トップ
>
扼
>
やく
ふりがな文庫
“
扼
(
やく
)” の例文
越後によってそれが
扼
(
やく
)
されているかぎり、甲山の猛虎信玄も、ついに野尻湖以北——裏日本への展開は将来に望み難いものになる。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「なぜ白状しないか」と叫んで玄機は女の
吭
(
のど
)
を
扼
(
やく
)
した。女はただ手足をもがいている。玄機が手を放して見ると、女は死んでいた。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
『えゝ、
無責任
(
むせきにん
)
なる
船員
(
せんいん
)
!
卑劣
(
ひれつ
)
なる
外人
(
くわいじん
)
!
海上
(
かいじやう
)
の
規則
(
きそく
)
は
何
(
なん
)
の
爲
(
ため
)
ぞ。』と
悲憤
(
ひふん
)
の
腕
(
うで
)
を
扼
(
やく
)
すと、
夫人
(
ふじん
)
の
淋
(
さび
)
しき
顏
(
かほ
)
は
私
(
わたくし
)
に
向
(
むか
)
つた、
沈
(
しづ
)
んだ
聲
(
こゑ
)
で
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
この時魔の如き力は
喉
(
のんど
)
を
扼
(
やく
)
してその背を
捬
(
う
)
つ、人の死と生とは
渾
(
すべ
)
て彼が手中に在りて緊握せらる、欲するところとして得られざるは無し。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
これを聴ける時、妾は思わず手を
扼
(
やく
)
して、アアこの自由のためならば、死するもなどか惜しまんなど、無量の感に
撃
(
う
)
たれたり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
▼ もっと見る
「暴力をもって、正業の人士を
扼
(
やく
)
す。それ何ぞ、鬼畜に類するや。正義の徒、断乎、起つべし。最後の勝利は、吾にあり」
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
重太郎の飛び降りたのは、
美濃屋
(
みのや
)
という
雑穀屋
(
ざっこくや
)
の裏口であった。
追手
(
おって
)
の
一組
(
ひとくみ
)
は早くも
駅尽頭
(
しゅくはずれ
)
の出口を
扼
(
やく
)
して、
他
(
た
)
の一組は
直
(
ただ
)
ちに美濃屋に向った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
行く
路
(
みち
)
を
扼
(
やく
)
すとは、その
上
(
かみ
)
騎士の間に行われた習慣である。幅広からぬ往還に立ちて、通り掛りの武士に
戦
(
たたかい
)
を
挑
(
いど
)
む。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
人の噂に
味方
(
みかた
)
の
敗北
(
はいぼく
)
を聞く
毎
(
ごと
)
に、
無念
(
むねん
)
さ、もどかしさに耐へ得ず、雙の腕を
扼
(
やく
)
して
法體
(
ほつたい
)
の今更變へ難きを恨むのみ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
が、光秀が山崎の隘路を
扼
(
やく
)
して秀吉の大軍を
阻
(
はば
)
まんとしたのは戦略上、当然の処置であり、秀吉の方も亦山崎に於ての遭遇戦を予期していたのであろう。
山崎合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
北口を
扼
(
やく
)
する一箇大隊の将兵は、昼間は個々の
蛸壺
(
たこつぼ
)
に身をひそめ、身体をかがめて自らの口を充たすべき籾を搗き、夜に入れば初めて地上に出て戦った。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
彼は直ちに
匕首
(
あいくち
)
が自分の
咽喉元
(
のどもと
)
へ突き刺さるだろうと観念していると、曲者は一方の腕で何処までも頸を
扼
(
やく
)
したまゝ、一方の手で二度も三度も顔の上を
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
両俣とも被った滝に入口を
扼
(
やく
)
された顕著な二俣を右に入り、烏帽子状ピークのガリーを登ってピーク背後のリッジへ出た後、リッジをバットレス下へと辿る。
八ガ岳大門沢
(新字新仮名)
/
松濤明
(著)
朗らかで軽くひきしまつた、滑らかでさつぱりした長閑さが、彼等の新しい歌の生命を
扼
(
やく
)
する音律であつた。
短歌本質成立の時代:万葉集以後の歌風の見わたし
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
彼女はその時、既に出口を
扼
(
やく
)
してるかのようにルブラン氏と
扉
(
とびら
)
との間に立って、
威嚇
(
いかく
)
するようなまたほとんど戦わんとしてるような態度で彼を見守っていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
古老
(
こらう
)
は
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
め、
壯者
(
さうしや
)
は
腕
(
うで
)
を
扼
(
やく
)
し、
嗚呼
(
あゝ
)
、
兒等
(
こら
)
不祥
(
ふしやう
)
なり。
輟
(
や
)
めよ、
輟
(
や
)
めよ、
何
(
なん
)
ぞ
君
(
きみ
)
が
代
(
よ
)
を
細石
(
さゞれいし
)
に
壽
(
ことぶ
)
かざる!
