トップ
>
白粉
>
おしろい
ふりがな文庫
“
白粉
(
おしろい
)” の例文
肌ぬぎになつた胸の左右に、二つの小さな丘のやうな乳が、
白粉
(
おしろい
)
を塗つてゐる手先の運動につれて、伸びたりふくらんだりしてゐる。
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
血だらけ、
白粉
(
おしろい
)
だらけ、手足、顔だらけ。刺戟の強い色を競った、
夥多
(
あまた
)
の看板の中にも、そのくらい目を引いたのは無かったと思う。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お綾の皮膚の色は、
羽二重
(
はぶたえ
)
に
紅珊瑚
(
べにさんご
)
を包んだようで、
生々
(
いきいき
)
した血色と、真珠色の光沢の上に、銀色の
白粉
(
おしろい
)
を叩いたかと思われました。
奇談クラブ〔戦後版〕:04 枕の妖異
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
涙で顔が洗われて、
白粉
(
おしろい
)
が剥げたのを気の毒がって、課長の女秘書マデリン・ケリイが、自分のコンパクトを貸したりしているのだ。
アリゾナの女虎
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
顔は少し横向きになっていたので、厚く
白粉
(
おしろい
)
をつけて、白いエナメルほど照りを持つ頬から中高の鼻が彫刻のようにはっきり見えた。
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
首筋だけ
白粉
(
おしろい
)
をつけていて、そして浜子がしていたように浴衣の
裾
(
すそ
)
が短かく、どこかなまめいているように、子供心にも判りました。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
浜納屋
(
はまなや
)
づくりのいろは茶屋が、
軒並
(
のきなみ
)
の水引
暖簾
(
のれん
)
に、
白粉
(
おしろい
)
の香を競わせている中に、ここの
川長
(
かわちょう
)
だけは、奥行のある川魚料理の門構え。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
黒繻子
(
くろじゅす
)
の帯の間からコンパクトを出して
微醺
(
びくん
)
を帯びた顔の
白粉
(
おしろい
)
を直してから、あたりをそっと見廻して、誰もいないのを確かめると
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
若い兵隊が甲鉄艦のやうな靴をひきずつて、ぞろぞろ通りかかると、二階から三階から
白粉
(
おしろい
)
の顔が梅の実のやうに
珠数
(
じゆず
)
繋
(
つな
)
ぎに覗いた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「こんなお
婆
(
ばあ
)
ちゃんじゃ、
嫌
(
きら
)
い」とN子はぼくの頸にぶら下がったまま、ぼくの
膝
(
ひざ
)
に坐り、
白粉
(
おしろい
)
と紅の顔をぼくの胸におしつけます。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
で、旅行となると、原稿料の前借をして、五十円ばかり懐ろに入れて、妻君の赤い顔に
白粉
(
おしろい
)
をぬらせ、生れて初めての中等列車に乗る。
空想としての新婚旅行
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
時雨
(
しぐれ
)
もよいの夕に春日の森で若い二人の巫女にあったことがある。二人とも十二、三でやはり緋の袴に白い衣をきて
白粉
(
おしろい
)
をつけていた。
日光小品
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
白粉
(
おしろい
)
をつけて眉ずみをした女の顔が重なって、それが笑声をして囁きあっている処もあった。杜陽は気おくれがして歩けなかった。
陳宝祠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
白地の
帷子
(
かたびら
)
を着た紳士の胸や、
白粉
(
おしろい
)
をつけた娘の横面などへ泥草鞋がぽんと飛んで行っても、相手が子供であるから腹も立てない。
薬前薬後
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
二十四、五の
白粉
(
おしろい
)
をべっとりつけた酌婦が、卓によりかかるようにして、同じ文句のどどいつを、何度も繰り返してうたっていた。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
さっきのれんを掛けていた女ではなく、一人は十八、九、一人は二十二、三で、どちらも小太りで、
白粉
(
おしろい
)
と香油をつよく匂わせていた。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「フーン。これはフランス製の
白粉
(
おしろい
)
の匂いだ。すると、この家の中には、若い女がいたことになる。しかも余り前のことではない」
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そこへ、お
湯
(
ゆ
)
から
上
(
あ
)
がって、
顔
(
かお
)
へ
白粉
(
おしろい
)
を
真
(
ま
)
っ
白
(
しろ
)
につけたかね
子
(
こ
)
さんが、
長
(
なが
)
いたもとの
着物
(
きもの
)
をひらひらさして、
横道
(
よこみち
)
から、
出
(
で
)
てきました。
真昼のお化け
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そして鏡を見ながら
