
かくじ
)
に
晩餐
(
ばんさん
)
を
求
(
もと
)
めて
去
(
さ
)
つた
後
(
あと
)
であつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
吉祥寺
(
きっしょうじ
)
の横手の門まで来ると、かなりな家の葬式でもあるのでしょう、今日は
開放
(
あけはな
)
しになっていて、
印半纏
(
しるしばんてん
)
の男たちが幾人か立廻っていますし、
人込
(
ひとごみ
)
を透かして
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
庭は木の繁みで
微暗
(
ほのぐら
)
く、池の水や植木の鉢などが月明りに光つてゐた。
開放
(
あけはな
)
した座敷は暗かつたが、
籐椅子
(
とういす
)
が取出されてあつたり、火の消えた
盆燈籠
(
ぼんどうろう
)
が軒に下つてゐたりした。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
貫一はかの客の間の障子を
開放
(
あけはな
)
したるを見て、
咥楊枝
(
くはへようじ
)
のまま
欄杆伝
(
てすりづた
)
ひに
外
(
おもて
)
を眺め行く
態
(
ふり
)
して、その前を
過
(
すぐ
)
れば、床の間に
小豆革
(
あづきがは
)
の
手鞄
(
てかばん
)
と、
浅黄
(
あさぎ
)
キャリコの風呂敷包とを
並
(
なら
)
べて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それでもやはり、
子供
(
こども
)
が
隣
(
となり
)
の
部屋
(
へや
)
で遊んでいる間、
部屋
(
へや
)
の戸を
半分
(
はんぶん
)
開放
(
あけはな
)
しにしておいた。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼の後の
襖
(
ふすま
)
が、けたたましく
開放
(
あけはな
)
されなかつたら、さうして「お
祖父
(
ぢい
)
様唯今。」と云ふ声と共に、柔かい小さな手が、彼の
頸
(
くび
)
へ抱きつかなかつたら、彼は恐らくこの
憂欝
(
いううつ
)
な気分の中に
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これ一同よく承まわれ
一人
(
いちにん
)
ならず三四人を
一時
(
いちじ
)
に殺すというは剣法の
極意
(
ごくい
)
を心得て居らんければ出来ぬことじゃぞ、
技倆
(
わざ
)
ばかりではなく、工夫もせねばならぬ、まして夏の
夜
(
よ
)
の
開放
(
あけはな
)
し
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
開放
(
あけはな
)
ったガラス戸の外は一望の緑、眼下には
湯壺
(
ゆつぼ
)
への
稲妻型廊下
(
いなづまがたろうか
)
の長い屋根、こんもり茂った樹枝の底に、
鹿股川
(
かのまたがわ
)
の流れが
隠顕
(
いんけん
)
する。脳髄がジーンと
麻痺
(
まひ
)
して行く様な、
絶
(
た
)
え
間
(
ま
)
なき早瀬の
響
(
ひびき
)
。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
よく一部の人々は、この蘭丸をひどく警戒して、
辛辣
(
しんらつ
)
な謀士のごとくいっているものもあるが——こう
開放
(
あけはな
)
してはなしていると、やはり
年齢
(
とし
)
は年齢だけで、まだまだ乳臭児という感じがはっきりする。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
池の
彼方
(
かなた
)
が芝生の築山、築山の真上に姿優しい姫神山が浮んで空には
断
(
ちぎ
)
れ/\の白雲が流れた。——それが
開放
(
あけはな
)
した東向の縁側から見える。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
腕組みをしてずかずかと
皈
(
もど
)
ると、もとより
開放
(
あけはな
)
したままの壁に、真黒な外套が影法師のようにかかって、や、魂が黒く抜けたかと
吃驚
(
びっくり
)
しました。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして直ちに玄関口へ戻ると、そこから自分のスキーをつけて
戸外
(
そと
)
へ飛び出し、勝手口の方を廻って、裏側の、
開放
(
あけはな
)
された居間の窓の下までやって来た。
寒の夜晴れ
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
ほやり/\水蒸気立つ土には
樹影
(
こかげ
)
黒々と落ち、
処女
(
おとめ
)
の
袖
(
そで
)
の様に青々と晴れた空には、夏雲が白く光る。戸、障子、窓の限りを
開放
(
あけはな
)
して存分に日光と風とを
容
(
い
)
れる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
……この深夜に……
開放
(
あけはな
)
された部屋の中で……タッタ一人眠っている西洋人の娘……。
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それよりはブラリブラリと牛の歩み
宜
(
よろ
)
しく、またもや一里あまり進んで、
南方
(
みなみかた
)
村という寒村に来掛かれば、
路傍
(
みちばた
)
の
開放
(