蛇くひ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「世の中は近々平和になるよ。だが今後とも小ぜりあいはあろう。幕臣たる者は油断してはならない。八郎、お前、
久能山
(
くのうざん
)
へ行け!
函嶺
(
かんれい
)
の
険
(
けん
)
を
扼
(
やく
)
してくれ!」
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
燕の
勢
(
いきおい
)
漸
(
ようや
)
く大なるに及びて、諸将観望するもの多し。
乃
(
すなわ
)
ち
淮南
(
わいなん
)
の民を募り、軍士を
合
(
がっ
)
して四十万と号し、殷に命じて之を
統
(
す
)
べて、
淮上
(
わいじょう
)
に
駐
(
とど
)
まり、燕師を
扼
(
やく
)
せしむ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
これ万一敵艦江戸湾を
扼
(
やく
)
する時に際し、常総、両野の米を、江戸に廻送するの用に供せんがためなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
斎藤一は極端なる近藤讃美から、腕を
扼
(
やく
)
して悲歌慷慨の自家昂奮に堪えやらず、
滔々
(
とうとう
)
としてまくし立てる。ここに至ると、眼に相手を見ざること対談者と変らない。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ここを占有しているドイツは東洋の
咽喉
(
いんこう
)
を
扼
(
やく
)
しているようなものだという意味を婉曲に匂わせながら聴衆の中に交じっている日本留学生の自分の顔を見てにこにこした。
ベルリン大学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
川島は満洲朝の滅亡と共に雄図
蹉跎
(
さた
)
し、近くは直隷軍の惨敗の結果が宣統帝の尊号
褫奪
(
ちだつ
)
宮城明渡しとなって、時事日に非なりの感に堪えないで腕を
扼
(
やく
)
しているだろうが
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そこで結城の若侍、腕を
扼
(
やく
)
し、歯を噛んで、今年こそはと意気込んでいる——その仕合も近い。
平馬と鶯
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
何かしら必らず事件を持ちあげて、或は憲兵に腕を
扼
(
やく
)
して大広間からしょびき出されるか、さもなければ、自分の友達に否応なしに
撮
(
つま
)
み出されるのがお定まりなのである。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
唯
(
ただ
)
笛吹川の上流
子酉
(
ねとり
)
川の左岸に屹立した
鶏冠
(
とさか
)
山のみが、青葉の波の上に名にし負う怪奇な峰頭を
擡
(
もた
)
げて、東沢西沢の入口を
扼
(
やく
)
し、それらの沢の奥深く入り込もうとする人に
秩父の渓谷美
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
魚群の到来を村人に知らすサイレンのスウィッチを握ったりして、
遣瀬
(
やるせ
)
なく腕を
扼
(
やく
)
していた。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
「その通りだ。大東京の外廓以内に、到るところ、高射砲陣地がある。ことにこの上野公園の高射砲陣地は、もっとも帝都の中心を
扼
(
やく
)
する重要なる地点だ。われ等の責任は重いぞ」
空襲下の日本
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
一めん波が
菱立
(
ひしだ
)
って来た放水路の水面を川上へ目を
遡
(
さかのぼ
)
らせて行くと、中川筋と荒川筋の
堺
(
さかい
)
の
堤
(
つつみ
)
の両端を
扼
(
やく
)
している
塔橋型
(
とうきょうがた
)
の大水門の辺に競走のような張りを見せて舟々は
帆
(
ほ
)
を上げている。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その後間もなく市政の
布
(
し
)
かれたこの町は、太平洋に突き出た
牡鹿
(
おじか
)
半島の
咽喉
(
いんこう
)
を
扼
(
やく
)
し、仙台湾に注ぐ
北上河
(
きたかみがわ
)
の河口に臨んだ物資の集散地で、鉄道輸送の開ける前は、海と河との水運により
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
こうして、祖国の領海が、白人密猟者のために、さんざ荒されるのを傍観して、僕は、おもわず、腕を
扼
(
やく
)
し、義憤の涙に
瞼
(
まぶた
)
を濡らすのだったが、多勢に無勢、なんとも手の下しようがない。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
黄金台といふのは、湾口を東から
扼
(
やく
)
してゐる岬の名だ。ホテルはその岬の裏側にあつた。市街から洋車でものの二十分もかからうかといふ松林のなかに、置き忘れられたやうに立つてゐた。
夜の鳥
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
「荒尾山や
金峰山
(
きんぽうざん
)
が海から来る風を
扼
(
やく
)
していますので、熊本はこの通り夏暑くて冬寒いのです。気候と交通を改善する第一着手としては金峰山あたりをダイナマイトで吹き飛ばすに限ります」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
たしかにまちがいのないことを知ると、彼は歯をくい
縛
(
しば
)
り、思わず力を両手にこめた。男は身をもがいて、
苦悶
(
くもん
)
の
呻
(
うめ
)
きを
洩
(
も
)
らした。
陵
(
りょう
)
の手が無意識のうちにその男の
咽喉
(
いんこう
)
を
扼
(
やく
)
