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くせもの
ふりがな文庫
“
曲者
(
くせもの
)” の例文
蟹とひき蛙とはどちらも
曲者
(
くせもの
)
揃ひで、不器量なことにかけてもいい取り合せですから、お互に機嫌を悪くしあはないですむことです。
若葉の雨
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
意趣か、
悪戯
(
いたずら
)
か知らぬが、入費はいかほど
嵩
(
かさ
)
もうと苦しゅうない。是が非でも
曲者
(
くせもの
)
を探し出し、
主君
(
おかみ
)
の手で成敗したいという仰せだ。
銭形平次捕物控:040 大村兵庫の眼玉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
丈余
(
じょうよ
)
のさくらの枝から、
黒装束
(
くろしょうぞく
)
の
曲者
(
くせもの
)
がひとり、ヒラリととびおりると同時に、いきなり抜きうちに左近将監に切ってかかりました。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「ただいまの
曲者
(
くせもの
)
が、この抜け道より屋敷の外へ逃げ出しました。せっかくながら一角、それを追ってまいりますゆえ戻られませぬ」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其の次には黒装束に覆面の
曲者
(
くせもの
)
がお
局
(
つぼね
)
の中へ忍び込んで、ぐっすり寝て居る
椎茸髱
(
しいたけたぼ
)
の女の喉元へ布団の上から刀を突き通して居る。
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
多分、私たちのどちらかが抵抗したとき、覆面の
曲者
(
くせもの
)
が落としたものと見えます。ちょうど、私たちの枕もとに転がっておりました
深夜の電話
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
先方の電話はある場末の自動電話だったのだ。無論
曲者
(
くせもの
)
はもう遠くに逃げ去ったに違いない。今から何と騒いで見ても追ッつかぬ。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
自分が想像していた以上の
曲者
(
くせもの
)
ではないかと考え、何かほかに重大なる黒い影を持つ男ではないかと、胸に迫るものがありました。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼れは此家の瓶の
中
(
うち
)
に若し
彼
(
か
)
の
曲者
(
くせもの
)
が老人の室に投捨て去りし如き青き封蝋の附きたるコロップあるや
否
(
いな
)
を
探究
(
さぐりきわ
)
めんと思えるなり
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
黄昏
(
たそがれ
)
は、誰も知るとおり、
曲者
(
くせもの
)
である。物みなが煙のように
輪郭
(
りんかく
)
を波打たせ、
蚊
(
か
)
が飛んでも、
雷
(
かみなり
)
が近づくほどにざわめき立つのである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
もとより
邪淫奸智
(
じゃいんかんち
)
の
曲者
(
くせもの
)
、おやまは
年齢
(
とし
)
二十二でございます、美くしい盛りで、
莞爾
(
にっこり
)
と笑います顔を、余念なく見て居りましたが
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
対手
(
あいて
)
は𤢖か、
或
(
あるい
)
は
其
(
そ
)
れに
似寄
(
により
)
の
曲者
(
くせもの
)
か知らぬが、
何
(
いず
)
れにしても彼等に襲われた父の運命は、甚だ心許ないものと云わねばならぬ。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかも、そうした前後の服装の態度の変化がチットも不自然じゃない。慣れ切っている
風付
(
ふうつ
)
きを見ると、一筋縄で行く
曲者
(
くせもの
)
じゃなさそうだ。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
わたしは余り不意だったため、お父さんの姿を見るが早いか、相手の
曲者
(
くせもの
)
を突き放したなり、
高塀
(
たかべい
)
の外へ逃げてしまいました。
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見合せ一
聲
(
せい
)
叫
(
さけ
)
んで肩先より乳の下まで一刀に切放せば茂助はウンとばかりに
其儘
(
そのまゝ
)
死
(
しゝ
)
たる處へ以前の
曲者
(
くせもの
)
石塔
(
せきたふ
)
の
蔭
(
かげ
)
より
現
(
あらは
)
れ出るを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「ええ、今一人誰か出てゆきました。なに、あれは
曲者
(
くせもの
)
ですか。でも、ゴルドン兵曹だといっていましたよ、飛行班の……」
浮かぶ飛行島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そして、気が
注
(
つ
)
いて恐る恐る眼をやった時、
南縁
(
なんえん
)
の雨戸の
締
(
しま
)
る音がして、
曲者
(
くせもの
)
の姿はもう見えないで、被衣のみが
沙
(
すな
)
の上にふわりと落ちていた。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そこの一部が少しく動揺するのを認めて、さてはかしこに隠れたる
曲者
(
