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眸
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ひとみ
ふりがな文庫
“
眸
(
ひとみ
)” の例文
男は入口にうずくまるフランシスに眼をつけると、きっとクララの方に鋭い
眸
(
ひとみ
)
を向けたが、フランシスの
襟元
(
えりもと
)
を
掴
(
つか
)
んで引きおこした。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
老人の
眸
(
ひとみ
)
は回顧をなつかしんでいた。前北宋の画院にいた帝室技芸員の一員と聞いて、蕭照も何だかむかし話もしたくなったらしく
人間山水図巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
梓さんは、チラと
眸
(
ひとみ
)
をあげ、大きな深い眼でキャラコさんの顔を眺めると、おずおずと茶碗のほうへ手を伸ばしてそれをとりあげた。
キャラコさん:02 雪の山小屋
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
闇討
(
やみうち
)
を仕掛けた者も無言、秀之進も声を出さなかった。——誰だろう、暗い道のうえをすかし見ながら秀之進はじっと
眸
(
ひとみ
)
を凝らした。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
思想の風窓である
眸
(
ひとみ
)
は、そのために焼かれてしまう。
眼鏡
(
めがね
)
もそれを隠すことはできない。地獄にガラスをかぶせたようなものである。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
じいっと
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らすと、大きな
蜘蛛
(
くも
)
が、脚をいっぱいに伸して、奇怪な
文身
(
いれずみ
)
か何かのように、兄の頬にへばりついてるではないか。
青草
(新字新仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
恐らく貴族か、でなければ名門の子弟なのだろう。品のよい鼻と、黒く澄み渡った
眸
(
ひとみ
)
とが、争われない生れのけ高さを示していた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
シャヷンヌの筆によつて描き出された清げに美しい婦人の
眸
(
ひとみ
)
は、さながら救ひを望むもののやうに遠い輕氣球の方角にそゝがれてゐる。
桃の雫
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「ええ、あれだけでも速く疎開させておきたいの」と康子はとり
縋
(
すが
)
るように兄の
眸
(
ひとみ
)
を
視
(
み
)
つめた。と、兄の視線はちらと
脇
(
わき
)
へ
外
(
そ
)
らされた。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「森の女」の前へ出た時、原口さんは「どうです」と
二人
(
ふたり
)
を見た。夫は「結構です」と言って、
眼鏡
(
めがね
)
の奥からじっと
眸
(
ひとみ
)
を凝らした。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
四十二 いずれの望遠鏡にも、必ず一人は
縋
(
すが
)
り付く勇者がある。いよいよ衝突の時はどの様になるだろうと、その人々は皆
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らした。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
自分はやおら水を汲み上げながら、如何に生命の盛なる活躍が今行われつつあるかを想うて、
眸
(
ひとみ
)
を上流の山々に向けずにはいられなかった。
釜沢行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
陵の祖父
李広
(
りこう
)
の射における
入神
(
にゅうしん
)
の技などを語るとき、
蕃族
(
ばんぞく
)
の青年は
眸
(
ひとみ
)
をかがやかせて熱心に聞入るのである。よく二人して狩猟に出かけた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
彼女は物静かな、気だてのやさしい、情けぶかい娘さんで、柔和なおだやかな
眸
(
ひとみ
)
をして、はちきれんばかりに健康だった。
可愛い女
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
和作はベンチの背にあてた片腕に首を載せ、前のまゝの動かぬ
眸
(
ひとみ
)
で少年を見据ゑてゐた。彼は我知らず動揺してゐたのだ。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
断崖の上で超短波の通信装置の組立に従っていた水戸宗一は、ドレゴの方に思いやりのある
眸
(
ひとみ
)
を送って、彼を元気づけた。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
険しい眼——輝く
眸
(
ひとみ
)
——物凄い顔——
是等
(
これら
)
の過去のイメージが全く心の目から取れないのにかかる柔和な、穏かな顔を見ようとは思わなかった。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
わけても花が彼の
眸
(
ひとみ
)
をひいて、それをもっとも長くながめた。また立派な馬車だの、騎馬の紳士や貴婦人などに出会った。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
恋人の美くしい
眸
(
ひとみ
)
は忽ち賤しい波羅門の腕環にはめられて一生を浅ましい
脂汗
(
あぶらあせ
)
