きつ)” の例文
「まだ其處そこつくるけえしちや大變たえへんだぞ、戸棚とだなへでもえてけ」勘次かんじ注意ちういした。卯平うへい藥罐やくわんいで三ばいきつした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なおこの番頭を相手にして話をしていたらりもあるまい。折角なので、茶を一きつするとすぐ武蔵はそこを出て、先へと急いだ。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかし老女おばさん、最も良き妻を持つ世界の最も幸福なる人よりも、私の方が更に幸福の様に思ひますよ」彼は茶をきつしつゝく言ひて軽く笑ふ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
抛下はうかす、吾家ごかの骨董羹。今日こんにちきつし得て珍重ちんちようならば、明日みやうにち厠上しじやうに瑞光あらん。糞中の舎利しやり大家たいかよ。(五月三十日)
老夫らうふむしろはしに坐し酒をゑみをふくみつゞけて三ばいきつ舌鼓したうちして大によろこび、さらば話説はなし申さん、我廿歳はたちのとし二月のはじめたきゞをとらんとて雪車そりひきて山に入りしに
朝又もちあぶりて食し、荊棘いばらひらきて山背をのぼる、昨日来もちのみをきつし未だ一滴の水だもざるを以て、一行かつする事実にはなはだし、梅干をふくむと雖も唾液つばつゐに出できたらず
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
彼は、孤りの部屋で、苦い顔をして煙草をきつし続けるばかりだつた。彼の思索は、如何したらこのわづらはしい夜昼を正当に取り返せるだらうか? の一つより他になかつた。
F村での春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
地震ぢしんも、やみらしいので、風上かざかみとはひながら、模樣もやううかと、中六なかろく廣通ひろどほりのいちちか十字街じふじがいると、一度いちどやゝ安心あんしんをしただけに、くちけず、一驚いつきやうきつした。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
路傍ろばうくさうへこしけて、握米飯にぎりめしきつし、それからまたテクリしたが、却々なか/\あつい。
……始めて海鼠なまこを食いいだせる人は其胆力に於て敬すべく、始めて河豚ふぐきつせるおとこは其勇気において重んずべし。海鼠をくらえるものは親鸞しんらんの再来にして、河豚ふぐを喫せるものは日蓮にちれんの分身なり。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
歩哨ほせうは時のしよくきつす。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
われへ」卯平うへい蕎麥掻そばがきけてやつた。かれはさうしてさらあとの一ぱいきつしてその茶碗ちやわんんでんだ。藥罐やくわんかるくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ひるごろ茶のにパンと牛乳をきつをはり、まさに茶を飲まんとすれば、忽ち大震のきたるあり。母と共に屋外をくぐわいづ。
之をきつする其何椀なんわんなるをらざるなり、而して此を食ふを得るはまつたく人夫中の好漢こうかん喜作きさくちからにして、能く害菌と食菌とを区別くべつし、余等をして安全之をくらふを得せしむ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
忙裏ぼうりの小閑は命よりも尊し——とか。こういう時、一きつの茶は、生命をうるおします」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「馬鹿だなア」と川地はポカリ煙草をきつしつ、「裁判官は只だ法廷で、裁判するだけの仕事ぢやないか——法律なんて酌子定規しやくしぢやうぎ拘泥こうでいして、悪党退治が出来ると思ふか——フヽム」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
焼山やけやまの一けん茶屋ちやや旅籠はたごに、雑貨荒物屋ざつくわあらものやねた——土間どまに、(この女房かみさんならちやあつい)——一わんきつし、博士はかせたちと一いきして、まはりのくさ広場ひろばを、ぢつとると、雨空あまぞらひくれつゝ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
之をゆること数回におよぶも沼なほえず、むを得ず渓流けいりうを汲んで昼飯をきつす、時に午後三時なり、はらちて勇をし、又山をゆる数回にしてはじめて尾瀬沼岸にたつするをたり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
今ま貴女のおほせられた金山と言ふ大名華族の老人が、其頃小米こよねと申す婦人を外妾めかけの如く致して居たので、雇主やとひぬし——其の芸妓屋げいしややに於ては非常なる恐慌きやうくわうきつし、又た婦人の実母はゝからは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
卯平うへい時々とき/″\そとては豆腐とうふきつして自分じぶんぜんはしらぬことはあるのであつたが、それでも勘次かんじは三にんのみが家族かぞくであつたときよりも穀物こくもつ減少げんせうするりやうえてたことをたちまちにめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と、官兵衛は、お菊のさし出した茶を一きつして
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)