あけはな
)
されたる一軒家では、
褌
(
ふんどし
)
一本の村の
爺
(
じい
)
さん達四、五人
集
(
あつま
)
って
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
襖
(
ふすま
)
を
開放
(
あけはな
)
した
茶
(
ちや
)
の
間
(
ま
)
から、
其先
(
そのさき
)
の四
畳半
(
でうはん
)
の
壁際
(
かべぎは
)
に
真新
(
まあたら
)
しい
総桐
(
さうぎり
)
の
箪笥
(
たんす
)
が一
棹
(
さを
)
見
(
み
)
える。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
池の彼方が芝生の築山、築山の眞上に姿優しい姫神山が浮んで空には斷れ/″\の白雲が流れた。——それが
開放
(
あけはな
)
した東向の縁側から見える。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
扉
(
ドア
)
を
開放
(
あけはな
)
した室の、患者無しに行抜けの空は、右も左も、折から
真白
(
まっしろ
)
な月夜で、月の表には富士の
白妙
(
しろたえ
)
、裏は紫、海ある
気勢
(
けはい
)
。停車場の屋根はきらきらと露が流れて輝く。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雨はますます激しく、
開放
(
あけはな
)
しの入口は風と共に霧さえ吹込んで来るので、なかなか以て横になる事も出来ない。その内に焚火は天幕の一隅に燃え付いて、天幕は鬼火のように燃え上がる。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
蒸暑い夏の或真夜中に、お島はそこらを
開放
(
あけはな
)
して、
蚊帳
(
かや
)
のなかで寝苦しい体を
持余
(
もてあま
)
していたことがあった。
酸
(
す
)
っぱいような蚊の
唸声
(
うなりごえ
)
が
夢現
(
ゆめうつつ
)
のような彼女のいらいらしい心を
責苛
(
せめさいな
)
むように耳についた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「この引戸が半分、
開放
(
あけはな
)
しになっておりました」
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
行儀よく並んだ札が見る間に減つて、
開放
(
あけはな
)
した室が刻々に蒸熱くなつた。智恵子の前に一枚、富江の前に一枚……頬と頬が触れる許りに頭が集る。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
(照吉さんの様子を見に、お才はんが駆出して
行
(
ゆ
)
きなすった、
門
(
かど
)
を
開放
(
あけはな
)
したまんまでさ。)
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
其夏、毎晩夜遅くなると、健の
家
(
うち
)
——或る百姓家を半分
劃
(
しき
)
つて借りてゐた——では障子を
開放
(
あけはな
)
して、居たたまらぬ位杉の葉を
燻
(
いぶ
)
しては、中で
頻
(
しき
)
りに団扇で
煽
(
あふ
)
いでゐた。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
立処
(
たちどころ
)
にこの部屋へお姿が
露
(
あらわ
)
れますからお休みなさりながらお待ちなさい、と机の
傍
(
わき
)
に坐り込んで、
煙草
(
たばこ
)
を
喫
(
の
)
もうとして、
打棄
(
うっちゃ
)
って、フイと立って蒲団を持出すやら、
開放
(
あけはな
)
しましょう
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
此
(
こ
)
の
陽氣
(
やうき
)
で、
障子
(
しやうじ
)
を
開放
(
あけはな
)
した
中
(
なか
)
には、
毛氈
(
まうせん
)
も
見
(
み
)
えれば、
緞通
(
だんつう
)
も
見
(
み
)
える。
屏風
(
びやうぶ
)
、
繪屏風
(
ゑびやうぶ
)
、
衣桁
(
いかう
)
、
衝立
(
ついたて
)
——お
輕
(
かる
)
が
下
(
お
)
りさうな
階子
(
はしご
)
もある。
手拭
(
てぬぐひ
)
、
浴衣
(
ゆかた
)
を
欄干
(
てすり
)
に
掛
(
か
)
けたは、
湯治場
(
たうぢば
)
のお
定
(
さだ
)
まり。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
……ここの座敷には、
蜜柑
(
みかん
)
の皮だの、キャラメルの箱だのが散ばって、
小児
(
こども
)
づれの客が、三崎へ行く途中、
昼食
(
ちゅうじき
)
でもして行った
跡
(
あと
)
をそのままらしい。障子はもとより
開放
(
あけはな
)
してありました。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“開放”の意味
《名詞》
開 放(かいほう)
門や戸、窓などを開け放すこと。
制限をなくして自由に出入りできるようにすること。
なんらかの部分をさえぎらないようにすること。
(出典:Wiktionary)
開
常用漢字
小3
部首:⾨
12画
放
常用漢字
小3
部首:⽁
8画
“開”で始まる語句
開
開闢
開鑿
開閉
開墾
開戸
開眼
開山
開府
開口