していたのである。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
希望ではない。それ以上の物だ。確信だ。けさまでは自分は恐怖に責められていた。
咽喉
(
のど
)
を
扼
(
やく
)
せられていた。しかし今は健康だ。けさも健康であったのだ。こう思って大声に「健康だ」と叫んで見た。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
けれど途中に、呉の
蒋欽
(
しょうきん
)
、周泰の二将が、
嶮路
(
けんろ
)
を
扼
(
やく
)
して待っていた。河辺にたたかい、野に
喚
(
わめ
)
きあい、闇夜の山にまた吠え合った。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夕
(
ゆうべ
)
の昌平橋は
雑沓
(
ざっとう
)
する。内神田の
咽喉
(
いんこう
)
を
扼
(
やく
)
している、ここの
狭隘
(
きょうあい
)
に、おりおり捲き起される冷たい
埃
(
ほこり
)
を浴びて、影のような
群集
(
ぐんじゅ
)
が
忙
(
せわ
)
しげに
摩
(
す
)
れ違っている。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
かつやこれでもかこれでもかと余が
咽喉
(
のど
)
を
扼
(
やく
)
しつつある二寸五分のハイカラの手前もある事だから
自転車日記
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
三吉は
左手
(
ゆんで
)
を伸べて白き
頸
(
うなじ
)
を
掻掴
(
かいつか
)
み、「ええ、しぶとい、さあ立て、立たねえとこうするぞ。」と高く
翳
(
かざ
)
せる
右手
(
めて
)
の
拳
(
こぶし
)
を、暗中よりしっかと
扼
(
やく
)
して、
抑留
(
おさえと
)
めたる健腕あり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
コラント亭はその
喉
(
のど
)
を
扼
(
やく
)
し、モンデトゥール街は左右とも容易にふさぐことができ、攻撃することのできる口はただ、何ら
掩蔽物
(
えんぺいぶつ
)
のない正面のサン・ドゥニ街からだけだった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
即ち、東軍は只京都の北部一角に陣するに反し、西軍は南東の二方面を
扼
(
やく
)
して居る訳だ。
応仁の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
で、今も茅野雄を追い抜いて、その前方へ現われて、茅野雄の行く手を
扼
(
やく
)
したのである。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
暗黒
(
やみ
)
の水面に栄三郎を見失って長嘆息、いたずらに腕を
扼
(
やく
)
しながら三々五々散じてゆく。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
南口を
扼
(
やく
)
する此の隊にしても、見習軍医が一名とわずかの衛生兵がいるだけに過ぎない。食糧不調と風土病と斬込みの際の負傷者のため、それだけでは手が廻りかねる状態である。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
たま/\北辺に
寇警
(
こうけい
)
ありしを機とし、防辺を名となし、燕藩の護衛の兵を調して
塞
(
さい
)
を
出
(
い
)
でしめ、其の
羽翼
(
うよく
)
を去りて、其の
咽喉
(
いんこう
)
を
扼
(
やく
)
せんとし、
乃
(
すなわ
)
ち
工部侍郎
(
こうぶじろう
)
張昺
(
ちょうへい
)
をもて
北平左布政使
(
ほくへいさふせいし
)
となし
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ジプシー族は、それを見送って、何かしきりに言い罵っていたが、若い者のうちには、腕を
扼
(
やく
)
して、そのあとを
睨
(
にら
)
まえ、追っかけようとする
素振
(
そぶり
)
を示す者がある。老巧者がそれをささえる。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
逸作は
一寸
(
ちょっと
)
腕を
扼
(
やく
)
してかの女を払い
退
(
の
)
けるようにして読み続けた。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と正三君は腕を
扼
(
やく
)
した。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「もし葭萌関を張魯に
扼
(
やく
)
されてしまったら、蜀と荊州の連絡は断たれ、退くも進むもできなくなる。誰を防ぎにやったらよかろう」
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「もうそつちへ
行
(
ゆ
)
くわ、
靴
(
くつ
)
だから
足
(
あし
)
が
早
(
はや
)
い。」「
心得
(
こゝろえ
)
た。」
下
(
した
)
のさか
道
(
みち
)
の
曲
(
まが
)
れるを、
二階
(
にかい
)
から
突切
(
つきき
)
るのは
河川
(
かせん
)
の
彎曲
(
わんきよく
)
を
直角
(
ちよくかく
)
に、
港
(
みなと
)
で
船
(
ふね
)
を
扼
(
やく
)
するが
如
(
ごと
)
し、
諸葛孔明
(
しよかつこうめい
)
を
知
(
し
)
らないか
木菟俗見
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ランスロットは腕を
扼
(
やく
)
して「それこそは」という。老人はなお言葉を継ぐ。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
扼
漢検1級
部首:⼿
7画
“扼”を含む語句
切歯扼腕
扼殺
扼腕
制扼
扼死
禁扼
絞扼死
要扼