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あたたか
ふりがな文庫
“
温
(
あたたか
)” の例文
かの
温
(
あたたか
)
い
嬉
(
うれ
)
しい愛情は、単に女性特有の自然の発展で、美しく見えた眼の表情も、やさしく感じられた態度も
都
(
すべ
)
て無意識で、無意味で
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
あれからしばらくたつた
温
(
あたたか
)
い日、栄蔵は勉強に疲れた頭を、海から来る新鮮な風にあてて休めるため、波打際の方へおりていつた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
我身
(
わがみ
)
も
不肖
(
ふしょう
)
ながら家庭料理の改良を
本
(
もと
)
として大原ぬしの事業を助けばやと未来の想像は愉快に
充
(
みた
)
されて結びし夢も
温
(
あたたか
)
に楽しかりき。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
八太郎はさう
独語
(
ひとりごと
)
を
云
(
い
)
つて、二匹の子犬を拾ひ上げて、懐の中に入れてやりました。子犬は
温
(
あたたか
)
い懐の中で、
嬉
(
うれ
)
しがつて鼻を鳴らしました。
犬の八公
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
げろ呑みにして早く生きたいようにも見えまたやっぱり
疲
(
つか
)
れてもいればこういう
款待
(
かんたい
)
に
温
(
あたたか
)
さを
感
(
かん
)
じてまだ止まっていたいようにも見えた。
十六日
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
▼ もっと見る
それは、お
日様
(
ひさま
)
が
温
(
あたたか
)
く
照
(
て
)
っているのを
見
(
み
)
たり、
雲雀
(
ひばり
)
の
歌
(
うた
)
を
聞
(
き
)
いたりして、もうあたりがすっかりきれいな
春
(
はる
)
になっているのを
知
(
し
)
りました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
あるいは人生の長き実験より、あるいは深き学識より、あるいは
温
(
あたたか
)
き同情より彼を慰むれどもいずれも問題の中心に触れない。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
千の
苦艱
(
くげん
)
も
固
(
もと
)
より
期
(
ご
)
したるを、なかなかかかる
寛
(
ゆたか
)
なる信用と、かかる
温
(
あたたか
)
き
憐愍
(
れんみん
)
とを
被
(
かうむ
)
らんは、
羝羊
(
ていよう
)
の
乳
(
ち
)
を得んとよりも彼は望まざりしなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
すべての
温
(
あたたか
)
い夜はおれを拒み、すべての巣はおれに戸を閉ざしている。あいにくと、たいした持ち合わせもない。彼には行き場所がなかった。
赤い手帖
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
それにしても好いたの
惚
(
ほ
)
れたのというような
若
(
もし
)
くはそれに似た柔く
温
(
あたたか
)
な感情を起し得るものとは、夢にも思って居なかった。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「どうも腎臓が悪うございましてね、今晩も
夜伽
(
よとぎ
)
に来てくれた方が、寒いから
温
(
あたたか
)
い物で、酒を出すと云っておりますよ」
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そこでおじいさんとおばあさんは、あわててお
湯
(
ゆう
)
をわかして、
赤
(
あか
)
ちゃんにお
湯
(
ゆう
)
をつかわせて、
温
(
あたたか
)
い
着物
(
きもの
)
の中にくるんで、かわいがって
育
(
そだ
)
てました。
瓜子姫子
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
樫の木は狼を抱へて風を防いでやり、狼もまた自分の毛の
温
(
あたたか
)
みで樫の木を暖めてやるかたちになりましたので、狼と樫の木は結婚してしまひました。
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
手工藝をただ過ぎ行くものとして捨てる人もあるが、余り粗野な見方と思える。日本の工藝はまだ
温
(
あたたか
)
いのである。多くは家庭の手仕事として生れている。
地方の民芸
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
どこか
温
(
あたたか
)
い土地か温泉に行って静かに思索してはいかがでしょう。青森の兄さんとも相談して、よろしくとりはからわれるよう
老婆心
(
ろうばしん
)
までに申し上げます。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
辰夫は何事にも諦めよく深く自らを
卑下
(
ひげ
)
していたが、自分の家族に就てだけは
温
(
あたたか
)
い愛を信頼していた。
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
大将は肉体も見上ぐるばかりの清げな大男で、其手は昨年の夏握ったトルストイの手の様に大きく
温
(
あたたか
)
であった。午後には梁川君と語り、夜はブース大将の手を握る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
保吉は霜曇りの空の
下
(
した
)
