トップ
>
猪
>
いのしし
ふりがな文庫
“
猪
(
いのしし
)” の例文
猪
(
いのしし
)
と熊とが、まるっきり違った動物であるように、人間同志でも、まるっきり違った生きものである場合がたいへん多いと思います。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
峠越
(
とうげごえ
)
の此の
山路
(
やまみち
)
や、以前も
旧道
(
ふるみち
)
で、余り道中の無かつた
処
(
ところ
)
を、汽車が通じてからは、
殆
(
ほとん
)
ど
廃駅
(
はいえき
)
に成つて、
猪
(
いのしし
)
も
狼
(
おおかみ
)
も又戻つたと言はれる。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
花ならば梅桜あやめに菊、鳥獣なら
鶯
(
うぐいす
)
時鳥
(
ほととぎす
)
猪
(
いのしし
)
に鹿、まるで近頃の
骨牌
(
かるた
)
の絵模様が、日本の自然文学の目録であったというも誇張でない。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
某時
(
あるとき
)
木曾
(
きそ
)
の
御岳
(
おんたけ
)
の麓へ往って、山の中で一夜を明し、朝の帰り
猪
(
いのしし
)
を打つつもりで、待ち受けていると、前方の篠竹がざわざわ揺れだした。
女仙
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
猪
(
いのしし
)
も熊もとりました。ビッコの女は木の芽や草の根をさがしてひねもす林間をさまよいました。然し女は満足を示したことはありません。
桜の森の満開の下
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
猪
(
いのしし
)
の群に追われた山猫が、さんざん逃げ廻った末、やっと高いシャボテンの木に逃げのぼるカットがあるが、これなどがその良い例である。
ディズニーの人と作品
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
蛇の文身をしている
巳之吉
(
みのきち
)
と、
猪
(
いのしし
)
の文身をしている
亥太郎
(
いたろう
)
と三人だけですが、その三人が、何か命がけの争いをしているらしゅうございます
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「信じられないか、では
訊
(
き
)
くけれども、われわれは毎年、
猪
(
いのしし
)
や兎の肉を
喰
(
た
)
べるし、鶏はもちろん、牛や豚の肉まで喰べた筈だ」
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
足の
爪
(
つめ
)
、からだにはえている小さな一本の毛までがハッキリとわかって、妙な
比喩
(
ひゆ
)
ですが、まるで
猪
(
いのしし
)
のように恐ろしい大きさに見えるのです。
鏡地獄
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
猪
(
いのしし
)
の肉を売る店では猪がさかさまにぶら下っている。昆布屋の前を通る時、塩昆布を煮るらしい匂いがプンプン鼻をついた。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
狼
(
おおかみ
)
の
顎
(
あご
)
や
猪
(
いのしし
)
の
牙
(
きば
)
が、石弓や
戦斧
(
せんぷ
)
のあいだにおそろしく歯をむきだし、巨大な一対の
鹿
(
しか
)
の角が、その若い花婿の頭のすぐ上におおいかぶさっていた。
幽霊花婿:ある旅人の話
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
と、呼びながら、
颯爽
(
さっそう
)
、前を
遮
(
さえぎ
)
って、
猪
(
いのしし
)
武者の槍のなかばを、槍をもって、ぴしッと
搦
(
から
)
み合わせて行った一将があった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれども気が
咎
(
とが
)
めると云うのか、自尊心が許さないと云うのか、振り向こうとするごとに、首が
猪
(
いのしし
)
のように堅くなって後へ回らなかったのである。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
猟天狗「西洋人は
猪
(
しし
)
の肉を大層好むそうですがあれを極く美味しく食べるにはどうしましょう」中川「
猪
(
いのしし
)
の肉の好い味を食べるには最上のロース肉を ...
