ちゅう)” の例文
奔馬ほんばちゅうけて、見る見る腕車を乗っ越したり。御者はやがて馬の足掻あがきをゆるめ、渠に先を越させぬまでに徐々として進行しつ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何の御用か存じませぬが、あいにく今日、当家はかような取混とりこちゅう。おかまいも出来ません。どうかまた他日でもお立ち寄りを」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そりゃそうあるべきもの、不発ふはつちゅうといって、釣りにもせよ、網にもせよ、好きの道に至ると迎えずして獲物えものが到るものじゃ」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その上軌道レールの上はとにかく、両側はすこぶるぬかっている。それだのに初さんはちゅうぱらでずんずん行く。自分も負けない気でずんずん行く。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
れいだいでうだいでう口癖くちぐせにする決鬪師けっとうし嫡々ちゃき/\ぢゃ。あゝ、百ぱつちゅうすゝづきとござい! つぎ逆突ぎゃくづき? まゐったかづきとござる!
師匠の帰ったあとちゅうっ腹で木原の楽屋を飛び出すと、食傷新道のゆきつけの家へ飛び込んで、とりあえず二、三本、徳利を倒した今松だった。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
かくの如き眺望はあえてここのみならず、外濠そとぼり松蔭まつかげから牛込うしごめ小石川の高台を望むと同じく先ず東京ちゅうでの絶景であろう。
自然に男女両性の釣合をして程好ほどよちゅうを得せしめんとの腹案を以て筆を立て、「日本男子論」と題したるものなり。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
小僧とはいっても最早ちゅう小僧で、今日でいえば中学校の青年位の年輩であるから、記憶などは人間一生の中で一番確かな時分——見合いというものは
身丈恰好せいかっこうくって、衣服なりが本当で、持物が本筋で、声が美くって、一ちゅうぶしが出来るというのだから女はベタ惚れ
広くはないが古雅な構えで、私たちはちゅう二階の六畳の座敷へ通されて、涼しい風に吹かれながら膳にむかった。わたしは下戸であるのでラムネを飲んだ。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
歌舞伎座が廿二年に出来るまでは、そのほかにちゅう芝居に、本所の寿ことぶき座と本郷の春木座、日本橋蠣殻かきがら町の中島なかじま座と、後に明治座になった喜昇きしょう座だけだった。
前夜の人たちが階級を三つに分けたそのちゅうの品の列にはいる家であろうと思い、その話を思い出していた。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
君子の音は温柔おんじゅうにしてちゅうにおり、生育の気を養うものでなければならぬ。昔しゅん五絃琴ごげんきんだんじて南風の詩を作った。南風のくんずるやもって我が民のいかりを解くべし。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
また掏摸すりにすられたちゅうばあさんが髪をくくりながら鼻歌を歌っているうちに手さげの中の財布さいふの紛失を発見してけたたましい叫び声を立てるが、ただそれだけである。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
また嶺松寺という寺号をも忘れていた。それゆえわたくしに答えた書に常泉寺のかたわらしるしたのである。ここにおいてかつて親しく嶺松寺ちゅう碑碣ひけつた人が三人になった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ところで婦人が相当の地位を占めておるに拘わらず、婦人の教育というものは、ちゅう以上の婦人こそ相当の教育を受けたけれども、もう中以下になると教育を受けない者もある。
女子教育の目的 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
今もそうで、旅のうらない師というこの若い女を引き入れているところへ、ちょっと一目いちもくおかなければならない玄心斎の白髪あたまが、ぬうっと出たので、源三郎、ちゅうぱらだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「冗談じゃあねえや。怪我けがでもしたらどうするんだ。」これはまだ、平吉が巫山戯ふざけていると思った町内のかしらが、ちゅうぱらで云ったのである。けれども、平吉は動くけしきがない。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
俺のコップを眺めながらそんなことを思い付くなんて、まるでこの焼酎がメチルみたいじゃないかと、やっとその時そう気がついて、蟹江はすこしちゅうぱらな調子で反問しました。
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
こっちもちゅうぱらになっているところへ、ボートがノーマ号に出かけることになったが、こいつがまた虎船長から、はっきりめられてしまったので、どうせ怒られついでだとおもって
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ちゅうぐらいの大きさの、テリア系の雑種の犬が一匹、毛を泥まみれにして、なるたけ雨に打たれないように汽車の車輪の蔭に身をひそめながら、ぶるぶるふるえて蹲踞うずくまっているのを
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「さようさよう。同じ大石殿の家来のちゅうにも、瀬尾孫左衛門のような人非人にんぴにんもあれば、またあんな忠義なものもある。まさかの場合になって、始めて人の心は分るものでござるな」
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
ちゅうぐらいのもあり、小さいのもあり、目ばたきをするまに、そのあかりが、いくつか消えるかとおもうと、また別のがいくつも燃えあがるので、小さなほのおは、入れかわり立ちかわり
縁側の突き当たりに階子段はしごだんがあったり、日当たりのいいちゅう二階のような部屋へやがあったり、納戸なんどと思われる暗い部屋に屋根を打ち抜いてガラスをはめて光線が引いてあったりするような
