トップ
>
硯
>
すゞり
ふりがな文庫
“
硯
(
すゞり
)” の例文
この人はかなりのインテリらしく、むづかしい本が幾十册と、机の上には、よい紙、よい墨、よい筆、よい
硯
(
すゞり
)
などを取揃へてあります。
銭形平次捕物控:098 紅筆願文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と、滋幹の手を
曳
(
ひ
)
いて、とある一と間の
屏風
(
びょうぶ
)
の蔭へ引っ張って行った。と、そこの机に置いてあった筆を取って
硯
(
すゞり
)
にひたすと
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
硯
(
すゞり
)
のやうにそぎ立つた山頂に、霧がまき始めた。ゆき子は、その山頂の霧の動きを見てゐるうちに、何とも云へない、悲しみを感じてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
伯父樣
(
おぢさま
)
に
疵
(
きず
)
のつかぬやう、
我身
(
わがみ
)
が
頓死
(
とんし
)
する
法
(
はう
)
は
無
(
な
)
きかと
目
(
め
)
は
御新造
(
ごしんぞ
)
が
起居
(
たちゐ
)
にしたがひて、
心
(
こゝろ
)
はかけ
硯
(
すゞり
)
のもとにさまよひぬ。
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
まだ己の此処に押込められてる事は知るまい、
切
(
せ
)
めて手紙でも遣りたいと
硯
(
すゞり
)
を引寄せ、筆を取り上げ
文
(
ふみ
)
を書こうとすると
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
申
受
(
うけ
)
我々も念の爲預けたる證文を入れ申さんと
硯
(
すゞり
)
を
取寄
(
とりよせ
)
一札を
記載
(
したゝめ
)
三人の名の下へ印を
据
(
すゑ
)
て預りの一札と
引換
(
ひきかへ
)
になし
素
(
もと
)
より急がぬ旅なれど
日和
(
ひより
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
娘は奥の自分の居間に坐つてゐて、ふと思ひ立つて出かけたらしく、座蒲団も
硯
(
すゞり
)
も筆もそのまゝになつてゐた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
「
有一日
(
あるひ
)
伏姫は。
硯
(
すゞり
)
に水を
滴
(
そゝが
)
んとて。
出
(
いで
)
て
石湧
(
しみづ
)
を
掬
(
むすび
)
給ふに。
横走
(
よこばしり
)
せし
止水
(
たまりみづ
)
に。うつるわが影を見給へば。その
体
(
かたち
)
は人にして。
頭
(
かうべ
)
は正しく犬なりけり。」
云々
(
しか/″\
)
。
処女の純潔を論ず:(富山洞伏姫の一例の観察)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
こはれた
硯
(
すゞり
)
のはしを
鋸
(
のこぎり
)
で
挽
(
ひ
)
つきつて、それを小さな小判形(印章屋では二分小判と称する)に石ですりまろめて、
恰好
(
かつかう
)
をとゝのへたが、刻るのは
造作
(
ざうさ
)
なかつた。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
「
原
(
もと
)
の壽阿彌のお墓は
硯
(
すゞり
)
のやうな、綺麗な石であつたのに、今のお墓はなんと云ふ見苦しい石だらう。」
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
原稿紙を出した、
硯
(
すゞり
)
に墨も流した。途中考へて来た「信仰の力」と云ふ題を書いた。手が
顫
(
ふる
)
へて居る。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
私
(
わたし
)
の
眞鍮
(
しんちう
)
の
迷子札
(
まひごふだ
)
を
小
(
ちひ
)
さな
硯
(
すゞり
)
の
蓋
(
ふた
)
にはめ
込
(
こ
)
んで、
大切
(
たいせつ
)
にしたのを、
幸
(
さいは
)
ひに
拾
(
ひろ
)
つて、これを
袂
(
たもと
)
にした。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
硯
(
すゞり
)
と殿様6・15(夕)
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
小さな
硯
(
すゞり
)
で
朱
(
しゆ
)
を
擦
(
す
)
る時