と怪しい畜類の匂に汚されて了うであらう。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
阿闍梨
(
あざり
)
は、身を
稍後
(
ややあと
)
へすべらせながら
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らして、じっとその翁を見た。翁は
経机
(
きょうづくえ
)
の向うに白の
水干
(
すいかん
)
の袖を掻き合せて、
仔細
(
しさい
)
らしく坐っている。
道祖問答
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ある者は涼しげな
眸
(
ひとみ
)
に
羞恥
(
しゅうち
)
を含んで、ある者は美しい怒りを額に現して、またある者は今にもにいっと微笑まんばかりに愛らしい口許を
綻
(
ほころ
)
ばせて
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
けれどそう尋ねて、池内操縦士は一寸
眸
(
ひとみ
)
を瞠った。何気なく眺めた壁鏡の中の相手の顔は、ひどく血の気の引いた、昂奮し切ったものだったからだ。
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
私は、この踊りに見とれている時ほど、こよなき人の
眸
(
ひとみ
)
の中をでもじっと見つめているような、うれしくかなしくいたましい思いをすることはない。
随筆 寄席風俗
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
慎
(
つつ
)
ましやかな態度で云って、
悧巧
(
りこう
)
そうな、小さく円く、パッチリとした
眸
(
ひとみ
)
を伏せて、こころもち胸を引くようにして
挨拶
(
あいさつ
)
する、その身のこなしには
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
赤
(
あか
)
い
襠
(
しかけ
)
をきた
人形
(
にんぎやう
)
は、
白
(
しろ
)
い
手拭
(
てぬぐひ
)
のしたに
黒
(
くろ
)
い
眸
(
ひとみ
)
をみひらいて、
遠
(
とほ
)
くきた
旅
(
たび
)
をおもひやるやうに
顔
(
かほ
)
をふりあげました。
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
眸
(
ひとみ
)
が却っていつもより綺麗だ。
覗
(
のぞ
)
いて視ると、庭の木の芽が本当の木の芽よりずっと光って
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えと映っている。と言っても京子は納得し切らない。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そしてその女の癖で
鮮
(
あざや
)
かな色した
唇
(
くち
)
を少し
歪
(
ゆが
)
めたようにして
眩
(
まぶ
)
しそうに
眸
(
ひとみ
)
をあげて
微笑
(
え
)
みかけながら黙っていた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
またその堤防の
草原
(
くさはら
)
に腰を下して
眸
(
ひとみ
)
を放てば、上流からの水はわれに向って来り、下流の水はわれよりして出づるが如くに見えて、心持の好い眺めである。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼は彼女の
睫毛
(
まつげ
)
が触れるのを感じ、また、その嘲るような
眸
(
ひとみ
)
の片隅や、愛くるしい鼻つきや、もち上がった
唇
(
くちびる
)
の細かい
産毛
(
うぶげ
)
などを、自分のすぐそばに見た。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
真
(
まこと
)
に
是
(
こ
)
れ一の夢幻界なり。湾に沿へる
拿破里
(
ナポリ
)
の
市
(
まち
)
は次第に暮色
微茫
(
びばう
)
の中に没せり。
眸
(
ひとみ
)
を放ちて遠く望めば、雪を
戴
(
いただ
)
けるアルピイの山脈
氷
(
こほり
)
もて削り成せるが如し
ヴエスヴイオ山
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
強
(
し
)
ひて言へば、不自然な快活さだ。何かの理由で今まで
堰
(
せ
)
かれてゐた快活の翼が急に
眼醒
(
めざ
)
めたやうな。……伊曾は鋭い
眸
(
ひとみ
)
で少女を見すゑながらさう直感した。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
街に展いた窓の
出張
(
でっばり
)
に置かれた洋紅色の花鉢を寝台の枕もとに持ってくると、夜の女は
眸
(
ひとみ
)
の快楽のために
戦争のファンタジイ
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
眞に是れ一の夢幻界なり。
灣
(
いりえ
)
に沿へる拿破里の
市
(
まち
)
は次第に暮色微茫の中に沒せり。
眸
(
ひとみ
)
を放ちて遠く望めば、雪を戴けるアルピイの山脈氷もて削り成せるが如し。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
女の子の髪の毛が、赤くちゞれてゐるのは、異人の子なんでせう。でもその顔つきは大そう可愛らしくて、長いまつげの下から星のやうな
眸
(
ひとみ
)
がのぞいてゐました。
のぞき眼鏡
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
平次はこう説明して、一度辛く当ったお静へ、——勘弁しろよ——といった優しい
眸
(
ひとみ
)
を送りました。お静はもう嬉し泣きに泣いて、それも気の付かない様子です。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
皆々この勝負こそはと
片唾
(
かたず
)
を呑んで
眺
(
なが
)
めをれば、二人は立ち上りエイと組みオオと引き左をさし右をはづし
