はだへ)” の例文
皚々がい/\たる雪夜せつやけいかはりはなけれど大通おほどほりは流石さすが人足ひとあしえずゆき瓦斯燈がすとうひか皎々かう/\として、はだへをさす寒氣かんきへがたければにや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今私達があけた戸口から外の寒い空気が、いいあんばいにぬくまつてゐた二人の女のはだへをさした。なげしの上の神棚の灯がちよつとまたたいた。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
かたしめて立出たり折柄師走しはすの末なれば寒風かんぷうはだへつらぬく如きを追々の難儀に衣類は殘ず賣拂うりはらひ今は垢染あかじみたる袷に前垂帶まへだれおびをしめたるばかり勿々なか/\夜風はしのぎ難きを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「それは紅顔のにほひをいひ、今ははだへの雪のごとくなるに、すこし紅のにほひあるをいへり」といい、精撰本に、「朱引秦アカヲヒクハダトハ、紅顔ニ応ジテ肌モニホフナリ」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
時しも寒気かんきはだへつらぬくをりふしなれば、こゞえすべきありさま也。ふたおやはさら也人々もはじめてそれと知り、にもとてみな/\おなじく水をあびていのりけり。
西風にしかぜ枯木かれきはやしから麥畑むぎばたけからさうして鬼怒川きぬがはわたつていた。鬼怒川きぬがはみづしろなみつて、とほくからはそれがあはしやうじたはだへのやうにたゞこそばゆくえた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
金髮を風の脣に、白いはだへを野山のせいにみえぬ手に、無垢むくの身を狂風に乘る男に、おまへはまかせる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
われは覺えずはだへあは生ぜり、われもアヌンチヤタが色に迷ひし一人なれども、そのざえの高く情の優しかりしをば、わが戀愛におほはれたりし心すら、猶能く認め得たりき。
御年十六歳、さすが歴々の事なれば、容顔かんばせうるはしく、はだへ白雪はくせつに似たり、きよさ、余人に優れ、家の名を惜み、父の最期まで心に懸け、比類なきの働き、感ぜぬはなかりけり
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みだれし髪をもて汝の見ざる乳房ちぶさをおほひ、毛あるはだへをみなかなたにむけしは 五二—五四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
此の手足なくば、三四二はた命失ひてんといふいふ三四三絶え入りぬ。人々たすけ起すれど、すべておもてはだへも黒く赤く染めなしたるがごとに、熱き事焚火たきび三四四手さすらんにひとし。
もつはだへるゝに、なめらかにしろあぶらづきて、なほあたゝかなるものにたり。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
秋風にはだへすずしく午睡ひるねして聞きごころよきひぐらしのこゑ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
愛も恋も、慎しやかさもしとやかさも、その黒髪も白きはだへも。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
やつといまごろ鳴いたとて死んだはだへがなんで知ろ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
秋風あきかぜはだへに寒しとてや山雀
秋の日 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
麻は朝、人のはだへに追いすが
生身なまみはだへをいたはりつつ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
三言とは呼ばれもせず帶より先に襷がけの甲斐/\しく、井戸端に出れば月かげ流しに殘りて、はだへを刺すやうな風の寒さに夢を忘れぬ、風呂は据風呂にて大きからねど
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我ははだへあはを生ずる心地しつゝ、わづかに口を開きて、さてはベルナルドオなりしよ、はからざりき、おん身と伊太利の北のはてなる、アルピイ山の麓にて相見んとはと答へつ。
地寒ちかんのよわきとつよきとによりてこほりあつきうすきとのごとし。天に温冷熱をんれいねつの三さいあるは、人のはだへあたゝかにくひやゝ臓腑ざうふねつするとおな道理だうり也。気中きちゆう万物ばんぶつ生育せいいくこと/″\く天地の気格きかくしたがふゆゑ也。
これらは愚俗ぐぞくのことばにて、吾がともがらはとらずとて、戸をして入りつも其の人を見るに、あるじがかたりしにたがはで、一六なみの人にはあらじを、病深きと見えて、おもては黄に、はだへ黒く
秋かぜははだへに寒し水門田みなとだに雁の来て啼く時ちかづきぬ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
GONSHAN の薄いはだへを刺すこころ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
三言みこととはばれもせずおびよりさきたすきがけの甲斐かひ/\しく、井戸端ゐどばたいづればつきかげながしにのこりて、はだへすやうなかぜさむさにゆめわすれぬ、風呂ふろすゑ風呂ふろにておほきからねど
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
朗々のどかなりしもてのひらをかへすがごとくてんいかりくるひ、寒風ははだへつらぬくやり凍雪とうせついる也。
はだへはゆるき三味線の
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
三言とは呼ばれもせず帯より先にたすきがけの甲斐々々かひがひしく、井戸端にいづれば月かげ流しに残りて、はだへを刺すやうな風の寒さに夢を忘れぬ、風呂は据風呂すゑふろにて大きからねど
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はだかなる所以ゆゑん人気じんきにて堂内のねつすることもゆるがごとくなるゆゑ也。願望ぐわんまうによりては一里二里の所より正月三日の雪中寒気はだへいるがごときをもいとはず、はしらのごとき氷柱つらゝ裸身はだかみ脊負せおひて堂押にきたるもあり。