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ぼたん
ふりがな文庫
“
釦
(
ぼたん
)” の例文
「怪しいと思うのは、あの梟の眼だ。あれは押し
釦
(
ぼたん
)
になっているに違いない。君を傍へ連れてゆくから、ちょっと
圧
(
お
)
してみてくれないか」
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
又名優タルマの持物であつた外套用の大きな
釦
(
ぼたん
)
を見せて「
之
(
これ
)
は自分に気持がよいからエジプ王に扮する場合に
何時
(
いつ
)
も用ひて居る」
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
釦
(
ぼたん
)
を握った死体と、啼く蜆と、舌足らずの女房と、この俺と、それは醜悪な構図だ。醜悪だけれども俺は其処で生きて行こう。
蜆
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
彼は、上から二つ目の
釦
(
ぼたん
)
の横に残った白粉の残りを、長いこと消さずにおくことにきめた。僕がそれを注意したら、彼は幸福そうに微笑んだ。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
新一は望月少佐に何かささやいておいて、門の扉を開き格子戸に近づくと、柱の
電鈴
(
ベル
)
の
釦
(
ぼたん
)
を三度、妙な調子をつけて押した。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
巡査はだまれと言わぬばかり、わたくしの顔を
睨
(
にら
)
み、手を伸していきなりわたくしの外套の
釦
(
ぼたん
)
をはずし、裏を返して見て
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
こんな小さな
家
(
うち
)
だって、これは
譬
(
たと
)
えば、電気の
釦
(
ぼたん
)
だ。
捻
(
ひね
)
る、押すか、一たび指が動けば、横浜、神戸から大船が
一艘
(
いっぱい
)
、波を切って煙を
噴
(
は
)
くんだ。喝!
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
学習院の
平素
(
ふだん
)
の制服といふのは、
釦
(
ぼたん
)
のない
詰襟
(
つめゑり
)
のホツク
留
(
どめ
)
だが、
加之
(
おまけ
)
に帽子の
徽章
(
きしやう
)
が桜の花になつてゐるので、どうかすると海軍士官に間違はれる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
手に取ってみて小首を
傾
(
かし
)
げていたが、彼自身のみに解る何等かの証跡を発見したらしく下女を呼ぶ電気
釦
(
ぼたん
)
を押した。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
遠く
眼
(
まなこ
)
を微茫の底に放つて、幾點の紅燈に夢の如く柔かなる空想を
縱
(
ほしい
)
まゝに醉はしめたるは、制服の
釦
(
ぼたん
)
を眞鍮と知りつゝも、
黄金
(
こがね
)
と強ひたる時代である。
京に着ける夕
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
男の子の洋服の袖や胸のあたりにさまざまな
釦
(
ぼたん
)
が、勲章のように幾つもくっついていたのをミネは思い出した。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
表面は平和な客船に見えてゐるけれど、艦長が電気
釦
(
ぼたん
)
を一つ押せば、
忽
(
たちま
)
ち武装いかめしい軍艦に変るのだ。
怪艦ウルフ号
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
たとえば手ぬぐいは羽織のかくしに入れ、金入れは
股引
(
ももひき
)
のかくしに入れ、時計は胴着のかくしに入れて鎖を
釦
(
ぼたん
)
の穴に掛けるというふうに。
履物
(
はきもの
)
も変わっている。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼女は車道の隅から車の前を突然突切ろうとしたので、車夫はこれを避けたが、彼女の破れた袖無しに
釦
(
ぼたん
)
がなかったため、風に煽られて外に広がり、
梶棒
(
かじぼう
)
に引掛った。
些細な事件
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
中々マントの内ポケットにジッとしてなんかいないんだから袋の口を
釦
(
ぼたん
)
で止めとかなくちゃならん。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
二重𢌞はしの
釦
(
ぼたん
)
をかけながら、旦那は向うをむいたまゝでかう言つた。お光はぎよツとしたが
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
だから、その晩にも、かれはひとりで必死になって上衣を脱いだり、パンツや、シャツの
釦
(
ぼたん
)
をはずしたり、
寝衣
(
ねまき
)
に
着更
(
きか
)
えたり、帯を結んだり、寝床にころがったり、眠ったりした。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
と、猫の鼻先へ
鰹節
(
かつおぶし
)
でもぶら下げた様に、何の期待もなかった彼の前へ一人の紳士が現われた。中年の男で相当整った身なりを見せて居た。併も
外套
(
