)” の例文
「すると、門前の豆腐屋がきっと起きて、雨戸を明ける。ぎっぎっと豆をうすく音がする。ざあざあと豆腐の水をえる音がする」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
地をへて見たら分りさうなものだが、自分の子に一喜一憂してゐるその人々でも、他人の子にそんなに心を勞するのであらうか。
吉日 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
朝鮮への国書の中には、「一超直ちに明国へ入り、吾朝の風俗を四百余州にえ、帝都の政化を億万欺年しねんに施すは方寸の中に在り」
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
父アラスデルが世をえてシェーンが悲しみの寡婦となって後も二人のあいだの子アラスデルはやっぱりわかアラスデルであった。
漁師 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
ほかひゞと自身すら古物語の改作とは心づかずに事情のあうて行くまゝに、段々謡ひめ、口拍子に乗せへて行つたに違ひない。
相聞の発達 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
これを言いえれば、支那皇帝は善政を行いて支那の秩序を確立し、同時に国の文明を進めて制度文物を世界の文明と同化せしめ
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
かりに西洋の原書を離れて、これにうるに日本流の落語滑稽を以てせんとして、その種類を集めたらばいかなるものをべきや。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かくても始末は善しと謂ふかと、をぢ打蹙うちひそむべきをひてへたるやうのゑみもらせば、満枝はその言了いひをはせしを喜べるやうに笑ひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
是故に希伯來人エブレオびとは、捧ぐる物の如何によりこれをふるをえたれども(汝必ず是を知らん)、なほ献物さゝげものをなさゞるをえざりき 四九—五一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
うちのアニキと来ては、全くそう言われても仕方がない。彼は本の講義をした時、あの口からじかに「へてしかしてくらふ」
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
然るに世をうるの後はたがいに兵を擁して、以て皇帝をあやうくせり。昔は賈誼かぎ漢の文帝に勧めて、禍を未萌みぼうに防ぐの道をもうせり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
神に受く。形体消えて、神やぶれず。性命すでにして、神おわらず。形体わりて、神変ぜず。性命化して、神つねにしかり
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
九 忠孝仁愛教化の道は政事の大本にして、萬世に亙り宇宙に彌りふ可からざるの要道也。道は天地自然の物なれば、西洋と雖も決して別無し。
遺訓 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
この極めて軽小なる事を以て、この極めて重大なるものとう、おもうに彼の眼中において果してみずから安んずる所あるか。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
翌年壬午の秋毅堂は胃癌を患い、まくらに伏すこと三旬あまり、その年の十月五日にさくえた。享年五十八である。碑文に
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
百余年このかたは坊主一疋もいなくなり、山神形をえあるいは豺狼さいろうあるいは猨狖えんゆうとなりて行人を驚恐せしむ、故を以て、空荒くうこうげきとして僧衆なしとある。
どんな金高にもへられない程の嫌やな思ひをさせてさんざつぱら女を苦しめておきながら見事面白がられてる了簡りょうけんでゐる生粋の間抜共を見るたびにね。
ウォーレン夫人とその娘 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
自分の持っている限り無形の資本を、一日も早く有形の資本にえて、生活の安定を得ねばならぬ、という事以外に彼女たちは何事もわからなくなった。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
而るを誰とともにか之をえん。且つなんじその人をくるの士に従わんより、豈に世をくるの士に従うに若かんやと。ゆうしてまず。子路行きて以て告ぐ。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
予思ふらく、一字不可、「る」字にふに「れ」字を以てすれば可ならんと。知らず、青々予を拝して能く一字の師とすや否や。一笑。(二月二十六日)
千金の珍宝にもえがたき遺物となれり、ある日佐太郎は半日家内を捜索して、ことごとく勇蔵が所有に属せし小道具を取りそろえて寡婦のもとに背負いゆき
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
ここに火遠理ほをりの命、そのいろせ火照ほでりの命に、「おのもおのも幸へて用ゐむ」とひて、三度乞はししかども、許さざりき。然れども遂にわづかにえ易へたまひき。
民も又戦国の民なれば、一三六すきててほこへ、一三七農事なりはひをこととせず。士たるもの枕を高くしてねむるべからず。今のさまにては長く不きうまつりごとにもあらじ。
周は酒を出して二人で飲みながら別れた後のできごとなどを話し、成に道士の服装をえさせようとしたが、成は笑うだけでこたえなかった。周はそこでいった。
成仙 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
と鉄案断乎としてふべからず、爾来十余年日本文学史を書くもの(たとへば三上、高津二学士の如き)多しと雖も未だ此の如き精覈せいかくなる批評眼を見る能はざるなり。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
