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だて
ふりがな文庫
“
伊達
(
だて
)” の例文
が、
紅
(
あか
)
い
襷
(
たすき
)
で、色白な娘が運んだ、
煎茶
(
せんちゃ
)
と
煙草盆
(
たばこぼん
)
を袖に控えて、さまで
嗜
(
たしな
)
むともない、その、
伊達
(
だて
)
に持った煙草入を手にした時、——
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
深窓
(
しんそう
)
な育ちでも、どこか女
伊達
(
だて
)
めいた気風をもって、おそろしく仁義礼智の教えを守って——姿の薄化粧のように、魂も洗おうとした。
旧聞日本橋:22 大門通り界隈一束(続旧聞日本橋・その一)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
大西洋艦隊が太平洋に廻って、一緒に練習をやっているのは、
伊達
(
だて
)
じゃない。わが国の兵器は、正確で恐ろしい偉力をもっている。
空襲下の日本
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
一人の男がよろめきながら『腰の大小
伊達
(
だて
)
にゃあささぬ、
生意気
(
なまいき
)
なことをぬかすと首がないぞ!』と言って『あははははッ』と笑ッた。
まぼろし
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
梅ばちくずしのあの手ぬぐいを
伊達
(
だて
)
の
春駒
(
はるごま
)
かぶりにそろえながら、足拍子手拍子もろとも、いまや天下は春と踊り狂っていたからです。
右門捕物帖:28 お蘭しごきの秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
▼ もっと見る
したがって列はえんえんとつづき、本間孫四郎や
伊達
(
だて
)
の
蔵人
(
くろうど
)
家貞などの兵が、先駆から列後までを見つつ順に麓へさがって行った。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ダイヤのネクタイピンなど、無いのを私は知って居りますので、なおのこと、兄の
伊達
(
だて
)
の気持ちが悲しく、わあわあ泣いてしまいました。
兄たち
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この記事が東京朝日新聞に出たのを見た
滝野川
(
たきのがわ
)
の
伊達
(
だて
)
氏が、わざわざ手紙をよこして、チャップリンの文楽見物の事実を知らせてくれた。
生ける人形
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そのたまらない
伊達
(
だて
)
な味が好きで、平次の代理をするときは、平次に笑はれ乍らも、これを借用して來るのが八五郎の例でした。
銭形平次捕物控:183 盗まれた十手
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
大体福島県は紙漉の村が多いのでありまして、
岩代
(
いわしろ
)
の国では
伊達
(
だて
)
郡
山舟生
(
やまふにゅう
)
や
安達
(
あだち
)
郡の
上
(
かみ
)
および
下
(
しも
)
の川崎村や
耶麻
(
やま
)
郡
熱塩
(
あつしお
)
村の
日中
(
にっちゅう
)
。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
今後の男
伊達
(
だて
)
は決して
威張
(
いば
)
り一方では用をなさぬ。内心
剛
(
かた
)
くして外部に
柔
(
やわ
)
らかくなくてはならぬ。むかしの賢者も教えて
曰
(
いわ
)
く
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
(彼は眼は悪くないのであるが、いつ頃からか折々
伊達
(
だて
)
に色眼鏡を掛ける癖が附いていた)あの
秦皮
(
とねりこ
)
のステッキを
衝
(
つ
)
いた姿がぬっと現れた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一方カラハシという名称の行われていた区域も弘いようである。群馬県の佐野、栃木県の
那須
(
なす
)
、福島県の
伊達
(
だて
)
などの実例を私は知っている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
あの頭上の衣類の中に隠されてでもいるのか、そうでなければ、これは一本だけ特に長いのを
伊達
(
だて
)
に差す
遊侠無頼
(
ゆうきょうぶらい
)
のともがらででもあるのか。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
生まれは仙台気仙村、父忠左衛門の時代まで、
伊達
(
だて
)
家に仕えて禄を
食
(
は
)
んだが、後忠左衛門江戸へ出で、医をもって業とした。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ジャンセニストの者と不信仰者とは、清教主義者と
伊達
(
だて
)
者とは、おのれの本能に仕えながらも同一の運命に仕えたのだった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「ほほ、それではバル・セロナ生れの
伊達
(
だて
)
ものには見えないわ。それともお前さんは
妾
(
わたし
)
に弱味でもあると思っているの。」
女百貨店
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
農夫とは思われぬ
伊達
(
だて
)
な
顎
(
あご
)
や口元が、若若しい精気に満ち、およそ田畑とは縁遠い、ぬらりとした気詰りで、
半被
(
はっぴ
)
を肩に朝湯にでも行きそうだ。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
会津
(
あいづ
)
藩士がつくったヨイチ郡
黒川
(
くろかわ
)
