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颯
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さっ
ふりがな文庫
“
颯
(
さっ
)” の例文
と、息切れのする
瞼
(
まぶた
)
が
颯
(
さっ
)
と、気を込めた手に力が入つて、鸚鵡の胸を
圧
(
お
)
したと思ふ、
嘴
(
くちばし
)
を
踠
(
もが
)
いて
開
(
あ
)
けて、カツキと
噛
(
か
)
んだ小指の
一節
(
ひとふし
)
。
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
視線の向う所は黒部川の上流を取り巻いて、天半に
揺曳
(
ようえい
)
する青嵐の中に
颯
(
さっ
)
と頭を
擡
(
もた
)
げた、今にも動き出すかと想われる大山岳である。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
桟敷
(
さじき
)
からはまた、追ッかけの使者が走ッていた。「ぜひもない、引きさがれ」という旨らしい。で一同は
颯
(
さっ
)
と桟敷の方へひきあげる。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
云い捨てクルリと馬の首を東南へ向けて立て直すと、
颯
(
さっ
)
とばかりに走らせた。人馬諸共一瞬の後には木陰へ隠れて見えなくなった。
郷介法師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
立っている脚、書物を抱えている手がワナワナと震えて、自分ながら顔や唇から
颯
(
さっ
)
と血の気の引いてゆくのが感ぜられるようであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
先棒
(
さきぼう
)
と
後
(
うしろ
)
との
声
(
こえ
)
は、
正
(
まさ
)
に一
緒
(
しょ
)
であった。
駕籠
(
かご
)
が
地上
(
ちじょう
)
におろされると
同時
(
どうじ
)
に、
池
(
いけ
)
に
面
(
めん
)
した
右手
(
みぎて
)
の
垂
(
たれ
)
は、
颯
(
さっ
)
とばかりにはね
揚
(
あ
)
げられた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
颯
(
さっ
)
と輝き落ちて来ましたから、その光りで初めて浮き上ったものの正体を見ますと、皆の者は一度にワッと叫んで飛び
退
(
の
)
きました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
平次は頃合を測って足を止めると、
袂
(
たもと
)
を探って取出した得意の青銭、右手は
颯
(
さっ
)
と挙がります。朧を
剪
(
き
)
って飛ぶ投げ銭、二枚、五枚、七枚。
銭形平次捕物控:062 城の絵図面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
強
(
し
)
いてそれを、ツマらないこととして葬ってしまおうと苦心している時、入口ののれんが
颯
(
さっ
)
とあいたので、われにかえりました。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
左右に
颯
(
さっ
)
と開いた中を——赤いものが通る、青いものが通る。女が通る。子供が通る。嵯峨の春を傾けて、京の人は
繽紛絡繹
(
ひんぷんらくえき
)
と嵐山に行く
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
主人の命をかしこんでふたたびかなたに帰ってゆく老いた下郎を眺めた時、呉羽之介のあでやかな面上に、
颯
(
さっ
)
と悲哀のいろがうかびました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
黒い髪のただ中に黄の勝った大きなリボンの
蝶
(
ちょう
)
を
颯
(
さっ
)
とひらめかして、細くうねる
頸筋
(
くびすじ
)
を今真直に立て直す女の姿が目つかった。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それが配置された人々のほうへと、次ぎ次ぎに伝えられ、眼に見えないなにかがはしりでもするように、
颯
(
さっ
)
と緊張が拡がった。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
稲妻
(
いなずま
)
の如く迅速に飛んで来て魚容の翼を
咥
(
くわ
)
え、
颯
(
さっ
)
と引上げて、呉王廟の廊下に、
瀕死
(
ひんし
)
の魚容を寝かせ、涙を流しながら
甲斐甲斐
(
かいがい
)
しく
介抱
(
かいほう
)
した。
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
室内をあっちこっち歩く靴の音を聞きながら
彳
(
たたずん
)
でいると、扉が内から
颯
(
さっ
)
と開いて、吉岡五郎氏の美しい姿が燈を背にしてすらりと立っていた。
情鬼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
と同時に、二人の顔に
颯
(
さっ
)
と驚愕の色が
閃
(
ひらめ
)
いた。検事はウーンと
呻
(
うめ
)
き声を発して、思わず
銜
(
くわ
)
えていた
莨
(
たばこ
)
を取り落してしまった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
彼を盲にするような強い稲妻が
颯
(
さっ
)
