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ふらち
ふりがな文庫
“
不埒
(
ふらち
)” の例文
御禁中警固、京一円取締りの重任にあるべき所司代詰の役侍が、その役柄を悪用して
不埒
(
ふらち
)
を働こうとしているだけに許せないのです。
旗本退屈男:04 第四話 京へ上った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
お言いでないよ。ソリャお前の事だからまさかそんな……
不埒
(
ふらち
)
なんぞはお
為
(
し
)
じゃ有るまいけれども、今が嫁入前で一番大事な時だから
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
それなのに無断、人なかへ出て来るなどは、
不埒
(
ふらち
)
な女。何とぞおかまいなく、早々、三河一色村へ追ッ返していただきとう存じまする
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「婦人科の医者には、婦人の貞操を破るような
不埒
(
ふらち
)
な奴があるってことをよくききますが、そんなことができるもんでしょうか?」
或る探訪記者の話
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
默
(
だま
)
れ!
甥
(
をひ
)
の
癖
(
くせ
)
に
伯父樣
(
をぢさま
)
の
妾
(
めかけ
)
を
狙
(
ねら
)
ふ。
愈々
(
いよ/\
)
以
(
もつ
)
て
不埒
(
ふらち
)
な
奴
(
やつ
)
だ。なめくぢを
煎
(
せん
)
じて
飮
(
の
)
まして、
追放
(
おつぱな
)
さうと
思
(
おも
)
うたが、
然
(
さ
)
う
聞
(
き
)
いては
許
(
ゆる
)
さぬわ。
麦搗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
それで
直段
(
ねだん
)
は胡麻の油の三倍も高く取って
儲
(
もう
)
かる儲かると
悦
(
よろこ
)
んでいます。実に今の世の不徳義な商人ほど
不埒
(
ふらち
)
なものはありません。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「
不埒
(
ふらち
)
な奴……すぐに与九郎
奴
(
め
)
の家禄を取上げて追放せい。薩州の家来になれと言うて国境から
敲
(
たた
)
き放せ。よいか。申付けたぞ」
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ここに、こうして坐って、ぼんやりした顔をしているけれども、胸の中では、
不埒
(
ふらち
)
な計画がちろちろ燃えているような気もする。
待つ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「何を女め!
不埒
(
ふらち
)
な巫女! 二条通りで我君の雑言、ご治世を詈ったそればかりか、拙者を捉えて子供扱い、許さぬぞよ。縛め捕る!」
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ここだと云はないばかりに
迸
(
ほとばし
)
つて來た儘に、渠はおのれの妻が
裏店
(
うらだな
)
のかかアか何かのやうに、燒けぼツ
杙
(
くひ
)
じみた行爲に出た
不埒
(
ふらち
)
を述べた。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
よせと云うのか、いやしくも人の
亀鑑
(
てほん
)
になるべき者が、
不義
(
ふぎ
)
不埒
(
ふらち
)
なことをしているに、うやむやにして、知らん顔をするつもりか
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
俺には知己も交際もある。汝のような中途半パで帰って来た
不埒
(
ふらち
)
な奴を家に置いたとあっては、俺が世間へ顔向けが出来ない。
幕末維新懐古談:18 一度家に帰り父に誡められたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
不埒
(
ふらち
)
ならずや
身
(
み
)
こそ
零落
(
おちぶれ
)
たれ
許嫁
(
いひなづけ
)
の
縁
(
えん
)
きれしならずまこと
其心
(
そのこゝろ
)
なら
美
(
うつ
)
くしく
立派
(
りつぱ
)
に
切
(
き
)
れてやりたし
切
(
き
)
れるといへば
貧乏世帶
(
びんぼふじよたい
)
のカンテラの
油
(
あぶら
)
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
赤シャツに勧められて
釣
(
つり
)
に行った帰りから、
山嵐
(
やまあらし
)
を疑ぐり出した。無い事を種に下宿を出ろと云われた時は、いよいよ
不埒
(
ふらち
)
な
奴
(
やつ
)
だと思った。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
不埒
(
ふらち
)
千万のやつであるとて、大声を発し、「
汝
(
なんじ
)
知らずや、われは万物の長たる人間であるぞ。早く正体を現して逃げ去れよ」
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
それなのに、人間山は皇后の御殿が火事のとき、火を消すことを口実にして、
不埒
(
ふらち
)
千万にも、小水で宮殿の火を消しとめた。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
「われわれは馬子を相手に、冗談を云うほど、暇つぶしに困っているわけではない、こやつらが
不埒
(
ふらち
)
なことを申すから、街道の諸人のために」
雪の上の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は大船二艘に兵粮米、武器などを満載して都をさして上ったが、これを福原で聞いた能登守は、
