原因もと)” の例文
なんでも下駄を間違えたやつを、一人がなぐり飛ばしたのが原因もとで、芋をむような下足場が、たちま修羅しゅらちまたとなってしまいました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これがいつまでわが目の樂なりしやといふ事、大いなるいきどほりまこと原因もと、またわが用ゐわが作れる言葉の事即ち是なり 一一二—一一四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
孩子わらしどもだのなんのって言ってっと、まだはあ、長びく原因もとで、去年のように、拾わねえうぢに、みんな雀にってしまうがら……
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「この騒動の原因もとはと申しますると、意外な男と女との関係ちちくりごとから起ったに違いないと思いました私の見込みを申しましたので……」
さて小三郎のもとから絶えて音信おとずれの無いわけで、小三郎は不図した感冒かぜ原因もとで寐つくと逆上をいたし、眼病になり、だん/″\嵩じて
そのうち召使いの老人は弾傷が原因もとでこの世を去り私達二人の孤児みなしごは良人を失った老婆一人を手頼たよりにしなければならなかった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼処あすこまで乃公おれの釣竿が届くかしらと思ったのが、そもそも非常な誘惑であった。そして其の釣竿が届いたのが飛んだ災難の原因もとになった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
只、勝次郎が、可成盛に漁色のたくるので、之が原因もと始終中しょっちゅう争論いさかいの絶え間が無い。時々ヒステリーを起して、近所の迷惑にもなる。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
おまけに自分のうちでと来ている!……コワリョーフ少佐はいろいろの事情を総合した結果、この一件の原因もとをなしているのは
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
ほ。……それが落ち目の原因もととは一生の大事ではないか。あんた方三名、人なみ以上な五体と若さを持ちながら、なんでそんな運命に負けて指を
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……『あの男が死ぬ時に復讐を誓ったのが、つまり恐れの原因もとであろうと思う。しかし、この場合恐れる事は何もない』
術数 (新字新仮名) / 小泉八雲(著)
お前その一食が私を泣かせる原因もとなんぢやアないか。お前が三度三度に御飯でさへお腹をふくらしておくれなら、こんな思ひはしやアしないわね。
磯馴松 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
そこへ去年の秋のあの風邪かぜ原因もとでえらい病気して自分は正気がないようになっているところを付け込んで、お母はんは目先の欲の深い人やよって
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
あるものは過度の名誉心が原因もとだらうと言ひ、あるものは生活くらしつまつた揚句だらうと言ひ、あるものは又、精神に異状を来して居たのだらうといふ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さうして、さういふ不快の原因もとと言へば、いつも、母ならぬ人には毛ほども悟られたくない、く小さい詰らない事の失望やら怒りやらであつた。——
不穏 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其の病の原因もとはと、かれく知る友だちがひそかに言ふ、仔細あつて世をはようした恋なりし人の、其の姉君あねぎみなる貴夫人より、一挺いっちょう最新式の猟銃をたまはつた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これが原因もとで、つまは心配がこうじて、やぶれかぶれになり、めしつかいの者たちがいろいろなぐさめてくれるのも耳に入らず、首をくくってしまいました。
お師匠さんはお酒が好きでしたが、そんなことが病の原因もとになつて、死んでしまはれたのではないでせうか。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「ハイ、今まで私も随分と色々な苦労をいたしましたよ。これもそれも、あのいつぞやお宅に拝措物に上がったのが原因もとなので——つまりあなたのためなので」
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
が、ある日、春松は雨の土砂降りの中を廃球買いに出歩いたのが原因もとで、感冒を引き、肺炎になった。三十九度五分の熱が三日も下らず、派出看護婦を雇った。
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
こういう原因もとに「それ」がなったのだと思うと、ほんとに何とも云えない心持がして来るのである。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「私達の兄弟は、今ではこの国旗のために戦つてゐるのぢやありませんか、それも原因もとはとたゞせば、お前さんの国が火元なんぢやありませんか。それに、それに……」
野田のだ醤油屋奉公しやうゆやばうこうつてゝあんまめしぎたの原因もとたなんていふんですが、廿位はたちぐれえつぶれつちやつたんでさ、さうしたらそれ打棄うつちやつて夜遁よにてえせまるで
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「あなたは昨日の失敗が原因もとで、そんなにむしゃくしゃして、やたらに人にからんでくるんです」
初心しよしん發掘はつくつとしては權現臺ごんげんだい大成功だいせいこうであつた。無論むろん遺物ゐぶつ豐富ほうふでもつたのだが、たくからちかいので、數々しば/″\られたのと、人手ひとでおほかつたのも勝利しやうり原因もとであつた。
ト言ッたのが原因もとちとばかりいじり合をした事が有ッたが、お政の言ッたのは全くその作替つくりかえ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