くせもの
)
の仕業と、脇差で青萱を斬り斬り進んだ。果してそこに人が潜んでいた。
壁の眼の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
牛蒡
(
ごぼう
)
たばねに、
引括
(
ひきくく
)
つた両刀を背中に
背負
(
しょ
)
はせた、御番の衆は立ちかゝつて、左右から、
曲者
(
くせもの
)
の手を引張つて遠ざかつた。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
建てかけるが早いか、風と云い雨と云う
曲者
(
くせもの
)
が来て
壊
(
こわ
)
してしまう。地ならしをするか、
雨風
(
あめかぜ
)
を
退治
(
たいじ
)
るかせぬうちは、落ちついてこの世に住めぬ。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すると、例の男が、私に此度来るベケーと云う奴が、仲々の
曲者
(
くせもの
)
だから用心しろと商売敵が憎らしいと云うような目付をしながら教えて呉れた。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
「さて葉之助、また
依頼
(
たのみ
)
だ。そちも承知の辻斬り騒ぎ、とんと
曲者
(
くせもの
)
の目星がつかぬ。ついてはその方市中を見廻り、是非とも曲者を捕えるよう」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
脚本朗読、筆記試験、口頭試問、体操、と四種目あるが、その中でも自由選択の脚本朗読というのが
曲者
(
くせもの
)
だ。ちょっと頭のいい審査方法だと思った。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「脅迫なんか、するもんですか。暁葉子こそ、
曲者
(
くせもの
)
なんです。あれはツツモタセです。岩矢天狗と共謀して、三百万円まきあげるための仕事なのです」
投手殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「佐山さんが、
貴女
(
あなた
)
が私達
姉妹
(
きょうだい
)
の中では、一番
曲者
(
くせもの
)
だっていっていたわよ。」と、圭子が、微笑しながらいった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
討ち損じました、あわやというとき、成瀬久馬の機転で、
曲者
(
くせもの
)
は組み伏せられた、ということでございます。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
かさね
來
(
き
)
しが
當代
(
たうだい
)
の
新田
(
につた
)
のあるじは
家
(
いへ
)
につきて
血統
(
ちすぢ
)
ならず
一人娘
(
ひとりむすめ
)
に
入夫
(
にふふ
)
の
身
(
み
)
なりしかば
相
(
あひ
)
思
(
おも
)
ふの
心
(
こゝろ
)
も
深
(
ふか
)
からず
且
(
かつ
)
は
利
(
り
)
にのみ
走
(
はし
)
る
曲者
(
くせもの
)
なればかねては
松澤
(
まつざは
)
が
隆盛
(
りうせい
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
愛という
曲者
(
くせもの
)
にとりつかれたが最後、実にみじめだ。何ぜかというと、われわれはその報酬を常に計算している。しかしそれを計算しなくてはいられないのだ。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ところで、ポノマレフの奴がどんな酒を飲ませたと思う! だが奴は
曲者
(
くせもの
)
で、あん畜生の店では何ひとつ買えたもんじゃないってことを心得てなきゃ駄目だよ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
しかし論より証拠というのが
曲者
(
くせもの
)
で、本当は論を
覆
(
くつがえ
)
し得る証拠などというものは滅多にないのである。
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
ねえ支倉君、ああして聴えてくる響が、この結節を
曲者
(
くせもの
)
に見せたのだったよ。何故なら、レヴェズの重量が突然加わったので、鉄棒に弾みがついてしないはじめたのだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「して見ると閣下はナカ/\の
曲者
(
くせもの
)
よ。
態
(
わざ
)
と間違えて引っかけたんですわ。奥さんも奥さんね」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
織部正
(
おりべのしょう
)
が
曲者
(
くせもの
)
に鼻をもがれるあたり、異様な光景の叙事たるに留まらず、
或
(
ある
)
幻影の印象が読者の心に残るのは、この作者が平安朝古典伝来の描写力を
有
(
も
)
っているためであろう。
武州公秘話:02 跋
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
水面を渡る微風のまにまに、不敵な
曲者
(
くせもの
)
が悠々として漕ぎ去りつつ唄う船唄が流れて来る。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
たちまち
虚
(
すき
)
をねらう
二人
(
ふたり
)
の
曲者
(
くせもの
)
あり。尺ばかり透きし
扉
(
とびら
)
よりそっと
頭
(
かしら
)
をさし入れて、また引き込めつ。忍び笑いの声は戸の外に渦まきぬ。
一人
(
ひとり
)
の曲者は八つばかりの
男児
(
おのこ
)
なり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
