餘地よち)” の例文
新字:余地
文化ぶんくわ發達はつたつしてれば、自然しぜん何處どこ漠然ばくぜんとして稚氣ちきびてるやうな面白おもしろ化物思想ばけものしさうなどをれる餘地よちくなつてるのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
不可能ふかのうで、また其目的そのもくてきのみの大學だいがくでもなし博物館はくぶつくわんでもない、ゆゑ今一息いまひといきといふ岡目をかめひやう其所そこ突入とつにふするだけの餘地よちいでもい。
すこ時間じかんおくれたので、寄席よせ一杯いつぱいであつた。二人ふたり坐蒲團ざぶとん餘地よちもない一番いちばんうしろはうに、立膝たてひざをするやうましてもらつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それで一方いつぽうは、大體だいたい現在げんざいのアイヌにちか體質たいしつをもつてゐた人間にんげん石器せつき使つかつてゐたと同時どうじに、またわれ/\の祖先そせんもまた石器せつき使つかつてゐたといふこともうたが餘地よちがありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
小屋こやうちにはたゞこればかりでなく、兩傍りやうわきうづたか偉大ゐだい材木ざいもくんであるが、かさ與吉よきちたけよりたかいので、わづか鋸屑おがくづ降積ふりつもつたうへに、ちひさな身體からだひとれるよりほか餘地よちはない。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
天滿與力てんまよりきは、渡船とせんもどしてみたけれど、ほとんど片足かたあし餘地よちもないので、腹立はらだたし舌打したうちして、みぎはつてゐたが、やがてたかく、とらえるやうにこゑげると
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それは勘次かんじは二三のものとも巡査じゆんさ注意人物ちういじんぶつであつたからである。しかかれまづしい建物たてもの何處どこにも隱匿いんとくされる餘地よち發見はつけんすることが出來できなかつた。とき勘次かんじ餘所よそはこんだあとなのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
家内うち/\もめるにそのやうのこと餘地よちもなく、つて面白おもしろくない御挨拶ごあいさつくよりかだまつてはうがよつぽど洒落しやれるといふくらゐかんがへで、さいはひに賄賂わいろけがれはけないでんだけれど
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
日本にほん化物ばけもの後世こうせいになるほど面白おもしろくなつてるが、これはじ日本にほん地理的關係ちりてきくわんけい化物ばけもの想像さうざうする餘地よちがなかつたためである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
宗助そうすけこの臆斷おくだんゆるすべき餘地よちが、安井やすゐ御米およねあひだ充分じゆうぶん存在そんざいるだらうぐらゐかんがへて、ながら可笑をかしくおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それは瓢簟山ひやうたんやま地形ちけいである。此地形このちけい主墳しゆふん周圍しうゐ陪塚ばいづかつくるをゆるさぬ。すなは主人しゆじんほうむつたつかちかくに、殉死者じゆんししやつかつくるだけの餘地よちいので、むを山麓さんろく横穴よこあなつくつたといふのせつである。
社會しやくわいはう彼等かれら二人ふたりぎりめて、その二人ふたりひやゝかなそびらけた結果けつくわほかならなかつた。そとむかつて生長せいちやうする餘地よち見出みいだなかつた二人ふたりは、うちむかつてふかはじめたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ルネツサンス以後いごろんずるにらない。しかるに東洋方面とうやうはうめんとく印度いんどなどはすべてが渾然こんぜんたる立派りつぱ創作さうさくである。日本にほんではあま發達はつたつしてなかつたが、今後こんご發達はつたつさせようとおもへば餘地よち充分じうぶんある。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)