褒美ほうび)” の例文
アーストロフさんは毎年まいねん々々、あたらしい林を植えつけて、そのご褒美ほうびにもう、銅牌どうはいだの賞状だのを、もらっていらっしゃいますの。
そして勉強の褒美ほうびに芝居へ行かしてやると言われたので、いっそう熱心に勉強を始めた。彼はもう芝居のことしか考えていなかった。
うまく殺しおおせたら、褒美ほうびの金はもちろん、生涯、高家の庭番にでも何にでも使って面倒はみてやる、食うには困らせはせんと……
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金眸もななめならず喜びて、「そはおおいなる功名てがらなりし。さばれなんじ何とてかれを伴はざる、他に褒美ほうびを取らせんものを」ト、いへば聴水は
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
それゆえ彼女が私のためになんぞ骨の折れることや気のすすまぬことをしてくれたときには「御褒美ほうびだ」といってよく能につれていった。
妹の死 (新字新仮名) / 中勘助(著)
「子猫の褒美ほうびに——お手を」と、軽騎兵は、にやりと笑うと、新調の軍服にきっちり締め上げられたたくましい全身を、ぐいと反り返らせた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「オイ!」と残忍な含み声。「それともあくまでつける気か? つけるならつけろ、つけてみろ! うまくつけたら褒美ほうびをやる。 ...
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「イヤ、それとこれとは、別な話じゃが、そのとき、あのお美夜に、なんぞ褒美ほうびを取らしょうかとわしがたずねたところが——」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やつくれえばかに運のつええやつアねえぜ。ぶつちゃア勝つ、遊んで褒美ほうびはもれえやがる、鉄砲玉アあたりッこなし。運のいいたやつのこっだ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
しかるに不思議な事には学者の智識に対してのみは何等の褒美ほうびも与えたと云う記録がなかったので、今日こんにちまで実はおおいに怪しんでいたところさ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
後代手本たるべしとて褒美ほうびに「かげろふいさむ花の糸口」というわきして送られたり。平句ひらく同前どうぜん也。歌に景曲は見様みるようていに属すと定家卿ていかきょうものたまふ也。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
得たりとばかり膝を進めて取り出し示す草案の写しを、手に持ちながら舌は軽く、三好さん、これですが、しかしこれには褒美ほうびがつきますぜ。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
「永年遠国えんごく罷在候夫まかりありそろおっとため、貞節を尽候趣聞召つくしそろおもむききこしめされ、厚き思召おぼしめしもっ褒美ほうびとして銀十枚下し置かる」と云う口上であった。
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
また時によっては、「文庫を燃させなんだらその褒美ほうびに、姫をさらって行くからそう思え」などと御冗談もございました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
乞食には虱を取らせてれた褒美ほうびめしると云うきまりで、れは母のたのしみでしたろうが、私はきたなくて穢なくてたまらぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しんちゃん、ラジオ体操たいそうにゆかないの? やすまずにいくと、ご褒美ほうびがもらえるのだよ。」と、つねちゃんが、いいました。
真坊と和尚さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
まず若い人々の製作を集めて常会に出品し優劣を評定して褒美ほうびとして参考書の類を授けるということなどを初めとして、種々いろいろ審議されました結果
「……それで、ご褒美ほうびになにか美味おいしいものを、馬さんの口元へ差しつけたとしますね。……すると、この馬さんは、いったい、どうするかしら?」
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それがすむと、小さなボヘミヤンは、褒美ほうびとして羊小屋の中に入れてもらおうと思った。自分のうちのような気がした。
もっともあらかじめ仇打ちの願書がんしょを奉ることを忘れていたから、褒美ほうび沙汰さただけはなかったようである。そのの伝吉を語ることは生憎あいにくこの話の主題ではない。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「おお、二機も、やっつけたか。それは抜群ばつぐんの手柄じゃ。よし、あとで、褒美ほうびをやろう。昇進も上申してみるぞ」
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こりゃ六兵衛、なんじ盗人ぬすっとでない証拠しょうこを見せるために、の手のひらに書いた文字を当ててみよ。うまくはんじ当てたならば、のぞみ通りの褒美ほうびをとらせよう。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
百人前の仕事をしたからとつて褒美ほうびの一つも出やうでは無し朝から晩まで一寸法師のいはれつづけで、それだからと言つて一生立つてもこのせいが延びやうかい
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私は色の白い友達にはてんで頭が上らなかつた。黒坊主黒坊主と言はないものには、いゝ褒美ほうびを上げるからと哀願して、絵本とか石筆とかの賄賂わいろをおくつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
鰥寡かんか、孤独、貧困の者は広く賑恤しんじゅつするぞ、八十歳以上の高齢者へはそれぞれ褒美ほうびをつかわすぞと言われても
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そうして今日お前の女王に尽した忠義の褒美ほうびに、女王は今からお前をこの国の総理大臣にしてくれと云ったぞ
