かか)” の例文
左の一篇は木村芥舟翁きむらかいしゅうおう稿こうかかり、時事新報じじしんぽう掲載けいさいしたるものなり。その文中、瘠我慢やせがまんせつ関係かんけいするものあるを以て、ここに附記ふきす。
彼が在職の日たる、外交上の一大過渡の一大時機たりしにかかわらず、彼は事実においては、外交の上について多くの関渉かんしょうを有せざりき。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
嘉吉は鉱山の坑木こうぼくかかりではもう頭株かしらかぶだった。それに前は小林区しょうりんく現場監督げんばかんとくもしていたので木のことではいちばん明るかった。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これをでかばちに申したら、国家の安危にかかわるような、機会おりがないとも限らぬ、その拇指、その小指、その片手の働きで。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母も顔をしかめて考えていましたが、そんなことにかかり合うと面倒だから、決してなんにも言ってはならないと戒めました。
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一八五三年には、ファラデーは妙な事にかかり合って、狐狗狸こくりの研究をし、七月二日の雑誌アセニウムにその結果を公にした。
鈴木氏の筆記にかかる益田香遠、久保田米仙二家の談話、弟潤三郎の蔵儲ぞうちょに係る竺仙事橋本素行の刊本「恩」はわたくしのために有益であった。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
格堂かくどうの写し置ける元義の歌を見るに皆天保てんぽう八年後の製作にかかるが如く天保八年の歌は既に老成してごうも生硬渋滞の処を見ず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かかりの女中に聞いてみた。波子という名のその若いドヤビリ(女中)は、黙って俺の顔をみつめた。にこりともしなければ、にやりともしない。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
佐分利はその劇なるを知りながらかかつたのは、大いに冒険の目的があつて存するのだらうけれど、木乃伊ミイラにならんやうにふんどしめて掛るが可いぜ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
従前「教にかかわったミカド」(『仏人モンブラン新説書』)すなわちヨーロッパにおけるローマ法王のごとく思惟され
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
若輩と老成の相違点、愛欲をぼかして眺めるか、愛欲を正しく眺めるか、かかって一点にあろうというものさ。ところで
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そうお。じゃあこれはごく内証ないしょよ。お書きになったり何かしちゃ駄目よ。あの人たちの名誉にかかることですから。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
雲林うんりんを見たのは唯一つである。その一つは宣統帝せんとうてい御物ぎよぶつ今古奇観きんこきくわんと云ふ画帖ぐわでふの中にあつた。画帖の中のは大部分、薫其昌とうきしやうの旧蔵にかかるものらしい。
支那の画 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかしそれらの利得があまりに不愉快な価を払って得らるべきものであるとしたら、彼がそんなものにかかわり合わない方が彼女にはずっと好ましかった。
(以上千八百十二年第四月「ロルドウェレスリー」が貴族議院において述告する説にかかる。)〈三百二十二葉〉
何故なぜかと云うに、しその人達を連れて帰れば、かえっ銘々共めいめいどもが亜米利加人に連れていっもらったように思われて、日本人の名誉にかかるから乗せないと剛情を張る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
つまり自然界しぜんかい仕事しごと幾段いくだんにもおくがあり、いかにかかりの竜神りゅうじんさんでも、御自分ごじぶんちからのみで勝手かってあめらしたり、かぜおこしたりはできないようでございます。
先々代からのかかりあいがあって、たとえ久能の店をつぶしても、志貴子をさしあげるわけにはいかない。
姦(かしまし) (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
筆とりてひとかどのこと論ずる仲間ほど世の中の義捐ぎえんなどいふ事にひややかなりと候ひしあざけりは、私ひそかにわれらにかかはりなきやうの心地ここち致しても聞きをり候ひき。
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「いや、それはあなたにかかり合いのないことで、わたしが本当だといって宣誓すればいいのでしょう」
「こんなわけだ。騒ぎが大きくなれば、自然主君の御名前にもかかわる。それに、奥方御里方、酒井左衛門尉様への聞えも如何いかが、——早急に片付ける工夫はないものか」
寄セルモ猶かかル独弥止/価ヲ増スコト応ニ同ジカルベシ摩利支/万首ノ詩篇一枝ノ筆/十年ノ生計両顱ノ糸/城中早ニ已ニ佳句ヲ伝フ/皆恨ム才人相遇フコトノ遅キヲ〕
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いわんや同君はすでに書生ではない、卒業の日は浅きにもかかわらず堂々たる一個の法学士で、物産会社の役員であるのだから吾輩の驚愕きょうがくもまた一と通りではない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
法水一行が着いた時は、曲目の第二が始まっていて、クリヴォフ夫人の作曲にかかわる、変ロ調の竪琴ハープと絃楽三重奏が、ちょうど第二楽章に入ったばかりのところだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