がいとう
)
と上着の
釦
(
ぼたん
)
が
総
(
すべ
)
て外れた儘で居た。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
胸衣
(
チョッキ
)
の一番下の
釦
(
ぼたん
)
を隠すほどに長い
白髯
(
はくぜん
)
を垂れ、魂の
苦患
(
くげん
)
が心の底で燃え
燻
(
くすぶ
)
っているかのような、憂鬱そうな顔付の老人であるが、検事の視線は、最初からもう一枚の外紙の方に奪われていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
肥
(
ふと
)
ってはいるがむしろ小男の部だ。その代り腹ばかり
太鼓
(
たいこ
)
のように
膨
(
ふく
)
れている。ビールの
招牌
(
かんばん
)
にありそうな便々とした腹を持っていて普通の洋服では
釦
(
ぼたん
)
が合わん仕立屋がズボンの仕立に閉口する位だ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
と、彼女は、七宝側の時計をのぞいて、
釦
(
ぼたん
)
の下へかくしながら
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寒い街角を曲る時などにふとあの外套の感触や黄色い
釦
(
ぼたん
)
のことを想い出したが、かえってさばさばした清々しい気持がした。
蜆
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
博士は大隅の
覚醒
(
かくせい
)
に、なんの愕きの色もあらわさなかった。そして
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するところもなく、オメガ光線を
遮
(
さえ
)
ぎってあるシャッターの
釦
(
ぼたん
)
に手をかけた。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と往来で
釦
(
ぼたん
)
をはずすと——(いま買ものをするのを待つと云った)——この男の
従姉
(
いとこ
)
だという、雪国の雪で育った、色の抜けるほど白い、すっきりとした世話女房
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
適当な場所に
粟粒
(
あわつぶ
)
程の
釦
(
ぼたん
)
までつけてあるし、娘の乳のふくらみと云い、腿のあたりの
艶
(
なま
)
めいた曲線と云い、こぼれた
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
、チラと見える肌の色、指には
貝殻
(
かいがら
)
の様な爪が生えていた。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
瀬戸物
(
せともの
)
の
釦
(
ぼたん
)
の
着
(
つ
)
いた
白木綿
(
しろもめん
)
の
襯衣
(
しやつ
)
を
着
(
き
)
て、
手織
(
ており
)
の
硬
(
こは
)
い
布子
(
ぬのこ
)
の
襟
(
えり
)
から
財布
(
さいふ
)
の
紐
(
ひも
)
見
(
み
)
たやうな
長
(
なが
)
い
丸打
(
まるうち
)
を
懸
(
か
)
けた
樣子
(
やうす
)
は、
滅多
(
めつた
)
に
東京
(
とうきやう
)
抔
(
など
)
へ
出
(
で
)
る
機會
(
きくわい
)
のない
遠
(
とほ
)
い
山
(
やま
)
の
國
(
くに
)
のものとしか
受
(
う
)
け
取
(
と
)
れなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
大森氏は同じ主義から、どんな酷暑の候でも、官吏は簡単な服装をしてはならないといふので、洋服の
釦
(
ぼたん
)
一つ外した事がない。この意味から詰襟などは
巻煙草
(
シガレツト
)
や
刻煙草
(
きざみたばこ
)
と一緒に大嫌ひである。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
葉巻の煙に
噎
(
む
)
せて、ネクタイを引き
弛
(
ゆる
)
めて、チョッキの
釦
(
ぼたん
)
を外して、鼻眼鏡をかけ直して、その一声
毎
(
ごと
)
に、
室中
(
へやじゅう
)
の空気が消えたり現われたりするかと思う程徹底的に仰ぎつ伏しつ笑い続けた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
がくれの茶亭の下へ、さて
上
(
あが
)
って、ズボンの
釦
(
ぼたん
)
をはずす男もいる。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
初めて寛斎の目に映るその西洋人は、
羅紗
(
らしゃ
)
の丸羽織を着、同じ羅紗の
股引
(
ももひき
)
をはき、羽織の
紐
(
ひも
)
のかわりに
釦
(
ぼたん
)
を用いている。手まわりの小道具一切を
衣裳
(
いしょう
)
のかくしにいれているのも、異国の風俗だ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
老栓は応えて
上衣
(
うわぎ
)
の
釦
(
ぼたん
)
を
嵌
(
は
)
めながら手を伸ばし
薬
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
そこで呼び鈴の
釦
(
ぼたん
)
を軽くおした上、なかに入っていった。それは勝手知ったる主治医の家であったから。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
