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掛直
さればこそ
一たび
見たるは
先づ
驚かれ
再び
見たるは
頭やましく
駿河臺の
杏雲堂に
其頃腦病患者の
多かりしこと
一つに
此娘が
原因とは
商人のする
掛直なるべけれど
兎に
角其美は
爭はれず
又売物の
掛直同様にして、斯くまでに厳しく
警めたらば少しは注意する者もあらんなど、
浅墓なる教訓なれば
夫れまでのことなれども、真実
真面目に古礼を守らしめんとするに於ては
物干竿を
掛直したかみさんは
有合う
雑布で赤ぎれのした足の裏を
拭き拭き
此度は遠慮なくがらりと襖を明けて顔を出した。
眉毛の薄い目尻の下った
平顔の年は三十二、三。