“皺:しわ” の例文
“皺:しわ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花50
野村胡堂40
吉川英治33
太宰治26
岡本かの子19
“皺:しわ”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語55.8%
文学 > 日本文学 > 小説 物語12.3%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行3.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「頭蓋骨の縫合とか、肋軟骨化骨ろくなんこつかこつの有無とか、焼け残りの皮膚のしわなどから、年齢が推定できませんか」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
法水の直観的な思惟のしわから放出されてゆくものは、黙示図の図読といいこれといい、すでに人間の感覚的限界を越えていた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
彼女の微笑のおのおのは、その涙のおのおのは、その親愛なる頬のしわのおのおのは、それぞれ一つの存在ではなかったろうか。
キャラコさんは、額にむずかしいしわをよせながら分析台のそばに立って、せわしそうに動く四人の手を注意深くながめている。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
岸井重三郎は、懷中から取出して、疊の上に半紙のしわを伸しました。有りふれた半紙にあまり上手でない、肩上がりの文字で、
「あのお婆さんは体中のしわを足の裏へ、くくって溜めているという評判だが、あんたなんかまだその必要はなさそうだなあ」
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
K君は自分のむこうに立って、奇麗きれい二重瞼ふたえまぶちの尻にしわを寄せながら、微笑をらしていた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ホーテンスはここで言葉を停めて、博士の顔色を窺った。博士はちょっと眉の間にしわをこしらえただけで、何ともいわなかった。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
とある町の曲り角で、外套の袖袋かくしに手を入れて見ると、古いしわだらけに成つた手袋が其内そのなかから出て来た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
若林博士は、こういった私の質問が耳に這入ると一層深く感動したらしく、眼を閉じたままの眉の間のしわが一層深くなった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もちろん髪の毛は大ぶ薄くなって、顔のそこここにしわが出来たが、その填合うめあわせにはあの時のようにはにかみはしない。
田舎 (新字新仮名) / マルセル・プレヴォー(著)
そこは高地だったので、反対の左手一帯はちょうど大きな風呂敷をしわにして広げたように、その起伏がズウと遠くまで見られた。
人を殺す犬 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
まなこするどはなうへしわ惡相あくさうきざそろへる水々みづ/\しきが
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
会釈をするときに頬に微笑を湛えて脣のかどのところに一寸たてしわを寄せてもの言うのはモナ・リザを連想せしめた。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
彼女の容色さえも――その身振り、動作、顔立ち、くちびるしわ、眼、手、上品なせ方、――皆理知の反映であった。
かのよくものいう目をよそにしては、ほかの姫たちに立ちこえて美しとおもうところもなく、眉の間にはいつもしわ少しあり。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
頬をきざむしわに、人間的な、或いは浮世的なと言いたい、人生経験といったようなものが、深く彫り込められて見えるのである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
誰の頭髪あたまにも、みんな白髪しらがの一本や二本――もっとあるであろう。その面上にも、細かき、荒き、しわが見える。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しわの中の汗を拭いて、ほっと一息休もうとすると、又八の若い足は、立っている方が辛いので、もう直ぐ先へ歩き出すのだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よし、よし。……もうやがてお見えだろう」と、幸福そうに老眼をしわめて恍惚うっとりと庭園の春日に眸を細めた――。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近ごろめっきり数正の顔には深いしわがきざまれていた。皮膚のいろにも生彩せいさいがなく、笑いを忘れていることが久しい。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手籠のなかをのぞいてみた村のひとたちは皆、眉のあいだに黒い油ぎったしわをよせて、天狗てんぐ、天狗とうなずき合った。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