に、たった一つ取り残された赤革の手袋の心を感じた。同時に薄ら寒い世界の中にも、いつか
温
(
あたたか
)
い日の光のほそぼそとさして来ることを感じた。
寒さ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
温
(
あたたか
)
い気持ってものは、窓とか、壁とか、そんな
障碍物
(
しょうがいぶつ
)
を越えて、相手の心に通じるものだと思うわ。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
「そうそう」とガロエイ卿も
嗄
(
しわが
)
れ声を出して、「それからオブリアン君も居らんようですが、私はあの人を、死体がまだ
温
(
あたたか
)
った時にお庭を歩いておるのを見かけましたが」
秘密の庭
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
ヴィタリスはもう死んでいた。わたしも死ぬところであったのを、カピが
胸
(
むね
)
の所へはいって来て、わたしの
心臓
(
しんぞう
)
を
温
(
あたたか
)
かにしていてくれたために、かすかな
気息
(
きそく
)
が
残
(
のこ
)
っていた。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
かえって、ほかほか
温
(
あたたか
)
だね。取っちゃ食い、取っちゃ食いするだ。が、あとからあとから湧くですわい。二十間の毛皮を
縫包
(
ぬいぐる
)
みにしておるで、形のある
中
(
うち
)
は虫が湧くですだ。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、その婦人の身体には、未だ幾分か
温
(
あたたか
)
みが残っていた。肉附のよい、見るからに豊満な全身に
亘
(
わた
)
って、まだ硬直の
来
(
きた
)
していないことが、誰の眼にも生々しい事件を想像させた。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
殊
(
こと
)
にこの一箇月半の鎌倉の生活が、一層二人を親しくした。澤が食当りで五日ばかり寝た時の養子の看護は、母親の慈愛の
温
(
あたたか
)
さを知らない青年の心には、忘れ
難
(
がた
)
いものに思われた。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
僕は古賀の勤めている役所の翻訳物を受け合ってしていたので、懐中が
温
(
あたたか
)
であった。その頃は法律の翻訳なんぞは、一枚三円位取れたのである。五十円位の金はいつも持っていた。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
喜悦と信頼と愛情との一種言うべからざる
温
(
あたたか
)
きものが心のうちに生ずるのを感じた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
炉ばたの
温
(
あたたか
)
いところに誘おうとしましたが、それは何の甲斐もありませんでした。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
その
温
(
あたたか
)
な愛念も、幸福な
境界
(
きょうがい
)
も、優しい調子も、
嬉
(
うれ
)
しそうに笑う眼元も口元も、文三が免職になッてから、取分けて昇が全く家内へ立入ったから、皆突然に色が
褪
(
さ
)
め、気が抜けだして
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
其の生涯の孤獨といふ考には
心
(
こゝろ
)
から
同情
(
どうじやう
)
しながらも、
猶
(
なほ
)
他に
良策
(
りやうさく
)
があるやうに思はれてならなかツた。少くとも自分だけは、もう些ツと
温
(
あたたか
)
な、生涯を送りたいやうな氣がしてならなかツた。
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
(莨を捨て、両手を差伸べ、
温
(
あたたか
)
に。)本当にわたくしは、このお部屋を拝見いたすのを、昨晩から
楽
(
たのしみ
)
に致して参りましたのでございますよ。あなたのお身の
廻
(
まわ
)
りにあるこんなものを残らず。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
彼
(
かれ
)
が
天性
(
てんせい
)
の
柔
(
やさ
)
しいのと、
人
(
ひと
)
に
親切
(
しんせつ
)
なのと、
礼儀
(
れいぎ
)
のあるのと、
品行
(
ひんこう
)
の
方正
(
ほうせい
)
なのと、
着古
(
きぶる
)
したフロックコート、
病人
(
びょうにん
)
らしい
様子
(
ようす
)
、
家庭
(
かてい
)
の
不遇
(
ふぐう
)
、これらは
皆
(
みな
)
総
(
すべ
)
て
人々
(
ひとびと
)
に
温
(
あたたか
)
き
同情
(
どうじょう
)
を
引起
(
ひきおこ
)
さしめたのであった。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
、
膚
(
はだ
)
も
温
(
あたたか
)
いうちに剥ぎ取つて持つて來て、自分の妻に與えたのです
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
我が髪の元結ひもやゝゆるむらむ
温
(
あたたか
)
き湯に身をひたす時
かろきねたみ
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
その
温
(
あたたか
)
き
薔薇
(
ばら
)
色を
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
くろへ
腰掛
(
こしか
)
けてこぼこぼはっていく
温
(
あたたか
)