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「彼方の女は子を産む
猪
(
いのしし
)
のように太っている。見よ、長羅、彼方の女は子を
胎
(
はら
)
んだ冬の狐のように太っている。」
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
朧月夜
(
おぼろづきよ
)
であった。あの一団が向方の街道を巨大な
猪
(
いのしし
)
のような物凄さでまっしぐらに駈出してゆくのが
窺
(
うかが
)
われた。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
そのあとで、
猪
(
いのしし
)
が煮え出したものですから、池田良斎といわれたのは箸の先で、ちょいとつまんで風味を試み
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
大台ヶ原を中心とした深い天然林は、昔から
猪
(
いのしし
)
の産地で、こゝの猪は味に於て国内随一であるときいてゐた。
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
しかし、警官がも一人彼の背中に飛びかかったとき、彼は
猪
(
いのしし
)
のように武者震いして、二人の警官を
拳固
(
げんこ
)
でなぐりつけた。捕縛されるのを
肯
(
がえん
)
じなかったのである。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
中仙道は
鵜沼
(
うぬま
)
駅を麓とした
翠巒
(
すいらん
)
の層に続いて西へと
連
(
つらな
)
るのは
多度
(
たど
)
の山脈である。
鈴鹿
(
すずか
)
は
幽
(
かす
)
かに、
伊吹
(
いぶき
)
は未だに吹きあげる風雲の
猪
(
いのしし
)
色にその
嶺
(
いただき
)
を吹き乱されている。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
低い前額、広い
顳顬
(
こめかみ
)
、年齢四十足らずで
目尻
(
めじり
)
には
皺
(
しわ
)
が寄り、荒く短い頭髪、毛むくじゃらの
頬
(
ほお
)
、
猪
(
いのしし
)
のような
髯
(
ひげ
)
、それだけでもおよそその人物が想像さるるだろう。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
毎日
(
まいにち
)
犬
(
いぬ
)
を
連
(
つ
)
れて山の中に
入
(
はい
)
って、
猪
(
いのしし
)
や
鹿
(
しか
)
を
追
(
お
)
い
出
(
だ
)
しては、
犬
(
いぬ
)
にかませて
捕
(
と
)
って
来
(
き
)
て、その
皮
(
かわ
)
をはいだり、
肉
(
にく
)
を
切
(
き
)
って
売
(
う
)
ったりして、
朝晩
(
あさばん
)
の
暮
(
く
)
らしを
立
(
た
)
てていました。
忠義な犬
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
そこに立つ両部時代の遺物の中にはまた、十二権現とか、不動尊とか、三面六
臂
(
ぴ
)
を有し
猪
(
いのしし
)
の上に踊る三宝荒神とかのわずかに破壊を免れたもののあるのも目につく。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
お前達はこれから
獣
(
けもの
)
の市場へ行って、生きた鹿と
猪
(
いのしし
)
を一匹
宛
(
ずつ
)
買って来い。女の方には猪の背骨を入れて背を低くしてやる。男の方には鹿の背骨を入れて背を高くしてやる
豚吉とヒョロ子
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
三鳥山人
(著)
山の精気を吸いこんで、逞しさをとりもどした体で、林のなかに駈け入り、
猪
(
いのしし
)
に似た山豚を追いかけまわしたり、嬉々として畑に出、
蕎麦
(
そば
)
の種をまいたりしているのである。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
山道をかけくだる
猪
(
いのしし
)
のような一本調子で『ヘルキュレス』めがけてまっしぐらに飛び込んで来たが、
南無
(
なむ
)
三、少々方角が違ったので、『ヘルキュレス』の尻尾のそばを通り過し
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
怒り狂った素戔嗚は、まるで
傷
(
きずつ
)
いた
猪
(
いのしし
)
のように、猛然とその後から飛びかかった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
……葉子は手傷を負った
猪
(
いのしし
)
のように一直線に荒れて行くよりしかたがなくなった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
猪
(
いのしし
)
のように鼻をふくらまして、小次郎がおどりこむと、先ず
大喝
(
だいかつ
)
をあびせた。
流行暗殺節
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
私の思い違いでなかったなら、この通りは、たしかポルタ・ロッサという名だったと思います。この通りの、以前青物市場だった建物の前に、たいそう上手に作られた青銅の
猪
(
いのしし
)
があります。
聖アンデルセン
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
とは
光俊朝臣
(
みつとしあそん
)
の述懐であるが、歌の「
仏
(
ほとけ
)
」という代りに武士なり
丈夫
(
ますらお
)
なりの
強
(
つよ
)
い人格の文字を用いても同じことになる。しかつめらしく具足をつけ
威張
(
いば
)
るものは、古来
猪
(
いのしし
)
武士と呼ばれている。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「この山には赤い
猪
(
いのしし
)
がいる。わたしたちが追い
下
(
くだ
)
すからお前が待ちうけて捕えろ。もしそうしないと、きつとお前を殺してしまう」と言つて、
猪
(
いのしし
)
に似ている大きな石を火で燒いて
轉
(
ころ
)