私はほんの僅かな借金が原因もとで、清水に長い年月さいなまれて来た。私はただ彼の奴隷として生き永らえたのだ。私は涙を呑んで堪え忍んだ。私は研究が可愛かったのである。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
中宮のお世話をされることもこの時だけは気の進まぬことに思召されたが、しかしその人には限らず女というものは皆同じように、人間の深い罪の原因もとを作るものであるから
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
「何卒、篠田さん、御赦し下さいまし——貴所あなたの、御災難の原因もとはと申せば、——私が貴所を御慕ひ申したからで御座います——」梅子は畳に伏せり、歔欷きよき、時にかすかに聞ゆ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
さればこそひとたびたるはおどろかれふたゝたるはかしらやましく駿河臺するがだい杏雲堂きやううんだう其頃そのころ腦病患者なうびやうくわんじやおほかりしことひとつに此娘このむすめ原因もととは商人あきうどのする掛直かけねなるべけれどかく其美そのびあらそはれず
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いさかいが極めて些細なことから始まって、すんでしまった後では、一体何が原因もとだったか、思い出されなかったという一事に徴しても、それは容易に悟ることが出来たはずなんですがねえ。
人を動かす原因もとにこれ以外のものはなく、また、これ以上の力はない。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
凡そ世の中から落伍したり失敗したりする人間は、すべてみんな女が原因もとなのだ。人間が腐敗したり、堕落する第一歩はみんな、みんな女からなのだ。とにかく女は敵と思ってゐれば間違ひはない。
(新字旧仮名) / 原民喜(著)
すごすご戻ってきたのが破滅の原因もと、それからはいっそう心がぐらついて、昨日きのうの夕方宿を出たきり、宛もなく町中まちなかをぶらついているに、だんだん約束の刻限を切らして、大事の場合に間に合わず
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「浪路さまの、御病気の原因もとは、結局、この座敷にいるのじゃよ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
曲馬場の入口を一つしか設けなかつたのが原因もとである。
防火栓 (新字旧仮名) / ゲオルヒ・ヒルシュフェルド(著)
されど我今喜びて自らわが命運の原因もとゆるし、心せこれになやまさじ、こは恐らくは世俗の人にさとりがたしと見ゆるならむ 三四—三六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
何人だれ物数奇ものずきに落ちたくて川へ落ちるもんか。落ちたのは如何にも乃公の過失あやまちだ。しかし其過失の原因もとは全く姉さん達にある。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
余り心配を致したのが原因もとに成って孫右衞門は病の床にきました、娘のお筆は大切に看病を致して居りますが、誠に不幸な人でございまして
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それが原因もとで、無二の親友で、そのうえ親戚同士であった二人の婦人が、すっかり仲違いをしてしまったことがある。
「——貴公を兄と慕っているだけに、あれを秘密にしているのは、どう考えても水臭くっていけない。ふたりの友情にヒビの入る原因もとというものだ」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不健全、不健全——今日の新しい出版物は皆な青年の身をあやまる原因もとなんです。その為に畸形かたはの人間が出来て見たり、狂見きちがひみたやうな男が飛出したりする。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
彼女の言葉は婉曲えんきょくであるが、その腹の底ではお園が精神に異状を呈したのも大根おおね原因もとは私からの手紙に脅迫されたのだと思っているらしい口振りである。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
馬鹿にしちゃかん、と言って、間違まちがい原因もとを尋ねたら、何も朋友ともだち引張ひっぱって来たという訳じゃあなかった。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私がウッカリ返事でもしようものなら、それが大変な間違いの原因もとにならないとは限らないではないか。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
って這入れと勧めるから、両人共ふたりとも加入はいりました、其時、細君おときが、保険をつけると殺される事があると言ったのが原因もとで、大喧嘩をして、お叱りを受けたことがあります。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
全くそれが原因もとでお勢の事を断念おもいきらねばならぬように成行きはすまいかと危ぶむからで。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ころはらが一ばん危險きけんだといはれてごとくおしなはそれが原因もとたふれたのである。胎兒たいじは四つきぱいこもつたので兩性りやうせいあきらかに區別くべつされてた。ちひさいまたあひだには飯粒程めしつぶほど突起とつきがあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いとしきこととひかけては幾度いくたびはヽそでしぼらせしが、そのはヽにもまた十四といふとし果敢はかなくわかれていま一つのいたはしさ、かの學士がくしどの其病床そのびやうしよう不圖ふとまねかれて盡力じんりよくしたるが原因もととなり
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
社長に重んぜられる原因もとになつて、二度目の主筆が兎角竹山を邪魔にし出した時は、自分一人の為に折角の社を騒がすのは本意で無いと云つて、誰が留めてもかずに遂々たうたう退社の辞を草した。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)