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濡縁
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ぬれえん
ふりがな文庫
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濡縁
(
ぬれえん
)” の例文
昼ねから
醒
(
さ
)
めて、体を洗って、新しい仕事を考えながら二階で風にふかれていたら、不図思いついて狭い
濡縁
(
ぬれえん
)
の左の端れまで出てみたら
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「どれ。……会ってくれるか」と、独りつぶやいて、秋のあかるい
陽
(
ひ
)
のいっぱいに射している広い
濡縁
(
ぬれえん
)
を大股に歩み出していた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのうちに朝日は柘榴のこんもりとしてそっくり繁って行く若葉の端々を
唐棣色
(
とうていしょく
)
に染め出し、
漸
(
ようや
)
くにして
濡縁
(
ぬれえん
)
にも及んで来る。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
開放した
濡縁
(
ぬれえん
)
のそとの、高い
土塀
(
どべい
)
で取り囲んだ小庭には、こんもり茂った植込みのまわりに、しっとりとした夜霧が立ち白んだようになって
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
三吉はそれを家のものに言って、丁度離れた島に住む人が港へ入る船の
報知
(
しらせ
)
でも聞くように、
濡縁
(
ぬれえん
)
の外まで出て耳を立てた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
多の市の寝ているのは奥の三畳、お浜の寝ていたのは入口に近い四畳半、その外には狭い
濡縁
(
ぬれえん
)
があって、二つの部屋の隣に小さいお勝手があります。
銭形平次捕物控:064 九百九十両
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
点滴の
樋
(
とい
)
をつたわって
濡縁
(
ぬれえん
)
の外の
水瓶
(
みずがめ
)
に流れ落る音が聞え出した。もう
糠雨
(
ぬかあめ
)
ではない。風と共に木の葉の
雫
(
しずく
)
のはらはらと軒先に払い落される
響
(
ひびき
)
も聞えた。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
裳
(
もすそ
)
を
曳
(
ひ
)
く
濡縁
(
ぬれえん
)
に、
瑠璃
(
るり
)
の
空
(
そら
)
か、
二三輪
(
にさんりん
)
、
朝顏
(
あさがほ
)
の
小
(
ちひさ
)
く
淡
(
あは
)
く、
其
(
そ
)
の
色
(
いろ
)
白
(
しろ
)
き
人
(
ひと
)
の
脇
(
わき
)
明
(
あけ
)
を
覗
(
のぞ
)
きて、
帶
(
おび
)
に
新涼
(
しんりやう
)
の
藍
(
あゐ
)
を
描
(
ゑが
)
く。
月令十二態
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
たまりかねて、
濡縁
(
ぬれえん
)
へ片膝をつき、這いこむばかりの姿勢となって、片腕を延して和尚の背中を揺ろうとした。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
家は
腰高
(
こしだか
)
の
塗骨障子
(
ぬりぼねしょうじ
)
を境にして居間と台所との二間のみなれど竹の
濡縁
(
ぬれえん
)
の
外
(
そと
)
には
聊
(
ささや
)
かなる小庭ありと
覚
(
おぼ
)
しく、
手水鉢
(
ちょうずばち
)
のほとりより竹の
板目
(
はめ
)
には
蔦
(
つた
)
をからませ
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
二月のあたたかい日に、私がぶらりと訪ねてゆくと、老人は南向きの
濡縁
(
ぬれえん
)
に出て、自分の膝の上にうずくまっている小さい動物の柔らかそうな背をなでていた。
半七捕物帳:12 猫騒動
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
とうとう引っ張り出された形、竹の
濡縁
(
ぬれえん
)
から庭下駄を突っかけて、ゆらりとおり立った一人の若者。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
杜松子は
檐
(
のき
)
の陰になった
濡縁
(
ぬれえん
)
の近くに浅く坐って庭を見ていたが、滋子のほうへふりかえって
ユモレスク
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
濡縁
(
ぬれえん
)
にいづくとも無き落花かな
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
濡縁
(
ぬれえん
)
の外は
落葉松
(
からまつ
)
の垣だ。風雪の為に、垣も大分
破損
(
いた
)