い水へ足を入れていてついとろっとしたらなんだかぼくが
稲
(
いね
)
になったような気がした。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
... 全く
温
(
あたたか
)
い処で泡立てると三十分のものは二十分で出来ますね。つまり泡を大きく立たせ過ぎたのでしょう」お登和嬢
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
翌朝になって
下僚
(
したやく
)
の者が往ったところで、権兵衛は祭壇の前で割腹していたが、未明に割腹したものと見えて、錦の小袴を染めている血に
温
(
あたたか
)
みがあった。
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
これが醜かったら生活に親しさや
温
(
あたたか
)
みはなくなるでありましょう。たとえ当り前な平凡なものに思われても、人間の生活に大きな役割を
有
(
も
)
っていることが分ります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
この
棟
(
むね
)
の低い
支那家
(
しないえ
)
の中には、勿論今日も
坎
(
かん
)
の
火
(
か
)
っ
気
(
き
)
が、
快
(
こころよ
)
い
温
(
あたたか
)
みを漂わせていた。
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「それはへんだねえ。生きかえったものなら、体温が上って
温
(
あたたか
)
くなるはずだ」
宇宙戦隊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
大村の詞はひどく
冷澹
(
れいたん
)
なようである。しかしその音調や表情に
温
(
あたたか
)
みが
籠
(
こも
)
っているので、純一は不快を感ぜない。聖堂の裏の塀のあたりを歩きながら、純一は考え考えこんな事を話し出した。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
温
(
あたたか
)
い
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
や、そよ
風
(
かぜ
)
が
戸
(
と
)
の
隙間
(
すきま
)
から
毎日
(
まいにち
)
入
(
はい
)
る
様
(
よう
)
になり、そうなると、
子家鴨
(
こあひる
)
はもう
水
(
みず
)
の
上
(
うえ
)
を
泳
(
およ
)
ぎたくて
泳
(
およ
)
ぎたくて
堪
(
たま
)
らない
気持
(
きもち
)
が
湧
(
わ
)
き
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
て、とうとう
牝鶏
(
めんどり
)
にうちあけてしまいました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
堅くないだけに親しみやすい。色も概してよくまた
温
(
あたたか
)
い。もっとも大谷石にも大体三通りの区別があり、従って色調も
異
(
ちが
)
う。やや黄ばんだ緑色を呈したものは味がいい。
野州の石屋根
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
潤
(
うる
)
みを持った瞳が笑うとともに
熱
(
ほて
)
った唇がまた
隻頬
(
かたほお
)
に
温
(
あたたか
)
く来た。章一の瞳はとろとろとなった。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「うん、ちょっと気味が悪いね。夜になってもやっぱり
温
(
あたたか
)
いかしら。」
彼
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
年増の手にした
雑巾
(
ぞうきん
)
であろう
温
(
あたたか
)
な
片
(
きれ
)
が
双足
(
りょうあし
)
に来た。年増の
香油
(
こうゆ
)
の匂いが気もちよく鼻にしみた。
馬の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
白い厚みのある釉薬のかかった陶器で、絵も何もない無地のものであります。味いがあって早くから茶人たちに愛されました。さすがに昔のは素直な出来で、
温
(
あたたか
)
い
静
(
しずか
)
な感じを受けます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
うとうとしていた章一は、
片頬
(
かたほお
)
に
温
(
あたたか
)
な
緊縛
(
きんばく
)
を覚えたのでふと眼を開けた。
艶消
(
つやけし
)
電燈のやわらかな
明
(
あかり
)
は、黒いねっとりと
潤
(
うる
)
みを持った二つの瞳と
熱
(
ほて
)
った唇をそこに見せていた。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
驚いたように云った
対手
(
あいて
)
の
温
(
あたたか
)
な
呼吸
(
いき
)
が
頬
(
ほお
)
にかかるように思った。務は驚いて眼をみはった。
白っぽい洋服
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
が、その後妻が、しばらくすると黙り込んで、あまり口数を
利
(
き
)
かないようになり、その女を包んでいた花の咲きそうな
温
(
あたたか
)
な雰囲気が無くなって、冷たい
強
(
こわ
)
ばったものとなってしまった。
藍微塵の衣服
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
温
常用漢字
小3
部首:⽔
12画
“温”を含む語句
温順
温和
温泉
温柔
温気
生温
微温
温暖
温習
温味
温雅
微温湯
温泉宿
温泉場
温厚
温室
温湯
温石
温突
温度
...