蹲踞うずくまる枕元に、泣きはらした眼を赤くして、氷嚢の括目くくりめに寄るしわを勘定しているかと思われる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼等かれらあしはぬ不恰好ぶかつかうしわつたしろ足袋たび穿いてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ノルマン・レイ氏は、商船マリンサアヴィスの理事なのだ。連合国の汽船の動きを、脳髄のしわたたみ込んでいる人である。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
盲目めくらの婆さんは、襦袢じゆばん一つになつて、ぬらしてしぼつて貰つた手拭を、しわの深い胸の処に当てゝ居た。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
すこし経つと、恐怖の引いたあとの青ざめた顔を妙にしわませ、てれ隠しに室内の人々の顔をおどけたような眼で見廻した。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
綿衣ぬのこ襟元えりもと手拭てぬぐひをかけ白粉焼おしろいやけのしたしわの多い顔に一ぱいのを受けて
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
春婦の一人が首を参木の方へ振り向けて英語で訊ねた。彼は女の二重になったあごしわに白い斑点はんてんのあるのを見た。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
定七はしわだらけの馬のように長い顔を見せていた。定七は広栄兄弟が生れないさきからそこの店にいる番頭格の老人であった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そのうちに、沢庵の眼のまわりに、何ともいえない親しみぶかいしわなごやかに寄ると、んでいた腕を解いて、
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八五郎は懷ろ深く探つて、しわくちやな紙片かみきれを取り出すと平次の膝の前へ、煙管を風鎭ふうちんに押し伸ばすのでした。
焼山やけやまについてやすんだところで、渋茶しぶちやむのはさだめししわくたの……ういへば
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
倉地はちょっとまゆしわをよせて少し躊躇ちゅうちょしたふうだったが、それを葉子の手に渡して葉子に開封させようとした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「おお、たくさん飲めや。」老婆は、しわの口をほころばせて笑い、うしろから少女を応援するようにして言うのである。
美少女 (新字新仮名) / 太宰治(著)
おかげでこのようなしわくちゃの姿になったばかりでなく、いろいろなものの臭気がからだに附いて、もう、恥ずかしくて
貨幣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
教員室の前を通ると、背後うしろむきで、丁寧に、風呂敷のしわのばして、何か包みかけていたのは習字の教師。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのせいか、小さい躯はしわだらけで、痩せたにぎりこぶしをふりあげている恰好かっこうあわれで見ていられなかった。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
若林博士の眼の下に、最前の通りの皮肉な、淋しい微笑のしわが寄った。それが窓から来る逆光線を受けて、白く、ピクピクと輝いた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
年は幾歳いくつか不明であったが、頭髪白く顔にはしわがあり、六十以上とも見られたが、どうやらそうまでは行っていないらしい。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼は思わず大声をあげた。右のズボンのポケットから出て来たのは、しわくちゃになった折りたたんだ西洋紙だった。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その顔というのが何か草鞋わらじの裏といった形相ぎょうそうで、無数のしわの中には白粉おしろいがかたまっているようでした
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
煮くたらかされて疲れ果て、液体のまん中をのやうに盛り上げて呻吟しんぎんしてゐる湯をのぞいてまゆしわめた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
「何処をやられたのです」と訊ねると、「ひざじゃ」とそこを押えながらしわの多い蒼顔そうがんゆがめる。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
と言つて、平べつたい鼻にしわを寄せた。そして畳むかはりに、くる/\と丸めて押入の隅へはふりこんでしまつた。
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
その一つを手折って見ると、その葉は縮緬ちりめんしわのようにちぢれていて、それが目にしみるほどの強烈な光りを放っていた。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「それはどうも! こんなにけた頭をし、こんなにしわが寄り、こんなにしなびた色つやをしてるのに!」
目尻のしわと口角とがいっしょになってる角張った皺だらけの蒼白そうはくな顔を、街灯の赤い光が正面から照らした。