んだ。毎年聞える寂しい蛙の声が復た水車小屋の方からその障子のところへ伝わって来た。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
鶴菜はまだ弾傷が癒えないで床に横たわっていたが、父の伝右衛門が来たと聞くと、
濡縁
(
ぬれえん
)
まで転び出して来てさけんだ。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
多の市の寢て居るのは奧の三疊、お濱の寢てゐたのは入口に近い四疊半、その外には狹い
濡縁
(
ぬれえん
)
があつて、二つの部屋の隣りに小さいお勝手があります。
銭形平次捕物控:064 九百九十両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
家は
腰高
(
こしだか
)
の
塗骨
(
ぬりぼね
)
障子を境にして
居間
(
いま
)
と台所との
二間
(
ふたま
)
のみなれど竹の
濡縁
(
ぬれえん
)
の
外
(
そと
)
には
聊
(
ささや
)
かなる小庭ありと覚しく、
手水鉢
(
ちょうずばち
)
のほとりより竹の
板目
(
はめ
)
には
蔦
(
つた
)
をからませ
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
やがて
實
(
みの
)
る
頃
(
ころ
)
よ。——
就中
(
なかんづく
)
、
南
(
みなみ
)
の
納戸
(
なんど
)
の
濡縁
(
ぬれえん
)
の
籬際
(
かきぎは
)
には、
見事
(
みごと
)
な
巴旦杏
(
はたんきやう
)
があつて、
大
(
おほ
)
きな
實
(
み
)
と
言
(
い
)
ひ、
色
(
いろ
)
といひ、
艷
(
えん
)
なる
波斯
(
ペルシヤ
)
の
女
(
をんな
)
の
爛熟
(
らんじゆく
)
した
裸身
(
らしん
)
の
如
(
ごと
)
くに
薫
(
かを
)
つて
生
(
な
)
つた。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
朝日はかくて
濡縁
(
ぬれえん
)
の端に及び、
忽
(
たちま
)
ちのうちにその全面に射し込んで来て、幾年の風雨に
曝
(
さ
)
らされて朽ちかかった縁板も、やがて
人膚
(
ひとはだ
)
ぐらいの
温
(
ぬく
)
みを帯びるようになる。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
濡縁
(
ぬれえん
)
に雨の後なる一葉かな
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
南向の部屋の外は垣根に近い
濡縁
(
ぬれえん
)
で、そこから別に囲われた畠の方が見える。深い桑の葉の蔭に成って、妹の居る処は分らなかったが、返事だけは聞える。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
濡縁
(
ぬれえん
)
から這ひ上がつて、窓越しにお駒さんを刺すと、曲者の姿はお駒さんの前の鏡に映らなきやなりません
銭形平次捕物控:279 持参千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
前々から、ちゃら金が、ちょいちょい来ては、昼間の
廻燈籠
(
まわりどうろう
)
のように、二階だの、
濡縁
(
ぬれえん
)
だの、薄羽織と、
兀頭
(
はげあたま
)
をちらちらさして、ひそひそと相談をしていましたっけ。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
茶がかった離れの小座敷へと通るや否や明放した
濡縁
(
ぬれえん
)
の障子から一目に見渡した裏田圃の景色。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
鶴見はそんなことを考えながら、庭の
草挘
(
くさむし
)
りをするついでに、石蒜の生える場所を綺麗に掃除をしておいた。
濡縁
(
ぬれえん
)
の横の
戸袋
(
とぶくろ
)
の前に南天の株が植えてある。その南天の
根方
(
ねかた
)
である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
きょうか
明日
(
あす
)
かとも見える容態になっても、石舟斎は決して
厠
(
かわや
)
へ通うのに、ひとの手を借らなかった。
手沢
(
しゅたく
)
のかかった細竹の杖をついて、病室の
濡縁
(
ぬれえん
)
から
後架
(
こうか
)
へゆくのを常としていた。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お雪は
濡縁
(
ぬれえん
)
のところに立って、何の
目的
(
めあて
)
もなく空を眺めた。隣のおばさんは
鎌
(
かま
)
を腰に差して
畠
(
はたけ
)
の方から帰って来る。桑を背負った男もその後から会釈して通る……
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
次の
間
(
ま
)
の——
崖
(
がけ
)
の草のすぐ覗く——
竹簀子
(
たけすのこ
)
の
濡縁
(
ぬれえん
)
に、むこうむきに
端居
(
はしい
)
して……いま私の入った時、一度ていねいに、お
時誼
(
じぎ
)
をしたまま、うしろ姿で、ちらりと赤い小さなもの