村、山田村、
伊達
(
だて
)
藩士が
拓
(
ひら
)
いたウス郡モンベツ村、イシカリ郡トウベツ村その他等々。
望郷:――北海道初行脚――
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
「仰しゃいまし、ちょっと足を
曳
(
ひ
)
いてお歩きになる姿はずいぶん
伊達
(
だて
)
でございますわ、御自分でもそう思っていらっしゃるのじゃございませんの」
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
蝕
(
むしば
)
み
喰
(
くら
)
い尽そうとする力の怖ろしさは、けっして悪臭を慕ったり、自分自ら植つけた、病根に酔いしれるといった——あの
伊達
(
だて
)
姿にはないのである。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
黒子
(
ほくろ
)
を貼った貴婦人と相乗りの軽馬車を駆っていく
伊達
(
だて
)
者。その車輪にぶら下がるようにして一しょに走りながら、大声に哀れみを乞う傴僂の乞食。
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
第二番に何屋の
某
(
かれ
)
と
綺羅
(
きら
)
を尽くした
伊達
(
だて
)
姿が、眼の前を次から次に横切っても、人々は唯、無言のまま押合うばかり。眼の前の美くしさを見向きもせず。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「あいや、
伊達
(
だて
)
侯……先刻よりお見受けするところ、御貴殿、首をまっすぐに立てたきり、曲がらぬようじゃが、いかがめされた。寝
挫
(
くじ
)
きでもされたか」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
大の野心家であつた
伊達
(
だて
)
政宗さへ、此年少気鋭な三代将軍の承職に当つて江戸に上つた際、五十人の切支丹の首が鈴ヶ森で
刎
(
は
)
ねられるのを眼のあたり見て
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
ざっとこういう
伊達
(
だて
)
な服装の不良紳士たちが沢山さまようという色町の通りに、僧形の二人がぶらぶら歩く姿は余程、異様なものであったろうと思います。
茶屋知らず物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それだから
伊達
(
だて
)
じゃいけない、真から底からのまこと心からの仕事でなくちゃ駄目だというんだろ、分った。
素人製陶本窯を築くべからず:――製陶上についてかつて前山久吉さんを激怒せしめた私のあやまち――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「何事ぞ」の句は花を見るのに何の必要があって長い刀をさしているのだ、無用なことだ、と
伊達
(
だて
)
に長刀を帯びている人の無風流をあざけったのであります。
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
男は八丈の
棒縞
(
ぼうじま
)
の着物に、
結城紬
(
ゆうきつむぎ
)
の羽織を着ていたが、役者らしい
伊達
(
だて
)
なところは少しもないのですよ。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
真田信仍が天王寺口で歩兵の槍で以て
伊達
(
だて
)
の騎馬で鉄砲に勝ちたるを
未曾有
(
みぞう
)
の事と持て囃すが、似た事もあって、南チリへ侵入したスペイン最上の将士を撃退して
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
諸君、もう一度、君達の胸のバッジをみたまえ。
光輝
(
こうき
)
ある日の丸の下に、書かれた Japanese Delegation の文字は、
伊達
(
だて
)
では、ねエんだろ。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
それからその方たちを好く思ふといふことでは幾人かは立派な、堂々とした、中年の方だと思ひ、他の方たちは若くて
伊達
(
だて
)
で、綺麗で、元氣があるとは思つてゐます。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
黒眼鏡であった
為
(
ため
)
友人達は元々私は目が悪くないのに
伊達
(
だて
)
でかけてきたのだろうと考えて、翌日から眼鏡なしでも買って貰えないせいだと思われないのが幸せであった。
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
男
(
をとこ
)
は
塵塚
(
ちりづか
)
さがす
黒斑
(
くろぶち
)
の
尾
(
を
)
の、ありて
用
(
よう
)
なき
物
(
もの
)
とも
見
(
み
)
ゆべし、
此界隈
(
このかいわい
)
に
若
(
わか
)
い
衆
(
しゆ
)
と
呼
(
よ
)
ばるゝ
町並
(
まちなみ
)
の
息子
(
むすこ
)
、
生意氣
(
なまいき
)
ざかりの十七八より五
人
(
にん
)
組
(
ぐみ
)
七
人
(
にん
)
組
(
ぐみ
)
、
腰
(
こし
)
に
尺
(
しやく
)
八の
伊達
(
だて
)
はなけれど
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
その意味は、官軍
先鋒
(
せんぽう
)
の
嚮導隊
(
きょうどうたい
)
などととなえ当国へ
罷
(
まか
)
り越した
相良惣三
(
さがらそうぞう
)
らのために周旋し、あまつさえその一味のもの
伊達
(
だて
)
徹之助に金子二十両を用だてたのは
不埓
(
ふらち
)
である。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
葉子はそこにいかにも
伊達
(
だて
)
で
寛濶
(
かんかつ
)