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「さうだ。その紙と筆と
硯
(
すゞり
)
と、封筒と、あ、もう一つ、字を書いた古封筒があつた筈だ、——本銀町淺田屋徳次郎殿——と」
銭形平次捕物控:119 白紙の恐怖
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
姉さまのする事我れもすとて
硯
(
すゞり
)
の石いつのほどに
持
(
も
)
て
出
(
い
)
でつらん、
我
(
わ
)
れもお月さま
砕
(
くだ
)
くのなりとてはたと
捨
(
す
)
てつ
月の夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
母「かやや、
其処
(
そこ
)
に
硯
(
すゞり
)
があるから
朱墨
(
しゅずみ
)
を濃く
磨
(
す
)
って下さい、そうして
木綿針
(
もめんばり
)
の太いのを三十本ばかり持って
来
(
き
)
な」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
隣りの部屋では、寄りあひでもあるのか、四五人の話しあふ声が
襖
(
ふすま
)
ごしに聞えた。小降りの雨のなかに、
判然
(
はつき
)
りとした山脈が見えた。
硯
(
すゞり
)
をたてたやうな山容である。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
素襖
(
すあを
)
の
柿
(
かき
)
のへたながら、
大刀
(
たち
)
の切字や
手爾遠波
(
てにをは
)
を、正して点をかけ
烏帽子
(
ゑぼし
)
、悪く
謗
(
そし
)
らば片つはし、棒を
背負
(
しよ
)
つた挙句の果、此世の名残執筆の荒事、筆のそつ首引つこ抜き、
硯
(
すゞり
)
の海へはふり込むと
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
源氏物語の古い注釈書の一つである
河海抄
(
かゝいしょう
)
に、昔、平中が或る女のもとへ行って泣く真似をしたが、
巧
(
うま
)
い工合に涙が出ないので、あり合う
硯
(
すゞり
)
の
水指
(
みずさし
)
をそっとふところに入れて眼のふちを濡らしたのを
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
無事に
戻
(
もど
)
りしゆゑ私しも内分にて
濟
(
すま
)
し申すべくと直に
硯
(
すゞり
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
かねて
見置
(
みお
)
きし
硯
(
すゞり
)
の
引出
(
ひきだ
)
しより、
束
(
たば
)
のうちを
唯
(
たゞ
)
二
枚
(
まい
)
、つかみし
後
(
のち
)
は
夢
(
ゆめ
)
とも
現
(
うつゝ
)
とも
知
(
し
)
らず、三
之
(
の
)
助
(
すけ
)
に
渡
(
わた
)
して
歸
(
かへ
)
したる
始終
(
しじう
)
を、
見
(
み
)
し
人
(
ひと
)
なしと
思
(
おも
)
へるは
愚
(
おろ
)
かや。
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
平次は何やら八五郎の耳に囁くと、町内の番所へ入つて、
硯
(
すゞり
)
と紙を借りて何やらサラサラと
認
(
したゝ
)
め、懷ろから小判を一枚取出すと、それをクルクルと包んで、八五郎の手に渡しました。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と云いながら
後
(
あと
)
へ
退
(
さが
)
るから、岩越という
柔術家
(
やわらとり
)
が
万一
(
もし
)
逃げにかゝったら引倒して息の根を止めようと思って控えて居ります。後へ退って大藏が
硯
(
すゞり
)
を引寄せて
震
(
ふる
)
えながら
認
(
したゝ
)
めて差出す。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
だが、ゆき子は、もう、何年も生きてゆける自分ではないのだと、心ひそかに思ふのであつた。近くの山で山鳩が
啼
(
な
)
いてゐる。
硯
(
すゞり
)
の肌を見るやうな紫色の、けづり立つた山が雨戸の隙間から見えた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
願ふと云ふも
忍
(
しの
)
び
泣
(
なき
)
殊
(
こと
)
に他人に有ながら當家へ
養子
(
やうし
)
に來た日より
厚
(
あつ
)
く
深切
(
しんせつ
)
盡
(
つ
)
くして呉し支配人なる久八へ
鳥渡成
(
ちよつとなり
)
とも
書置
(
かきおき
)
せんと
