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堰
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せき
ふりがな文庫
“
堰
(
せき
)” の例文
しかしながら河川が平穏のときに、堤防や
堰
(
せき
)
を築き運河を掘っておくなら、
洪水
(
こうずい
)
となってもその暴威と破壊から
免
(
まぬか
)
れることができる。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
御所へ水を入れるところの
堰
(
せき
)
の蔭から、物をも言わず
跳
(
おど
)
り出でた三人の男がある。
大業物
(
おおわざもの
)
を手にして、
面
(
かお
)
も
身体
(
からだ
)
も真黒で包んでいた。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
街路の先端、オーレリーの飲食店の近くには、
堰
(
せき
)
のような音が起こっていた。警官や兵士の
柵
(
さく
)
にぶつかって群集が押し返されていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
片足
(
かたあし
)
は、
水
(
みづ
)
の
落口
(
おちくち
)
に
瀬
(
せ
)
を
搦
(
から
)
めて、
蘆
(
あし
)
のそよぐが
如
(
ごと
)
く、
片足
(
かたあし
)
は
鷺
(
さぎ
)
の
眠
(
ねむ
)
つたやうに
見
(
み
)
える。……
堰
(
せき
)
の
上
(
かみ
)
の
水
(
みづ
)
は
一際
(
ひときは
)
青
(
あを
)
く
澄
(
す
)
んで
靜
(
しづか
)
である。
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「ここから上流の方は水勢がよほど
緩
(
ゆる
)
いんです。河底の
勾配
(
こうばい
)
にも因りましょうが、もう一つには天然の
堰
(
せき
)
が出来ているからです。」
麻畑の一夜
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
私たちはその溜り水から
堰
(
せき
)
をこしらへて滝にしたり発電処のまねをこしらへたり、こゝはオーバアフロウだの何の永いこと遊びました。
イギリス海岸
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
それは、激しく高ぶつた感情のあらわれとはみえなかつたが、解放の自覚と、安堵の
堰
(
せき
)
から流れ出る、おのずからな酔い心地であつた。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
そして我々を導き入れると同時に、三人は
怺
(
こら
)
え泳えていた悲しみが一時に
堰
(
せき
)
を切ったように、
俄破
(
がば
)
とそこに
平
(
ひれ
)
伏してしまいました。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
小谷狩
(
こたにがり
)
にはややおそく、
大川狩
(
おおかわがり
)
にはまだ早かった。
河原
(
かわら
)
には
堰
(
せき
)
を造る
日傭
(
ひよう
)
の群れの影もない。
木鼻
(
きはな
)
、
木尻
(
きじり
)
の作業もまだ始まっていない。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ここを通るは
白雲
(
しらくも
)
の
眞珠船
(
しんじゆぶね
)
、ついそのさきを滑りゆく
水枝
(
みづえ
)
の
筏
(
いかだ
)
……それ、眼の
下
(
した
)
に
堰
(
せき
)
の波、渦卷く
靄
(
もや
)
のその
中
(
なか
)
に、船も
筏
(
いかだ
)
もあらばこそ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
あたしは顔も洗わずに、湿った土の上へ一足、片折戸を開けて飛出すと、向うの大百姓の家のお嫁さんが
生姜
(
しょうが
)
を
堰
(
せき
)
でせっせと洗っていた。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
急に、こらえていた感慨の
堰
(
せき
)
が切れたように、ショパンの右手は想い出の階段を駆け上がって、そこに一つの風景を眺めるのだ。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
先生はそれに禁圧の
堰
(
せき
)
を伏せて本能の流勢を盛り上らせます。先生は全身にその強い抵抗を感じて、官能の
舌鼓
(
したつづみ
)
を打ったかも知れません。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
こうして、箱は王さまの
都
(
みやこ
)
から二マイルほどはなれている
水車小屋
(
すいしゃごや
)
のところまでながれていって、そこの
堰
(
せき
)
にひっかかって、とまりました。
三本の金の髪の毛をもっている鬼
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
奔放に「日本的」の
堰
(
せき
)
を躍りだしているところがある。これほどの奔放さは、江戸川氏自身の私淑する谷崎潤一郎氏をおいて他に類例がない。
『心理試験』を読む
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
一益から密使の命をうけた甥の滝川長兵衛は、その夜、城内の下水道から這い出して、水門の
堰
(
せき
)
をわたり、
暗
(
やみ
)
にまぎれて城の外へ駈け出した。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
されども
堰
(