俺は涙を流しながら、ヒイヒイと笑いつづけた。終点につくまで俺は腹の皮の痛くなるほど笑いつづけていた。俺の外套から
釦
(
ぼたん
)
がひとつなくなっているじゃないか。
蜆
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
あッと云って、
真前
(
まっさき
)
に縁へ
遁
(
に
)
げた洋服は——河野英吉。続いて駈出そうとする照陽女学校の教頭、
宮畑閑耕
(
みやばたかんこう
)
の
胸
(
むな
)
づくし、
釦
(
ぼたん
)
が
引
(
ひっ
)
ちぎれて
辷
(
すべ
)
った手で、
背後
(
うしろ
)
から抱込んだ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
袴
(
はかま
)
の
裾
(
すそ
)
が五六
寸
(
すん
)
しか
出
(
で
)
ない
位
(
くらゐ
)
の
長
(
なが
)
い
黒羅紗
(
くろラシヤ
)
のマントの
釦
(
ぼたん
)
を
外
(
はづ
)
しながら
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
黒耀の石の
釦
(
ぼたん
)
をつまさぐりかたらふひまも物をこそおもへ
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
橋板
(
はしいた
)
がまた、がツたりがツたりいつて、
次第
(
しだい
)
に
近
(
ちか
)
づいて
来
(
く
)
る、
鼠色
(
ねづみいろ
)
の
洋服
(
やうふく
)
で、
釦
(
ぼたん
)
をはづして、
胸
(
むね
)
を
開
(
あ
)
けて、けば/\しう
襟飾
(
えりかざり
)
を
出
(
だ
)
した、でつぷり
紳士
(
しんし
)
で、
胸
(
むね
)
が
小
(
ちひ
)
さくツて
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
岩蔵と
謀
(
しめ
)
し合わせて置いたように正門脇の
隠
(
かく
)
し
釦
(
ぼたん
)
を押すと、重い脇戸はスーッと内に開いた。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と声を掛け、仕切の板に手を
支
(
つ
)
きて、われを呼びたるは国麿なり。
釦
(
ぼたん
)
三ツばかり見ゆるまで、胸を広く
掻広
(
かきひろ
)
げて、袖をも
肱
(
ひじ
)
まで
捲
(
まく
)
し上げたる、燃立つごとき
紅
(
くれない
)
の
襯衣
(
しゃつ
)
着たり。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
釦
(
ぼたん
)
か
鋲
(
びょう
)
の頭かと思ったその小さな丸いものは、ヌルリと彼の指を濡らしたばかりだった。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
古靴屋の手に靴は
穿
(
は
)
かぬが、
外套
(
がいとう
)
を売る女の、
釦
(
ぼたん
)
きらきらと
羅紗
(
らしゃ
)
の筒袖。
小間物店
(
こまものみせ
)
の若い娘が、毛糸の手袋
嵌
(
は
)
めたのも、寒さを
凌
(
しの
)
ぐとは見えないで、広告めくのが
可憐
(
いじ
)
らしい。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのとき彼は、前の四角な
函卓子
(
はこテーブル
)
の横に、小さな
押
(
お
)
し
釦
(
ぼたん
)
があるのに気がついた。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それ、
湯気
(
ゆげ
)
は
立
(
た
)
つたり
伏
(
ふさ
)
つたり、
釦
(
ぼたん
)
に
掛
(
かゝ
)
つたり、
耳
(
みゝ
)
を
巻
(
ま
)
いたり、
鼻
(
はな
)
を
吹
(
ふ
)
いたりする。
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
大尉は
無雑作
(
むぞうさ
)
に門のところについているベルの
釦
(
ぼたん
)
をおしました。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
お帽子お外套というも
極
(
きま
)
りの悪い
代
(
しろ
)
ものが
釦
(
ぼたん
)
で棚へ入って、「お目金、」と四度半が手近な
手函
(
てばこ
)
へ
据
(
すわ
)
る、歯科のほかでは知らなかった、椅子がぜんまいでギギイと巻上る……といった
勢
(
いきおい
)
。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
釦
(
ぼたん
)
をはずして、胸を開けて、けばけばしゅう
襟飾
(
えりかざり
)
を出した、でっぷり紳士で、胸が小さくッて、
下腹
(
したっぱら
)
の方が図ぬけにはずんでふくれた、脚の短い、靴の大きな、帽子の高い、顔の長い、鼻の赤い
化鳥
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“釦(ボタン(服飾))”の解説
ボタン(pt: botão、en: button、釦、鈕)とは、衣服、鞄、靴などに止め具として使用される服飾物。縫製副資材の一種である。語源はポルトガル語 botão が最も有力な説とされる。多くは実用性と装飾を兼ねるが、もっぱら装飾目的の「飾りボタン」もある。
(出典:Wikipedia)
釦
漢検準1級
部首:⾦
11画
“釦”を含む語句
釦金
釦鈕
金釦
押釦
紐釦
釦孔
貝釦
手釦
釦穴
胸釦
襟釦
警報釦
調整釦
詰襟金釦
釦子
釦紐
操縦釦
夫婦釦
鉄釦
銀釦
...