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
海老屋へ行った禰宜様宮田は、きっとふんだんな御褒美ほうびにあずかって来るものだと思って、待ちに待っていたお石は、空手で呆然ぼんやり戻って来た彼を見ると、思わず
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
拾いし者はすみやかに返すべし——町役場ちょうやくばに持参するとも、直ちにイモーヴィルのフォルチュネ、ウールフレークに渡すとも勝手なり。ご褒美ほうびとして二十フランの事。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
「だれかうま親子おやこ見分みわけることをっているか。うまく見分みわけたものにはのぞみの褒美ほうびをやる。」
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「で、神様はその褒美ほうびに何をしてくださるんだい?」彼はどこまでも追求しながら、こう尋ねた。
「これ与次郎、手白猿はどうでも貴公が撃ち取ってくりょ、そうしれば褒美ほうびはなにほどでもやる」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何か勲功てがらがあったので褒美ほうびに王様からほふった駱駝らくだを一匹もらった男があった。男は喜んで料理に取りかかった。なにしろ大きな駱駝一匹料理するのであるから手数がかかる。
愚かな男の話 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「お蔭で町方の恥にならずに済んだよ。これが見付かれば春木屋から百両の褒美ほうびが出るはずだ、お前にもとんだ苦労をさせたから、松吉と世帯を持つ足しに三十両やろう」
茶道の盛んであった時代においては、太閤たいこうの諸将は戦勝の褒美ほうびとして、広大な領地を賜わるよりも、珍しい美術品を贈られることを、いっそう満足に思ったものであった。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
三行書みくだりがきの中奉書はの年の七夕たなばた粘墨ねばずみに固まりてれたる黒毛にかびつきたるは吉書七夕の清書の棒筆、矢筈やはず磨滅まめつされたる墨片は、師匠の褒美ほうびの清輝閣なり、彼はえり
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
……そうだもう一ついうことを忘れていたが、死ぬ番にあたった奴は、その褒美ほうびとしてともちゃんを奥さんにすることができるんだ。このだいじな条件をいうのを忘れていた。
ドモ又の死 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
母は襦袢じゅばんの袖を噛み声も得たてず泣き出せば、十兵衛涙に浮くばかりのつぶらまなこいだし、まじろぎもせでぐいとめしが、おおでかしたでかした、よくできた、褒美ほうびをやろう
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
九月一日の休みに、栄二とこぶの清七が役所へ呼ばれ、それぞれ一貫文の褒美ほうびを貰った。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
とおほめになつて、うちに少々しよう/\のこつてゐたもの褒美ほうびらせました。もちろんひめ難題なんだいにはふるひ、「赫映姫かぐやひめおほがたりめ」とさけんで、またと近寄ちかよらうともしませんでした。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
切支丹宗門は累年ご禁制たり、自然不審なるもの之有者これあらば申しづべし、ご褒美ほうびとして
これに答えぬと恥でもあり、また賢こい人がないと知って、攻めてこられるにちがいないので、誰かこの難題をく者があったら、望みしだいの褒美ほうびをくださるということになった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ある時村の小学校の運動会で饌立ぜんだて競走きょうそうで一着になり、名を呼ばれて褒美ほうびを貰ったあとで、饌立の法が違って居ると女教員から苦情が出て、あらためて呼び出され、褒美を取り戻された。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「おとう、あの仏壇ぶつだん抽出ひきだしに、県庁からもろうた褒美ほうびがあるね?」と尋ねました。
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
こういう褒美ほうびを与えておいて、彼はまたしても連銭葦毛に向ってしゃべった。
今打ち落した氏輝の首をいだいて走った志を家康感じて罰せず、麾下きかに列したとある(『野史』一二六)は自分の家から火を出しながら大睾丸の老爺を負って逃げたので褒美ほうびされたような咄し。
バットや敷島のご褒美ほうびじゃつまらない。ご褒美の代りには、花火がドカーンと上るのだ。そしてね、五色の花びらが雪の様に空から降って来るのだ。花火玉の中にそれを一杯つめて置くのさ。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私はお前からの褒美ほうびを欲しがるように、お前の方を振り向いた。すると、一人の血色の悪い、せこけた青年が、お前と並んで、肩と肩とをくっつけるようにして、立っているのを私は認めた。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
展覧会で一、二度褒美ほうびもらい少し名前が売れ出したと思うともう一廉ひとかど大家たいかになりすました気でおおいに門生を養い党派を結び新聞雑誌を利用して盛んに自家吹聴ふいちょうをやらかす。まるで政治運動です。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そちのおかげで国土の重宝はよみがえった。さらに一両の褒美ほうびをとらせる。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
菖蒲しやうぶの節句の日を選び織部正桔梗の方と同列にて諸士を集め和歌の催し事有之これあり、かね/″\申触れ候ことなれば敷島の道をたしなむ者共いでや秀歌をうたひ出して褒美ほうびに預からんものと存候事に候