有
(
あり
)
あふ
硯
(
すゞり
)
引寄
(
ひきよ
)
せて涙ながらに
摺流
(
すりなが
)
す
墨
(
すみ
)
さへ
薄
(
うす
)
き
縁
(
え
)
にしぞと
筆
(
ふで
)
の
命毛
(
いのちげ
)
短
(
みじ
)
かくも
漸々
(
やう/\
)
認
(
したゝ
)
め
終
(
をは
)
りつゝ
封
(
ふう
)
じる
粘
(
のり
)
より
法
(
のり
)
の
道
(
みち
)
心ながら
締直
(
しめなほ
)
す帶の
博多
(
はかた
)
の一本
獨鈷
(
どつこ
)
眞言
(
しんごん
)
成ねど
祕密
(
ひみつ
)
の爲
細腕
(
ほそうで
)
成ども我一心長庵如き何の其
岩
(
いは
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
歎
(
なげ
)
くべきことならずと
嫣然
(
につこ
)
と
笑
(
ゑ
)
みて
靜
(
しづ
)
かに
取出
(
とりいだ
)
す
料紙
(
りやうし
)
硯
(
すゞり
)
、
墨
(
すみ
)
すり
流
(
なが
)
して
筆先
(
ふでさき
)
あらためつ、
書
(
か
)
き
流
(
な
)
がす
文
(
ふみ
)
誰
(
た
)
れ/\が
手
(
て
)
に
落
(
お
)
ちて
明日
(
あす
)
は
記念
(
かたみ
)
と
見
(
み
)
ん
名殘
(
なごり
)
の
名筆
(
めいひつ
)
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
紙にも
硯
(
すゞり
)
にも及びません。平次は火鉢の灰へ、八五郎は縁の下の柔かい土へ——。
銭形平次捕物控:109 二人浜路
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
其の上に
易書
(
えきしょ
)
を五六冊積上げ、
傍
(
かたえ
)
の
筆立
(
ふでたて
)
には短かき
筮竹
(
ぜいちく
)
を立て、其の前に丸い小さな
硯
(
すゞり
)
を置き、勇齋はぼんやりと机の前に座しました
態
(
さま
)
は、名人かは知らないが、少しも山も飾りもない。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
大勘定
(
おほかんぢやう
)
とて
此夜
(
このよ
)
あるほどの
金
(
かね
)
をまとめて
封印
(
ふういん
)
の
事
(
こと
)
あり、
御新造
(
ごしんぞ
)
それ/\と
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
して、
懸
(
か
)
け
硯
(
すゞり
)
に
先程
(
さきほど
)
、
屋根
(
やね
)
やの
太郎
(
たらう
)
に
貸付
(
かしつけ
)
のもどり
彼金
(
あれ
)
が二十
御座
(
ござ
)
りました、お
峯
(
みね
)
お
峯
(
みね
)
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「見るがいゝ、
硯
(
すゞり
)
には墨を
磨
(
す
)
つた跡が乾ききらずに殘つてゐるぢやないか」
銭形平次捕物控:158 風呂場の秘密
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
やがて交る/″\風呂に入つた二人の浪人者は、一本つけさして、互に
獻酬
(
けんしう
)
を始めました。平次はその間に部屋を出て、懷紙に帳場
硯
(
すゞり
)
でサラサラと何やら
認
(
したゝ
)
め、店先に立つて宵の街を眺めて居ります。
銭形平次捕物控:082 お局お六
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
多分
斯
(
か
)
うなるだらう、——おいお靜、
硯
(
すゞり
)
と紙を持つて來な
銭形平次捕物控:169 櫛の文字
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
帳場
硯
(
すゞり
)
の上に置いた、哀れ深い遺書を見ると
銭形平次捕物控:107 梅吉殺し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“硯”の解説
硯(すずり)は、墨を水で磨るために使う、石・瓦等で作った文房具。中国では紙・筆・墨と共に文房四宝の一つとされる。硯及び附属する道具を収める箱を硯箱という。硯には唐硯(中国産)と和硯(国産)のほか、韓国・北朝鮮、台湾製などがある。硯を作る職人を製硯師という。
(出典:Wikipedia)
硯
漢検準1級
部首:⽯
12画
“硯”を含む語句
硯箱
硯友社
筆硯
硯屏
硯筥
掛硯
朱硯
硯々
旅硯
硯石
硯蓋
名硯
大硯
小硯
懐中硯
硯海
懸硯
硯水
料紙硯
硯机
...