せき
)
敢
(
あ
)
へず流るるは恩愛の涙なり。彼を
憚
(
はばか
)
りし父と彼を
畏
(
おそ
)
れし母とは、決して共に子として彼を
慈
(
いつくし
)
むを忘れざりけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
堰
(
せき
)
をきって
溢
(
あふ
)
れだすように、時の勢いに乗った彼らのすさまじい進出は、海浜の草小屋に焦慮していた阿賀妻らの耳にもごうごうと聞えていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
悲哀の念急に迫りて、同志の手前これまで
堪
(
こら
)
えに堪え来りたる望郷の涙は、
宛然
(
さながら
)
に
堰
(
せき
)
を破りたらんが如く、われながら
暫
(
しば
)
しは顔も得上げざりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
弁舌は縦横無尽、大道に出る
豆蔵
(
まめぞう
)
の塁を摩して雄を争うも可なりという程では有るが、
竪板
(
たていた
)
の水の流を
堰
(
せき
)
かねて折節は覚えず
法螺
(
ほら
)
を吹く事もある。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
こうなるとたまらない、
堰
(
せき
)
が切れたようになって、もうひとかけらぐらい、いいだろう……もうひと口はいいだろう。
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
おしげは、おきよに焚きつけられて、うかとすれば、そんな気にならないでもなかつたが、この姉娘に対するより深い反感がやつと
堰
(
せき
)
になつてゐた。
一の酉
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
物足らなさ
充
(
み
)
たすちゅうこと知らん人だけに、なおのこと誘惑に陥りやすい状態にあったのんで、一旦そないなってしもたら、
堰
(
せき
)
切った水みたいに
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかし、彼女は青磁のリノリウムに花の浮いた波浪をつくると、突然、
佗
(
さび
)
しさを堪えた悲しみの
堰
(
せき
)
がこわれるのだ。
東京ロマンティック恋愛記
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
跡に忍藻はただ一人
起
(
た
)
ッて行く母の後影を
眺
(
なが
)
めていたが、しばらくして、こらえこらえた
溜息
(
ためいき
)
の
堰
(
せき
)
が一度に切れた。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
そして、つと身体を斜めにいっそうだらしなく崩折れると、口ばやに
甲
(
かん
)
高に、
堰
(
せき
)
を落とすようにしゃべりだした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
伊香保の八坂の
堰
(
せき
)
に虹があらわれた(序詞)どうせあらわれるまでは(人に知れるまでは)、お前と一しょにこうして寝ていたいものだ、というのであるが
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ところが、さう思つて、ふとこちらの気持がゆるんだ瞬間を見すまして、それまでじつと身をまかせてゐた鸚鵡の抵抗が、
堰
(
せき
)
をきつたやうに爆発したのである。
鸚鵡:『白鳳』第二部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
この辺では珍しいほど堅固に見える石づくりの
堰
(
せき
)
に
遮
(
さえぎ
)
られて、雨の降って来るような水音を立てている。
葛飾土産
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかしながらわが心を知る友人と相会する時、涙は
初
(
はじめ
)
てその
堰
(
せき
)
を破って
出
(
い
)
で来るのである。患難におけるこの心理を知りて初てヨブ記の構想を知り得るのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
悠二郎の喉から嗚咽が
堰
(
せき
)
を切った。すると正篤が近寄り、彼の手を取って、そうして自分も
噎
(
むせ
)
びあげた。
桑の木物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
遠見の北廓を書割にして、
茅葺屋根
(
かやぶきやね
)
の農家がまだ四五軒も残っていて、いずれも同じ枯竹垣を結び
繞
(
めぐ
)
らし、その間には、用水堀や
堰
(
せき
)
の跡などもあろうと云った情景。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
娘は姉の
末期
(
まつご
)
の痛々しい姿を思ひ浮べたものか、我慢の
堰
(
せき
)
を切つたやうにどつと涙が顏を洗ふのです。
銭形平次捕物控:212 妹の扱帯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
三十八 それでも十二月の到着するを
堰
(
せき
)
止め得ぬ。もう後十二日、イヤ十一日—十日—と日が数えられるに至った。その時に世界の運命が決するのだ。こうなると
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
堰
(
せき
)
の水はちょろちょろ音立てて田へ落ちると、かえるはこれからなきだす準備にとりかかっている。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
そのためにドライサアの「アメリカの悲劇」では主人公クライドにとってのりこえられなかった貧富の