がし落しました。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
病気がややよくなって、峻は一度その北
牟婁
(
ムロ
)
の家へ行ったことがあった。そこは山のなかの寒村で、村は百姓と
木樵
(
きこり
)
で、
養蚕
(
ようさん
)
などもしていた。冬になると家の近くの畑まで
猪
(
いのしし
)
が芋を掘りに来たりする。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
忠臣蔵にはこの近くのかいどうに
猪
(
いのしし
)
や
追
(
お
)
い
剥
(
は
)
ぎが出たりするように書いてあるからむかしはもっとすさまじい所だったのであろうがいまでもみちの両側にならんでいる
茅
(
かや
)
ぶき屋根の
家居
(
いえい
)
のありさまは阪急沿線の西洋化した町や村を
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
猪
(
いのしし
)
も共に吹かるゝ
野分
(
のわき
)
かな 同
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
横町を
田畝
(
たんぼ
)
へ抜けて——はじめから志した——山の森の明神の、あの石段の下へ着いたまでは、馬にも、
猪
(
いのしし
)
にも乗った
勢
(
いきおい
)
だった。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大鯰
(
おおなまず
)
が
瓢箪
(
ひょうたん
)
からすべり落ち、
猪
(
いのしし
)
が
梯子
(
はしご
)
からころげ落ちたみたいの言語に絶したぶざまな
恰好
(
かっこう
)
であったと後々の里の人たちの笑い草にもなった程で
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
猪
(
いのしし
)
を撃つ
猟人
(
かりうど
)
のよく知っている言葉に、ヌタともノタともいうのはまた同じ語だったかと思うが、これだけは九州ではニタと言って区別している。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一日は
琵琶湖
(
びわこ
)
に舟をうかべて暮し、あくる日は伊吹の山すそで
猪
(
いのしし
)
狩りをした、また鈴鹿の山へ遠駆けをして野営のいち夜にむかしを
偲
(
しの
)
んだりもした。
青竹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
郭は珍しい
肴
(
さかな
)
を献上するといって、鹿の
腊
(
ほじし
)
を出すふりをして、その手を斬り落し、翌日血の痕をつけて往くと、大きな
猪
(
いのしし
)
であったから殺して
啖
(
く
)
った。
怪譚小説の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しているこの戦場の人間は、みんな頭がヘンなのにきまってるわ。その中でも、おまえなんぞは、気の狂った
猪
(
いのしし
)
だ。……だから、そばへ寄ると、小便を
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雉
(
きじ
)
、山鳥、
雁
(
がん
)
は七日目ないし八日目です。鹿、
猪
(
いのしし
)
、熊、猿、白鳥、七面鳥は八日目以上を食べ頃としたものです。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
僕は
祇園
(
ぎおん
)
の
舞妓
(
まいこ
)
と
猪
(
いのしし
)
だとウッカリ答えてしまったのだが——まったくウッカリ答えたのである。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
クリストフは驚いて飛び上がった。彼は何よりも天才を信じたがってはいた。しかしながら、一挙に過去を
覆
(
くつがえ
)
すそういう天才があろうか。……馬鹿な! それは
猪
(
いのしし
)
武者だ。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
あたかも番犬や猟犬どものほえ立った一群の下に押さえられている
猪
(
いのしし
)
のようだった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
大蛇や大
蜥蜴
(
とかげ
)
や
鰐
(
わに
)
も南洋の名物だし、それから、
猪
(
いのしし
)
だとか虎なんかもいるんだって
新宝島
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
二人が帰って行く道は、その
路傍
(
みちばた
)
に
石燈籠
(
いしどうろう
)
や石造の
高麗犬
(
こまいぬ
)
なぞの見いださるるところだ。三
面
(
めん
)
六
臂
(
ぴ
)
を有し
猪
(
いのしし
)
の上に踊る三宝荒神のように、まぎれもなく異国伝来の系統を示す神の
祠
(
ほこら
)
もある。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「高天原の国か。高天原の国は、鼠が
猪
(
いのしし
)
よりも強い所だ。」
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
猪
(
いのしし
)
も共に吹かるゝ野分かな 同
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「
女房
(
かみさん
)
が寄せつけやしまい、第一
吃驚
(
びっくり
)
するだろう、己なんぞが飛込んじゃ、山の手から
猪
(
いのしし
)
ぐらいに。所かわれば品かわるだ、なあ、め組。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“猪”の意味
《名詞》
(い、いのしし)主に野生である中型の哺乳類。豚の原種。
(出典:Wiktionary)
“猪(イノシシ)”の解説
イノシシ(日本語:猪・豬、英名:Wild boar、学名:Sus scrofa)は、鯨偶蹄目イノシシ科の動物の一種。本種を家畜化したものがブタである。
(出典:Wikipedia)
猪
漢検準1級
部首:⽝
11画
“猪”を含む語句
野猪
一猪口
猪口
猪首
猪突
猪肉
赤猪子
猪武者
猪狩
猪口才
猪牙
猪牙舟
猪牙船
猪子
大猪
猪名野
猪八戒
猪苗代
豪猪
手負猪
...