不埒
(
ふらち
)
な奴と直ちに小舟に乗って追いかけた。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
アア、何という大胆不敵、彼は追手に囲まれながら、心から、貴賓を驚かせ
奉
(
たてまつ
)
った今日の
不埒
(
ふらち
)
を、御詫びしたつもりらしい。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この
不埒
(
ふらち
)
の行爲に石國の王子は非常に憤慨いたし、四隣の諸胡國も之に同情を寄せ、相倶に
大食
(
タージ
)
國の援兵を乞うて、唐軍に復仇せん計畫をした。
紙の歴史
(旧字旧仮名)
/
桑原隲蔵
(著)
まさかにそんな
不埒
(
ふらち
)
を働く筈はあるまいと、文字春も初めは容易に信用しなかったが、お角はその怪しい形跡をたびたび認めたというのである。
半七捕物帳:16 津の国屋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
これは、悪ざむらいたちの
不埒
(
ふらち
)
は、申すまでもないが、それを買って出たこの一行連の強気も、あんまり感心したものではないと見たからです。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
遠くから見て、
不埒
(
ふらち
)
な、
怪
(
け
)
しからぬ人物に見えていても、その人の立場に立てば、そうでないいろいろな点がある、ということになるのであろう。
藤村の個性
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
はたして自分の他にまだそんな者があって、今その世話でこうなっているとすれば、どう、自分の身びいきという立場を離れて考えても
不埒
(
ふらち
)
である。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
法律
(
ほうりつ
)
に
照
(
てら
)
しても
明白
(
あきらか
)
だ、
何人
(
なにびと
)
と
雖
(
いえども
)
、
裁判
(
さいばん
)
もなくして
無暗
(
むやみ
)
に
人
(
ひと
)
の
自由
(
じゆう
)
を
奪
(
うば
)
うことが
出来
(
でき
)
るものか!
不埒
(
ふらち
)
だ!
圧制
(
あっせい
)
だ!
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
戦争に行くに
告別
(
いとまごい
)
の手紙の一通もやらぬ
不埒
(
ふらち
)
なやつと母は幾たびか怒りしが、世間の様子を聞けば、
田舎
(
いなか
)
よりその子の遠征を見送らんと
出
(
い
)
で来る老婆
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
たとえばこの頃の妻の行為がありのままに京都の父親にでも知れたら、いかに物分りのいい老人でも世間の手まえ娘の
不埒
(
ふらち
)
を許しては置けないであろう。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もっとも、あの
不埒
(
ふらち
)
な
八戒
(
はっかい
)
の解釈によれば、俺たちの——少なくとも
悟空
(
ごくう
)
の師父に対する敬愛の中には、多分に男色的要素が含まれているというのだが。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
他の誰か、一般内地人にそういう
不埒
(
ふらち
)
があった場合は、彼は自ら取締らなければならない地位に居るのである。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
「なによ、それが
淫奔事
(
いたずらごと
)
でなけりゃ、それでもえいさ。淫奔をしておって我儘をとおすのだから
不埒
(
ふらち
)
なのだ」
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
◎
京都
(
きょうと
)
の画工某の
家
(
いえ
)
は、
清水
(
きよみず
)
から
高台寺
(
こうだいじ
)
へ
行
(
ゆ
)
く間だが、この家の
召仕
(
めしつかい
)
の
僕
(
ぼく
)
が
不埒
(
ふらち
)
を働き、主人の妻と幼児とを
絞殺
(
こうさつ
)
し、火を放ってその家を
焼
(
やい
)
た事があるそうだ
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
船客に対して最も重き責任を
担
(
にな
)
うべき事務長にかかる
不埒
(
ふらち
)
の挙動ありしは、事務長一個の失態のみならず、その汽船会社の体面にも影響する
由々
(
ゆゆ
)
しき大事なり。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ただし野干咆ゆるより虎の居処知れ討ち取らるる例多しとウットが書いた。かく
不埒
(
ふらち
)
千万な野干も七日不食十善を念じ
兜率天
(
とそつてん
)
に生まれたと『未曾有経』に出づ。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
三月六日に優善は「
身持
(
みもち
)
不行跡
不埒
(
ふらち
)
」の
廉
(
かど
)
を以て隠居を命ぜられ、同時に「
御憐憫
(
ごれんびん
)
を以て
名跡
(
みょうせき
)
御立被下置
(
おんたてくだされおく
)
」
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
骨牌
(
かるた
)
と
酩酊
(
めいてい
)
とのために狂ったように興奮して、私がまさにいつも以上の
不埒
(
ふらち
)
な言葉を吐いて乾杯を
強
(
し
)
いようとしていたちょうどこのとき、とつぜん自分の注意は
