退治たいじ)” の例文
町奉行所は格別、番屋で調べる時には岡っ引や手先ばかりでなく、八丁堀の旦那衆もみんなこの息で頭からポンポン退治たいじ付けるんです。
半七雑感 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
山伏やまぶし姿すがたにやつしてはおいでになりますが、あなたがたはきっと酒呑童子しゅてんどうじ退治たいじするために、京都きょうとからおくだりになった方々かたがたでしょう。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ところへ寒月かんげつ君が先日は失礼しましたと這入はいって来る。「いや失敬。今大変な名文を拝聴してトチメンボーの亡魂を退治たいじられたところで」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
○「小声でやってくだせえ、みんなそらっぺえばなしで面白くねえ、旦那が武者修行をした時の、蟒蛇うわばみ退治たいじたとか何とかいうきついのを聞きたいね」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
村の人たちはり合いをやって相談そうだんをした。そして結局けっきょく、村の人の中で、寺の鬼どもを退治たいじしたものを寺の住職にしようということになった。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「さきほど、軍師ぐんし八風斎はっぷうさいどのが、列席のおりには、秀吉ひでよし退治たいじのご出陣は、来春の雪解ゆきどけと、同時に遊ばすことに決したではござりませぬか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弱った事になって来たと思っていると果して、私はゆり起された。楢重、ちょっと来いお前やろ、さあこの虫を皆退治たいじてしまえといい渡された。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「では早くしたまえ。大男退治たいじのジャックは肉のにおいをかいだ——ぼくは危険きけんのにおいをかぎつけている」
そこでさるはたいそうよろこびまして、たのみの用をうち明けました。用というのは、大蛇おろち退治たいじすることでした。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
いや、いけずなお転婆てんばで。……ところがはずみにかかって振った拍子ひょうしに、その芋虫をポタリと籠の目へ、落したから可笑おかしい。目白鳥は澄まして、ペロリと退治たいじた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出雲いずもの国へおまわりになって、そのあたりではばをきかせている、出雲建いずもたけるという悪者をお退治たいじになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
土地の羊飼達ひつじかいたちはもちろん、よそからもおおかみ狩りを自慢じまんの連中が続々とやってきて、この悪獣あくじゅう退治たいじしようとしたのであったが、いずれも失敗して引きあげる。
「あとはたのむぜ、おれは強盗ごうとうの親玉を退治たいじたんだから、これから警察へごほうびをもらいにゆくんだ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
では今夜もあの晩のように、ここからいそいそ出て行って、勇ましく——批評家に退治たいじされて来給え。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ぼくはいちばんはじめにあんずの王様おうさまのおしろをたずねるよ。そしておひめさまをさらっていったばけものを退治たいじするんだ。そんなばけものがきっとどこかにあるね。」
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
がき大将だいしょう真坊しんぼうは、さきにたって、てらのひさしにをかけたすずめばちを退治たいじにゆきました。
真坊と和尚さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
今にも一人の美しい少女を呑もうとしているおそろしい海の怪物を退治たいじたとか、又ちょっとゴーゴンの首を見せただけで、とても大きな巨人を石の山にしてしまったとかいったような
万事偶然の成行だったが、しかし、極めて理想的に病気を退治たいじたということが出来る。なぜなら、後日、三好達治の背中にこぶしに余る傷跡を見たからで、彼も同じく腫物を病み、手術をした。
青い絨毯 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
甲州生れの大工上りとかいう全身にいれずみをした大入道で、三多羅和尚さんたらおしょうという豪傑坊主が、人々の噂を聞いて、一番俺がその妖怪ばけもの退治たいじてくれようというのでその寺にすまい込み、自分でそこ
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ぬえ退治たいじた伝説で有名な源三位頼政げんざんみよりまさ、西行法師、大原おおはらの三寂といわれた寂超じゃくちょう寂然じゃくぜん寂念じゃくねんの三兄弟、『金葉集』を撰んだ源俊頼の子の歌林苑の俊恵しゅんえ、少し若手では『方丈記』の鴨長明かものちょうめいなど
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
「その海賊竜神松五郎を退治たいじた浦賀奉行は、六浦の御先代、和泉守友純いずみのかみともずみ様だ」
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
島原しまばら切支丹きりしたん退治たいじがあって、血腥ちなまぐさうわさが伝わったのは昨年のことである。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
弟は、わるだくみがあろうとは、ゆめにも知りません。それで、うちのなかにはいっていって、しんせつな小人こびとやりをくれて、その槍でイノシシを退治たいじしたことを、すっかりにいさんに話しました。
「それは知らん。何でも可いから一つ二つ奪つて置けば、奴を退治たいじる材料になると考へたから、早業をして置いたのだが、思ひきやこれがねらかたきの証書ならんとは、全く天の善にくみするところだ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