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寺の門前に折好く植木屋のような昔風の家づくりの蕎麦屋が在ったので、往来際の木戸口から小庭の飛石づたい、
濡縁
(
ぬれえん
)
をめぐらした小座敷に上って、わたしは宗吉のはなしを聞いた。
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
怪しげな座蒲團を敷いたのは、多の市とは反對側になつてゐる
濡縁
(
ぬれえん
)
です。
銭形平次捕物控:064 九百九十両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それに、もうやがて、庭を横ぎって、
濡縁
(
ぬれえん
)
か、戸口に入りそうだ、と思うまで
距
(
へだ
)
たった。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その家屋も
格子戸
(
こうしど
)
欞子窓
(
れんじまど
)
忍返
(
しのびがえ
)
し竹の
濡縁
(
ぬれえん
)
船板
(
ふないた
)
の
塀
(
へい
)
なぞ、
数寄
(
すき
)
を
極
(
きわ
)
めしその
小庭
(
こにわ
)
と共にまた
然
(
しか
)
り。これ美術の価値以外江戸末期の浮世絵も余に取りては容易に捨つること能はざる
所以
(
ゆえん
)
なり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
宗吉が夜学から、
徒士町
(
おかちまち
)
のとある裏の、空瓶屋と
襤褸屋
(
ぼろや
)
の間の、貧しい下宿屋へ帰ると、
引傾
(
ひきかし
)
いだ
濡縁
(
ぬれえん
)
づきの六畳から、男が一人
摺違
(
すれちが
)
いに出て
行
(
ゆ
)
くと、お千さんはパッと障子を開けた。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
翌日
(
あくるひ
)
の朝種彦は独り
下座敷
(
したざしき
)
なる竹の
濡縁
(
ぬれえん
)
に出て顔を洗い食事を済ました
後
(
のち
)
さえ何を考えるともなく折々
毛抜
(
けぬき
)
で
頤鬚
(
あごひげ
)
を抜きながら、
昨夜
(
ゆうべ
)
若い男女の忍び
逢
(
あ
)
ったあたりの
庭面
(
にわもせ
)
に
茫然
(
ぼんやり
)
眼を移していた。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
唄
(
うた
)
の
床柱
(
とこばしら
)
ではないが、
別莊
(
べつさう
)
の
庭
(
には
)
は、
垣根
(
かきね
)
つゞきに
南天
(
なんてん
)
の
林
(
はやし
)
と
云
(
い
)
ひたいくらゐ、
一面
(
いちめん
)
輝
(
かゞや
)
くが
如
(
ごと
)
き
紅顆
(
こうくわ
)
を
燭
(
とも
)
して、
水晶
(
すゐしやう
)
の
火
(
ひ
)
のやうださうで、
奧
(
おく
)
の
濡縁
(
ぬれえん
)
を
先
(
さき
)
に
古池
(
ふるいけ
)
が
一
(
ひと
)
つ、
中
(
なか
)
に
平
(
たひら
)
な
苔錆
(
こけさ
)
びた
石
(
いし
)
がある。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
二人は再び
濡縁
(
ぬれえん
)
に腰をかけて庭の方を向いた。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
木綿
(
もめん
)
小紋
(
こもん
)
のちゃんちゃん子、
経肩衣
(
きょうかたぎぬ
)
とかいって、紋の着いた袖なしを——外は暑いがもう秋だ——もっくりと着込んで、
裏納戸
(
うらなんど
)
の
濡縁
(
ぬれえん
)
に
胡坐
(
あぐら
)
かいて、
横背戸
(
よこせど
)
に倒れたまま
真紅
(
まっか
)
の花の小さくなった
栃の実
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母
(
おっか
)
さんが出来ると云うので、いくら
留
(
と
)
められても、大きな
草鞋
(
わらじ
)
で、松並木を駈けました。
庵
(
いおり
)
のような小寺で、方丈の
濡縁
(
ぬれえん
)
の下へ、すぐに
静
(
しずか
)
な浪が来ました。
尤
(
もっと
)
もその
間
(
あいだ
)
に拾うほどの浜はあります。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
驚破
(
すはや
)
と、
母屋
(
おもや
)
より
許嫁
(
いひなづけ
)
の
兄
(
あに
)
ぶんの
駈
(
か
)
けつくるに、
讀
(
よ
)
みさしたる
書
(
ふみ
)
伏
(
ふ
)
せもあへず
抱
(
だ
)
きて
立
(
た
)
てる、
栞
(
しをり
)
の
萩
(
はぎ
)
も
濡縁
(
ぬれえん
)
に
枝
(
えだ
)
を
浪打
(
なみう
)
ちて、
早
(
は
)
や
徒渉
(
かちわたり
)
すべからず、あり
合
(
あ
)
はす
盥
(
たらひ
)
の
中
(
なか
)
に
扶
(
たす
)
けのせつゝ、
盪
(
お
)
して
逃
(
のが
)
るゝ。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
濡
漢検準1級
部首:⽔
17画
縁
常用漢字
中学
部首:⽷
15画
“濡縁”で始まる語句
濡縁越