重井おもいと同行する事に決し、畝下熊野はたしたゆや(現代議士山口熊野)、小池平一郎こいけへいいちろう前川虎造まえかわとらぞうの諸氏と共に同地に至り同所有志の発起ほっきかかる懇親会にのぞみて、重井その他の演説あり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「本官は貴官に重大な命令を与える。事の成否は帝国の安危あんきかかっている。仁科少佐は、天皇陛下並に日本帝国の為、万難を排し、身命をなげうって任務を遂行すいこうする事を欲する」
計略二重戦:少年密偵 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
「それならわたくしがお伝え申すより、かかりへじかにお申出でなさるがよいと思いますが」
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
まだ二時間はあるが、ぐずぐずしていては、またどんなかかりあいが出来るかも判らない、いっそ船へ往って船で飲もうと思いだした。謙作は勘定かんじょうをして出ようと思って顔をあげた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一三八治承ちしよう三年の秋、たひらの重盛やまひかかりて世をりぬれば、一三九平相国へいさうこく入道、一四〇君をうらみて一四一鳥羽とば離宮とつみやめたてまつり、かさねて一四二福原のかやの宮にくるしめたてまつる。
夫人の毒死が判り、一夜を明した男のあるのも判っているのにもかかわらず、この事件は又、遂に結論を『自殺』へ持って行かねばならないのか。自分の直感は、この平凡な結論を嘲笑ちょうしょうする。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いいえおはなしいたしませぬ。今頃いまごろましあそばしましては、お身分みぶんかかわりまする。もしまた、たっておましあそばしますなら、一おうわたくしどもから御家老ごかろうへ、そのよしつたえいたしませねば。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
試みに左に掲ぐる書簡を見よ、これ彼が安政元年十二月野山の獄中よりして妹に寄せたるものなり〔細註は記者の挿入にかかる〕。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
町役人どもが相談してづ親たちにも得心とくしんさせ、その次第を書きあげて差出すと、かかりの役人もひたいしわめた。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ここから二停車場ふたていしゃばほど先にある、或大きなまちへ流れて来て、そこで商売をしていた兄の女が、その頃二三里の山奥にある或鉱山の方にかかっている男に落籍ひかされて
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この頃根岸倶楽部クラブより出版せられたる根岸の地図は大槻おおつき博士の製作にかかり、地理の細精さいせいに考証の確実なるのみならずわれら根岸人に取りてはいと面白く趣ある者なり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
一人は、空に何か投げあげてコウモリをおびきよせるかかりで、他の一人がセミ取りの、袋のついた竹竿たけざおを持っていて、地上に降りてきたコウモリに素早く袋をかぶせるのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
うすると私の書記かきしるしておいたものは外交の機密にかかる恐ろしいものである、しこれが分りでもすればぐにろう打込ぶちこまれて首をられて仕舞しまうにちがいないとおもったから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
すると農場の方から花のかかりの内藤ないとう先生が来たら武田先生は大へんあわててポケットへしまっておきたまえ、と云った。ぼくはへんな気がしたけれども仕方しかたなくポケットへ入れた。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
同業者のこれにかかりては、逆捩さかねぢひて血反吐ちへどはかされし者すくなからざるを、鰐淵はいよいよ憎しと思へど、彼に対しては銕桿かなてこも折れぬべきに持余しつるを、かなはぬまでも棄措すておくは口惜くちをしければ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その末期まつごことばに、一四〇当時信長は一四一果報いみじき大将なり。我平生つねかれあなどりて征伐を怠り、一四二此のやまひかかる。我が子孫もやがかれほろぼされんといひしとなり。謙信けんしんは勇将なり。
泰然たいぜんとしてその机を階下に投じ、た自個の所有にかかる書籍、調具を顧りみず、藩主恩賜おんしの『孫子そんし』さえも焼燼しょうじんに帰せしめ、一意いちい以て寓家ぐうか什器じゅうきを救わんとせり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
父親は時々、この叔母の所有にかかる貸家の世話や家賃の取立て、叔母の代のや、父親から持越しの貸金の催促——そんなようなことに口を利いたり、相談相手になったりした。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ベースボールいまだかつて訳語あらず、今ここにかかげたる訳語はわれの創意にかかる。訳語妥当だとうならざるは自らこれを知るといえども匆卒そうそつの際改竄かいざんするによしなし。君子くんし幸にせいを賜え。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
一とせやまひかかりて、七日をたちまちにまなこを閉ぢ、いき絶えてむなしくなりぬ。
『旦那は山の手ぢやあ、区画くかく整理にはおかかり合ひ無しですね。』
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)