それから、つぶれた同じ声、風にさらされてしわが寄り曇ってる同じ額、放恣ほうしな錯乱した定まりない同じ目つき。
彼は年取った頭をもたげ、やせてしわ寄ったこぶしをテーブルの上に置き、きわめていら立った震える調子で叫んだ。
其頃も神田のさる私塾で支那語の教師をして居て、よく、しわくちやになつたフロツクコートを、朝から晩まで着て居た。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おろし立ての手帛ハンケチのやうに真白でしわの寄らない心を持つた或る真言しんごんの尼僧は、半裸体の仏様のお姿を見て、
深いひだのある額、眼尻めじりしわ、それから、伏せたまぶた……歩きながら眠っている恰好かっこうだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
少しまなじりは下がっているが、魚のように切れ長で、威があって、たまたま、揶揄やゆするようなしわもよせる。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顔に、しわの彫りが深く、五十歳がらみに見えるが、骨太な体は、もっと若い、いや若い者にもめずらしいほど精悍せいかんである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しわにも贅肉ぜいにくにも、見たところ何んの變化もなく、絞殺した樣子などは、馴れた眼にも見出せなかつたのです。
老婆お七はマジマジと拔からぬ顏をするのです。色の白い、しわの多い、胡麻ごま鹽頭の老婆ですが言ふことはなか/\に皮肉です。
「そうですな」とやっぱりえ切らない答をした。父はじっと代助を見ていたが、段々しわの多い額を曇らした。兄は仕方なしに、
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鼻の先へよせたしわと、眼尻にたたへた筋肉のたるみとが、笑つてしまはうか、しまふまいかとためらつてゐるらしい。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その内腰にはさんだ、煮染にしめたような、なえなえの手拭てぬぐいを抜いて克明こくめいに刻んだ額のしわの汗をいて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おあつらえ通り、しわくちゃな赤毛布あかげっとが敷いてあって、水々しい婆さんが居ますね、お茶を飲んで行きましょうよ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はすこしも金など欲しいとは思わないので、飛んだことになったと、はらはらしながら、まゆしわを寄せてなだめるように、
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
つむった眼の周囲に苦しそうな深いしわを寄せ、口を堅く閉じ、じっとしていられずに、大きな枕の中で頭をじりじり動かしている。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その怪語に、一そう急き立つ青年女形わかおやまを、彼はしわばんだ、細長い手を伸べて、おさえるようにして、
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
増田博士は胡坐あぐらいて、大きいこわい目の目尻めじりしわを寄せて、ちびりちびり飲んでいる。
里芋の芽と不動の目 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「負惜しみを申すな、争われぬはひたいしわびん白髪しらが。どうだ、一番おれと腕押しをやろうか」
黒光りする用箪笥ようだんすから幾束かの紙幣を取り出して、一枚一枚丁寧に焼鏝やきごてをあててしわを延ばして行くのであった。
何処どこといって無駄な線のない顔面の初老に近い眼尻のかすかなしわの奥までたっぷり太陽の光を吸っている。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
亀の子はおじいさんのようなしわだらけなくびすじをのばし、口は横まで一ぱいに裂け、冷やかな眼をうごかさずによせている。
まるで最も薄い一枚のガラスのように喜怒哀楽の微風にすら反響し、放心と怯えのしわの間へ人の意志を受け入れ通過させているだけだ。
白痴 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
かの善くものいふまみをよそにしては、外の姫たちに立ちこえて美しとおもふところもなく、まゆの間にはいつもしわ少しあり。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
伊太松は懷中ふところを探つて手紙一枚に、覺束おぼつかない假名文字で書いた手紙を取出し、しわを伸ばして平次に見せるのです。
非常によく晴れたいい天気の日で、すぐ目前にそびえている山のしわまでが手に取るように見える日でありました。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
生み落された嬰児あかごは、母が貧しい物しか喰べていなかったので、五ねんだるの梅干みたいに、赤くてしわだらけだった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多クノ「夫」ハ彼ノ妻ノ肉体ノ形状ニツイテ、恐ラクハ巨細ニわたッテ、足ノ裏ノしわノ数マデモ知リつくシテイル〓デアロウ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
――これが目くされの、しわだらけの、腰のまがった、背の低い、六十ばかりの尼法師あまほうしでございました。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