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
「
不埒
(
ふらち
)
のやつどもだ。よくも、
私
(
わし
)
をひどいめにあわしたな。」と、おじいさんは、
怒
(
おこ
)
りましたけれど、よく
考
(
かんが
)
えれば、
自分
(
じぶん
)
が
無理
(
むり
)
だったので、いつでも、みんなが
夏とおじいさん
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
義理の
挨拶
(
あいさつ
)
見事に済ましてすぐその足を感応寺に向け、上人のお目通り願い、一応
自己
(
おのれ
)
が
隷属
(
みうち
)
の者の
不埒
(
ふらち
)
をお
謝罪
(
わび
)
し、わが家に帰りて、いざこれよりは鋭次に会い
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
以来ああいう
不埒
(
ふらち
)
な講演会をすることはならん、役員は引責辞職しろ、さもなければ年二百円の補助費を廃止する、とねじ込まれ、男子青年団の方は、まけて辞職し
一九三二年の春
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
左りに握りたい
不埒
(
ふらち
)
至極の
了簡
(
れうけん
)
お止めなさい/\我輩は謹んで艶福を天にかへしたてまつり少し
欲氣
(
よくげ
)
に聞ゆれど幸福一方と决定仕りぬ友人中には
夫
(
それ
)
は惜いお前が女運を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
不埒
(
ふらち
)
な役人共は、奸商と結んで賄賂をとり、不当な高価で品物を買い入れ、または鞘取りをする。
にらみ鯛
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
倅の不敬乱暴無法は申すまでもなく、嫁の
不埒
(
ふらち
)
も亦
悪
(
にく
)
む可し。無教育なる下等の暗黒社会なれば尚お
恕
(
ゆる
)
す可きなれども、
苟
(
いやしく
)
も上流の貴女紳士に此奇怪談は唯驚く可きのみ。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
で、一寸お
叩頭
(
じぎ
)
をするなり、犬をつれていそぎ足に、その場をはなれた。犬は
不埒
(
ふらち
)
にも自分が救世主ででもあるやうに慈悲深い眼つきをして牧師を見かへりながら去つた。
茶話:07 大正十四(一九二五)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「そればかりでない。人妻に対して汝は
不埒
(
ふらち
)
な考へなどを持つてゐくさるぞ、此の不届者……!」と隊長は事の
序
(
ついで
)
に其の事までも素つぱぬいて
罵
(
のゝし
)
つてゐるやうな気がして
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
そこの寺男が
和尚
(
おしょう
)
の伴をして行く途中、主人の
草履
(
ぞうり
)
を片一方落してしまった。それが
不埒
(
ふらち
)
だというので打首になり、下男は死んで行々子になった。それ故に今でもこの鳥は
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
音物
(
いんぶつ
)
、到来品、買物、近親交友間の消息、来客の用談世間咄、出入商人職人等の近事、奉公人の移り換、給金の前渡しや貸越や、慶庵や
請人
(
うけにん
)
の
不埒
(
ふらち
)
、鼠が天井で騒ぐ困り咄
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
彼が
不埒
(
ふらち
)
を働いたとすれば、自分もまたその
責任
(
せきにん
)
を分かたねばならぬと思い、西郷が来るや
否
(
いな
)
や、ただちに彼を
兵庫
(
ひょうご
)
に引連れ、明日君が君公の前に
侍
(
じ
)
すれば、生命はないぞ。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
後になっては私も、学校へ行ったふりをして浅草公園で映画を見て時間つぶしをするような、そんな
不埒
(
ふらち
)
な真似をするようになったが、その頃はまだそんな手を思いつかなかった。
遁走
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
花吉を篠田が
落籍
(
ひか
)
せをつたと——フム、自由廃業、社会党の
行
(
や
)
りさうなことぢや——
彼女
(
あれ
)
には我輩も多少の関係がある、
不埒
(
ふらち
)
な奴、松島、篠田ちふ奴は我輩に取つても敵ぢや、
可也
(
よし
)
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
彼は親分に向って、彼の体力、智慧、才覚、根気、度胸、其様なものを従来私慾の為にのみ使う
不埒
(
ふらち
)
を責め
最早
(
もう
)
六十にもなって余生幾何もない其身、改心して
死花
(
しにばな
)
を咲かせろと勧めた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
歿
(
なくな
)
られた
良人
(
つれあひ
)
から
懇々
(
くれぐれ
)
も頼まれた秘蔵の秘蔵の
一人子
(
ひとりつこ
)
、それを瞞しておのれが懲役に遣つたのだ。
此方
(
このほう
)
を女と
侮
(
あなど
)
つてさやうな
不埒
(
ふらち
)
を致したか。
長刀
(
なぎなた
)
の一手も心得てゐるぞよ。恐入つたか
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
不
常用漢字
小4
部首:⼀
4画
埒
漢検1級
部首:⼟
10画
“不埒”で始まる語句
不埒者
不埒千万
不埒者奴
不埒者様
不埒至極