堰
(
せき
)
ものりこえる代りに、人間としての生活の自主を全く喪って
文学の大陸的性格について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして
堰
(
せき
)
を切ったように涙が流れ出ようとするのを糸切り歯でかみきるばかりにしいてくいとめた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
図674を見る人は、朧気ながら、橋の
迫持受
(
せりもちうけ
)
と河床とを保護する方法を知るであろう。水があまりに早く流れることを防ぐために、橋の下方には大きな
堰
(
せき
)
が出来ている。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
お
顧客
(
とくい
)
の期待が外れて失望した彼女は、
冷
(
ひや
)
やかに私の頼みをいれた、彼女は一つの椅子を指した、私は崩折れるやうに腰を下ろした。今にも涙の
堰
(
せき
)
が切れさうな氣がした。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
私は、
和田堀
(
わだぼり
)
の妙法寺の森の中の家から、
堰
(
せき
)
のある
落合川
(
おちあいがわ
)
のそばの三輪の家に引越しをして来た時、はたきをつかいながら、此様なうたを思わずくちずさんだものであった。
落合町山川記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
気持よくそう答えて、その男は大堀の出口に築いてある
堰
(
せき
)
をこえて向う倒に姿を消した。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「本当に、これはいったい何事です!」ミウーソフは突然、
堰
(
せき
)
でも切れたように叫んだ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
そこを訪れる若い人達は、みんなその水車の柔い、だん/\朽ちてゆく木に、自分の名前の
頭字
(
かしらじ
)
を
彫
(
ほ
)
りつけて行つた。
堰
(
せき
)
は一部分
毀
(
こは
)
されて、清らかな山の流れは、岩の川床を流れ落ちた。
水車のある教会
(旧字旧仮名)
/
オー・ヘンリー
(著)
ところが殆ど気を失っている彼を湯の中から引き上げて、発泡膏を塗布するため腰掛に掛けさせる段になって、残っていた力と狂った想念とが、またしても文字どおり
堰
(
せき
)
を切って
迸
(
ほとばし
)
った。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
一口に玉川の鮎が
不味
(
まず
)
いといいますけれども
羽村
(
はむら
)
の
堰
(
せき
)
から
上
(
かみ
)
になると鼻曲り鮎と申して味もなかなか好くなります。酒匂川の鮎も本流よりは
河内川
(
こうちがわ
)
の支流で
漁
(
と
)
れた鮎が
美味
(
おいしゅ
)
うございます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
『万葉』の歌に春霞ゐの
上
(
へ
)
ゆ只に路はあれど云々とある井上は
堰
(
せき
)
に臨んだ山路とも見えぬことはないが、それではその路が近いということも感じにくく、また少々突然のような気もする。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
川
(
かわ
)
の
堰
(
せき
)
はらいが
延
(
の
)
びたというので、
年雄
(
としお
)
くんと
二人
(
ふたり
)
で、
村
(
むら
)
の
端
(
はし
)
を
散歩
(
さんぽ
)
すると、
昨夕
(
ゆうべ
)
入
(
はい
)
った
畑
(
はたけ
)
のとうもろこしがだいぶ
倒
(
たお
)
れて、
頭
(
あたま
)
の
上
(
うえ
)
にひろがった、
青
(
あお
)
い
空
(
そら
)
が
急
(
きゅう
)
に
秋
(
あき
)
らしく
感
(
かん
)
じられたのです。
二百十日
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それは
甘美
(
かんび
)
な苦痛をなして、わたしの五体に宿っていたが、やがて
法悦
(
ほうえつ
)
はついに
堰
(
せき
)
を切って、わたしは
踊
(
おど
)
り上がったり、わめき立てたりした。全く、わたしはまだほんの赤ん坊だったのだ。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
負けたという実感より、気持の上では、漕ぎたりない無念さで、更衣所にひき
揚
(
あ
)
げてきたとき、いちばん若いKOの上原が、ユニホォムを
脱
(
ぬ
)
ぎかけ、ふいと、
堰
(
せき
)
を切ったように泣きだしました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
灌漑用に引かれている
堰
(
せき
)
の
縁
(
へり
)
には、
菫
(
すみれ
)
や、
紫雲英
(
げんげ
)
や、
碇草
(
いかりそう
)
やが、精巧な織り物を
展
(
の
)
べたように咲いてい、水面には、
水馬
(
みずすまし
)
が、小皺のような波紋を作って泳いでい、底の泥には、
泥鰌
(
どじょう
)
の這った痕が
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“堰”の解説
堰(せき)とは、河川の流水を制御するために河川を横断する形で設けられるダム以外の構造物で堤防の機能をもたないものをいう。
(出典:Wikipedia)
堰
漢検準1級
部首:⼟
12画
“堰”を含む語句
大堰
堰堤
大堰堤
堰止
大堰川
井堰
堰塞
堰杙
馬堰棒
目堰
堰留
堰口
大洗堰
小堰
二挺堰
堰料
竹堰
目堰笠
堰切
疏通堰
...