縁談えんだん)” の例文
すると、となりくにから、ひと今度こんどのご縁談えんだんについてさぐりにきたといううわさが、すぐにそのくに人々ひとびとくちのぼりましたから、さっそく御殿ごてんにもこえました。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ヂュリ いますぐにくわいの。……縁談えんだん斷然ふっゝりめ、わしをば勝手かってかしてくだされ。明日あす使つかひをげませうぞ。
主命しゆうめいりて糸子いとこ縁談えんだんの申しこみなるべし、其時そのとき雪三せつざう决然けつぜんとせし聲音こわねにて、折角せつかく御懇望ごこんもうながら糸子いとこさま御儀おんぎ他家たけしたまふ御身おんみならねばおこゝろうけたまはるまでもなし
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この縁談えんだん安之助やすのすけ學校がくかう卒業そつげふするともなくおこつたもので、小六ころく房州ばうしうからかへつて、叔母をば學資がくし供給きようきふことわられる時分じぶんには、もう大分だいぶはなしすゝんでゐたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はづさず話しなば必ず縁談えんだんとゝのはんと彼の富澤町なる甲州屋吉兵衞の次男千太郎の身持みもちとくさぐりしに何所いづれとうてもよき若者なりと賛成ほめざる者の無かりしかば其趣きを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それぞれ父親から縁談えんだんをもち出されると、我々は見る見るおたがいどうし好きになって、一足とびに結婚けっこんしてしまったというわけ。わたしの話は、ほんの二言ふたことで済んでしまいますよ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
縁談えんだんがすっかりととのったときに、敦子あつこさまはるばる三浦みうらまで御挨拶ごあいさつられました。
何某なにがし御子息ごしそく何屋なにや若旦那わかだんなと、水茶屋みずちゃやむすめには、勿体もったいないくらいの縁談えんだんも、これまでに五つや十ではなく、なかには用人ようにん使者ししゃてての、れッきとしたお旗本はたもとからの申込もうしこみも二三はかぞえられたが
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
彼女と葛城の縁談えんだんも、中に立って色々骨折る人があったが、彼女の父は断じて許さなかった。葛城の人物よりも其無資産をおもんぱかったのである。葛城の母、兄姉も皆お馨さんの渡米には不賛成であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「でも縁談えんだんはご相談なさいますわ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
三 縁談えんだん
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
しこと小西屋のよめと爲といふともはづかしからぬ女なりと長三郎は殊更ことさら戀慕こひしたふ心のまさりゆき夫婦は夫とも意附こゝろづか醫師いしやの言たる言葉を信とし縁談えんだんことわり此騷動さうどうに及びたるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すぐに縁談えんだんことわってしまおうかともおもわれましたが、もし、そうしたら、きっと皇子おうじ復讐ふくしゅうをしにめてくるだろうというようながして、すぐにはけっしかねたのであります。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これ年頃としごろになったのでございますから、縁談えんだんくち諸方しょほうからあめるようにかかりましたが、俚諺ことわざにもおびみじかしたすきながしとやら、なかなかおもつぼにはまったのがないのでございました。
パリス チッバルトの落命らくめいをいみじうなげいてゞあったゆゑ、なみだ宿やどには戀神ヸーナスまぬものと、縁談えんだん差控さしひかへてゐたところ、あまきつなげいてはひめ心元こゝろもとない、ひとりでゐれば洪水こうずゐのやうになみだ
ぼく今度こんど縁談えんだんことわらうとおもふ」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのまゝ座敷牢ざしきらうえん障子しやうじ開閉あけたてにも乳母うば見張みはりのはなれずしてや勘藏かんざう注意ちゆうい周到しうたうつばさあらばらぬこととりならぬ何方いづくぬけでんすきもなしあはれ刄物はものひとれたやところかはれどおなみちおくれはせじのむすめ目色めいろてとる運平うんぺい氣遣きづかはしさ錦野にしきのとの縁談えんだんいまいまはこびしなかこのことられなばみな畫餠ぐわべいなるべしつゝまるゝだけは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
包み與ふるほどに六個むたりの者は管伴ばんたうを經て禮を演べ早用なしと忠兵衞がいへるにいづれもから釣臺をかついで本町へと歸りける跡に忠兵衞懷中ふところより金子二百兩取出とりいだし此方ののぞみに縁談えんだん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
諸方しょほうからあめるようにかかって縁談えんだんなかには随分ずいぶんこれはというのもあったそうでございますが、敦子あつこさまはひとつなしにみなことわってしまうのでした。これにはむろんわけがあったのでございます。