全市ぜんしとみへても、我家わがや危害きがいくはへたうない。ぢゃによって、堪忍かんにんしてふりをしてゐやれ。
「それは君の心だよ、君の文章の拙いのは、君の心の毛穴が塞っているためだから、冥途に在る幾千万の心の中から、佳いのを一つ選びだして、君のためにえたからね」
陸判 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
東坡の其の決して南山を望むに非ざるを知る所以ゆゑんなり。今、細数落花、緩尋芳草と云へば、留意甚し、故に之をふと。又云ふ。荊公多く淵明の語を用ひ而かも意異なる。
古来誰あって登ったという事のない危険山ですから、如何いかに高い給料を出してるからといっても、生命いのちあっての物種ものだね、給料にはえられぬといって応ずる者がありません
越中劍岳先登記 (新字新仮名) / 柴崎芳太郎(著)
誠実は往々にして人を破却にふ、破却もとよりにくむべし、然れども破却の中に誠実あり、人死して誠実残る、愛の妙相は之なり、「真玉白玉、種類しなあれど、愛にふべき物はなし」
そして何物が掩護えんごせられてあるのか。その神聖なる場所は、岡村という男との差向いの場所ではないか。根岸で嬉しく思ったことを、ここでは直ぐに厭に思う。地をうれば皆しかりである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
(三六)ばうもつばうへ、なるをらず。神農しんのう(舜 )・(禹 )(三七)忽焉こつえんとしてぼつしぬ、(三八)われいづくにか適歸てききせん。吁嗟ああ(三九)かん。(四〇)めいおとろへたるかな
殊に借家難の声が盛んになると共にいよいよこの家屋はわらず長く住みたいと思う事になった。今もこの話をしつつ、南向きの障子から射す、晴日を浴びて、私の寒さ嫌いも大分暖気を覚えるのだ。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
余ヤ土陽僻陬どようへきすうノ郷ニ生レ幼時早ク我父母ヲうしなヒ後初メテ学ノ門ニ入リ好ンデ草木ノ事ヲおさまた歳華さいかノ改マルヲ知ラズ其間斯学ノタメニハ我父祖ノ業ヲ廃シ我世襲せしゅうノ産ヲ傾ケ今ハ既ニ貧富地ヲ疇昔ちゅうせき煖飽だんぽうハ亦いずレノ辺ニカ在ル蟋蟀こおろぎ鳴キテ妻子ハ其衣ノ薄キヲ訴ヘ米櫃べいき乏ヲ告ゲテ釜中ふちゅう時ニ魚ヲ生ズ心情紛々いずくんゾ俗塵ノ外ニ超然ちょうぜんタルヲ
今日こそ夫人の機嫌きげんを取り返してやろうという気込きごみが一度にえた。夫人は残酷に見えるほど早く調子をえて、すぐ岡本に向った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その、寛濶・だてなどゝ流行語をへるに従うて、概念も移つて行つて、遂に「通」と言ふ「色好みの通り者」と言ふ処におちついた。
「爺か! 止めだて無用じゃ。今日の真槍の仕合は、忠直六十七万石の家国にえてもと、思い立った一儀じゃ。止めだて一切無用じゃ」
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
宮は男の手をば益すゆるめず、益す激する心のうちには、夫もあらず、世間もあらずなりて、唯この命をふる者を失はじと一向ひたぶるに思入るなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そら見たことか、おお根が残酷だ。「へてしかしてくらふ」がよいことなら、どんなものでも皆えられる。どんな人でも皆食い得られる。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
うかれ車座のまわりをよくする油さし商売はいやなりと、此度このたび象牙ぞうげひいらぎえて児供こどもを相手の音曲おんぎょく指南しなん、芸はもとより鍛錬をつみたり、品行みもちみだらならず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あたうるに天下の富をもってするも、授くるに将相の位をもってするも、我が金玉、一点の瑕瑾かきんうべからず。一心ここにいたれば、天下も小なり、王公もいやし。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
前者即ち汝に材とし知らるゝものは、これを他の材にふとも必ずとがとなるにはあらず 五二—五四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
年の終りに餅をかず、焼飯に青菜を交えてあつものとなし、三ヶ日の雑煮にえるとぞ、これも珍しと。
御釜の音なかりしは、祝部等はふりたちが身の清からぬにぞあらめ。既に聘礼しるしを納めしうへ、かの四三赤縄せきじようつなぎては、あたある家、ことなるくになりともふべからずと聞くものを。
その時周はうとうとしたが、それと共に自分と成とが位置をえたような気がした。周はふしぎに思ってあごをなでてみた。そこには髭の多いもとの自分の頷があった。周は安心した。
成仙 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
ところでホヲリの命が兄君ホデリの命に、「お互に道具えものを取りえて使つて見よう」
へ、大臣災に遇ふとあり、勘文の面穏かならず、尤も御慎み有るべしと密奏す
日本天変地異記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
即ち孔子の如きは、「風を移し俗をうる、礼楽れいがくより善きは無し」といっているので、既に楽といえば歌は必ずこれに伴う。彼は風俗を改むるにこれにまさるものは無いと着眼したのである。
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
成善は英語を学ばんがために、五月十一日に本所相生町あいおいちょうの共立学舎に通いはじめた。父抽斎は遺言いげんして蘭語を学ばしめようとしたのに、時代の変遷は学ぶべき外国語をうるに至らしめたのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「家縁易了一茅廬。五畝於吾尚有余。老脚只貪平地穏。下山近水又移居。」〔家縁おわル一茅廬/五畝吾ニ於テなお余リ有リ/老脚只貪ル平地ノ穏ヤカナルヲ/山ヲ下リ水ニ近ヅカント又移居ス〕の絶句がある。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)