凝乎
(
じっ
)
と考え
耽
(
ふけ
)
ったが、想えば
白粉
(
おしろい
)
、口紅、そして香水……そうしたものに遠ざかってからすでに一年と七カ月。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その化粧すなわち
白粉
(
おしろい
)
を塗り紅をつける女性の給与のために特に一区の神田があったので、いかに昔は化粧が大切であったかが知れる。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
飽くまで厚く塗り込められた
白粉
(
おしろい
)
は、夜の光にむしろ青く、その目は固く眠って、その
睫毛
(
まつげ
)
がいたずらに長いように思われたとか。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
表
(
おもて
)
二階を借りている伊東さんというカフェーの
女給
(
じょきゅう
)
が
襟垢
(
えりあか
)
と
白粉
(
おしろい
)
とでべたべたになった
素袷
(
すあわせ
)
の
寐衣
(
ねまき
)
に羽織を
引
(
ひっ
)
かけ、廊下から内を
覗
(
のぞ
)
いて
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
白粉
(
おしろい
)
をつけ、
頬紅
(
ほおべに
)
、
口紅
(
くちべに
)
をつけ、まゆずみを引き、目のふちをくま取り、それからきえちゃんの
芸服
(
げいふく
)
を着せ、
絹
(
きぬ
)
の
三角帽
(
さんかくぼう
)
をかぶせました。
曲馬団の「トッテンカン」
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
新しずくめの上に、
白粉
(
おしろい
)
をつけた新しい女までいるんだから、全く夢のような気持で、不審が顔に出る
暇
(
いとま
)
もないうちに通り越しちまった。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
抽斗
(
ひきだし
)
を
透
(
すか
)
して、
私
(
そつ
)
と
背負揚
(
しよいあげ
)
を
引張出
(
ひつぱりだ
)
して
見
(
み
)
ると、
白粉
(
おしろい
)
やら
香水
(
かうすゐ
)
やら、
女
(
をんな
)
の
移香
(
うつりが
)
が
鼻
(
はな
)
に
通
(
かよ
)
つて、
私
(
わたし
)
の
胸
(
むね
)
は
妙
(
めう
)
にワク/\して
来
(
き
)
た。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
万平は
白粉
(
おしろい
)
の下から汗をブルブルと流した。ズッコケかかった昼夜帯を後ろ手で抱え上げ抱え上げ
滅法
(
めっぽう
)
矢鱈
(
やたら
)
にお辞儀を返した。
芝居狂冒険
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
行李
(
こうり
)
から本を出すと、昔の私の本箱にはだいぶ恋の字がならんでいる。隣室は大工さん夫婦、お
上
(
かみ
)
さんはだるま上りの
白粉
(
おしろい
)
の濃い女だった。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
風のない夜で涼みかたがた見物に来る町の人びとで城跡は
賑
(
にぎ
)
わっていた。
暗
(
やみ
)
のなかから
白粉
(
おしろい
)
を厚く塗った町の娘達がはしゃいだ眼を光らせた。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
中年の商人風の男の中に交じった一人の若い女の紫色に
膨
(
ふく
)
れ上がった顔に
白粉
(
おしろい
)
の
斑
(
まだら
)
になっているのが秋の日にすさまじく照らし出されていた。
異質触媒作用
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そこでこんどは青年の爪の垢を取って調べましたところ、顕微鏡下に現れたものは、人間の皮膚の上皮層とある特種の
白粉
(
おしろい
)
の
粉
(
こ
)
でありました。
墓地の殺人
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
皮膚が
練絹
(
ねりぎぬ
)
のように細かくやわらかであるから、
白粉
(
おしろい
)
の乗りがいい。爽やかな眼を大きく張って、この二人も明るく唄った。
淡紫裳
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
予の幼時和歌山で兎の足を貯え置き痘瘡を
爬
(
か
)
くに用いた。これその底に毛布を着たように密毛
叢生
(
そうせい
)
せる故で予の姉などは
白粉
(
おしろい
)
を塗るに用いた。
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
なかなか
隅
(
すみ
)
におけない、
白粉
(
おしろい
)
を
袖
(
そで
)
や胸にもつけてくる人だというし、またある人も、気さくなよいサラリーマンだといった。
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
まず五六十人の若い女が白い「
裳
(
も
)
ころも」、白い笠、顔には
薄紅
(
うすべに
)
の
白粉
(
おしろい
)
を厚く塗り歯はおはぐろで黒く染めて、田植えの場所へと並んで行く。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
道化面は
昂奮
(
こうふん
)
に筋張り、厚い
白粉
(
おしろい
)
を通して、顔面が真赤に上気しているのが見える程であった。決して嘘を云っているのではないことが分る。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「道はヌカるし、固めておけばジクジク流れ出すし、泥と一緒に