思えば、あのころ、十六歳の夏から、あなたの眉間みけんに、きょうの不幸を予言する不吉のしわがございました。
二十世紀旗手 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ある友人の腕の皮膚が不健康なしわを持っているのを、ある腕の太さ比べをしたとき私が指摘したことがありました。
橡の花 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
ただ額に少ししわを寄せて、向こう岸からおいかぶさりそうに、高く池の面に枝を伸ばした古木の奥をながめていた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
顔が黒く日に焦げてしわがよっている百姓のしゃがれた量のある声が何か答えているのがこっちまで聞えてきた。
パルチザン・ウォルコフ (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
眉間みけんしわを寄せて、複雑な顔を作ろうと思うのだが、ピリピリッと皺が寄ったかと思うと、すぐに消える。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
洋盃コップは床の上に転がっている。絨毯は踏み散らされてしわになっている。珈琲碗は飛び散っている。時計は九時五分を示している。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
心配はしゃアナ。心配てえものは智慧袋ちえぶくろちぢみ目のしわだとヨ、何にもなりゃあしねえわ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
服は着たるばかりなりと覚しく、手にてしわすようにで、ほこりを払うようにたたきつつ、寝間の戸を開けて登場。
宿の山がつを呼ぶと、松脂まつやにを燃して明りを取り、蕨粉わらびこを打っていた老山がつが、ぬっとしわだらけの面をつき出して、
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうして月は、その花々の先端の縮れた羊のようなしわを眺めながら、蒼然そうぜんとして海の方へ渡っていった。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
おぢいさんは、もはや六十あまりの年ごろで、額にふかいしわがきざまれて、目はおちくぼんでゐました。おぢいさんは、文吉の顔を見て、
さがしもの (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
「借もんだからね、しわにしちゃあ動きが取れませんや、」と、切上ったまなじりに筋を集めてニヤリと笑った。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
衣紋えもんつくろはかましわを伸ばし手巾はんけちたもとより取出とりいだして再び三たび口をぬぐう。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しわだらけの白髪の祖母が思い入れよろしくあって……こう細い手を伸ばして責め折檻せっかんする時の顔の怖さといったらありません。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
それを見ると、婆も目鼻にしわをあつめて、すすり泣いた。しかし気丈な老婆は、自分がもろくなるのをすぐ自分の心で叱咤しながら、
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ガラツ八の八五郎は、照れ臭くはかましわばかり氣にして居ります。どうもしびれが切れて叶はない恰好です。
取り乱した机の上からしわくちゃになった朝日の袋を探し出して、天願氏が火を点けた。その指がぴくぴくふるえた。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
八五郎は煙草入から半紙を小さく畳んだものを出して、煙草の粉を叩いて、平次の前にしわを伸ばして見せるのです。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
と金吾は茫然たるばかりで、艱苦かんくをへた老賊の深いしわに幼時の記憶をよび起こそうと一心に見つめました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
離れで電話をかけて、しわくちゃになったフロックのそでを気にしながら、玄関へ来ると、だれもいない。
葬儀記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
顔には引き締まったような表情があって、まゆの根にはしわが寄り、目ははるかに遠いところを見つめている。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
御母さんは今に浩一こういちが帰って来たらばと、しわだらけの指を日夜にちやに折り尽してぶら下がる日を待ちがれたのである。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
斎藤氏は、不機嫌そうに眉間みけんしわを寄せて、何も言わなかった。やっぱり、怖い感じだ。運転台に乗ればよかった、とまた思った。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼はまぶしそうに額へたくさんのしわをよせて、私の姿をじろじろ眺め、やがて、まっ白い歯をむきだして笑った。
猿ヶ島 (新字新仮名) / 太宰治(著)
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