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ちゅうとうの ぼうず——しゅぎょうが ふつうで、ものわかりの いい ぼうず。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
われわれの町でもまずちゅうどころで、極上のメリケン粉を商ない、郡部にある大きな製粉所を一つ賃貸しにしてその手に握り、なおその上に郊外にはなかなか実入りのいい果物ばたけもある
実際に或る瓦斯ちゅうの火花の写真を撮って、他の瓦斯中のものと比較して見ると、多くの場合何処どこが違っているかということを指摘することは困難であるにもかかわらず、火花の形全体としては
指導者としての寺田先生 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
金魚屋きんぎょや申立もうしたちゅうにあつた老人ろうじん財産ざいさんについてのはなしと、平松刑事ひらまつけいじ地金屋ぢがねやから聞込ききこみとをらしあわせてみて、だれむねにもピーンとひびくものがあつた。いこんだ金塊きんかい古小判ふるこばんである。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
「何をいやァがる。」田代はちゅうぱらで「小倉君、分ってるか、君には?」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
その後胴引どうびきなどいう博奕ばくちに不思議に勝ちつづけてかねたまり、ほどなく奉公をやめ家に引き込みてちゅうぐらいの農民になりたれど、この男はくに物忘れして、この娘のいいしことも心づかずしてありしに
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
だんだんうかがってると、かずかぎりもないだいちゅうで、最大さいだい御危難ごきなんといえば、矢張やはり、あの相摸国さがみのくにでの焼打やきうちだったともうすことでございます。ひめはそのとき模様丈もようだけ割合わりあいにくわしく物語ものがたられました。——
むめちゃん、先生の下宿はこの娘のいるうちの、別室はなれちゅう二階である。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ちゅうどころの成績という条件です。一寸頭の新しい男でしょう? 一番や二番は試験勉強で持っているから融通が利かない。少くとも十五番以下でなくちゃ困ると言っています。何うですな? ヘッヘヽヽヽヽ」
恩師 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
黒服の親仁とっさんは、すっぽりとちゅう山高を脱ぐ。兀頭はげあたまで、太いくび横皺よこじわがある。けつで、閣翁を突くがごとくにして、銅像に一拝すると
宇治山田の米友は、そのいずれなるに拘らず、髑髏についた泥のもう少し手軽く落つべくして落ちないのにちゅうぱらで、ゴシゴシと洗っている。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
花車が手玉にいたしました石へ花車と彫り附け、之を花車石と申しまして今に下総の法恩寺ちゅうに残りおりまする。是でずお芽出度めでたく累ヶ淵のお話は終りました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いずれも程好ほどよちゅうを得ざるゆえ、これをなおさんとして、ひたすらその低きものを助け、いかようにもしてこれを高くせんとて、ただ一方に苦心するのみにして
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
表通はちゅうくらいの横町で、向いの平家の低い窓が生垣の透間すきまから見える。窓には竹簾たけすだれが掛けてある。その中で糸を引いている音がぶうんぶうんとねむたそうに聞えている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
鈴木春信の好んで描けるこれら小説的恋愛の画題は奥村政信おくむらまさのぶまた石川豊信いしかわとよのぶらのしばしば用ひたるものにして、あえて春信一人いちにんの手によりて浮世絵ちゅうに現されたるものにあらず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
学生は月に七円ぐらい国からもらえばちゅうの部であった。十円も取るとすでに贅沢ぜいたくと思われた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「どうだ!」と、死神が声をかけました、「これは、人間にんげんどもの生命いのち燈火あかりだ。大きいのは子どもので、ちゅうぐらいのは血気けっきさかんな夫婦もの、小さいやつは、じいさん、ばあさんのだ。 ...
はじめからしめてかかってシトシトシトシト「子別れ」のちゅうを演りはじめた。中といえば遊びつづけてかえってきた熊さんがヤケ半分に、女房子供を叩きだすまでのあのくだりだった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「このあいだちゅうから内の留がいろいろおめえの御厄介になっているそうだが……」
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
で、新富座本建築のときは、四十二軒あった附属茶屋を、おお茶屋の十六軒だけ残して、あとはちゅう茶屋も廃した。間口まぐちの広い、建築も立派な茶屋だけ残したのだから、華やかなはずだった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
一 沖のとちゅうの浜す鳥、ゆらりこがれるそろりたつ物〻
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「そうだね。まず、ちゅうとう かね。」
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
じょうちゅう
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御免なせえ……お香のものと、媽々衆かかしゅが気前を見せましたが、取っておきのこの奈良漬、こいつあ水ぽくてちとちゅうでがす。菜ッ葉が食えますよ。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どこへ行ったやら影も形も見えないので、主人はちゅうぱらで、それから日のカンカンさすまで寝込んでしまうと