混合
(
ごっちゃ
)
になって、
白粉
(
おしろい
)
が
剥
(
は
)
げて、
痘痕面
(
あばたづら
)
を
露出
(
むきだ
)
したようなこのザマといったら」
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と四散する翼の
白粉
(
おしろい
)
、ボッと四辺がけむるほどだ。負けずにうなるスペイン猫、背を持ち上げてグルグルグル、血だまりの周囲をまわり出した。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
何のために、
白粉
(
おしろい
)
なぞを塗っているのだろう? 俺が眼の見えないことは、わかっているくせに、化粧をして、いったい誰に見せるつもりなのだ。
二人の盲人
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
髪を天神髷に
結
(
い
)
っていた。その襟足がばかに真白だったが、
先刻
(
さっき
)
ちらと見たところでは、顔は濃い
白粉
(
おしろい
)
を脂で拭きとったらしくつるりとしていた。
溺るるもの
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
二度目はそれから二月ほど
経
(
た
)
った春の夜、ゆくりなく時雄が訪問すると、芳子は
白粉
(
おしろい
)
をつけて、美しい顔をして、
火鉢
(
ひばち
)
の前にぽつねんとしていた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
二畳の女中部屋の壁際にガラス鏡を飾り、小棚の上には安香油だの百合の花のレッテルの付いた
白粉
(
おしろい
)
だの、鑵に入つた洗粉だのを並べ立てて居る。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
だが、その日のうちにもう千代さんは、泣いて
腫
(
は
)
れぼったくなった顔に
白粉
(
おしろい
)
をつけて盛装して四、五人の知合いに村外れまで送られて嫁に行った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
髪は文金の
高髷
(
たかまげ
)
にふさ/\と結いまして、少し
白粉
(
おしろい
)
も濃く
粧
(
つ
)
けまして、和平夫婦が三々九度の盃を手に取上げる折から、表の
方
(
かた
)
から半合羽を
著
(
き
)
て
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
此故
(
このゆゑ
)
に
腥
(
なまぐさ
)
き
血
(
ち
)
の
臭
(
にほひ
)
失
(
う
)
せて
白粉
(
おしろい
)
の
香
(
かをり
)
鼻
(
はな
)
を
突
(
つ
)
く
太平
(
たいへい
)
の
御代
(
みよ
)
にては
小説家
(
せうせつか
)
即ち
文学者
(
ぶんがくしや
)
の
数
(
かず
)
次第々々
(
しだい/\
)
に
増加
(
ぞうか
)
し、
鯛
(
たひ
)
は
花
(
はな
)
は
見
(
み
)
ぬ
里
(
さと
)
もあれど、
鯡
(
にしん
)
寄
(
よ
)
る
北海
(
ほつかい
)
の
浜辺
(
はまべ
)
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
顔に
白粉
(
おしろい
)
を塗ったメッセンヂャアボーイは、オペレッタの人のように、女客の手紙で一杯になっている鞄を肩からぶら下げて、気軽に動いています。
耳香水
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
そのビール飲み場の入口には、黄色い髪の毛をし、
脂
(
あぶら
)
や
白粉
(
おしろい
)
をぬりたてた、大きなでっぷりした女どもが、卑しい眼つきで通行人をうかがっていた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
白粉
(
おしろい
)
を水にも溶かさないでべたべた塗りつける、にとにとと面が
突張
(
つつぱ
)
る、眼が光る、見る見る能のお面のやうに真白に生色のない泣つ
面
(
つら
)
が出来上る。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
白繻子
(
しろじゅす
)
でできてるボタンじめの
褥
(
しとね
)
の上に、しっかりした大きな赤ら顔、王鳥式に新しく
白粉
(
おしろい
)
をぬった額、高慢ないかつい鋭い目、文人のような微笑
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
三吉があわてて電灯の灯の方へ顔をむけると、気のいい人の
要慎
(
ようじん
)
なさで、
白粉
(
おしろい
)
の
匂
(
にお
)
いと一緒に顔をくっつけながら
白い道
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
そんなに聞きたがるのさ。……私の家は貧乏だったの。弟妹がまだ四人もいるんだもの。それでさ。……でも、そうねえ、やはり、こうやって、
白粉
(
おしろい
)
を
雪の夜
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
“白粉(おしろい)”の解説
おしろい(白粉)は、顔や首筋などに塗布して肌を色白に見せるために使用する化粧品である。その種類に応じて、粉おしろい、水おしろい、練りおしろいなどに分類される。
(出典:Wikipedia)
白
常用漢字
小1
部首:⽩
5画
粉
常用漢字
小5
部首:⽶
10画
“白粉”で始まる語句
白粉気
白粉刷毛
白粉焼
白粉垢
白粉花
白粉壺
白粉草
白粉焦
白粉下
白粉首