人間が草を退治たいじせねばならぬ程、草が人間を攻めるのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
汝らをエイヤアと退治たいじることはできぬ
死の淵より (新字新仮名) / 高見順(著)
ねずみはわしが 退治たいじてあげる。
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
わるいのは校長でもなけりゃ、おれでもない、生徒だけにきまってる。もし山嵐が煽動せんどうしたとすれば、生徒と山嵐を退治たいじればそれでたくさんだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
中納言ちゅうなごんはさっそく天子てんしさまの御所ごしょがって、大事だいじむすめ大江山おおえやまおにられたことをくわしくもうげて、どうぞ一にちもはやくおに退治たいじして
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「そうだ、これなら大丈夫だいじょうぶ。ねえさるさん、お前は猿智慧さるぢえといって、たいそう利巧りこうだそうだが、案外あんがい馬鹿ばかだなあ。今私が大蛇おろち退治たいじてあげるから、見ていなさいよ」
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「さあいいが、その山猫やまねこはこのくりの木がらひらっとこっちさげだ。鉄砲打てっぽううぢはこうぼかげだ。山猫はとうとうつかまって退治たいじされた。耳の中にこう云う玉入っていた。」
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
此奴こいつふんどしにするため、野良猫の三毛を退治たいじて、二月越ふたつきごし内証ないしょで、ものおきで皮をしたそうである。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なかには、やりや、鉄砲てっぽう用意よういしておいて、きたら退治たいじしてやろうとちかまえているものもありましたが、神通力じんずうりきましたあかトラは、なかなか人間にんげんにははいりませんでした。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところが、この男も退治たいじに出かけた次の朝、片足かたあし半分食い取られ、おまけに鼻や耳やっぺたまでかみ切られて、おいおいきながら地べたをうようにしてげ帰って来た。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
これが泉鏡花いずみきょうかの小説だと、任侠にんきょうよろこぶべき芸者か何かに、退治たいじられる奴だがと思っていた。しかしまた現代の日本橋は、とうてい鏡花の小説のように、動きっこはないとも思っていた。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その力の強さにはいまさらながらおどろかされた。ロボはブランカの死体を見つけるまでは、その辺を去らない気持ちらしい。わたしはこの機会にかれを退治たいじしてやろうと心をくだいた。
「やい小僧こぞう、こらッ、三年のライオンを退治たいじした生蕃を知らないか、よしッ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
退治たいじるのは私の責任でまた退治るには、女中や妻君に任せておけないのだ。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
ねずみ退治たいじが 成功したら
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
建てかけるが早いか、風と云い雨と云う曲者くせものが来てこわしてしまう。地ならしをするか、雨風あめかぜ退治たいじるかせぬうちは、落ちついてこの世に住めぬ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どうして頼政よりまさがそういう名誉めいよになうようになったかともうしますと、いったいこの頼政よりまさは、あの大江山おおえやまおに退治たいじした頼光らいこうには五だいめのまごたりました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あの人形はからっぽで、背中せなかに私の出入口がついてるのです。大蛇おろち退治たいじてくださったお礼に、これから私が人形をおどらせますから、それであなたは一もうけなさい。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
殿様がたかえたかくで、てのひらに置いて、それと見せると、パッと飛んで虫を退治たいじた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(腕組をしたまま、一同を見まわす)わたしは片っぱしから退治たいじして見せる。
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
世間せけんさわがせるわるいねこだ。いかほどの神通力じんずうりきがあるにせよ、科学かがくちからにはかなうまい。わたし退治たいじしてやろう。」と、電気でんき応用おうようして、いよいよ、あかトラと勝負しょうぶけっすることになったのです。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「お前に退治たいじが出来たら、三年があいだ飲まず食わずで生きて見せる。」
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「とてもこれは毒で退治たいじられる代物しろものではない。」
そのたびに例の通りぽんぽんという音がした。敬太郎はしまいにどうしてもこの音を退治たいじてやりたいような気がし出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは一にちはやくこのあやしいものを退治たいじして、天子てんしさまのおなやみをしずめてあげなければならないというので、お公卿くげさまたちがみんなって相談そうだんをしました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わしはこの国の王として、その魔法使いを退治たいじしないわけにはゆかない。王子をたぶらかされて、そのまま許しておくわけにはゆかない。夜が明けたら早速、退治に出かけてやる
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)