とひらめいて来て、彼のすがたは鷲に掴まれた
温
(
ぬく
)
め鳥のように宙に高く引き挙げられた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
島田虎之助は加藤主税を斬ったる刀を其の儘身を沈めて斜横に後ろへ引いて
颯
(
さっ
)
と払う理屈も議論もない、人間を腹部から上下に分けた胴切りです。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
が、やがて院長のメスが白い皮膚の上を
颯
(
さっ
)
と走って、そこに赤い一線が滲んだとき、私はまた不安に襲われました。
麻酔剤
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
母が
履脱
(
くつぬぎ
)
へ降りて格子戸の
掛金
(
かきがね
)
を外し、ガラリと雨戸を繰ると、
颯
(
さっ
)
と夜風が吹込んで、
雪洞
(
ぼんぼり
)
の火がチラチラと
靡
(
なび
)
く。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
折々
颯
(
さっ
)
と吹く風につれて犬の吠ゆる声谷川の響にまじりて聞こゆるさえようようにうしろにはなりぬ。
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
此の時此の家の奥の室とも云う可き所に
方
(
あた
)
る一つの窓の
戸帳
(
とばり
)
を内から
颯
(
さっ
)
と開いた者が有る、何でも遽しい余の馬の足音に驚き何事かと外を窺いた者らしい、併し其の者
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
陽暦の八月頃は
蕎麦
(
そば
)
の花盛りで非常に
綺麗
(
きれい
)
です。私はその時分に
仏間
(
ぶつま
)
に閉じ籠って夕景までお経を読んで少し疲れて来たかと思いますと
颯
(
さっ
)
と吹き来る風の香が非常に
馥
(
こう
)
ばしい。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
と、表戸を開けますと
颯
(
さっ
)
と風が中に吹き込んで、木の葉が座敷の中まで飛び込みました。
嵐の夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
浅いぬれ縁に麻川氏は両手をばさりと置いて
叮嚀
(
ていねい
)
にお辞儀をした。仕つけの好い子供のようなお辞儀だ。お辞儀のリズムにつれて長髪が
颯
(
さっ
)
と額にかかるのを氏は一々
掻
(
か
)
き上げる。
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
颯
(
さっ
)
と朝風が吹通ると、
山査子
(
さんざし
)
がざわ
立
(
だ
)
って、
寝惚
(
ねぼけ
)
た鳥が一羽飛出した。もう星も見えぬ。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
夏の嵐の或る昼間、ひょっと外へ出てその柔かい緑玉色の杏の叢葉が
颯
(
さっ
)
と煽られて翻ったとき、私の体を貫いて走った戦慄は何であったろう。驟雨の雨つぶが皮膚を打って流れる。
青春
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
政元は
行水
(
ぎょうずい
)
を使った。あるべきはずの
浴衣
(
よくい
)
はなかった。小姓の
波〻伯部
(
ははかべ
)
は浴衣を取りに行った。月もない二十三日の夕風は
颯
(
さっ
)
と起った。
右筆
(
ゆうひつ
)
の戸倉二郎というものは
突
(
つっ
)
と跳り込んだ。
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
夜が明けると、早くから飛び起きて、すぐにメリヤスの
襯衣
(
シャツ
)
に浴衣で、ドアを押して見たが、
颯
(
さっ
)
と来る雨霧に慌てて首をすっ込ますと、
早速
(
さそく
)
にレインコートを引っかぶってしまった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
颯
(
さっ
)
と風が吹きおろしたと思うと、積雪は自分の方から舞い上るように舞上った。それが横なぐりに
靡
(
なび
)
いて矢よりも早く空を飛んだ。佐藤の小屋やそのまわりの木立は見えたり隠れたりした。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
併し、気の
故
(
せい
)
か彼女の美しい
輝
(
かがやき
)
の顔に、不安の影が
颯
(
さっ
)
と通った様に思えた。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
すると
忽
(
たちま
)
ち
河岸
(
かし
)
の方から
颯
(
さっ
)
とばかり
真正面
(
まとも
)
に吹きつけて来る川風の涼しさ。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
颯
(
さっ
)
と
白紗
(
はくしゃ
)
の蚊帳に
血飛沫
(
ちしぶき
)
が散って、
唐紅
(
からくれない
)
の模様を置いた。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
……
蓋
(
ふた
)
は
黄金無垢
(
きんむく
)
の雲の高彫に、千羽鶴を
透彫
(
すかしぼり
)
にして、一方の波へ、毛彫の
冴
(
さえ
)
で、月の影を
颯
(
さっ
)
と映そうというのだそうですから。……
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
