)” の例文
「どれ」いや応なく取って見ると、桐油紙とうゆぐるみ、上に唐草銀五郎様、の名は裏に小さく「行きいの女より」としてあった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると七人のの内真中の一人だけは黄色の着物を着たお爺さんで、あとの六人は皆空色の着物を着た十二三の男の児であった。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「両国には相違ねえが、あの小屋からずっと離れた亀沢町かめざわちょうの路地に若い男が、殺されているが、困ったことには見知みしがねえ」
けどが女が人殺の直接のエジェンシー(働き)と云う事は無い、と云って己も是だけは少し明解しかねるけれどナニ失望するには及ばぬ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
さあ、どんづまりのその女郎が殺されましてからは、怪我にもゆきがございません、これはまた無いはずでございましょう。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしなに貴方あなた自分じぶん信仰しんかうむかはせやうと權利けんり主張しゆちやうはせんのです。』院長ゐんちやう自分じぶんわかつていので、さも殘念ざんねんふやうに。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すれば影だ、ピー/\風でさむさ橋に出て居ても、見て貰いもないかしてもう帰って来た、帰り際に早いから屹度きっと寄るぜ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もらがミラボーだけに、賞品も別に悪くはなかつたやうだ。だが九歳こゝのつの子供の帽子を貰つたお爺さんがその帽子をうしたかは記者も知らない。
「ははは、何を——ばかな。あのばか娘もしようがないね、浪さん。あんな娘でももらいがあるかしらん。ははは」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
しかし、さなきだに頼みがない所へ、見ず知らずの父親が入り込んでも、まるで仕事にありつけなかった。
れがうつ横町よこちやうの三五ろう口上こうじようはせよう、美登利みどりさんれにしないかとへば、あゝれは面白おもしろからう、三ちやんの口上こうじようならばれもわらはずにはられまい
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
村長のなりがないので、無能な無爲な阿呆野口を助役にして、太政官に宛行あてごうて置いたのであるが、そんなことでは、治まつて行きさうもなくて、權威オーソリチー破壞の聲が
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
乘せたれどもかつのなきゆえ後藤はひざうちこれはしたり氣の付ざりしがこんな事なら惡漢の二三人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此家ここは広い畑の中に孤立した二軒長屋で、壁一重向ふ側には隣家も続いてゐるのだが、長いこと借りがなくて畳には古い埃がつもつてゐる。長いこと隣家の物音はないのであつた。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
主人「だってまだもらもない」大原「あるよ」主人「何処に」大原
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
『怒りはしない。迷信をわらったのだ。いや、迷信があるのは、かえって倖せかもしれぬ。おそらく、あの馬に、はなかろう』
「兩國には相違ねえが、あの小屋からずつと離れた龜澤町の路地に若い男が、殺されて居るが、困つたことには見知りがねえ」
わたくしなに貴方あなた自分じぶん信仰しんこうむかわせようと権利けんり主張しゅちょうはせんのです。』院長いんちょう自分じぶんわかってくれいので、さも残念ざんねんうように。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
人気もおだやかなり、積んだものを見たばかりで、鶴谷様御用、と札の建ったも同一おなじじゃで、誰も手のはござりませぬで。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの時の御恩は私は死んでも忘れませんあの時には誰も中へ這入って止めがないところへ、親方が這入って下すって、無法といっては済みませんが
蔵元屋の菩提所は祭りがのうなろうやら知れませぬ折柄ゆえ、それが何よりの御功徳様かと存じまするが……
弾は以上に慌てて飛んでもない方角へれて往つた。すると直ぐうしろから江川がずどんと口火をきつた。猪は急所を撃たれてその儘平伏へたばつてしまつた。
聴きの呆れた顔付が如何にも間抜けに見えるほど暫しのうちは杜絶えもしない。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
足りないのを美登利さんに買つて貰つて、筆やの店でらうでは無いか、己れが映しで横町の三五郎に口上を言はせよう、美登利さん夫れにしないかと言へば、あゝ夫れは面白からう
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「倒れかかっている甲賀家の喬木きょうぼく、この世にたよのないお千絵様——、それをささえる力、救うお方は、あなたのほかにはございません」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時まで、雲助どもの乱暴を、打腹立うちはらだってねたるさま、この救いに対してさえ、我ままに甘えてくねるか、捗々はかばかしく口も利かずにいたのであった。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近頃所蔵の骨董物こつとうものにつくづく飽きが来て、のぞさへあつたら、今が今でも譲り度いやうな事を言ひ出した。
