恩人おんじん)” の例文
ながいあいだ薬餌やくじをとってもらった生命いのち恩人おんじん——それはわすれてもいいにしろ、いきなり大人おとなをつかまえて頭から、大将! とは。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さいはひに、でない。わたし柳川やながは恩人おんじんだとおもふ——おもつてる。もう一歩ひとあしやうがおそいと、最早もはやことばつひやすにおよぶまい。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
連戻りとめをり是なる節は其旅人を見るより吃驚びつくり致し此が以前の恩人おんじん水呑村の九助なりと申により私しもほかならず思ひ段々だん/\うけたまはるに九助儀大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みんなわたし恩人おんじんといふてい、いまこのやうに女中ぢよちゆうばかりあつまつて、此方こち奧樣おくさまぐらゐひとづかひのかたいとうそにもよろこんだくちをきかれるは
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「すみません、あなたは、ぼくの生命の恩人おんじんです。その恩人に対し、ちょっとの間でも、ぼくがおそろしそうに、後へ身をひいたことはおわびします」
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だってそうじゃないか。おとうさんはペスの恩人おんじんなんだぜ。いぬころしにつれられていくところを、おかねをやってたすけなさったんだ。こんなちいさいうちにいのち
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あなたさまわたしどもの恩人おんじんでございます。どうかくれぐれもおからだを大事だいじになされてくだされませ」そして馬はていねいにおじぎをしてこうへ歩いて行きました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
めたか?——そう言葉ことばをかけられたときのうれしさ! わしはてっきり自分じぶんすくってくれた恩人おんじんであろうとおもって、お名前なまえは? とたずねると、おじいさんはにっこりして
四十男しゞふをとこ水呑百姓みづのみひやくしやうおもつたのは、學校がくかうより十町ばかりだつて松林まつばやしおく一構ひとかまへ宅地たくちようし、米倉べいさう三棟みむねならべて百姓ひやくしやう池上權藏いけがみごんざうといふをとこで、大島小學校おほしませうがくかう創立者さうりつしや恩人おんじん
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
社会的の区別をすればこそ、些細ささいのことが大きく思えたり、重いことが軽く見えるが、自分のためにきを計り、自分に尽す親切の行為を計れば、思わぬところに僕の恩人おんじんひそんでいて
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
で、新吉は今はこの二人を、またとない恩人おんじんとも思っているのです。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「みなでこの恩人おんじん感謝かんしゃしようじゃないか」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
音信おとづれして、恩人おんじんれいをいたすのに仔細しさいはないはず雖然けれども下世話げせわにさへひます。慈悲じひすれば、なんとかする。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
自分じぶんは、いつまでもむかしの百しょうで、みんなといっしょになってはたらいて、みんなと苦楽くらくともにしましたから、むらひとたちからも、恩人おんじんしたわれて、たいへん尊敬そんけいされたのであります。
武ちゃんと昔話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
然るに半四郎は後藤秀盛ごとうひでもりと同道して讃州さんしう高野村かうやむらへ立歸り我家に到りてちゝ半左衞門へ途中とちう次第しだいを落もなく物語りければ半左衞門はかつおどろかつよろこ早速さつそく秀盛ひでもりしやうじ我子を助けられし恩人おんじんなりとあつく禮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うたがふはつみふかきことなり一日ひとひ二日ふたひ待給まちたま御返事おへんじまゐるはぢやうぞとひしにちがひはかるべししさうならばなんとせん八重やへうへもなき恩人おんじんなればなにごとなりともることしてよろこばせたしとししたなれど分別ふんべつあるひととてことばすくなゝればねがひはあるのぞみはなしやがたきを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あひだやく十分間じつぷんかんうまで大切たいせつにするとふのが、恩人おんじん遺兒わすれがたみでもなんでもない、なのである。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
堪へし昨日きのふの始末さぞさぞ六右衞門殿には不審いぶかしく思はれけん久八は私の爲には命のおやいふべき樣なる恩人おんじんなり是非足下おまへの身の立樣にする程にしばしの内勘辨かんべんして何ぞこらへて下されと久八が前に鰭伏ひれふせば久八は涙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それは、——其許そこは——自分じぶんくちから申兼まをしかねる次第しだいでありますけれども、わたし大恩人だいおんじん——いえ/\恩人おんじんで、そして、ゆめにもわすれられないうつくしいひと侘住居わびずまひなのであります。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
幾度いくたび逡巡しゆんじゆんした最後さいごに、旅館りよくわんをふら/\とつて、たうとう恩人おんじんたづねにました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
御懇意ごこんいあひだひ、それにです。貴方あなたわたしのためには恩人おんじんでおいでなさる。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)