な心を見せているようだったが、同時に下らない女中ずれが出来心でも起こしはしないかと思うと、細心に監視するのも忘れはしなかった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ワーニャ (家から出てくる。おそい朝飯のあとで一寝入りして、だらけた様子をしている。ベンチに腰をおろして、
伊達
(
だて
)
なネクタイを直す)そう……(間)。ふむ、そう……
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
そのとき内匠頭とならんで勅使饗応役に任ぜられた
伊達
(
だて
)
左京亮は、加賀絹数巻、黄金百枚、それに加えて狩野探幽の描いた
竜虎
(
りゅうこ
)
の図双幅をおくったということになっているが
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
彼らの主君であった
伊達
(
だて
)
邦夷は、さかやきの伸びた額をおさえ、
些
(
いさ
)
さか唇をまげたあの顔で、遠い海の
彼方
(
かなた
)
に視線を投げていた。思いが胸にあふれているときの様子であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
南蛮船が来航し、次で
和蘭陀
(
オランダ
)
からも
遣
(
や
)
って来る。
支那
(
シナ
)
との交通はもとよりのことである。香木の
伽羅
(
きゃら
)
を手に入れることで、熊本の細川家と仙台の
伊達
(
だて
)
家との家臣が争っている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
嘗て「近代の憂欝」といふ言葉も流行したくらゐ、西洋でも、ハムレット以来、懐疑と魂の漂泊を誇示する青白い憂欝は、詩的で、ちよつと
伊達
(
だて
)
な、青年好みの時代色でありました。
青年の夢と憂欝:――力としての文化 第五話
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「そんならひとつ盤に相談しときまひよ。」といふ詞は
伊達
(
だて
)
ではない。それを聴いては、もうどんな道理を持つて行つても
空
(
むな
)
しかつた。交渉に行つた記者はかんかんになつて引き下つた。
聴雨
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
どの顏
下
(
さ
)
げて武士よと人に呼ばるべき、腐れし心を
抱
(
いだ
)
きて、外見ばかりの
伊達
(
だて
)
に指さん事、兩刀の曇なき手前に心とがめて我から忍びず、只〻此上は横笛に表向き婚姻を申入るゝ外なし
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
それがために何だかえらそうに見えるという
伊達
(
だて
)
からかけていたのであろう。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
ソコで私がこの藩主に
向
(
むかっ
)
て大に談じられる
由縁
(
ゆかり
)
のあると
云
(
い
)
うのは、その藩主と云う者は
伊達
(
だて
)
家の分家
宇和島
(
うわじま
)
藩から養子に来た人で、前年養子になると云うその時に、私が
与
(
あずかっ
)
て
大
(
おおい
)
に力がある
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
案内されて
廻縁
(
まわりえん
)
からはいって来た客人——年頃は主じとあまり違わぬ三十何歳、細い
髷
(
まげ
)
をすずしく結って、
伊達
(
だて
)
好みの茶壁の着付、
袴
(
はかま
)
はわざと
穿
(
は
)
かずに、無紋紺地の短か羽織を軽く羽織って
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
まるで
狐
(
きつね
)
みたいに狡そうに肩を
揺
(
ゆ
)
すりながら、彼女のそばへ寄って行って、彼女の掛けている
椅子
(
いす
)
の背に、
伊達
(
だて
)
な
格好
(
かっこう
)
をしてもたれかかり、さも得意げな、
追従
(
ついしょう
)
たらたらの
薄笑
(
うすわら
)
いを
浮
(
うか
)
べながら
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
好
(
この
)
み
甚
(
はなは
)
だ
婬婦
(
いんぷ
)
なりしが娘お
熊
(
くま
)
は
容顏
(
きりやう
)
衆人
(
しうじん
)
に
勝
(
すぐ
)
れて
美麗
(
うつくし
)
く見る
者
(
もの
)
心
(
こゝろ
)
を
動
(
うごか
)
さぬものなく二八の
春秋
(
はるあき
)
も
過
(
すぎ
)
て年頃に及びければ
引手
(
ひくて
)
數多
(
あまた
)
の身なれども
我下紐
(
わがしたひも
)
は
許
(
ゆる
)
さじと
清少納言
(
せいせうなごん
)
の
教
(
をし
)
へも今は
伊達
(
だて
)
なる母を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
『君、今夜は
伊達
(
だて
)
男が来ていなそうだね』と突然、生駒君が私に言う。
美音会
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
これは
伊達
(
だて
)
に飾ってあるのではない、僕は朝夕これを執って、わが家の同人の誰でもを相手に剣術の練習をする、
堪
(
たま
)
らなく気が滅入って始末のつかぬ時には、これで戦争ごっこをして気分を
晴
(
はら
)
す
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
“伊達”の意味
《名詞・形容動詞》
伊 達(だて)
人目をひくように、派手に振舞うこと。
好みが粋であること。
(「伊達ではない」などの否定形を伴う形で、又は接頭辞的に)見栄えはよいが、役に立たない、又は中身が伴っていないこと。
(出典:Wiktionary)
伊
漢検準1級
部首:⼈
6画
達
常用漢字
小4
部首:⾡
12画
“伊達”で始まる語句
伊達巻
伊達者
伊達政宗
伊達家
伊達卷
伊達男
伊達締
伊達様
伊達安芸
伊達絹