陸実
(
くがみのる
)
等、いずれも聞ゆる
曲者
(
くせもの
)
が顔を
列
(
なら
)
べ、
而
(
しか
)
して表玄関の受附には明治の初年に海外旅行免状を二番目に請取って露国の脳脊髄系を縦断した大旅行家の
嵯峨寿安
(
さがじゅあん
)
が控えていた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
けれども、もっと切実な
惧
(
おそ
)
れが、彼らの身肌に見るな見るなと
囁
(
ささや
)
いていた。これほど強行している熱した皮膚に、ふッと刺さったその寒気をこれは
曲者
(
くせもの
)
だと気づいていたのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
無頼漢
(
ならずもの
)
には珍しい気魄、——
何
(
いず
)
れ、名のある
曲者
(
くせもの
)
だろう。見遁すわけには、断じてならぬ
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
この時
忽
(
たちま
)
ち大原家の裏口より大きな
風呂敷包
(
ふろしきづつ
)
みを背に負いて一散に駆け出す怪しき
曲者
(
くせもの
)
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
二日
許
(
ばか
)
り前の晩夜中にガチャンと
硝子
(
がらす
)
の
破
(
こわ
)
れる音がしたのでハッと二人で詰所を飛びだすと、一人の
曲者
(
くせもの
)
が
将
(
まさ
)
に明りとり窓から逃げ出す所で、その窓硝子を一枚落したのであった。
真珠塔の秘密
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
場内はこの思いもかけぬ椿事のためにいずれも総立ちとなって、将軍家におかせられては御不興気にすぐさま御退出、
曲者
(
くせもの
)
捕
(
とら
)
えろッ、古高新兵衛を介抱しろッ、どうしたッ、何だッ
旗本退屈男:03 第三話 後の旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
小人数で料理屋に上つて芸者を呼ぶよりは、宴会が結句
割徳
(
わりどく
)
の安上りと
胸算用
(
むなざんよう
)
して出席する
下賤
(
げす
)
もあり。
頻
(
しきり
)
に名刺の交換を迫つて他日人の名を利用して事をなさんとする
曲者
(
くせもの
)
もあり。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
忽
(
たちま
)
ち兵営の門前に
方
(
あた
)
りて人の叫ぶが聞えぬ、間貫一は二人の
曲者
(
くせもの
)
に囲れたるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
そうしているうちに、砂糖という
曲者
(
くせもの
)
が、いよいよ姿を現わしてきたのである。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
續
(
つゞ
)
いて
擲
(
なげう
)
つた。
曲者
(
くせもの
)
は
既
(
すで
)
に
遁
(
に
)
げ
落
(
お
)
ちたけれど
彼
(
かれ
)
の
不意
(
ふい
)
の
襲撃
(
しふげき
)
に
慌
(
あわ
)
てゝ
節
(
ふし
)
くれ
立
(
だ
)
つた
柹
(
かき
)
の
根
(
ね
)
に
蹶
(
つまづ
)
いて
倒
(
たふ
)
れた。
彼
(
かれ
)
は
次
(
つき
)
の
日
(
ひ
)
足
(
あし
)
を
引
(
ひき
)
ずらねば
歩
(
ある
)
けぬ
程
(
ほど
)
足首
(
あしくび
)
の
關節
(
くわんせつ
)
に
疼痛
(
とうつう
)
を
感
(
かん
)
じたのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
しかしてみよ、この黒衣の
曲者
(
くせもの
)
も、白夜柳の木の下に凝立する所以である。
蝶を夢む
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
おなじ
階
(
フロア
)
のほかの部屋も、三階も、下宿の看板を掲げて人さえ見ると来てもらいたがっているくせに、どういうものかがら
空
(
あ
)
きにあいているんだから、
曲者
(
くせもの
)
がそとから這入ったんでない以上
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
身代
(
しんだい
)
の
釣合
(
つりあい
)
滅茶苦茶
(
めちゃくちゃ
)
にする男も世に多いわ、おまえの、イヤ、あなたの
迷
(
まよい
)
も
矢張
(
やっぱり
)
人情、そこであなたの
合点
(
がてん
)
の
行様
(
ゆくよう
)
、年の功という
眼鏡
(
めがね
)
をかけてよく/\
曲者
(
くせもの
)
の恋の正体を見届た所を話しまして
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
おまけに顔に金創の溝ふかい怪物……このうえ跛者とくりゃあ世話アねえや! ととっさに考えるとそこは
老獪
(
ろうかい
)
の
曲者
(
くせもの
)
、火急の場にも似ず、痛みを耐えるようににっと歯を噛んだ——笑ったのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「あなたもかぶとを脱ぎましたね。その自省心とかが
曲者
(
くせもの
)
ですよ。」
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
“曲者”の意味
《名詞》
芸能に巧みなもの。
能楽の奏者。
(出典:Wiktionary)
曲
常用漢字
小3
部首:⽈
6画
者
常用漢字
小3
部首:⽼
8画
“曲者”で始まる語句
曲者奴