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らして
睨
(
にら
)
み合ひたるその途端に
如何
(
いかが
)
したりけん
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
母の潤んだ
眸
(
ひとみ
)
が、子供たちに向つてさう哀願してゐる。だが、長男は棒のやうに
突張
(
つゝぱ
)
つたきりだつた。
父の帰宅
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
『では、
貴君
(
きくん
)
は、
若
(
も
)
しや
我
(
わ
)
が
娚
(
おい
)
日出雄少年
(
ひでをせうねん
)
の
安否
(
あんぴ
)
を——。』と
言
(
い
)
ひかけて、
急
(
いそ
)
ぎ
艦尾
(
かんび
)
なる
濱島武文
(
はまじまたけぶみ
)
と
春枝夫人
(
はるえふじん
)
とに
眸
(
ひとみ
)
を
移
(
うつ
)
すと、
彼方
(
かなた
)
の
二人
(
ふたり
)
も
忽
(
たちま
)
ち
私
(
わたくし
)
の
姿
(
すがた
)
を
見付
(
みつ
)
けた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
そして、白眼に絡まった蜘蛛の巣のような血脈、林立した火箸のような
睫毛
(
まつげ
)
、又その真中には、何かしらトテツもない恐ろしい影を写している虚黒な
眸
(
ひとみ
)
があった……。
魔像
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
と、輪は足に随ってまわって、傾いて堕ちたような気がすると共に、体が涼しくなった。
眸
(
ひとみ
)
を開けてみると自分はもう
嬰児
(
あかんぼ
)
になっているうえに、しかも女になっていた。
続黄梁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
食事終りて牢内を歩むに、ふと厚き板の間の
隙
(
すき
)
より、
床下
(
ゆかした
)
の見ゆるに心付き、試みに
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らせば、アア
其処
(
そこ
)
に我が同志の
赤毛布
(
あかげっと
)
を
纏
(
まと
)
いつつ、同じく散歩するが見えたり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
その横町を通り抜ける者は
誰
(
だれ
)
しもその美しい花畑に
眸
(
ひとみ
)
をみはらないものは無いくらいであった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
人々
眸
(
ひとみ
)
を凝らして之を見れば、
年齒
(
とし
)
は十六七、
精好
(
せいがう
)
の緋の袴ふみしだき、
柳裏
(
やなぎ
)
の
五衣
(
いつゝぎぬ
)
打ち重ね、
丈
(
たけ
)
にも餘る緑の黒髮
後
(
うしろ
)
にゆりかけたる樣は、舞子白拍子の
媚態
(
しな
)
あるには似で
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
「
準頭
(
じゅんとう
)
に赤色が現われていた。
赤脈
(
せきみゃく
)
が
眸
(
ひとみ
)
をつらぬいていた。争われない剣難の相であった」
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それはそれとして正岡君のごときは孔子のいわゆる
下聞
(
かぶん
)
を恥じず
下学
(
かがく
)
して上達す
的
(
てき
)
の人でごく低い程度から始めて、徐々に高処に
攀
(
よ
)
じ、ついにその絶頂に達し、
眸
(
ひとみ
)
を四顧に放ち
子規と和歌
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
かなたの山の曲り角に、
靄
(
もや
)
に薄れて白帆が行く。目の迷いかと
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らしたが、やっぱり帆である。しかし藤さんの船はぜひとも前からの白帆と定めたい。遠い分はよく見えぬ。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
何の音で有ったか更に当りが附かぬけれど、
暗
(
やみ
)
の中に
眸
(
ひとみ
)
を定めて見ると、影の様な者が壁に添うて徐々動いて居る様だ、ア、之が此の塔の幽霊か知らんと一時は聊か肝を冷した。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
此の春上野の慈善音楽会でピアノを
弾
(
ひ
)
いた佳人が
有
(
あ
)
つたらう、
左様
(
さう
)
サ、質素な風をして、眼鏡を掛けて、雪の如き
面
(
かほ
)
に、花の如を
唇
(
くちびる
)
に、星の如き
眸
(
ひとみ
)
の、——
彼女
(
かれ
)
が
即
(
すなは
)
ち山木梅子嬢サ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
その度ごとに、私は曇ったガラスを
拭
(
ふ
)
いて、瞬時でも見逃がすまいと
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らした。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
この機会にやらなければいつになってもやれないに違いない、あたりを一わたり眺めて見たが、人の気配はなかった。彼は
眸
(
ひとみ
)
を鋭く光らせると、にやりと笑って、よし今だと呟いた。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
眸
漢検1級
部首:⽬
11画
“眸”を含む語句
双眸
眼眸
眸子
黒眸
一眸
明眸
明眸皓歯
眸中
星眸
眸底
皓歯明眸
眸瞼
丹唇明眸
雙眸
開眸
金眸
美眸
緑髪黒眸
展眸
眸鼻
...