天運我にあったと見え、
颯
(
さっ
)
と突いた突きの一手に夏彦は胸の真ん中を刺され帆柱の
下
(
もと
)
に倒れたが、そのまま
呼吸
(
いき
)
は絶えてしまった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
助九郎は、待っていたものの、
颯
(
さっ
)
——と一足退いた。
弾
(
はず
)
み込んでくる武蔵の体と自分の腕の伸びとに
間合
(
まあい
)
を測って退いたのである。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
松倉十内の顔色が
颯
(
さっ
)
と変った。傍の脇差取るより早く、縁側を飛降りかけて来たのを、目明の良助が大手を拡げて遮り止めた。
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼がそう叫ぶと、相手の躯が
戦慄
(
せんりつ
)
するようにみえた。高雄は自分の声に自分で闘志を
唆
(
そそ
)
られ、
颯
(
さっ
)
と明るい路上へとびだした。
つばくろ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
丸顔に
愁
(
うれい
)
少し、
颯
(
さっ
)
と
映
(
うつ
)
る
襟地
(
えりじ
)
の中から
薄鶯
(
うすうぐいす
)
の
蘭
(
らん
)
の花が、
幽
(
かすか
)
なる
香
(
か
)
を肌に吐いて、着けたる人の胸の上にこぼれかかる。
糸子
(
いとこ
)
はこんな女である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
浪の音が、上から落ちて来るように
颯
(
さっ
)
と響くと、一
穂
(
すい
)
の
燈火
(
ともしび
)
がゆらゆらと揺れます。お玉はぶるぶると身震いをしました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
無雑作に
投
(
ほう
)
り出して、切り立ての
犢鼻褌
(
ふんどし
)
に、紺の香が匂う
腹掛
(
はらがけ
)
のまま、もう一度ドシャ降りの中へ
颯
(
さっ
)
と飛出しました。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
帯
(
おび
)
ははやりの
呉絽
(
ごろ
)
であろう。
引
(
ひ
)
ッかけに、きりりと
結
(
むす
)
んだ
立姿
(
たちすがた
)
、
滝縞
(
たきじま
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
が、いっそ
背丈
(
せたけ
)
をすっきり
見
(
み
)
せて、
颯
(
さっ
)
と
簾
(
すだれ
)
の
片陰
(
かたかげ
)
から
縁先
(
えんさき
)
へ
浮
(
う
)
き
出
(
で
)
た十八
娘
(
むすめ
)
。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
支那の
怪物
(
ばけもの
)
………私は例の好奇心に促されて、一夜を
彼
(
か
)
の空屋に送るべく決心した。で、
更
(
さら
)
に
委
(
くわ
)
しく
其
(
そ
)
の『
鬼
(
き
)
』の有様を
質
(
ただ
)
すと、
曰
(
いわ
)
く、半夜に
凄風
(
せいふう
)
颯
(
さっ
)
として至る。
雨夜の怪談
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ズバリと
刳
(
えぐ
)
るような調子であった。「まことに残念ですが」予期したこととはいいながら、途端に私は自分の顔から
颯
(
さっ
)
と血が引くのを感ぜずにはいられなかった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
少年は出されまいとして頑張ったけれども、男はぐいぐい戸口へ引ぱって行って、
颯
(
さっ
)
と戸を開けると、汚い犬猫でも追い出すように、子供を外へ突きとばすが早いか、ぴしゃりと締めきった。
生さぬ児
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
波のなだれが
颯
(
さっ
)
と頭からかぶって来た。雨がまた
勢
(
いきおい
)
を盛り返して来た。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
すると
颯
(
さっ
)
と霧が開けて、右手に目的の尾根が現われる。
鹿の印象
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
第九十六回
颯
(
さっ
)
と戸帳を
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
とすらりと立った丈高う、半面を
颯
(
さっ
)
と彩る、
樺
(
かば
)
色の窓掛に、色彩
羅馬
(
ロオマ
)
の
女神
(
じょしん
)
のごとく、
愛神
(
キュピット
)
の手を片手で
曳
(
ひ
)
いて、主税の肩と擦違い
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
下桜田
(
しもさくらだ
)
まで来た時であった。ふと彼は足を止めた。その機会を狙ったのであろう、刺客の一人が群を離れ、
颯
(
さっ
)
と安房守の背後に迫った。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
颯
漢検1級
部首:⾵
14画
“颯”を含む語句
颯々
颯爽
颯然
一颯
英姿颯爽
颯急
松籟颯々
爽々颯々
青嵐颯々
颯々淙々
颯々爽々
颯光
颯地
颯爽味
颯秣建
颯血