住みの無くなった深良屋敷は、それから間もない晩秋の大風で倒れてしまった。村の人々は……お蔭で青空が広くなったようだ……といって胸を撫でおろしている。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大阪あっち越佐えつささんと云っては大した御身代でいらっしゃるんだからね、土地で貰おうとおっしゃれば、網の目から手の出るほど呉れはあるがの、佐兵衞さんてえのは江戸の生れなんで
足りないのを美登利さんに買つて貰つて、筆やの店でらうでは無いか、己れが映しで横町の三五郎に口上を言はせよう、美登利さんそれにしないかと言へば、ああそれは面白からう
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「名乘りがなければ、見附にさらすほかはあるまいな」
笠をかぶる必要もないほど陽焦ひやけのしている真ッ黒顔に、これもまた、往来へ捨てても拾いがありそうもない古笠をかぶっているのだ。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かわうそ、化ものも同然に、とがめのござりませぬ、独鈷の湯へ浸ります嬉しさに、たつ野の木賃に巣をくって
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの馬のり手はこの夜更けに何のためにこの王宮のまわりを駈けめぐるのであろう。あんな疾い馬がこの世に在るか知らん。は俺の知らぬ魔者ではないか知らん。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
直ぐまたそのが、自分に関係の深い早稲田の老伯であるのに気がいたらしかつた。
比丘なんぞになりい事はないが、是もみんな私の作った悪事のばちで、世話のして呉れもなくなり、段々る年で病み煩いでもした時に看病人もない始末、あゝうしたらかろう
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
母さんに無理をいふて困らせては成りませぬと教ゆれば、困らせる處か、お峰聞いて呉れ、歳は八つなれど身躰も大きし力もある、わしが寐てからは稼ぎなしの費用いりめは重なる、四苦八苦見かねたやら
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
酒——はよくないものと、極道ごくどうの毒水みたいにいうのは、あれや酒のせいじゃあるまいて。酒はよいものじゃが、飲みがわるいのじゃ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう一度、以前、日比谷の興行で綺麗な鸚鵡おうむが引金を口で切って、黄薔薇きばらしべを射て当てて、花弁を円く輪に散らしたのを見て覚えている。——扱いは、たしか葡萄牙ポルトガル人であったと思う。
文「御新造を持てと云ってもおれのような者には女房にょうぼになってくれがないや」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あれ、最早もう二度まわってしまった。今度は三度目だ。これ、白銀しろがねの鏡。赤鸚鵡。美留藻の行衛ゆくえ最早もう見なくともよい。それよりも早くあの馬と、そのを見せてくれ。あれ、もう三度まわった。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
かかさんに無理をいふて困らせては成りませぬと教ゆれば、困らせる処か、お峯聞いてくれ、としは八つなれど身躰からだおほきし力もある、わしてからはかせなしの費用いりめは重なる、四苦八苦見かねたやら
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしたのが官軍の将校なので彼らも不正直には扱いかねる。宿場へ着くたびに、駕の中の様子をのぞく、そのうちに初めて
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年甲斐もなく原丹治と密通をいたし、お前をいじり出した跡で丹三郎をおえいの養子に入れたのも、名主と話合いの上、村方で誰一人非の打ちのないようにして婚礼をさせようとする処へ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
山と積まれてからが金子かね生命いのちまでは売りませんや、誰も島屋の隠居には片づきがなかったので、どういうものでございますか、その癖、そうやって、嫁がきまりましても女房が居ましても
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かゝさんに無理むりをいふてこまらせてはりませぬとをしゆれば、こまらせるどころか、おみねいてれ、としは八つなれど身躰からだおほきしちからもある、わしてからはかせなしの費用いりめかさなる、四かねたやら
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし、不意の事件におどろいた群衆の動揺は、ただ口々に何か騒いで、かんじんな自分たちの中に潜んでいる小柄こづかの投げを忘れている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此の坊やアだけは今晩が明けないうち法蔵寺様へでも願って埋葬ともらいを致したいと存じます、誰もうちへ参りはなし、私が此の病人では何う致す事も出来ませんから、何卒どうぞ一寸お帰りなすって
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
全く叱りつけるように勧めたんですからね、すすめが私でしょう。阿魔あまはてっきり、ぶんなぐられると思っておぶさったもんです、名はお米ッていいます、可愛いなんですがね、十七でしたよ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
広い闇を抱えた埋地うめち船岸ふなつきには荷主や見送りの提灯がいッぱいだ。口々にいう話し声が、ひとつの騒音となってグワーと水にひびいている。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)